ほんの少しの労力で大量の金と最高の娯楽が得られる……。
DIOという男との契約にはそれだけで非常に満足していたが、まさかこんなチャンスまで手にすることができるとは。
まったく儲けものだと思う。
鋼入りのダンはそれなりに整っている顔とともにその口元を大きく歪めた。
後ろをふり返って、つかず離れずあとを歩く女をそれこそ舐めるように眺めるため、足を止める。
場所は、この辺でいいだろう。
畜生一匹いない荒野。あつらえたように適したところだ。
これからやろうとしていることは、さすがに人混みでするには憚られる。
自分自身の下卑た発想に、込み上げる笑いをこらえた。
「さて……次は何をしようか。なぁ、承子?」
「………」
「おいおい、なんだ……だんまりか?無視するなよ」
上機嫌のダンに話しかけられても承子は無言。
もうこれ以上、付き合っていられない、こんなゲスの顔など見る価値もない
と言わんばかりに極力視界に入らないよう首をそらし続けている。
領収書などという馬鹿なことをしていたために、ダンに裏手で張られ赤くなった頬を気にするそぶりもなく、
じろじろと見られていることにすら気づいていない。じっとあらぬ方向を見ているだけだ。
ただ、その表情は口よりも多弁だった。
すらりとした体躯によく似合う異国の特徴的な長いコートはさきほどの一悶着のせいでうす汚れていて、
それが我慢ならないのか承子のこめかみはずっとヒクついていた。
きりっとした眉と眉の間にも皺がよって、女の顔とは思えないほど鬼気迫るものがある。
黙っていれば最上級なのにな。
ダンは呆れを込めて嘆息したが、一方でこれはこれで良いとも思った。
こういう顔を作り変えるのもまた楽しいものだから。
「もっと可愛らしい顔をしてみろよ。もったいないじゃあないか」
「………」
「無視を、するな」
あくまでも自分を頑なな態度に多少いらついたダンが取った行動は。
承子の前に見せつけるように手をかざすことだった。
怪訝な光をたたえて横目で見る承子にニコリと笑いかける。
残った片手が握るのはナイフ。それをかざした手の平にスッと滑らせた。
「!」
骨ばった手に血が伝って、承子が息をのむ。
ニヤつくダンの動きは止まらない。さらに力を込めて『右手』を切り裂いていく。
切り傷づくりはとても痛かったけれど、それ以上に目の前にいる小娘の反応がダンには心地よかった。
「やめろ…!」
遠くの場所で祖父がどうなっているか。
それを危惧したのか、深い緑の瞳が色を変える。
悲鳴に近い声を出しながら承子はダンからナイフを奪おうとした腕を伸ばした。
それを余裕の笑みで巧みにかわしたダンは自分に寄せられた手首をグッと掴むと、そのまま体ごと引寄せた。
「う…ッ」
「やっと私を見た……そうそう、その驚いた表情は良い。仏頂面よりは可愛げがある」
「……離せ」
「ふん……良い肌をしているなぁ、おまえ」
低い声での威嚇を無視し、掴んでいる手首を指の腹でさすり撫でながら耳元で囁いてやると一瞬だけ体を震わせた。
いつもコートで隠れているからだろう、若さに溢れ張りがある肌は白く、そして触り心地が良い。
この分では他の『場所』にも期待ができそうだ。
瞳に熱のこもった灯りが燈ったダンは知らず舌なめずりをしていた。
その危険な光を放つ両目に映っている承子は逃れることに必死で、捕食者の欲に気づけないようだ。
いや、もしかしたら本能で気づいているからこそ、密着する男から逃れたいのかもしれないが。
「離せッ!」
「ふう……いいだろう」
わざと馬鹿にした溜息をつく。
ぐぐぐ、と腕に力を込め、離れたがっている承子にこたえて手首を解放したダンはその体を突き飛ばした。
とっさのことで受け身も取れず、押されるまま仰向けになった肢体にダンが乗りかかる。
頭を打つことだけは避けた承子が唸っているが気にしない。
「…ぐ……てめぇ…」
「動くなよ、ジジイが死ぬぜ」
嫌らしいセリフに、ダンを押し返すために上がった両腕がピタリと止まる。
やはり自分のスタンドは最高で最強だ。
気を良くしたダンは、両足を使って挟み込むことでまっさきに下半身を押さえつけてから、ゆっくりと顔を近づけていく。
唇が辿り着いた首筋からは、煙草の匂いに混じり爽やかで清楚な石鹸の香りがして、
それに無垢なものを汚す楽しみを感じた。
「できるだけ身を任せることだ、暴れると痛い思いをすることになるぞ。おまえも……おまえのジジイも」
「なにを……あぅ!?」
豊かに育っている胸を男の力でわし掴みにされて、承子の口から声がこぼれる。
それは苦痛のために上がったものだったがダンの中にある嗜虐の部分を存分に刺激した。
だてに女は抱いちゃいないことを教えてやろうと、ダンは強弱をつけてそこを揉み弄くる。
さすがにまだ感じてはいないだろうに、それでも赤らめた頬や厚い唇から洩れる熱い息は目を見張るものがある。
思ったとおり、陳腐な言葉だが、上玉だ。
「や、ぁッ……〜!なにしてやがる……本当に…ッ」
「いいね、その声は。そんな感じで頼むよ」
喉を鳴らし、持っていたナイフで肌を覆っているたった一枚のシャツを器用に裂いていく。
まだ胸を揉みほぐす手とは違い、乱暴さを感じさせないその動きに承子はついていけないようで、まるで石像みたいに固まっていた。
