……これは、運が良いと思うべきなのだろうか。
会社の先輩とその場のノリで入ったファッションヘルス。良い値段だがサービスもなかなかだと言ってこの店を紹介してくれた先輩は、どうやら常連客らしい。
慣れた様子でオレのオプションまで決めてくれたが……何を隠そう、オレはこういった店は未経験なのだ。
酔いがさめてきたのか、余計に落ち着かなくなってくる。
「楽しんで来いよ」なんて言って、先輩は先に待合室を出て行ってしまったが……ああ、断れば良かったかもしれない。
正直、モノにはあまり自信があるとは言えないし、誰かと付き合った事もほとんどないし……急にこんな所に連れて来られても……
あ、呼ばれた。
はぁ……行くか……
「リョウコです。よろしくお願いしますね」
「……………」
待合室を出たオレを出迎えた女性を見て、思わず固まってしまった。
美人すぎるのだ。
風俗店で働くなんて、似合わない位に。
薄手の衣裳から伸びる手足はすらりとしていて、スタイルはかなり良い。
恰好だけ見ればそれらしいものの、立ち姿は品があって、それこそ場違いなんじゃないかとさえ思える。
「どうかなさいましたか?」
凝視しすぎたのか、リョウコと名乗った女性は不思議そうにオレに尋ねてきた。
「い、いや、なんでもないです……」
慌てて首を振ると、彼女は少し首を傾げて微笑んだ。
「では、お部屋までご案内します」
そう言ってリョウコさんはオレの一歩前を歩いていく。
一人で緊張している自分が、かなり情けなく思えてきた。
「ここには、初めていらっしゃったんですか?」
すっかりガチガチになっているオレを気遣ってか、リョウコさんが話し掛けてくる。外見と違わない、柔らかい声だった。
「あ、ええ。まあ……」
こんなキレイな女の人と二人きりで会話する事なんて普段ないせいか、上手く言葉を返せない。
これから一時間もの間、ずっとこんな調子だったら、この人呆れるかな……そう思ったら、溜め息が出そうになった。
しかし彼女は、むしろ申し訳なさそうにオレに言う。
「私、経験が浅いので、至らない所があるかもしれませんが……何でも遠慮せずにおっしゃって下さいね」
「は、はあ」
……何と言うか、スレた感じがしない人だ。
笑った顔も態度も清楚だし……こんな人が本当にあんなコトやこんなコトをしてくれるのだろうか。
……落ち着け。まだ早いぞ息子よ。
* * * * *
案内された個室に入ると、まずシャワーを浴びる為に服を脱ぎ始めた。
「では、失礼しますね」
手慣れているとは言えない動作でオレのシャツのボタンを外していく彼女の頬は、少し赤い。さっきも彼女自身が言っていたが、こういう所で働き出してそれほど経っていない為だろうか。
不意に目が合うと、照れたような、困っているような顔で笑う。
これが仕事用の顔なら、彼女は相当の役者だ。もちろん素の笑顔なら、その方が可愛くてイイなんて思う訳だが……
服を全て脱ぎ終える頃には、最初の辺りの緊張はだいぶほぐれたようだった。
しかし、女性の前で素裸になった事などない訳で、膨らみかけている下半身を晒していると思うと、結構恥ずかしい。
リョウコさんの方もやや恥じらいながら服を脱ぎ、オレの服同様に手早くキレイに畳んで籠に入れ、シャワールームへと促した。
「仕事帰りにいらっしゃったんですか?」
お湯の温度を確かめながら、リョウコさんが問い掛けてきた。
「は……ええっ、はい……」
声が裏返ってしまった。
全裸の彼女の体つきは、服を着ていた時に見ても分かったように、完璧だった。細くとも痩せぎすでは決してなく、柔らかそうな肌をしている。
雑誌やAVに出ている女優並と言っても大袈裟でないくらいのプロポーション。形の良い胸に、お尻に……目の保養どころじゃないぞ、これ。
見とれてばかりのオレの今の顔は、相当マヌケなんだろうな。
「どんなお仕事をしてらっしゃるんです?」
足元から少しずつ湯をかけられていく。片方の手で腿やら腰やら撫でられて……気持ち良い。
「普通に、会社員を……」
実につまらない返答になってしまった事を悔やんだが、彼女は気にした様子もなく聞いてくる。
「大変なお仕事だったりするんですか?」
「大変……って訳でも、ないですけど……疲れは、溜まるかな」
お湯を上の方までかけられていくにつれ、リョウコさんの掌がいろんな所を撫でてくる。腹やら胸やら背中やら……
