「…う…うぅ……」  
 
身体に何やら奇妙な違和感を覚え、神宮寺は重い瞼をこじ開けた。  
鼻をつく刺激臭…これは薬品の臭いだろうか。全身にのしかかるような倦怠感、靄のかかったような意識と相まり、実に最悪の目覚めだ。そもそも―  
「ここは…何処だ…?」  
体を起こそうと頭を持ち上げると、視界に映った光景に唖然とし、彼は言葉を失くした。  
いつの間にかジャケットが脱がされ、ワイシャツが大きく肌蹴ている。  
だが最も驚くべきは、剥きだしになった胸板に指を這わせる女がいた事だった。  
「あ、お目覚めですか?神宮寺さん」  
化粧っ気のない顔に、少しはねたセミロングの髪。眼鏡に白衣、その下は私服という地味なスタイル。見紛う筈のない、自身の知る中でも一、二を争う“奇妙な”友人。  
「…み…三好…?」  
淀橋署鑑識官、三好志保。それが神宮寺の知る彼女の肩書きであった。  
彼女がいるという事は…  
「ここは…鑑識課か?」  
「頭の方に異常はないみたいですね」  
彼女はそう言うと、神宮寺のシャツの残りのボタンに手をかけた。  
 
「じゃ、ちゃっちゃと始めちゃいましょうか」  
「お、おい…ちょっと待て」  
当たり前の事をするように服を脱がせようとする彼女を制止しようともがくが、体が思うように動かない。  
「待ってくれ…い、意味がわからん」  
「やだなあ神宮寺さん、寝る前に話したじゃないですか」  
「…寝る…前…?」  
「ツケ」  
「ツケ…?」  
まだぼんやりとした頭で記憶の糸を手繰り寄せる。次第につい数時間前の光景が浮かび上がってくるのに任せ、神宮寺はゆっくりと目を閉じた。  
 
 
「ありがとう三好。助かるよ」  
その時、神宮寺は調査に必要な鑑識を三好に頼んでいた。快く応じてくれた彼女だが、この日は何故かやたらと彼を引き止めたがった。  
「お気になさらず。ところで、今は時間とかあります?」  
「仕事中だ。まあもう遅いし、そろそろ帰ろうかと思っていたんだが…」  
「じゃあ大丈夫ですよね。お茶でも飲んでいきませんか?」  
神宮寺は少し驚いて三好を見た。いつの間にやら、彼女は既にティーカップを二つ用意している。  
「珍しいな。そんなに気が利く人間だったか?君は」  
「随分失礼な事言いますね。まあ、どうぞ」  
促され、再び神宮寺は革張りのソファーに腰掛けた。目の前には芳しい湯気を立てた紅茶が置かれた。  
 
 
それからしばらく、奇妙な沈黙が続いた。  
神宮寺は話すような話題もないのでただ黙々と紅茶を啜っていた。三好もやはり同じである。  
「…で、何だ?」  
「はい?」  
しびれを切らし、神宮寺は沈黙を破った。  
「用があるから引き止めたんじゃないのか」  
「…神宮寺さん。この前言ってた事、覚えてます?」  
「ん…?」  
「以前鑑識してあげた時ですよ。一杯おごるって約束してもらった筈なんですけど」  
「…あ」  
そう言われてようやく思い至った。今回と同じく調査に関するものだったのだが、ごたごたしていて約束をすっかり忘れてしまっていたのだ。  
「ちなみに、だいぶ前に鑑識した時の分もツケになってるんですよね」  
「すまん…」  
「という訳で、今日まとめて返してもらっちゃっても良いですか?」  
神宮寺は少し躊躇った。時間がない訳ではないが、今は持ち合わせがあまりない。  
(仕方ない…「かすみ」でツケで飲むか)  
そう思い、三好に向き直った。  
「わかった。仕事はいつ頃終わりそうだ?」  
「あ、別におごりはもう良いんです」  
「……ん?」  
話が噛み合っていない。どういう事かと神宮寺は先を促した。  
「実はですね、ちょっと面白い事を思いつきまして…」  
 
