犬は嫌いだ。 人間にヘーコラする卑屈な態度に虫酸が走る。  
猫も嫌いだ。 こちらを観察するような目つきが気に入らないし、小馬鹿にしているようで生意気だ。  
だが、猫のような女は悪くない。  
 
「DIO様…… 何を考えていらっしゃるのですか?」  
 
豪奢な寝台の傍らにはべる褐色の肌の女が尋ねた。  
DIOの視線が女――マライヤに向けられる。  
 
「お前は猫のようだと考えていた」  
「まあ……」  
 
よく言われますわ、とマライヤは嫣然と微笑んだ。  
猫の姿をしたバステト女神のスタンド名が暗示するように、彼女の琥珀色の眼もしなやかな四肢も  
気まぐれでわがままな性格も猫そのものだ。  
主を持たない野良猫だったマライヤはDIOに見出され、今は彼に飼われる身となっていた。  
DIOがこの美しい雌猫を寝室に招いたのは、褒美を下賜するためだった。  
 
「いつもわたしのため奉仕してくれている礼だ、受け取れ」  
 
DIOは持ち前の芝居気を出してほんの僅かの間時を止め、ショーウィンドウのマネキンのように  
動きを止めたマライヤに、首飾りを手ずから着けてやった。  
寝台の脇の姿見を引き寄せ、何が起きたか分からない様子のマライヤによく見せてやる。  
プラチナ細工の台座にはまった宝石が月の光に輝き、息を呑むほど美しい。  
それはアレキサンドライト・キャッツアイだった。  
カットされた宝石の表面に猫の眼のような輝きが見えるものをキャッツアイと呼ぶが、  
これはその中でもきわめて希少な種類だった。  
光によって色が変わるというアレキサンドライト特有の性質も、いかにも猫の眼に相応しく思える。  
 
「猫の首輪には上等すぎるかも知れないが、おまえの前では色褪せてしまうな」  
「こんな、美しいものを……あたしに?」  
「気に入らんか?」  
「とんでもありませんわ」  
 
この贈り物をマライヤが気に入らないはずが無かった。  
DIOの手から拝領したものなら、例えつまらないガラス玉でも彼女にとってはダイヤ以上の価値があるのだ。  
鏡の中の宝石にうっとり見入るマライヤは、首飾りのほかは薄物一枚しか身に着けていない。  
琥珀色の瞳を歓喜にきらきら輝かせているマライヤの背後からDIOの手が伸び、戯れるようにプラチナの細い鎖を弄った。  
二人の視線が鏡越しに交わる。  
砂漠に沈む夕陽のような色のDIOの瞳、それが今自分だけを映している。  
何人もの男を手玉に取ってきたマライヤだったが、この人間離れした魅力を持つ主に対しては  
まったく小娘のような初心な気持ちになってしまう。  
マライヤはそっとDIOの首に腕を回し、自分の肩越しに唇を重ねた。  
触れ合う唇は徐々に深くなり、互いの舌が絡み合うたびに交合に似た恍惚を覚えた。  
あまりに激しい口付けのせいでDIOの唇にも紅が移り、血で彩ったような艶を帯びる。  
薄いシルクがマライヤの肩から滑り落ち、珈琲色の肌があらわになった。  
彼女の主は猫の毛並みを愛でる手つきでその肌に触れた。  
 
途切れ途切れのかすかな音と吐息が闇に溶けて消える。  
マライヤは主の脚の間に跪き、猫がミルクを舐めるような熱心さで舌技を披露していた。  
貪欲な唇と舌が雄に絡みつき、淫猥な奉仕を延々と続ける。  
口淫を堪能したDIOは赤い唇にたっぷりと精を放ち、マライヤはそれを最後の一滴まできれいに舐め取った。  
いつになく興が乗った様子で、再び咥えて吐精させようとするマライヤを制し  
DIOはせっかくなので彼女に猫のような格好をさせる事にした。  
ひっくり返してシーツの上に四つんばいにさせた姿はなかなかいい眺めで  
高く上げられた形のいい尻に、しなやかな尾がないのが不思議なほどだった。  
犬のように人間に向かって振るためのものではなく、ただ自らの美しさを引き立てるためにある優美な器官。  
あれはなかなか悪くないとDIOは思う。  
 
「DIO様…… もう……お情けを……」  
 
雌猫が催促してくる。  
見事なラインを描く腿の間はもう滴るほど濡れていて、これ以上放っておけば自分の指で拡げかねない。  
DIOは遠慮会釈なく柔らかな肉の間へと押し入った。  
 
「あ、あっ、はぁぁ……!!」  
 
こんな獣が番うような体位で貪られるのはあまり経験が無かったが、今のマライヤは  
どんなに激しくされても足りないほどに昂っていた。  
甘い声を上げて発情したようによがる様は、いつもの驕慢な態度からは想像もつかない。  
いつもならDIOの腰に絡みつくご自慢の脚は、今は大きく開かれてただ自らを支えるだけだった。  
しかし傍から見れば、堪えきれずその脚が震えている様もひどく艶かしい。  
マライヤが揺すぶられる度に、首飾りの鎖も揺れて小さく音を立てた。  
DIOの唇が鎖に沿って首すじをなぞり、かすかな吐息を感じてマライヤの背中が一層熱くなった。  
いっその事そのまま食いついて欲しいとさえ思ったが、その望みはいつも叶わない。  
白いシーツを引き裂かんばかりに爪を立て、もっと奥へと誘う。  
あまりの愉悦にマライヤが口走った場末の娼婦のようにあけすけな台詞に、DIOは唇の端で苦笑した。  
 
「見てみろ」  
 
マライヤは顔を上げて主の言わんとする事をすぐに理解した。  
曇りひとつ無い鏡の中、褐色の肌の女が後ろから貫かれてよがっている。  
先程と同じ場所の大きな姿見に痴態の全てが映されていた。  
さすがの彼女も正視に堪えかねてシーツに顔を埋めようとしたが、それを察した主の逞しい腕が  
マライヤの身体を苦もなく抱え上げ、繋がったまま自分の膝の上に座らせた。  
大きく広げられた見事な脚の間、男のものを深く咥え込んでいる様がまともに眼に入り  
生娘のように恥じらう彼女に主は追い討ちをかける。  
 
「どうして眼をそらす?」  
「あ……いや、いやです、こんな……お許し下さいっ……」  
 
言葉で嬲りながらDIOは無慈悲にマライヤの腰を突き上げ、程よく熟れた粘膜を味わった。  
張り詰めたものが淫らな音を立てて出入りし、奥にごつごつと突き当たる。  
激しい律動に急き立てられ、肉の器がきゅうっと絞られた。  
ゆっくり愉しもうと思っていたのに、自分が乱れる様を見せ付けられて辱められ  
マライヤは呆気ないほどにすぐ気をやってしまった。  
繋がった所から背中にかけて断続的に甘い震えが走り、鏡の中のマライヤも手足を突っ張らせてやがて脱力する。  
その胸の谷間で、一部始終を見つめていた猫の眼が小さく揺れて光った。  
・  
・  
・  
カイロの裏通り、夜の闇にパンプスの靴音が響く。  
しなやかに伸びた脚線美と、フードに隠された憂いの瞳。  
長く伸びた彼女の影に野良猫たちが頭を垂れた。  
彼女の名はマライヤ。  
バステト女神の暗示を持つスタンド使いにして、DIOの忠実なる飼い猫である。  
 
「DIO様、良い報せをお待ち下さい。  
 このマライヤが必ずやジョースターどもを皆殺しにしてみせますわ……」  
 
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