「そうですか……じゃあ」
「い……あっ」
静かな口調のまま、リョウコさんはオレの股間に手を伸ばした。
タマをふにふにと揉まれて手の内側で転がされる。
いきなりでえらく驚いた訳だが、彼女は顔を赤らめながらもさっきと変わらない笑みを浮かべている。
「少しでも楽しんで頂けるように、頑張りますね」
そろそろベッドヘ、と言ってタオルで体を拭いてくるリョウコさんに、やはり間の抜けた返事しか出来なかった。
……意外と、大胆な女性なんだな……
* * * * *
「気になる事とかありましたら、言ってくださいね」
ベッドに横たわると、リョウコさんはそう言ってからオレの首の辺りに軽く口付けてきた。
肩や腕を手でゆっくりさすりながら、鎖骨や胸にそっと唇を這わせて、ぷるぷるした感触を押し付けてくる。
密着してるからか、彼女が動く度にさらさらした髪がくすぐったくて……イイ。かなりイイ。
「あ、あの……」
「はい?」
「キ……キスとか、してもらっても……」
あまりの気持ち良さに、つい調子に乗ってしまった。
「はい」
しかしリョウコさんは嫌そうな素振りをせず、オレの唇に柔らかいそれを重ねてくれた。しかも、頼んでもいないのに舌まで中に入ってくる。
触れるだけのキスすらロクにした事のないこっちとしては、嬉しいを通り越して戸惑いさえした。
湿った音と共にオレの舌に触れては離れ、ねっとりと絡んでくる。
キスの合間にも手を動かす事を忘れていない。人差し指で乳首をくるくると撫でたり、きゅっとつまんだり……ああ、股間が熱い。
うまく息が出来ないオレを気づかって、時々顔を離して息つぎをさせてくれている。その様子を見ていると、さっきまでの不慣れそうな態度が演技だったんじゃないかとさえ思えた。
「ん……はっ……」
「はあっ……ね、ねえ……」
唇が離れたところで、リョウコさんに呼びかけた。息を乱しながら、彼女がオレに目を向ける。
「な……なんか……うまくない? いろいろ」
「ありがとうございます」
はにかみながら彼女は答える。
「経験浅いとか……もしかして、冗談?」
「そんな事は……」
謙遜しながらも、リョウコさんは再び胸の方に口付けしてくる。
「お金を頂いているんですから……ちゃんと気持ち良くなって頂かないと」
にこりと微笑んで、彼女は体へのキスを続ける。
経験云々についてははぐらかされてしまったが、とりあえず真面目な人なのだという事は分かった。
そうこうする内にみぞおち辺りに唇が触れ、遂にその手が我が愚息に伸ばされた。
情けない事に、これまでのリップだけですっかり興奮してしまったようで、もう先っぽがヌルヌルになってしまっている。
「我慢させてしまったみたいですね」
微笑まれてしまった。は、恥ずかしい……
「うあっ……!」
細い指が熱くなったモノに包むように触れ、ゆっくり擦り出した。
裏筋を下から上へと撫でたり、亀頭に滲んだ汁をまとわり付かせたり……やばい、出る、出そう。
自分で慰めるのとは違う感触、温もりが、余計に頭の中を空っぽにしていく。
大して時間が経たない内に息子は音を上げてしまい、溜まっていたものを出して震えた。
いつになくだらしない声を出してイッたような気がするが、気持ち良すぎてどうでもよかった。
体の感覚が戻ってきた頃には、もう汚れた一物は軽く拭かれていて、すっかりしぼんでしまっていた。
……自分でも早かったと思うが、気持ち良かったからいいか。
「……ありがとう。すごく、良かったよ」
力が抜けてへらりとしか笑えないオレを、リョウコさんはちょっと驚いたように見る。
「あら、まだ終わりじゃありませんよ?」
そう言うなり、リョウコさんの手が再び息子に伸びた。フニャチン化したそれを握り、顔を近付けて……
「おうっ……」
まだ震えている先端に、唇が触れた。
体にしてくれたような軽いキスを何度か繰り返しながら、両手で優しく棹をさする。イッたばかりのモノをいたわるような動きがもう、たまらない。
さらに、シャワーの時にしたようにタマの方にまでその手を持っていき、そっと包みこむ。
両手と唇から与えられる刺激と心地よさにひたっている内に、縮んでいたモノは苦もなくさっきまでの硬さを取り戻した。
「元気ですね」
手の動きをゆるめずに、リョウコさんがクスクスと楽しそうに笑う。
仕事だからしっかり取り組んでるっていうか……もしかして、エッチな事が好きなんだろうか?
