ホット・パンツは目を堅く瞑る。  
自身の陥った状況が、あまりにも良識を超えていて、現実から逃れようとしていた。  
それでも五感の残りは、彼女の現状―――ベッドの上で、男二人に身を任せている―――を  
余すことなく伝えている。  
(どうして、こんなことに――――)  
 
****  
 
(落ち着け・・・・・・落ち着くんだ・・・・・・)  
「どうした・・・・・・?一体何の用だホット・パンツ?」  
「ホット・パンツ・・・・・・?女だったのか?こいつ・・・・・・」  
 
 
聞こえるものは虫の声しかない深夜。闇と静寂の平穏は突然破られる。  
宿での就寝中、とある緊急事態に陥ったホット・パンツは危機から逃れるため  
やむなくジョニィたちの部屋に駆け込んだ。が、女だと知られるのはやむを得ないとして、  
また新たな問題が発生することになった。すなわち、今の彼女の姿は浴衣状の寝衣のみ、  
胸の尖りもたおやかな脚線も隠せてはいないことである。  
扉のそばの電灯を点けてその姿を照らす気にはなれなかったが、むしろ枕灯のみの薄暗さが、  
やや荒くなった呼吸と相まって淫靡な印象を与えている。そのことに気付かないほど無頓着ではない。  
無頓着でなく『させられて』いた。  
あまりジロジロと見るな、と前置きをした後、今の自分の『状態』を気取られぬよう  
押し殺した声でホット・パンツが端的に告げる。  
 
「・・・・・・ここのボーイはスタンド使いだ。攻撃されている。」  
「!」  
「どういうことだ?なぜ君が狙われている?」  
「・・・・・・・・・・・・詳しくは教えられない。だが不条理で一方的な暴力だ、それだけは断言する」  
「?」  
「ちょい待て。言えねーようなマズい理由で襲われてるってことか?んで俺らに助けてくれって?」  
 
夜中に、武器どころかまともな衣服すら身に着けず、息を切らし助けを乞うて来る。  
明らかに非常事態だというのに『知らない』ではなく『教えられない』というホット・パンツを  
不審に思いながらも、ジャイロは質問を次いだ。  
 
「それに攻撃されてるっつってもそうは見えねーぜ?敵はどんな能力だ?どうやって逃げてきた?」  
「!・・・・・・」  
「おい?」  
「・・・い、一度しか言わないからな・・・・・・」  
ホット・パンツの顔がみるみる赤く染まる。先程から薄着を恥ずかしがってはいたが、  
加えて更に、説明しがたそうに言いよどんでいる。  
 
「・・・お、女に淫らな夢を見させて発情させる能力、だ・・・・・・」  
「・・・・・・」  
「・・・・・・・・・・・・フザケてんのか?」  
ジョニィ達にとってスタンド使いの襲撃といえば『遺体』を狙う大統領の手先を意味する。  
たとえ街中であっても手段を選ばずに仕掛けてくる刺客が現れる可能性はあり、  
ホット・パンツはそれのとばっちりを受けた、というのが2人にとって当然の予想であった。  
それがあまりにも馬鹿馬鹿しい形で外れることで、危機感が一気に薄れる。  
と同時に余計な心配をさせられたことへのイラ立ちと呆れがジャイロから強烈に発される。  
「おい、ジャイロ・・・・・・」  
「知るかよ、んなこと。痴漢くらい自力で撃退できるだろーがオメーは。つーかむしろ――」  
 
「こんな能力のヤツと相対してどうされるか想像したくも無いし何より顔見知りの君らでなければ  
一も二もなく縋りついているかも知れないほど『効いて』いるのにそんなことが出来るかッ!!」  
――ジャイロの発言を遮ってでも、一息でこう言い切ってしまえば  
まだホット・パンツにはまだ希望が残されたかもしれない。だがその機は逃された。  
そしてそれは、彼女の運命において決定的なタイミングだった。  
 
 
「エロい夢見てたまんねーから抱いてくれ、ってふうにしか聞こえねーがな」  
「違うッ!」「ジャイロッ!」  
図らずも怒声が重なった2人が互いを見合わせるが、即座にホット・パンツが目を背ける。  
視線がかち合うだけでたちまち鼓動が高まるのが怖かったためだ。  
 