動きやすさを重視したらしいシンプルなデザインのブラジャーも、背に手をまわしてフォックを外してやる。
恋人にするように丁寧な手つき。
これはこの少女の初めて頂くことに対する、ダンなりの礼儀であり、
それは絶対に抵抗されないと分かっているからこそ生まれる紳士的な精神だった。
「くッ……ぅ」
現れた乳房に息を吹きかけ、お決まりのように舌を這わす。
舐めるというよりはそこを押す舌を受け止めるやわらかな弾力と、わずかに感じる汗の味がまたダンを煽る。
むしゃぶるような下品で野蛮なことはしない。
刺激を与えればツンと立ってくる乳首も優しく穏やかに口へ含んで丹念に転がした。
チュウ、と鼓膜を震わせる音。次第に荒くなっていく承子の吐息。
ダンの、すでに熱を孕んでいる下半身の一部がさらに重くなった。
「……ッ」
上半身を剥かれてから、最初にひと声上げただけでそれっきり静かになった承子は、声を出すことが、
たとえそれが罵声でさえ、ダンを喜ばせることになるとようやく分かったのだろう。
今は歯を食いしばっている。吸いつかれ甘く噛まれても小さく体を強張らせるだけ。
動かすことのできない全身を使ってダンを拒絶した。
しかし鋭い眼光を放つその目だけは決して閉じなかった。
「このツケは必ず払ってもらう」という数十分前のセリフがダンの頭に響く。
どこまでも強気になれる承子の精神が好ましい。
やりがいというものは、反発があって生まれるものだ。
さっきから脚の感触を楽しんでいた手を徐々に上へと上げていく。
脚の付けに触れて、その先にあるものを想像し心が躍る。
「ツケ……ね。なるほど、わかったよ。良い思いをさせてもらうそのツケは……」
「……え、」
うごめく手の動きに驚く承子の下着が、しっとりと湿り気を帯びているのを確認する。
どんなに剣があろうとも、やはり女だ。
きちんと手順を追って愛してやれば、どんな相手だろうと濡れる。
醜悪な顔と同じぐらい醜い考えを抱きながら、ダンは数度指を行き来させてから隠された秘所へすんなり侵入した。
信じられないといったふうに承子が目を見開く。
「ツケは、おまえを悦ばせてやることで払おう、か!」
「な……ンぁッあ」
まだ何も受け入れたことのない所へ思いっきり指を突き入れた。
承子は足をビクリとさせ、高く細く鳴いて口を開けた。
それはかすれていてとても小さな叫びだったが、ダンの耳にはしっかり届く。
痛いのか、気持ち良いのか、それとも羞恥による動揺のためか……。
今度はその声が途切れない。
指を奥まで入れてまた引き出すたびに開いて閉じる唇に、我慢することをやめたダンが食らいつく。
温かい中を蹂躙する。奥へと縮こまる舌を吸って絡めとり、逃さない。
口の中で跳ねる喘ぎ声がダンにとっては至高のスパイスになり、
自分の立派に起ちきったものを、ほぐしている最中の承子のそこへ押し付けた。
「ひ、うッ」
経験上、女がもっとも感じるはずの場所を探り見つけ、出し入れさせながら流暢にかつ力強く押す。
瞳で泣かない分を補うように、愛液はこぼれてダンの指を汚していく。
ぐいぐいと責め立ててやると指を締め付けてくる。
それを揶揄してやれば顔を朱に染めて首を振り、なのに指を銜え込むその場所はまたキュウっと締まるのだ。
可愛い反応をしてくれる。
ダンは、組敷く女に早く入れたいと急かす欲と、まだこの瀬戸際を味わいたいという趣向のあいだを行き来して遊んだ。
承子は、封じられた足を必死で動かしもがきながら、迫る男に手を突っぱねて遠ざけようとした。
「おい、承子……何度言えばわかる?」
「アッ…やめ…ろ…!いやだッ」
「動くなと言っただろうが」
自分のスタンドである星の白金を出しかねないほどのパニックを起こしている承子に、
また口付け、上と下で征服していく感覚を楽しむ。
「暴れてはいけないぞ?」
震える頬を撫で、子どもをたしなめるような穏やかさをもって言い聞かせてやる。
今の自分の立場を思い出させるために。
「分かっているだろう」
「ん、んぅ…」
口をふさいで酸素の代りに甘い毒を注いで、高潔な心を鎖で縛っていく。
「私が地面にでも頭をぶつければ、ジジイは簡単に死ぬ……」
「う、ぅ…だめ、だッ」
「おやぁ?『駄目だ』?年長者に対する口のきき方がなってない。もう一度、今度は足でも切ってみるかな」
「ぁ、やめて……そッ…れだけ、は……はぁ、んッん」
お願いやめて。
あの承子の口からこんな殊勝なことが聞けるなんて。懇願されることがこれほどの快感を生むとは。
生まれた今までにない満足感、おかしくて楽しくてダンは大きく笑った。
そのうち下にある体がぐったりとする。
涙を瞳にため、承子は唇を噛んでいた。その端からは濃い口付の名残が垂れている。
嬲られた哀れな姿。
「ふッぅ…ぅ」
「いいぞ……最高にいい!ほぉら見ろ。可愛い顔もできるじゃあないか!」
もう紳士を気取る必要もないだろう……かなり前からそんなもの捨ててはいたが。
いよいよ自分の分身も、限界がきている。承子の濡れているところも求めているはずだ。
食べろと言わんばかりに横たわる獲物を前にして焦る手を、いそいそと股間へもっていった瞬間。
ダンの視界は赤く染まった。