「リョウコさん、ってさ……彼氏とか、いるの?」
「ん……ふ、ぇ?」
口に含みかけた一物を離し、彼女は不思議そうにまばたきをした。
「いや……いるならやっぱ、こういう事してあげてるのかなって……」
ちょっと思った事を口に出してみると、リョウコさんは苦笑気味に首を振った。
「いたら私、こういう仕事は出来ませんよ」
ちらっと気まずそうな表情が浮かんだように見えた。本当は彼氏、いるのかもしれない。
少しガッカリしたのは内緒だ。
「そうなんだ。こんなにかわいくて上手なのに、もったいないなぁ」
表情の変化に気付かなかった振りをしてオレが言うと、彼女はにこりと笑った。
「フフ、ありがとうございます」
そしてまた唇を広げて一物を咥えこむ。温かくぬめった口の中は、今までに感じた事のないやわらかさでオレのモノを包んでくれている。
「んむ……ふぅ、んんん……」
小さく鼻声をもらし、時々オレの様子を見ながら口を動かしている。キレイな顔がゆがんでいるのが、かえって興奮するな……
リョウコさんが頭を上下に動かすたびに、そのぬめりが触れては離れ、手とはまた違う刺激を与えてくれる。
しかも口の中に入ると、ちゅうっと全体で吸いついてくるのだから、震えが止まらない。気を抜くと、またふぬけた声を出してしまいそうだ。
「もっ、もう……出そ……」
やっとの思いで口にした言葉を聞いてか、リョウコさんの目がオレをちらりと見た。
同時にモノをしごくペースも次第に速くなっていき、彼女の唇からこぼれる湿った音も大きくなってくる。
いやらしい音とジンジンと熱い快感に意識をぐちゃぐちゃにされて、二度目の射精もあっけなくおとずれた。
出してる間もリョウコさんは一物を咥えて離さず、少し苦しそうな顔をしながらも、しっかり飲み込んでくれたようだ。
全部を出し切って満足しきったオレの体は、すっかり脱力しきってしまっている。こんなに良かったのは初めてなのだから、無理もない。
頭の中が真っ白になったオレの耳は、彼女の声をわずかに聞き取るだけで精一杯だった。
「……ごちそうさま、でした」
* * * * *
「終わったか。どうだった?」
店を出ると、待ちわびたような声で先輩がオレを迎えた。
「もう、最高ですよ。誘ってもらえて良かったです」
「だろ?」
入る前は気乗りしていなかったオレをからかうように小突き、先輩は上機嫌に言う。
「新しく入ったコを適当に選んだんだが、当たりだったみたいだな」
経験が浅いってのは本当だったのか。
「適当にって、ひどいなぁ。でも、すごく良いコでしたよ」
「そうか。じゃあ、今度指名してみるかな」
先輩はニヤニヤ笑っている。オレ、毒味役に連れて来られたんだろうな……
それでも十分良い思いをさせてもらったし、とりあえず感謝しておこう。
彼女の笑顔と感触を思い出しながら、にやけそうになるのをこらえた。
……オレ、またこの店に来ようかな。