「ジョニィ・ジョースター・・・・・・君もそう思うのか?さかった雌犬がねだりに来たって?」  
「え・・・・・・」  
「信じられるか?冷静に考えてみろよ・・・・・・」  
彼女の口振りからはとても嘘をついているとは思えなかった、が――  
「・・・・・・・・・・・・君には悪いが・・・・・・もしそうだとしたら本体がみすみす君を逃す理由が分からない。  
今頃そいつの餌食になっているはずじゃないのか?」  
――ジャイロの「空気読めジョニィ」と言いたげなアイコンタクトと、  
ホット・パンツの常にないほど露わになった躯線、発情しているとの言がジョニィをそそのかした。  
よこしまな期待を含んだ言葉が、的確な判断を装ってホット・パンツを追い詰める。  
「・・・・・・・・・・・・君らを頼ったのが間違いだったッ!」  
歯噛みして憎々しげにそう吐き捨て、ホット・パンツは部屋の扉の方へときびすを返した。  
 
(言うじゃねーかよジョニィ、オメー)  
(君の方がだろ・・・・・・彼女だって女性だ)  
(ちっとおちょくっただけだ、まあ、攻撃されたってのはウソじゃないんだろーが・・・・・・)  
(ちょっと待てそれじゃあ――)  
 
ジョニィが言おうとしたのと重なり、ガチャンと扉が閉められる。  
だが立ち去ったかと思われたホット・パンツは部屋から出てはおらず、  
後ろ手に鍵をかけてまだその場に留まっていた。  
今、怒りに任せて退室したところで何も解決しない。敵は部屋の周辺で自分を探しているに違いない。  
スプレーも、他に助けになりそうな相手もない状況で頼りにできるのは本当にこの2人だけだと悟りはしたが、  
さりとて具体的に説得する手立ても見つからない。  
言い知れぬ衝動が理性を眩ませ、著しく集中力を削がれた思考は何も見出せないまま  
表情には焦りや戸惑いとは別の悩ましい色がはっきりと浮かび始めていた。  
 
「本当だ・・・・・・信じてくれ・・・・・・」  
寝衣の裾を握り締める。体を隠そうとしたというより、衣服が肌に擦れるわずらわしさを抑えるためである。  
もし彼女が逃げ込んだ部屋が空き部屋だったとしたら、脱ぎ捨てているかもしれない。  
本性にない激情に狂わされ耐え忍ぶ姿はいじらしい。しかし同時に、酷く扇情的でもあった。  
うすく色づいた肌が、全身から壮絶な色気を意思と関係なく放つ。  
「頼む・・・・・・どうか・・・・・・・・・」  
吐息まじりの弱々しい声音が潤んでいる。それが何を求めた懇願なのかを、  
男2人と、ホット・パンツ自身とに、錯覚させた。誰かがごくりと唾を飲む音が、かすかに漏れる。  
 
「・・・・・・こっちに来い、ホット・パンツ」  
正常な判断能力を失った脳は、ただ命じられたままに体を操って――――  
 
 
****  
 
 
恐る恐る薄目を開ければやはり夢ではなく、背後から回された手に弄ばれる胸と、  
唇と手にさすられる脚があり、正面のジョニィと目が合って咄嗟に目を逸らした。  
 
その様はジョニィにはひどく新鮮であった。  
事故以前に限れば女には不自由しない身分であったが、彼に寄り付く女にはここまで色事に不慣れな者はいなかった。  
性別を偽っている事からすれば『男は』知らないのかもしれない、とは思ったが、  
まさか自ら男の部屋に訪れ袖を引ける(結果的に、だが)女が全くの未通女、  
それも生涯清廉を貫く修道女だとまではさすがに考えつかない。  
普段顔を合わせるライバル相手に二対一、それだけで彼女の怯えようの説明はついた。  
 