「……」  
神宮寺は彼女の表情を窺った。いつもと同じ、飄々とした様子の三好。だがその口元には意味深な笑みを浮かべている。  
何を考えているのか全く掴めない。嫌な予感がした。  
「…今日はこれで帰らせてもらえないかな」  
「いやいや、まだ何も話してないんですけど」  
「いや…その話はまた今度…」  
 
言いかけ、席を立ったその時だった。  
 
「…っ…?」  
視界が歪み、足が縺れた。すぐさま手を壁に当てて体を支えようとしたが、力が入らずよろよろとソファーに寄り掛かる。  
「な…っ…?」  
口を開いてはみたが、まともに言葉が紡げない。必死で目だけを三好に向けると、彼女がこちらに近付いて来るのが見えた。  
「駄目ですよ、逃げちゃ」  
「…っ……」  
頭が、重い。  
だんだん意識が沈んでいくようだった。その中で、エコーがかかったような彼女の声が響いた。  
「大丈夫ですよ。ちょっと気持ち良くなってもらうだけですから…」  
どういう事だ。  
そう聞く間も与えられず、神宮寺は眩暈と共に望まぬ眠りに誘われていった。  
 
 
「………」  
意識を失う前の事を思い返すと、神宮寺はうっすらと目を開いた。  
「思い出しました?」  
そう問い掛ける三好は、彼のシャツの前を全開にし、ズボンのベルトにまで手をかけていた。思わず顔を片手で覆い、神宮寺は呻いた。  
「…意味が分からん…今の状況とどう関係があるんだ」  
「あ、もしかして最後まで聞いてませんでした?」  
顔に置かれた手を少しずらして三好を見やり、先を促した。  
「体で払って下さいって事ですよ」  
「……は?」  
思わず上半身を跳ね起こした。無理に体を動かした為か、頭が少しぐらつくような感覚を覚えた。  
「実はちょっと面白い薬を入手したんですけど、最近ウチの人、付き合い悪いんですよね。だから代わりにお願いしようかと思いまして」  
「…おい待て…俺は実験台か?」  
「結果的にはそうなっちゃいましたね。でも大丈夫ですよ、害のある薬じゃないみたいですから」  
何とも呑気な物言いに、神宮寺は返す言葉を失くした。  
ともかくここから逃れようと試みるが、やはりまだ体がまともに動かせない。おまけに先程からやたらと熱っぽい。  
 
「往生際が悪いなぁ。悪いようにはしませんよ。それに…」  
三好はズボン越しに神宮寺の陰部を撫で回した。  
それは既に張り詰めていて、ズボンに圧迫されて窮屈そうにしていた。軽く撫でられているだけだというのに全身の熱が増していくのに戸惑い、神宮寺は慌てて彼女の腕を掴み、動きを妨げた。  
「こんなになってる」  
くすりと笑う三好を半ば苛立ちを込めて睨んだ。  
「…三好。さっき言っていた薬というのは…」  
「精力を増強させるサプリメントです。一度や二度イッちゃってもすぐ持ち直す優れものらしいですよ。枯れて淋しくなってる中年男性に今人気の―」  
「…飲ませたのか?俺に」  
講釈を始める彼女を遮るように神宮寺は尋ねた。少しつまらなさそうに息をつきながらも、三好はさらりと答えた。  
「ええ。寝てる間に」  
「…………」  
神宮寺は本日何度目かの重い溜め息をついた。  
「冗談じゃない…なんでよりによってこんな…」  
「良いじゃないですか、減るものじゃあるまいし」  
薬のせいか力があまり込められていない腕をた易く解き、三好はズボンのジッパーを下ろした。そして無造作に下着の中に手を伸ばす。  
 
