探偵神宮寺三郎 <コバルトの季節の中で>第4章  
 
「雨、やみませんね」  
「ん?ああ」  
 
 俺は振り返り、洋子君の顔を見た。どういうわけだか今日の彼女は艶っぽい。  
 いや、俺も疲れているのか、彼女の事をそんなふうな目で見るなんてな。  
 
「・・・先生」  
「なんだい?」  
「いえ、なんでもありません」  
 
俺はタバコの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・火を消した。  
 
「・・・髪型、変えたんだな」  
「えっ?」  
「いや、なんでもない」  
 
聞こえていないならそれでいい。  
俺は書斎へと続くドアノブに手を掛けた。  
 
「気付いたんだ」  
「?」  
「この事務所も、そしてこの書斎も、俺一人には広すぎる」  
「・・・・・・」  
 
そして、俺と洋子君は狭い部屋で二人きりになった。  
俺は洋子君を力任せに・・・いや、やめとこう。  
そんなつもりで彼女を部屋に招いた訳ではないからな。  
 
「先生、焦らさないで下さい」  
 
洋子・・・  
 
俺の中で何かが溶け始めた。  
それは俺の心を覆う冷たい氷のような・・・  
 
いや・・・  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
ふっ・・・  
気取るのはもうやめだ。  
 
俺は・・・  
 
 
俺は洋子にキスをした。  
 
 
see you in next trouble  
 
 

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