「ぅ・・・・・・嫌・・・・・・、やめろっ・・・・・・」  
拒絶する言葉とは対照的に、ホット・パンツの体は男を煽って止まない、生唾ものだった。  
優男くらいには見えた骨太さは着太りによるものであったことが分かる。思いのほか丸みを帯びた肩と、  
そこから下の胸の量感、みぞおちから臍の引き締まりは腰周りのやわらかな線へ続き、  
肉づきのいい太腿と脛、その先の爪先に至るまでいびつな部分はどこにもない。  
特に胸は、一度触ったことはあったが潰すかどうにかしていたのか予想外の大きさで、  
背後から回されたジャイロの両手に揺らされ、まろやかに柔肉をゆがめ頂点がつんと立っている。  
その形に、そそられない筈がなかった。  
 
むにゅむにゅと容赦なく加えられる蹂躙に興奮がこみ上げてきたらしく、  
次第にホット・パンツの吐息は速さを増し、刺激に対する脆さを露呈していた。  
「・・・・・・ん・・・・・・んっ・・・・・・ぁ、そこはっ・・・・・・」  
ジョニィの舌が脛、膝裏から内腿へと這いよるのを感じ、ぎゅっと膝を寄せて身を守る。  
それでもなお中心に近づくのを押し留めようとした手が、ジャイロにぐいと引かれて静止した。  
「そう堅くなんなって・・・仲良くしよーぜ?」  
「黙、れっぅ・・・・・・」  
顎が側上方へ掴み寄せられ、言いかけた言葉は塞いで留められる。  
感情の伴わない口づけだというのに不可解な心地よさを覚え、捩じ入る舌に阻まれ口を閉じることも出来ずに、  
ホット・パンツの口内はくまなく蹂躙される。混じった唾液は不潔に感じて飲み込まれずに口端から垂れた。  
「ふぁっ!んゃ、ぁあっ――」  
無防備になった胸をジョニィが唇と手で愛撫し、あえかな鳴き声もが零れる。  
高くか細い雌の声を発したことに気をよくしてか、舌先でちろちろとくすぐる動きで  
硬くなった頂点をいたぶりだした。その時点でホット・パンツは耐え切れなくなり、空いた手でジョニィを、  
次いでジャイロを力任せに引き剥がす。それがまるで意味のない、  
ただ2人の機嫌を損ねるだけの足掻きであることを、見上げる呆れた視線と憎らしげな舌打ちとで気付くことになる。  
「・・・・・・楽にしていた方がいい。じきに良くなる。」  
「・・・・・・・・・・・・」  
「癖のわりー手だ。」  
手と膝をそれぞれ強い力で掴まれ、ようやくホット・パンツは理解した。後戻りは出来ない、  
たとえこの頭の奥を焦がす熱が今冷めたとしても、自分はもう哀れに捕食されるしかないのだと。  
 
諦観が全身を満たし、くたりとうなだれて庇うことを止めたホット・パンツの体は急激に正直になった。  
汚される厭らしさは逃げるのをやめることで大幅に緩和され、純度を増した快感が無垢な体を侵略する。  
それが恐ろしかったが、ずっと楽になったことは確かだった。  
 
下へと降りていったジョニィの舌がホット・パンツの中心に触れた。  
まるで強要されているような抵抗を見せたくせに、とろとろと潤っているそこを  
からかうように裂け目を滑ると、びくりと体を震わせる。  
見上げると目をぎゅっと閉じ口をつぐむ顔が近くにあり、声を出すことすら恥じらっている、という様子であった。  
「まさか、初めてだったり・・・・・・」  
「・・・・・・」  
無論答えは返ってこない。思ったことがなんとなく口に出た程度だったので別に構わなかったが、  
代わりにこわごわと開いた目から視線が落とされる。  
そのあまりの弱々しさが、あまり酷くしないで、と訴えているように見えた。  
「・・・・・・っ・・・・・・ん・・・・・・」  
くすみひとつない秘部を、尖らせた舌先が丹念になぞる。  
ぬめる液体を塗り広げながら、孔から両の唇の裏表、包皮ごしの肉芽と、  
どこがどう感じるのかじっくり教える緩慢な触れ方は、性感を知らない体には効果的だった。  
ホット・パンツはいつしか快感を捉え、緊張した太腿がジョニィの顔をむちりと挟む。  
その肉感をもっと味わいたいと、張りのある白肌に跡が残るほどしゃぶりつきながら、指は入口を柔らかくほぐす。  
「んっ・・・・・・んん・・・・・・んぁっ、ぁ・・・・・・」  
浅いところをくすぐられることに焚き付けられ、もっと奥へ犯されることを望んだ秘口は一層溢れた。  
両胸への愛撫が再開されたのにも嫌悪感を示さないで、行き場に迷った両手を自然と肩の辺りに運び緩く握っていた。  
敏感な器官を探られるのと、たわわな柔肉を揉みしだかれるのと、異質の快感と興奮が脳を溶かす。  
熱く蠢動する粘膜をちゅくちゅくと音を立てて慣らす指がある深さに至ったとき、  
ホット・パンツの両脚がびくりと震えた。  
指一本ですら相当にきつい内腔が本当に触れられるのが初めてなのではないかという疑念と、  
それでいて確かに感じている、そうさせている支配感とがジョニィの頭に湧く。  
一度楽にさせよう、と既に其処の事しか考えられなくなったホット・パンツの弱点を集中的に圧した。  
「っ、んんっぅうんん、ん、んんんっ――」  
堪えるか細い声音が早まる。全身が竦みあがり、踵が浮き、爪先がシーツを握り締めて固まって――  
「っっっ――――!!!」  
声にならない嬌声の後、ホット・パンツの体がくたりと弛緩した。  
 
