いつからこんな形になってしまったのだろう  
 
何処で私達は行き違えたのだろう  
 
想い合えた時は、確かにあった筈なのに  
 
どうして こんな風に  
 
 
「もう帰るのか?」  
服を着て帰り支度を始める洋子に、『彼』は名残惜しそうに声を掛けた。  
「うん…課題も残ってるし」  
膝にかけていたブランケットを脇に除け、『彼』は上半身裸のままで洋子の腰に腕を回す。背にぴたりと寄せられる心地よい温もりに、彼女の顔が綻んだ。  
「あんまり根を詰め過ぎるなよ」  
耳元に囁かれる声が吐息混じりでむず痒く、洋子は思わず身を捩じらせた。  
「フフ、平気よ。それより…」  
『彼』の少し血色の悪い頬に触れる。  
「大丈夫?ちゃんと眠れてるの?」  
ここしばらくの間で、随分ひどくなったような気がする。  
「あぁ…」  
「仕事…大変なの…?」  
「心配ないよ…」  
素っ気なく答えると、『彼』は不機嫌そうに顔を背けてしまった。  
 
いつも、そうだった。  
仕事の事を尋ねると、『彼』は気を悪くしてしまう。言いたくないのなら無理に教えてくれなくても良かったが、不安だった。  
彼女には、『彼』がその仕事の事で辛い思いをしているように見えていたから。  
 
怪我をして帰って来る事も少なくなかった。けして『彼』を信頼していない訳ではなかったが、危ない事に首を突っ込んでいるのなら、どうにかして救い出したかった。  
 
「なあ」  
不意に身体を離し、『彼』は床に放られていた衣服に腕を通し始めた。  
「何?」  
ブラウスのボタンをかけ終え、『彼』の言葉を待った。声の響きに怒気が孕まれていないのに気付き、洋子は安堵した。  
「今度、家に来ないか?その…実家の方にさ」  
少し驚いて振り向くと、優しい笑みを浮かべた『彼』が見つめている。  
「きっと、洋子なら気に入ってもらえると思うから」  
「……」  
洋子は何も言わずに頷いた。これ以上ない程幸福そうな笑みを浮かべたまま。  
 
 
「ずっと一緒に」と言ってくれた時の『彼』の眼を、洋子は今でも鮮明に思い出せる。  
 
少し照れたような、それでも彼女に真っ直ぐ向けられた眼差し。  
 
自分は求めた人に必要とされている。ただそれだけで、嬉しかった。  
慣れぬ異国の地で出逢えた、愛しい人。孤独を取り去ってくれる人。  
寄り添っていたい。支えていたい。  
 
―ただ、それだけだったのに  
 
「会わせたい人がいるんだ」  
その日、『彼』はそう言って洋子を自宅に呼んだ。翌日が休日という事もあって泊まって行くように言われたのだが、どうにも不安で仕方なかった。  
近頃の『彼』はどこかおかしかった。急に怒り出したかと思うと、驚く程落ち込んだり、いつも何かに追い立てられているかのように眼をさまよわせている。話をしていても噛み合わなかったり、記憶が不明瞭だったりして、常に不安定なのが見てとれた。  
加えて、身体を重ねる回数も日に日に増していた。乱暴に、喰らい尽くすように求めてくる『彼』を受け入れつつも、洋子は次第に恐れるようになっていった。  
 
だが不思議な事に、この日の夜の『彼』は何も手を出してはこなかった。  
落ち着かない様子は相変わらずではあったが、平常通りを装っているようだった。  
それでも洋子は心配で、会わせたい人とは誰なのかなど、さりげなく尋ねてはみたが、『彼』は曖昧な返事をするばかりでまともな答は得られなかった。  
 