その内で存在を主張するそれは、彼女の力を殆ど借りるまでもなく、弾けるような勢いで外に顔を出した。  
「うわ…神宮寺さんのっていつもこんなになるんですか?」  
珍しく驚きの声を上げる三好。その顔はどこか楽しそうだ。  
「馬鹿を言え…」  
もはやどうにでもなれ、という様子の神宮寺だったが、正直今までにない自身の昂ぶりに戸惑っていた。どうやら本当にタチの悪い薬を盛られてしまったらしい。  
「じゃ、ちょっと失礼して…」  
「お、おい三好…くっ…」  
言うが早いか、三好はそそり立った肉棒に舌を伸ばした。亀頭の縁をなぞるように舌先で撫で、指先で側面に触れる。  
三好は舌の平でゆっくりと表皮を舐め上げ、そこに手を添え、上下に擦り始めた。  
既に鈴口は先走りの液を出しており、塗り付けられる唾液と混じりあってペニスを弄る動きを滑らかなものにしていた。  
「っ…くうっ…」  
未だ自由にならない身体の内から込み上げる快感を抑え込もうと、神宮寺は歯を食い縛って堪えている。  
その様子を目だけで窺うと、三好は口を大きく開き、男根の先端を包み込んだ。そして舌先を鈴口にぐりぐりと押し当てた。その大胆な愛撫に、神宮寺は堪らず喉を反らし、荒い息を吐き出す。  
 
「…っ…はぁ!!…ぐっ…」  
亀頭だけを唇で挟み込み、そこより下は掌全体で扱かれる。下から上へ、尿道が圧迫され、痛みにも似た快楽が彼を襲う。  
このまま続けられたらおかしくなってしまうのではないか。意識が淫欲に流されそうになる中、神宮寺は震える声で言葉を紡いだ。  
「け…警察の人間が…くっ、こんな事をして、良いのか…?」  
三好は手を止めぬまま、亀頭から唇を離した。伸ばされたままの舌からたらりと液が零れるさまに、心を奪われてしまいそうだった。  
「んっ…大丈夫ですよ、非合法な薬じゃありませんから」  
口内に残る唾液と混じった淫液を飲み込んで、三好は答えた。相変わらずその手は彼自身を快楽の虜にしようと上下に動いている。  
「そ、そういう問題じゃなく…」  
「あ、人払いもしてありますから御心配なく。でも声は漏れちゃいますから、大声上げないで下さいね」  
それだけ言うと、彼女は再び肉棒に口をつけた。今度は喉の奥に押し込むようにペニス全体をその口に包み込んだ。同時に手を袋の方に伸ばし、ゆっくりと擦り始めた。  
「…っ…ぐう…!!」  
 
再開された愛撫に意識を捕われ、神宮寺はソファーに爪を立てて呻いた。  
咽せてしまいそうになる程奥まで受け入れては、ずるずると音を立てながら先端を外に出し、また飲み込む。  
その度に男根に吸い付くように唾液を絡み付かせ、口内を犯させる。  
舌と口内とで肉棒を扱きながら、袋を弄る手の動きも次第に激しくなっていった。摩るような優しいものから、五指で感触を味わうようにやわやわと揉みしだく淫靡な動きへ。  
「…み、三好…これ以上は…っ、もう…」  
神宮寺は僅かに残る理性を掻き集めて懇願した。限界まで膨張した彼自身を抑え込める程、盛られた薬の効果は甘いものではなかった。  
三好は今まで見た事のない彼の心底弱り切った様子を見ると、上下に振っていた頭の動きを止め、ペニスを解放した。強制的な快感の波から漸く逃れ、神宮寺は思わず安堵した。だが―  
「気持ち良くなってもらうって言ったでしょ?」  
そう言うと、三好はまたペニスを口に含んだ。先程よりも勢いをつけて、より奥の方まで。  
「…つっ…ぐ!!」  
声もまともに上げられぬまま、神宮寺は彼女の口内で達した。押し殺した呻きと共に身体が一瞬硬直し、びくびくと震える。  
 