人生で初めて絶頂を体験し、ホット・パンツははあはあと息が上がる。  
酷い疲労感に押しつぶされて、それでもまだ下腹の中、彼女の最奥は前にも増して熱い。  
冷ます方法は一つしか思いつかなかった。  
「・・・・・・ぅ・・・・・・」  
「ホット・パンツ?」  
 
ここにきて一気に罪責感が溢れ出し、ホット・パンツの目から涙が一筋落ちた。  
神に捧げたはずの体を、浅ましく男に許している。  
 
下手に繕おうとしたのがいけなかったのだろうか、との後悔が頭に浮かんだ。  
彼らの前で情けない姿を晒すまいと、男勝りの女のままでいようとした。  
もし最初から、暴漢に怯える被害者として泣き崩れて助けを求めていたら、  
あるいは修道女であることを明かしていたら、どちらか一人でも良心でもって庇ってくれただろうか、と。  
だが今更どうにもならない。男達も、ホット・パンツも、もう納まりがつかなくなっていた。  
性に目覚めさせられてしまった体から自ずから湧き上がった劣情が、  
無理矢理引き出された分と混じって境界が分からなくなり、成り行きに任せることを望んでいた。  
 
終わらせよう、そして早く一人にして欲しいと、そう願って覚悟をして。  
彼女の涙に気付き、続けてもいいものかと戸惑っていたジョニィを、ホット・パンツは組み伏した。  
どうせ、彼に対してはこうするしかないのだと開き直りながらも、  
散々嫌がっておいていざとなると自ら貪ろうとする自分がどう見られているか、  
知りたくなくて目を伏せてジョニィの上に跨る。  
大胆な割にぎこちないホット・パンツを手伝って、ジョニィが自身の上へと導き手を添えて先端を粘膜にあてる。  
入口に迫った堅いものの感触に堪らなくなった粘膜がひくりとすぼんで舐める。  
ひどく性急な気分になって、一瞬、後ろめたさも何も吹き飛んだホット・パンツは衝動的に腰を沈ませた。  
 
「あはぁぁっ・・・・・・」  
ゆっくりと肉路を割る圧倒的な体積が体と意識を満たす。  
みちみちと拡げられる膣口とは裏腹な、子宮と胸の奥が締め上げられるような切ない感覚があった。  
既に受けた陵辱、異形に犯される悪夢は確かに無防備な精神のみとなったホット・パンツを姦通していたが、  
彼女の肉体は、未だ清いままだった。  
それが今、自分の意思でもって純潔を捨てたのだと、破瓜の痛みによって知らしめられ、絶望感が重くのしかかる。  
それから逃れるには、ただ腹の奥の切なさに縋るしかなかった。  
 
