「あ。」
置いた手から伝わるかすかな動き
「トリッシュ、今」
「動いたでしょ?」
彼女のすっかり丸くなったお腹には新しい命がやどり、その父親は紛れもない自分だ
「ブチャラティもお父さんになるのね。」
「君もお母さんになるんだな。」
出会った頃には考えもしなかった。だが今目の前にはその現実がある。
くすくす笑いあってその幸せを噛み締める。
「寒くはないか?腹は冷やすなよ。あ、何か欲しいものはあるか?持ってこよう。」
「いいわよブチャラティ、それくらい自分でできるわ。」
「いや、今が大事な時期だ。君に無茶はさせられない。」
「・・・嬉しいけど心配しすぎよ。」
きっとお父さんになっても変わらないわね。
そう言って笑うと何故笑われるかわからないとブチャラティは疑問符を浮かべる。
「ねぇ。名前どうしようか。あなたが決める?」
「いや、君が決めるといい。」
「・・・じゃあ男の子だったらあなたで女の子だったら私が決めるわ。これならいいでしょう?」
「わかった。じゃあ良い名前を考えようか」
「そうねお父さん。」
「な、お母さん。」
笑いあう姿は誰がどう見ても幸せな夫婦そのものであった
終