 
不安ばかりが募る夜を越えたその朝に迎える事になる絶望を、この時の彼女はまだ知らなかった。  
 
 
目覚めかけた時、最初に聞こえてきたのは含んだような笑い声だった。  
一人ではない、複数の男性の、少し耳障りな声。  
ぼんやりとした頭でそんな事を考えていると、不意に顎を持ち上げられ、洋子の意識は一気に目覚めた。  
「へぇ…なかなか可愛い顔してるねぇ」  
よく知る『彼』の声ではなかった。まだぼやける眼をしばたたいて目の前の男の顔を確かめる。  
短く刈られた頭。こけた顔に相応しい痩せぎすな体躯。どう見ても初見の人物だった。  
「お姫様はお目覚めかい?」  
別の場所からからかうような声を掛けられた。こちらはがっしりとした体格でありながら、不健康そうな青黒い顔をした男。やはり初めて見る顔だ。  
会わせたい人物とはこの人達だろうか。寝起きの姿を見られた事に恥じらいつつも、問い掛けようとして気付いた。  
 
―起き上がれない  
 
洋子は慌てて身体を動かそうとしたが、両の腕を頭の上に回され、紐のような物で固く縛られていた。焦る彼女を見た男達の笑い声が大きくなる。  
 
「あ、あの…これ、何なんですか?彼は…彼は何処に―」  
「黙ってなよ」  
有無を言わせぬ語気で彼女を制したのは、髪の長い、またもや見知らぬ男。冷淡そうな目が、逆らうなと無言の圧力をかけている。  
「!!」  
痩せた男が寝着の襟に手をかけ、力任せに脱がせ始めた。勢い余って幾つかボタンが引きちぎられる。  
「あっ、や…何するんですか!」  
胸に伸ばされる手から逃れようと身を捩じる彼女を押さえ込みながら、顔色の悪い男が嘲笑った。  
「何だ、聞いてないのか。アンタ、アイツに売られたんだよ」  
「…え…」  
男は顎で部屋の隅を見るよう促した。  
 
洋子が視線を移した先には、『彼』がいた。昏く虚ろな眼をした『彼』の顔は腫れ上がり、所々に血がこびりついているのが分かる。  
「…どうしたの?…その怪我…」  
『彼』はゆらりと立ち上がり、こちらへと向かってきた。  
「…もしかして…それ…この人達に―」  
「黙れよ」  
言葉が遮られると同時に、頬を張られ、鋭い痛みが走った。洋子が信じられないものを見るように『彼』を見つめていると、そんな彼女を息も荒々しく見下ろしたまま、こう言い放った。  
 
「お前…今日一日この人達に抱かれろ」  
 
「………!!」  
 
―胸が 軋んだ  
 
「そういう約束なんだ」  
 
―何を言っているのか 分からない  
 
男達は再び手を動かし始めた。下着がた易く剥ぎ取られ、形の良い胸が晒け出される。洋子は俯せになって隠そうとしたが、二人の男の腕からは逃れられなかった。  
「逃げようなんて思うなよ。これ以上コイツを見られない顔にしたくなけりゃあな」  
先程彼女を制した男が『彼』に近寄りながら言った。男の懐から何かが取り出され、『彼』に手渡される。『彼』は引ったくるようにしてそれを受け取ると、キッチンの方へ姿を消した。  
「ま、待って…うっ…」  
その間にも男達は洋子の身体を貧り出していた。柔らかな乳房を力任せに愛撫し、細い二の腕に舌を這わせ、首筋に軽く歯を立てては赤い痕を残す。  
「んっ…つぅ…」  
半身を起こされ、背筋を掌と舌が撫で回している。生き物が這いずっているような不快感に、彼女は身を震わせた。  
 