口腔で爆ぜた彼自身の先端から、まるで水鉄砲のような勢いでスペルマがぶち撒けられる。粘ついたそれは断続的に吹き出して三好の口内を汚していたが、暴れ回る肉棒が収まりきらず唇から抜け落ち、彼女の顔にまでかかった。  
「んっ…けほっ、あは…凄い…」  
眼鏡にかかり、視界を遮る精液を拭いながら三好は軽く笑った。口元から垂れている混合液を舌と指とで拭い取ると、まだ微かに震えている男根に顔を近付ける。  
「…くっ…ああ…」  
絶頂の余韻に浸っていた彼を、更なる快感が襲った。三好が少し萎えた男根に舌を伸ばしたのだ。  
淫液に濡れた側面を拭き取るように舐め、ついばむように口付ける。更に鈴口を舌先で押し開き、尿道に残る精液を吸い出す。  
達した快感もまだ止まぬというのに、彼自身は再び屹立した状態に戻されていた。三好はそれを見て満足気に笑うと、愛撫の手を止め、自身のブラウスに手をかけ始めた。  
「凄い量…神宮寺さん、結構溜まってるんですね。薬の効力だけとは思えませんよ?」  
「…はあっ…はぁ…」  
からかうように声を掛けられたが、反論する余裕すらなかった。  
ブラウスのボタンを一つ一つ外していく三好。その内側から飾り気のない肌着が垣間見える。  
 
「ま、まだするのか…?」  
うんざりというように首を振る神宮寺。  
「勿論。というか、最後までしないと収まらないでしょ?」  
自身のズボンと下着を脱ぎ捨て、どこか妖艶さを感じさせる笑みを零し、三好はソファーに身を預けたままの神宮寺の下半身に下肢を乗せた。白く細い腿が彼の両膝の上で広がり、腰を挟み込むようにして膝立ちで固定される。  
「………」  
「どうしました?」  
「…いや…」  
神宮寺は何となく気恥ずかしくなって目の前にあるものから視線を外した。  
座位の体勢になった彼の目線は、三好の胸の辺りに位置する。お陰で昂ぶる欲望は一向に鎮まる気配を見せない。  
更に問題なのは彼女の格好である。下半分を覆うものは全て取り去っているが、上半身は白衣を纏ったままで、その下の衣服が肌蹴て中の柔肌が見え隠れするというスタイル。ある意味全裸よりも扇情的なものだった。  
「たまにはこういう感じでするのも良いかなって…あ、全部脱いだ方が良いですか?」  
見下ろすにようにして問う彼女の吐息が額にかかった。些細なきっかけで決壊しそうな理性の壁を支えるのに必死で、神宮寺は言葉を選ぶ暇さえ与えられない。  
 
「す、好きにしてくれ…」  
「じゃあ挿れますね。このままの状態でいるの、結構キツいんで」  
早く終わらせてしまいたいという思いから出た言葉を別の意味にとったのか、彼女は微笑みながらゆっくりと腰を落としていく。  
重力に従ってずぶずぶと音を立てて肉杭を沈み込ませていく泥濘。  
包まれるような締め付けられるような感覚に体を震わせながら、神宮寺は三好が自身を飲み込んでいく様子を見ていた。  
「…んっ…」  
三好の腰が完全に落とし込まれて互いの茂みが交わる程触れ合うと、またゆっくりと腰が持ち上げられ、彼女の体液に湿った肉棒が姿を現す。そして再びそれを柔らかな肉襞の中に閉じ込め、その感触を味わう。  
「くっ…ううぅ…」  
苦しげに呻く神宮寺を余所に、下降しては持ち上がる秘唇はいきり勃った男根を焦らすように緩やかに蠢いている。いっそ自分で腰を動かして奥まで貫いてしまいたいと思わせる程に。  
本能に押し負けそうになっている彼の意識を見透かしたように、三好は腰を回転させるようにして膣壁をペニスに擦りつける。更に動きはそのままに、白衣の左右を外側に開いてブラの中の胸を開放し、彼の獣欲に火をつけようと試みた。  
 