経験のないホット・パンツの内部は恐ろしくきつい。絶えず収縮したまま凹凸の一つひとつが、  
くびれた箇所、傘の裏すら舐め取ろうとするかのようにジョニィをぎちぎちと締め付ける。  
下手をしたら痙攣を起こしかねないほど緊張し、それをコントロール出来るほど熟練してもいないホット・パンツに、  
力を抜いて、とジョニィが声をかけ肉厚な尻をさわさわと撫ぜた。  
それを続けろと急かされたふうに感じたのだろう。  
涙まじりの長く切ない息をゆっくり吐き出して、ホット・パンツが腰を浮かせる。  
「ぁああっ・・・・・・」  
「っ・・・・・・」  
 
初めて胎内に受け入れたそれの存在感を確かめるべく浅く上下して、痛みと圧迫感に慣れようとする。  
不器用ながら、動くことでなにか説明しがたい感覚が生じるのを初心な体が捉え、  
それに意識を傾くかというところで、不意にホット・パンツの頭がジャイロに掴まれ横に傾げられる。  
眼前には一物がつきつけられ、口を同じように使えというのかと理解した。  
至近距離で見た男性器は思いのほか不気味な形で嫌悪感を禁じ得なかったが、  
どうせ拒否は出来ないのだろう、と諦観で淀んだ目でジャイロを見上げる。  
その瞳の光のなさにぞくりとしたものを感じ、ジャイロが自身をホット・パンツの口元に押し付けた。  
観念したホット・パンツは上半身をひねってジャイロの方を向き、  
一瞬の吐き気を抑えた後、唇を一杯に開いてそれを口内に収めた。  
 
味と温度と大きさと形とにおいと、秘部よりもずっと鮮明に感じられる雄が嫌で嫌で仕方がなく、  
頬を膨らませて触れる範囲を減らそうとする。  
こんな卑しいことは商売女がすることだ、との先入観も手伝って、  
惨めな気分に浸されながらゆっくりと口を前後させる。  
大した感覚を生まない生ぬるい愛撫であったが、少しは様子を見てやろう、と  
ジャイロはその事務的な働きを見守ることにした。  
 
女が別のことに集中したために手持ち無沙汰になったジョニィが、ホット・パンツの陰核に触れる。  
擦るまでもいかずごく弱く接しただけだとというのに、ホット・パンツは塞がれた唇から悲鳴を上げ、  
体が電撃を受けたように大きく跳ねた。  
不安定な姿勢のために動きづらいなら動かなくても、とジョニィは考えていたが、  
これ以上ないほどに締め付けていた肉壁が一段と狭まるのがいい刺激になるので、  
指は更に包皮から露出したそれをつ、つ、と軽くはじく。  
「あふぁっ!うぅぁあぁっふぁっぁ、ひぅ、ふぅっ!」  
ひくつく膣と同様、舌と口蓋が接触のたびに蠢いて、くぐもった声で鳴く。  
わずかな唇の隙間と鼻とで息を継ごうとしたが、まもなく息苦しさに負けてジャイロから口を離し、  
肩を揺らして乱れた呼吸を整える。  
 
「・・・・・・ジャマしてやるなよ」  
「先にジャマしたのは君じゃないのか?」  
自分に対し何のいたわりもなく交わされる2人の会話が、密かに、だが残酷に、ホット・パンツの心を抉る。  
苦しくて痛くて、もう嫌だ、との何度目かの思いもむなしく、  
再び唇にジャイロ自身が押しあてられ、仕方なく銜える。だがもう奉仕を続ける気力はない。  
ただ手慰みに局所以外にも柔らかく触れるジョニィの両手が異様に優しく思えて、  
そちらのことしか感じたくなかった。  
 