―逃げ出したい  
 
けど 逃げられない  
 
「嫌…」  
自ずと拒絶の言葉が零れた。決して受け入れられる事のない願いだと分かっていても。  
 
「ここの女よか小さいが…綺麗な色してるねえ〜」  
言いながら、男の一人が乳首に吸い付いている。舌でびちゃびちゃと音を立てて転がす口元に、品の無い笑みを浮かばせて。  
「心配すんなよ、壊したりしねぇから」  
もう一人の方がウエストの感触を楽しみながら、ズボンをショーツもろとも強引に脱がせる。一気に露わになった自身を隠そうと、洋子は足を閉じ、抵抗した。  
「何隠してんだよ」  
胸を弄っていた男が乳房に強く歯を立てた。  
「あっ!」  
痛みに声を上げる彼女を嘲笑いながら、男が大きな身体を下肢に割り込ませてくる。  
「ジャップのここは黒いんだな…」  
ひどく卑猥な事を言われて涙が込み上げてくるのを堪えながら、洋子は思い切って問い掛けた。  
「…売られた…って…どういう事なんですか…?」  
自分でも信じ難い程、声が震えていた。  
「ヤクが切れちまったんだよ」  
行為に夢中になっている男達を黙って見ていた長髪の男が口を開いた。  
「ヤク…?っ…んうぅっ…」  
洋子は更に問おうとするが、言葉が続かない。秘所に太い指が差し込まれて中で暴れ回っている。  
「買いたいっつうんだけど金が足りなかったからさ」  
言いながら、男はベッドに歩み寄って行く。  
 
胸にむしゃぶりついている男の力が増した。硬くなってきた突起だけでなく、乳房をも唾液で濡らし始めている。  
「あ…やあぁ…うっ…んんんっ!」  
声が大きくなってきた洋子の口を、ベッドの端に立った男が噛み付くように塞いだ。  
ねっとりとした感触の舌が柔らかな唇を舐め回し、口内に侵入しようとしている。歯を食い縛って耐えていると、男は力を抜いて顔を離し、笑いながら言葉を続けた。  
「言っとくけど、あっちから言い出したんだぜ?女を一日好きにして良いから薬をくれって。だからさ…」  
男の笑みが凍った。そして次の瞬間―  
 
「んぐっ!!」  
両頬を掴まれ、男の唇が押し付けられた。先程よりも激しく、濃密に。  
不意を突かれた為、舌の動きを防げなかった。男の唾液が口内に流し込まれ、彼女の舌にまとわりついてくる。拒もうとすれば口端から互いの唾液が混ざり合ったものが垂れ出し、そのさまは一層淫らなものとなった。  
「ぷはっ!…はー…はあぁ…」  
漸く唇を解放され、息を整えようとする。だがその目の前で舌舐めずりしながら男が怒鳴った。  
「お前今日は俺らのモンなんだよ!分かるか!?今度逆らうような真似したらアイツの面の皮剥がすぞコラァ!!」  
洋子の眼が大きく見開かれた。  
 
怖かった。  
この男達も、『彼』も。  
 
それでも―  
 
「……めて…」  
「ああ?」  
「…やめて…下さ…い…」  
傷つけないで。  
 
「…もう…逆らいません…から…だから…彼は…」  
 
何でもするから―  
 
「…よし」  
男は笑みを浮かべ、ベッドの上の男達に続きを促した。彼等が再び行為に没頭し出したのを見て、洋子は溢れ出す涙を止められなかった。  
 
「うっ、く…んん…や…」  
「おお…結構濡れてきたな…感じてんじゃん」  
秘部を掻き回していた男が指を引き抜き、洋子の顔の前に出して見せる。  
執拗に責め立てる男の愛撫は、確実に彼女の身体に快感を刷り込んでいた。  
洋子が自身から湧き出た淫液から目を逸らすと、男はその忌まわしい手を涙に濡れた頬に擦り付ける。  
「や…あぁ…嫌ぁっ…!」  
「おいおい…自分で出したモンだろう?」  
「おいお前ら、そろそろ突っ込んでやったらどうだ。時間が限られてんだからな」  
見ていた男が焦れたように急かした。  
「そう言うんならお前もやりゃあ良いじゃねーか」  
秘所から身を離した男は、洋子の口に愛液に塗れた指を突っ込みながら愚痴を零した。  
「俺は騒がなくなった奴をヤるのが好きなんだよ」  
「へいへい。先俺で良いか?」  
乳房をこね回していた痩せた男がジッパーを下ろした。  
「あっ!てめ、中濡らしてやったの俺だろうがよ」  
「お前のはデカいんだから後の方が良いだろ。先、口使ってもらえよ…」  
言いながら洋子の身体を押し倒し、濡れた秘唇にそそり立った肉棒を押し込んでいく。  
狭い膣口が拡がり、洋子はとうとう望まぬ男性を受け入れてしまった。  
「いっ…ああっ…嫌あぁっ!」  
 
