一日の調査を終えて事務所の前まで辿り着いた頃には、既に日は落ちていた。
明かりの点いた事務所の窓を見上げると、安堵の為か溜め息が零れた。
こんな寒い夜は、洋子君の淹れてくれるコーヒーで暖まるに限る。
早く中に入ろう。
・どうする?
移動する→事務所
事務所へのドアの前まで来ると、中から話し声がするのに気付いた。
何やら談笑しているような声から、それなりに親しい関係の者同士の会話なのだと分かる。
一人は洋子君だろうが、もう一人は……
・どうする?
聞く
「随分…………たまってるんですね……熊野さん。すごく、硬いです」
「………ここ最近は休む間もなかったからのう……じゃあ、よろしく頼むよ」
相手は熊さんか。
……しかし、一体何の話をしているんだ?ここからではよく聞こえないが……
・どうする?
聞く
俺はドアに顔を近付け、耳を澄ませた。
「……うむ……なかなか……上手いな、洋子君……」
「こことか、どうです……?」
「おお………これは……」
「この辺りは………?」
「おっ……その、もう少し横の方を……」
「こう……ですか?」
「あぁ……そんな感じだ……気持ち良いよ、洋子君」
……まさか二人は………そういう関係だったのか?
しかし、わざわざ事務所でしなくても良いだろうに。
………入るに入れないじゃないか………
・どうする?
聞く
……とりあえず、もう少し待ってみよう。
収まったところで中に入れば何も問題ない……そうだ。平静を装っていけば、何も問題はない筈だ。
「……どうです?熊野さん」
「いやぁ……本当に上手だの。たまに娘にやってもらう事もあるんだが、大違いだわい」
「そんな……でも嬉しいです」
……今、何て言った?娘?
まさか、娘さんにまでいかがわしい事をさせているのか……?
「よし、じゃあ今度はワシにもさせてもらおうか?」
「え?いえ、私は……」
「まだ神宮寺君も帰って来んし……のう?」
「でも私、本当に………あっ」
「………どんなもんかの」
「……あ……すごい……」
「じゃろ?」
「そこ……ん……すごく……気持ち良いです……」
………………
これは……時間がかかりそうだな。
何よりこれ以上ここにいたら、二人とまともに顔を合わせる自信が無くなりそうだ。
「かすみ」で少し飲んで来るか……
* * * * *
「……ありがとうございました。お上手なんですね、肩揉み」
「なぁに、洋子君には及ばんよ。やはり書類仕事をしていると、結構凝るもんじゃろう?」
「そうですね。お陰で肩が軽くなりました」
「それにしても遅いのう、神宮寺君」
「ですよね……もうそろそろ戻って来られても良い時間なのに……」