一向に始めようとしないのに煮えを切らしたか、ジャイロが不意にホット・パンツの咽を突いた。  
咽頭が急激に窄まり、濁った悲鳴を上げて逃げようとしたのを髪を掴んで留め、更に二度、三度と繰り返す。  
「あ゛ぁぁっ!ん゛ぁっ!が、んぁっ、あ゛、ぁ、ぁあ、ぁ・・・・・・」  
しばらくは拒絶しようとしたが、抽送ごとに喘ぎは悲痛さを失い、  
少しでも接触を逃れようとしていた舌が力をなくしてはりつく。  
自分で動く屈辱感よりも、強制される苦しさの方がまだよかった。  
触覚と味覚を意識の外にやり、人形にでもなった心地で終わりを待つ。  
慣れるうちにで次第に被虐は苦痛でなくなり、しかし汚いという思いからか、  
先走りの液は唾液と混ざって顎から胸まで落ちた。  
舌と、頬の粘膜、たまに歯が当たり大分具合が良くなったことで、  
その行為を早く、荒々しいものにしたジャイロが低く呻く。  
終わりが近い、それだけは分かったがだからどうされるのかホット・パンツは考えないまま、  
シーツを握った手に力を加え、待ち構える。頭上から何やら言われたがよく聞こえなかった。  
「・・・・・・っっんんんん?!!」  
前ぶれなく(彼女が聞き逃したのだが)、ホット・パンツの頭が一際強く掴まれ、  
その直後口奥に何かが迸るのを感じた。今までの口姦以上に奥に辿り着いたそれを、  
制御できない動きで咽が拒み、弱々しい抵抗を無視して律動的な射精はまだなお続く。  
ひとしきり出し終わり開放されてようやくホット・パンツは口で息をすること、むせ返ることを許され、  
げほげほと掌に精液の一部が落ちた。ここでようやく口内に出されたのだと気付く。  
舌にべっとりとへばりつく味は不快だったが耐えられないほどでもなく、  
また舌根にまで落ちてしまったのをどうしていいかも分からなかったので、  
彼女は諦めてそれを唾液と一緒に飲み込んだ。  
厭な味を掃除するのに夢中で、珍しいものを見る目で見られていることは気にならなかった。  
 
粘着質な汚れが喉を通るのを感じながら、ホット・パンツは奇妙な陶酔状態に落ちた。  
堕落する罪責感も何も既に麻痺し、代わりに、ここまで来ればもう何をされても怖くないという  
歪んだ誇らしさが胸の中に広がっていた。欲情されるのに恐怖したのはいつのことやら、  
どうにでもして、とはっきり自覚することでますます興奮に火がつく。  
もはや退ける理由は何もなくなっていた。  
 
ジョニィの一方の手が、張りのあるの尻肉を軽くつねった。  
じわりとした疼痛でようやく余韻から抜け出して、  
繋がっていたことを思い出したホット・パンツがジョニィに寄り添って覆いかぶさる。  
じんじんと痛み続けていたはずの傷が何か別の熱さを生んでいるのが、不思議な感覚だった。  
どこに触れても、触れられても気持ちがいい。  
本意でなかったはずの触れあいは、いまや彼女本来の欲求であるかのような貪りに変じ、  
双球が平らに潰れるほど体を密着させ、頭を抱いて無造作に頬を寄せる。  
寄せられた柔肌を吸った唇、尻を掴む手に堪らなくなり、「もっと」と小さい響きがこぼれた。  
それに応えて肉に指が食い込み、指間を満たす弾力までも強く挟む。  
「んっ・・・・・・」  
痛みが鈍く後を引いた。苦痛はずのそれが薄れていくのが無性に名残惜しく、知らず甘い声が零れる。  
「こういうの好きなの?」との問いには無言の頷きを返していた。  
 
体をやや起こし、咥えている間片手間になっていた腰の動きを再開した。  
誘導する両手と本能に流されるまま、じゅぷじゅぷ、ぐちゅぐちゅ、音を立ててなすりつける。  
出し入れだけでは飽き足らず、肉壁の下に埋もれる感覚を抉り出そうと、ぐりぐりと円を描いて揺らしまでする。  
貪欲な姿をもう恥じてはおらず、とろけた目で見下ろした先でジョニィと目が合い、その瞳に映る己の媚態に酔った。  
「あっ、あぁんっ、ん、はぁ、ぁ、っん、あぁぁぁっ!」  
眼前でたぷたぷと揺れる胸の先端を、ジョニィがぎゅうっと引っ張った。  
痛いほどの刺激が今はもう快感しか生まず、断続的な嬌声に混じって、乞う言葉が零される。  
「ぁ、もっとぉ・・・・・・、あぁ、あっ、そこぉ、ぃぃ、もっと・・・・・・っ!」  
背を抱いて寄せ、持ち上げた首が何をしようとしているのか、問う必要もなくホット・パンツは乳房を捧げる。  
ちりちりとした熱で痺れた突起に歯が触れ、こすり、ほんの少しの力で食い込んで、浅い絶頂感が脊髄から脳まで駆け抜ける。  
 