頻繁な『彼』との行為でいくらか慣れてきているとは言え、自身を開かれる苦痛と屈辱に叫びを抑えられない。  
ぎゅっと目を閉じて声を押し殺そうとしていると、顔を何か生暖かい物で軽く叩かれた。  
「目を開けなよ」  
野太い男の声におずおずと見開かれた彼女の目の前には、赤黒く見るからにグロテスクな物体が晒されていた。  
内側が何かで満たされたように膨れ上がりびくびくと震えているそれが、今まさに自分を犯しているのと同じ物なのだと察し、洋子は必死で目を背けた。  
「…っ……!!」  
「見ろって」  
男は彼女の顎を押さえ、口元に亀頭を押し付けた。異臭が鼻をつき、先走りの液が唇を汚す。  
律動の痛みに苛まれながらも、声を出さないようにきゅっと唇に力を込める。口を開けたら、汚される。  
「自分の状況分かってんのか?彼氏が見てんぜ、ほら」  
その言葉にはっとして目を開けると、いつの間にか壁脇に『彼』が座り込んでいる。  
泥のように濁っていながらも、ぎらぎらとした眼で洋子の痴態を見つめていた。  
「あ…やぁっ…!見な、いで…―んむっ!」  
羞恥のあまりに泣き叫びそうになった口にすかさずペニスが侵入する。  
 
「んっ!んふぅ、んーー!!」  
「歯は立てんなよ、ちゃんと舌も使ってしごきな」  
男は彼女の温かい口内を掻き回すように自身を動かし、唾液を肉棒全体にまとわり付かせた。  
「んうっ、んぐ…ふぅ!んっ…」  
口と秘部から響く淫猥な水音。息もつかせぬ圧迫感。  
そして何より、愛しい人に惨めな姿を晒す事に対する耐え難い悲しみが、洋子の心に痛ましい亀裂を作る。  
「はっ…凄い締め付けじゃん…うっ…なあ、姉ちゃん…このままイッちまうかい?」  
「ふっ…んーぅ…んぐんんっ…!!」  
痩せた男が耳穴をべちゃべちゃと唾液で汚しながら囁く。首を降って否定しようともがくが、がっしりと頭を掴まれて上手くいかない。  
思う通りに舌を動かさない洋子に業を煮やしたのか、男根で口腔を味わっていた男は掴んでいた頭を前後に動かし始めた。  
激しい摩擦により淫音は大きくなり、根元まで押し込む度に唾液が飛び散る。  
あまりの苦しさに思い切り息を吸い込むと、生々しい臭気が鼻腔を刺激し、むせ返りそうになった。  
 
「へっ、へっ…おい、そろそろイクぜ…口いっぱいに出してやるからな……ぐおっ!!」  
「んっ、ぐっ!!」  
口の中で肉棒が一瞬びくりと震え、生臭く粘ついた液体が湧き出てきた。  
そのおぞましい感触に、洋子は必死に押さえ付ける腕を振り解こうとするが、男の腕は一向に力を緩めないばかりか、もう一方の手で鼻を摘み、息を塞いだ。  
「ん、んぶっ!?んぐぅっ…んー、ん…!!」  
こうされては成す術もなく、男の淫液を嚥下していく。喉を通して伝わる何とも不快な感覚に、洋子は何度も嘔吐いた。  
「おおぅ…こっちも出すぜ…くっ…そらよぉっ!」  
「ぐっ!んーっ、んんっー…!」  
口内に続き、膣内を犯していた男も限界まで昂ぶった自身の欲望を吐き出す。  
断続的に噴き出し、体内を容赦なく侵食する熱い男汁を受け止めながら、洋子は汚れた自分をまざまざと思い知らされた。  
 
漸く唇と秘部を解放されると、洋子は激しく咳き込んだ。  
「ぐっ!ゴホッ、ゲホッ…けほ…」  
「何だよ、まだ残ってるじゃねーか。ちゃんと全部飲みな」  
飲み込みきれず顎を伝う白濁液を指で口腔に押し戻しながら、男は笑った。  
 