「んっ、ふふっ…そろそろ、我慢出来なくなってきたんじゃ…ないですかぁ?」  
「…ぐっ、ううっ…は…」  
身体を動かす度に鼻の先で揺れる白い双丘、そして固まりかけた淫液に汚れたままの笑みに誘われ、彼は自身の中の箍が外れたのを感じた。  
ソファーを掴んでいた両手で彼女の尻肉をがっしりと押さえ、下から勢いをつけて打ち込みを始める。  
「あっ!?あっ、はぁっ、ああっ!」  
噴き出した淫欲に任せて肉棒を突き込み続けていると、今まで辛抱していた事さえどうでも良くなり、ただ目の前の女を味わう事に夢中になってしまっていた。  
「あっ、んんっ!ふ…ふふっ…」  
漸く落ちた神宮寺を見て愉悦の笑みを浮かべながら、三好は舐めるように頬に口付け、彼の胸板に自身の硬くなりつつある乳頭を擦りつけた。  
先程顔射してしまった汚液の張り付いた頬が触れるのも構わず、神宮寺は三好の口内を貪り、尻に添えていた手を離し、胸の感触を味わった。  
「んっ…ぐっ、くうぅっ!!」  
やがて昇り詰めた二度目の頂きで、神宮寺は膣内を灼くような射精を彼女に施した。つい先程達したばかりとは思えないような量の白濁液が、三好の秘孔を汚していく。  
 
「んぁ…はあっ、凄い…たくさん、出てる…」  
白くフリーズした頭にぼんやりと三好の声が届く中、また自身が力を取り戻そうとしているのを感じていた…  
 
 
「なかなか…楽しませてもらいましたよ、神宮寺さん」  
行為の余韻も冷めた後、三好は実に満足そうに笑った。  
あの後彼女上位である事は変わらずも、別の体位での行為に及び、神宮寺は何度も絶頂感を味わわされた。  
薬の効果を試せた上に、彼女自身も充分官能を味わったようで、漸く解放してもらえる事となった。  
「………」  
実に嬉しそうな彼女とは裏腹に、神宮寺はげんなりとした顔でソファーに寝転んでいた。薬の効果は切れたようだが、まともに足腰が立つ状態ではなかった。  
調査の事も何もかも忘れて休みたい。心底そう思ったのは、実に久々の事であった。  
「何です?不満そうな顔して」  
三好の方は殆ど疲れた様子でもなく、いつもの飄々とした顔で汚れた床やテーブルを拭いている。  
行為の前に「ウチの人」がどうとか言っていたが、まさか自分の旦那ともこんな事をしているのだろうか。  
 
そう思うと、彼は会った事もない彼女の夫に対して同情の念を覚えた。  
もっとも、行為に没頭していた自分がいたのも確かなので、罪悪感の方が先に立ってしまうのだが…  
 
鬱々とした気分を紛らわせたくてジッポと煙草を取り出しかけた。  
だがよく考えてみれば、今まで三好の前で煙草を吸って、苦言が一つも出なかった事があっただろうか。  
先程とは別の意味で疲れるのは明らかと判断し、ポケットに煙草を戻そうとすると、その奥からきつい色みのライターが零れ落ちた。それを目にした三好の顔色が変わる。  
「……!これ、ボクサツ君ライターじゃないですか!!」  
「ん…?ボクサツ…?」  
何とも物騒な名前のその犬は、毒々しいピンクのライターの表面で、両手にバットを持ち、可愛いのか何なのかよく分からない笑みを浮かべている。  
調査中に立ち寄った店で何とは無しに購入した物だったのだが、使い道もなくてポケットに入れっぱなしになっていたのだった。  
三好は目をキラキラと輝かせてこの珍妙なキャラクターを見つめている。  
 
「気に入ったなら…」  
その熱視線に押し負けて…という訳でもないが元々必要のない物だったので、ライターを持った手を彼女の前に差し出した。  
「えっ!?うそ、良いんですか?」  
などと言いつつ、引ったくるような勢いで受け取る三好。その目は「ボクサツ君」に釘付けだ。  
「うわぁ、どうしよう、これは何かお返しでもしないと…」  
呟きながら、ライターに頬ずりしている三好。  
 
まあ、喜んでいるなら良いか…  
神宮寺はそう思い、何となく安堵したような気分になっていた。が…  
「あ、じゃあ神宮寺さん。今度は私が体で払うっていう事で…」  
「……遠慮しておこう」  
 
…彼女にはあまり貸し借りを作らない方が良さそうだ。  
神宮寺はそんな事を思いながら、まだまともに動かぬ腰を摩るのだった。  
 

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