割られ、暴かれ、汚され、官能に溶け込んだ痛みが脳を侵したのか。  
それとも彼女の生まれ持った性が目覚めたのか。  
それはもう分からないが、とにかく――――ホット・パンツは確かに、被虐を求めていた。  
自分で動くことでは得られない、無慈悲な侵略を。  
脆弱な入口を傷ごとぐちょぐちょとこすられて、狭い膣腔を大きいものでずりずりと抉られて、  
奥の奥まで、壊れそうなくらいかき回してほしい、と。  
自由に動けないジョニィには望めない乱暴を、手酷く扱われることで代償しようとした。  
ジョニィ自身も悟っているらしく、よさげな場所を手指と歯で責めてどうにか彼女を満足させようとしていた。  
それでも、体の表層を走る快感では深部を犯される代わりにはならない。  
どうすればいいのかホット・パンツに知恵を与えたのは、この状況を作り上げたあの悪夢だった。  
既に記憶は朧になっていたが、夢の中で与えられた暴行が、今まさに求めているものと一致していた。  
 
射精後の倦怠感の薄れつつあるジャイロの方へ首だけで振り返って、ホットパンツが片手で尻肉の間を開いた。  
割り拡げられた厚い陰唇の上でもうひとつの孔が、物欲しげにひくついている。  
「こっちにも・・・・・・入れて・・・・・・」  
 
「・・・・・・オメー実はオカマでしたなんつーオチはねーよな・・・・・・」  
いつもの軽口の調子で放たれた台詞には一種の軽蔑と内心の焦りが覗いていたが、  
それを気にする理性などホット・パンツはとうに失っている。  
自分がどんなに異常なことを乞うているかなど考慮の内でなく、ただ、入らないと困るな、  
ということには気付いて、適当に結合部から粘液をすくった指で窄まりを慣らす。  
孔自体よりも指の方でその場所のきつさを感じ、ここも同時に埋められたらどうなるのか考えて堪らなくなり、  
つぷと指先を内腔に沈めてまさぐる。早く、早く、と声に出しはしないものの、  
とろけた視線を後ろへ送り、弄る指の数を増やす。無意識だが、あまりにも露骨な挑発だった。  
ジャイロが近づくのを感じ、ホット・パンツはうずめた指を広げるようにしてゆっくり引き抜いた。  
多少慣らしたとはいえ侵入を許せるように出来ていないそこを手を添えて広げ、準備する。  
入れるぞ、との言葉を合図に、宛がわれた熱いものがきつく閉じようとする窄まりを抉じ開けた。  
 
「ぁあぁあああぁああっ!!」  
「うぉっ・・・・・・」  
「っく・・・・・・」  
ふたつの狭腔を一度に満たされ。食いちぎらんばかりに括約する輪にしごかれ。一層きつくなった粘膜の筒に巻きつかれ。  
三者ともがかつて経験したことのない快感に声を上げる。  
当然ながら、最も強烈な感覚に苛まれているのはホット・パンツで、  
瞳を潤ませ呼吸すらままならない様子で不規則にしゃくりあげて、まだ動かないで、と  
ジャイロを制して少し落ち着こうとした。  
だが、その言葉を発しようかというときに、辛そうな様を見かねたのかジョニィの掌になだめる様に撫ぜられ、  
何か別の感情で心がはちきれそうになる。  
彼にされることひとつひとつが、して欲しいことになってゆく。  
優しさにほだされ、ホット・パンツは全ての自己防衛を捨てた。  
「ひっっ――」  
二茎の間の肉壁が逃げ場のない力で挟まれ、圧される。  
受け入れることには使えない器官が、無理矢理に押し込まれる痛みと息苦しさ。  
抽き出されるときの排泄感。汚らわしくて恥辱的なのに、逃れることの出来ない原始的な快感。  
それらが休む暇なく交互に与えられ、体と頭がぐちゃぐちゃに掻き乱される。狂ってしまう、とすら感じていた。  
「ひっぅ、ぅああぁあぁっ、んゃっあっあぁっああぁっっ!」  
だのに、腰が勝手に動いていた。自身の意思を超えて体を支配する快楽のみによって  
体を操られがくがくと前後する。がむしゃらな動きにジャイロが合わせてやることで二孔が同時に突き上げられ、  
その度に裏返った音がホット・パンツの喉から溢れた。  
 