朦朧とした瞳に涙を浮かべながらも、未だ消えずにいる理性にしがみつくように呼吸を整えようとしている洋子を、男達は面白がってさえいるようだった。  
「はあっ…はぁ、はぁ…」  
「なかなか折れないねぇ…んじゃあ…」  
痩せた男は思いついたように笑った。その笑みがひどく禍々しいものに見えて、洋子は背筋を震わせた。  
「こっちはどうかな?」  
男はそう言って洋子の身体を俯せにし、指を後孔に突き立てた。思いもしない恥辱に、たちまち洋子の心は悲鳴を上げる。  
「やっ、やあっ!そんな所…ああぁっ!」  
「お、こっちは初めてか。いい声出すじゃねえの」  
悲嘆の声に、男達は愉悦の笑みを零した。  
秘所から垂れた精液と愛液によって濡れそぼったアヌスに指を押し込むのはた易かったが、そこは侵入を拒むようにきつく閉ざされている。  
だが男は抉るように掻き回し、着実に恥孔を開いていく。  
始めは裂けてしまいそうな痛みにもがいていたが、出し入れされる指の動きに快感にも似た奇妙な感覚を覚え、洋子は益々羞恥の涙を流す。  
「あっ…あうっ…い、やぁ…そこは…やめ…」  
 
「嫌な割には随分気持ち良さそうだ」  
眺めてばかりで飽きたのか、長髪の男が声を掛けてきた。  
「あぁ…ちが…違い…ま…はあぁぁっ…」  
否定しようとするが、肛悦に言葉が押し流されてしまう。  
「恋人が見てるってのに凄い乱れようだ…もしかしていつもこんな調子なのかい?」  
男は『彼』を一瞥して言った。洋子は言葉も口に出来ずにただただ首を振っている。  
「なあ、なんか言ってやったらどうだ?」  
『彼』はそうけしかけられると、のろのろと立ち上がり、ベッドの前に近付いた。  
洋子は汚されてしまった自分の姿を見られたくなくて、『彼』から目を逸らした。だが、  
「おら、彼氏の顔見てやんな」  
フェラチオをさせていた男に髪を引っ張られ、無理矢理『彼』を直視させられた。  
苦痛と恥辱、そして快楽に潤んだ悲しげな彼女の眼に対して、それを見下ろす『彼』の眼は、何故か悦んでいるようにも見えた。  
「…感じてんのか?」  
『彼』が問い掛けてくる。洋子は即座に首を横に振った。しかし依然止む事のない肛辱に、よがる声を抑えられない。  
「いっ、はぁ…ひんっ…あぁ…うあっ…」  
 
執拗な愛撫によってアヌスは腸液に塗れ、指の滑りが良くなってきている。  
お陰で尻穴の奥の奥で蠢く二本の指に翻弄され、まともに言葉を紡げない。  
彼女の中に僅かに残る理性の断片さえも打ち砕くように、『彼』は歪んだ言葉を吐き捨てた。  
 
「…いいじゃねーか。この際何度でもイッちまえよ」  
 
「…えっ…?」  
耳を疑った。  
「ピル飲んでりゃあ孕みもしないしな。っつーか、こんな機会滅多にないだろ…?複数の男にしてもらえるなんてさ」  
そう言って『彼』は笑った。  
 
―悪い冗談だと思った  
 
夢であって欲しいと 心から願った  
 
「っつう訳で、使えなくならない程度にお願いしますよ」  
『彼』は男達にそう告げると、ソファーに腰を沈め、再び見物を決め込んだ。  
「言われなくても分かってるよ。また使う事になるかもしれねえしな」  
「しっかしひでえ男と付き合ったもんだよなあ、アンタ。可哀相に」  
言葉とは裏腹に意地悪そうに笑うと、アナルを弄っていた男は漸く指を引き抜いた。  
「だいぶ解れたな…そろそろ挿れるか」  
そして混ざり合った淫液でぬらぬらと光る白い双丘の中心に陰茎を宛い、一気に貫いた。  
「ぃ――っ!!かはっ…はっ、ああぁぁぁっ!!!」  
 