「ひぁぁっひぅっ、うぅんっんあぁあぁぁっ!いい、いいよぅっ・・・・・・」  
もはやホット・パンツに人らしさは残っていない。  
内側から食い荒らされることを自ら望んで、己の最奥を2本の杭に押し付ける、  
男の欲望を受けて喘ぐばかりの生きた管。  
下から掴まれた手で腰を揺さぶられ子宮口をごつごつと打つほど、鳴き声はますます獣じみて、垂れ流す液は白く濃く匂う。  
「あひっ、ひいぃっ!ひっぅ、ぅふっ、あぁぁあぁあああっ――!!」  
一際高い嬌声ののち、ふっと脱力しジョニィの上に体重が預けられた。  
激しい恍惚に飲まれ、ホット・パンツの意識が曖昧になる。  
 
 
だがそれは、ほんの一瞬のことだった。  
「んゃ、ひ、ぁ、まだっ、ぁ、そんなぁっっ!」  
浸る暇などなく、抽送が続行される。  
腰を掴む手もホット・パンツの体を無理矢理にでも動かそうと揺すり続ける。  
感度の上がりきった壷は楽しむ余裕すら与えられぬまま、再度彼女の肉体を、絶頂へと追いやった。  
「っっ!!!!ぅ、ぃや、やあぁっ、待っ、ああぁぁっっ!!!」  
それでもなお、責めは止まらなかった。  
普段、取り澄ました顔で女性らしさなど匂わせもしない女の、色情に狂う姿。加虐心と征服感を煽る痴態。  
男たちもまた狂い、どこまで乱せるのか、好奇の念も働き彼女を絶頂へと昇らせ続けた。  
「やめ、ゃ、あぁんっ!やぁっっ――」  
涙と涎と洟が垂れた。  
「ひいっ、ひっ、ぃや、いゃあぁっ」  
体は、不随意的に震えることしかしなくなった。  
「ぅあ、も、ぅ、ゆるしっ、っっ、しんじゃぅ、っ」  
もう言葉は発しなかった。  
「ひっ、ひぃ、ひいぃっ」  
以降は、声ですらなくなった。  
「――・・・っ―!―――・・・!・・・っ・・・」  
 
 
喚くことも出来なくなった女に2人分の精が放たれ解放されたとき、彼女の意識は既に彼方へ飛んでいた。  
 
 
****  
 
 
「は、はっ、ぁふ、ん、んんっっ――」  
手と舌で奉仕する一方で、下は絶えず責められる。  
「っ、あぁ、あぁあっ、ゃああぁあああぁ――」  
達した体にどくどくと注がれ、余韻に漂う。顔に浴びせられたものを、指でぬぐって口へ運ぶ。  
「はぁーーはぁーーはぁーーーー・・・・・・」  
 
 
「・・・・・・結局アレは何だったと思う?攻撃されたとかって言ってた」  
「さーな、何だっていいし、大体もう関係ねーだろ」  
「確かに」  
 
ホット・パンツは未だ、敵の能力から抜け出せずにいた。  
 
 
「もう何日も前のことか」  
 
――問題の夜から1週間、数百キロ離れても効果が続くスタンドがあるとすれば、だが。  
 
「んふぅ・・・・・・」  
味わいつくして、物足りなさそうにため息をつくホット・パンツに、おいで、と声が掛けられる。  
猫のように擦り寄り浮かべる表情は、喜悦と欲情のみが貼りついた人形のそれで。  
情交を繰り返すことで、かつての清楚さ、高潔さはかけらも見られなくなった。  
 
 
「っ・・・・・・ぅ・・・・・・」  
ただ行為後は決まって、2人に見られないところで止め処ない涙を溢れさせていたが――――  
それが何のためなのかは、本人にさえ分からなくなっていた。  
 

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