窒息しそうになる程に腸壁を圧迫され、洋子は喉を反らし鳴いた。  
そんな彼女をいたぶるように男は抜き差しを繰り返し、時に腸の粘膜を削ぎ落とすように肉杭を擦りつけ、洋子の意識に強制的に排便感を刷り込んでいく。  
「あっ…か…はあぁっ…あ…ぁ…」  
「ぐっ、おおぅ…へへっ…凄ぇ締め付け。縛られてるみてぇ…」  
「ホントいいとこ取りだなお前…まあいいや。今度こそマンコ頂くぜ…」  
体格のいい男は悪態をつきながら半ば固まりかけた精液で汚れた秘唇に男根をねじ込んだ。  
「くっ、うっ…ああっ、はあぁんっ!!」  
前後から肉欲の赴くままに二穴を塞がれ、気が狂う程の悦楽によがる洋子。もう抗いもせずにその突き込みを受け止めている。  
だが瞳は悲しみばかりを浮かべ、ぼんやりと宙に向けられている。  
『彼』の言葉で、彼女の心は完璧に打ち砕かれてしまった。もはや何の為に抱かれているのかさえ、分からなくなってしまった。  
その身に受けている凌辱さえ、今の彼女にとっては遠い事のように思えていた。  
 
「喚かなくなったな…じゃあそろそろお邪魔させてもらうか」  
長髪の男は軽く笑い、呻くだけとなった彼女の口にペニスを押し込んだ。にゅるりとした温もりが、拒むべき男の欲望の塊を包み込む。  
その表情に、怯えや嫌悪の色は既にない。身を焦がすような快感だけが、彼女の心を此処に繋ぎ止めている。  
 
部屋中に響く、肉と肉のぶつかり合う音。男達の哄笑。  
それらの不快な感覚にも無関心な様子で、洋子の意識は永遠とも思える悪夢の中で、絶望を抱えたまま漂い続けていた……  
 
 
 
「…すっかり汚れちまったなぁ…」  
男達が帰って行った後、洋子は起き上がる事も出来ずに、『彼』の抑揚のない声を聞いていた。  
既に日は沈みかけ、窓の外は夜の闇に覆われ始めている。  
半日近く蹂躙され続けた身体は、疲弊しきって殆ど自由にならない。  
だが、麻痺していた感覚は次第に元の状態に戻りつつあるらしい。  
縛られたままの手首の痛み。下腹部の鈍痛。長時間の責め苦からようやく解放された身体の節々が悲鳴を上げている。  
取り戻したのは痛みだけではなかった。喉に粘ついた物が絡む不快感。両方の秘孔から垂れ流される精液への嫌悪感。  
更に全身にこびりついたそれは乾き始め、吐き出された時とはまた少し違う異臭を漂わせている。  
それらの全てに、自分がどれだけ汚されたかを改めて思い知らされた。  
「あんな奴等とでも感じちまうんだな。ヘッ…結構淫乱なんじゃねぇの?」  
侮蔑を込めて言葉を投げ掛ける『彼』に、もはや彼女は何も言えなかった。涙も零れない。本当に全てを奪い尽くされたかのようだった。  
『彼』は気だるそうにソファーから腰を上げ、まだ動けずにいる洋子の腕の紐を解き、汚れた秘唇に無造作に指を突っ込み、白濁液を掻き出し始めた。  
 
行為の熱も失せ冷え切っていたそこが、再び温もりを取り戻していく。  
「…ぅ…ぁ……」  
「けどなぁ、洋子…」  
空いている方の腕で彼女の頭を引き寄せ、耳に囁いた。  
 
「俺はお前じゃなきゃ駄目なんだ…」  
「…ぇ…?」  
指の動きが速まり、収まった筈の快楽が鎌首をもたげる。  
「はあぁっ…あっ、ぅあ…」  
「お前がどんなに汚れても…他の男に盗られちまったとしてもさ…」  
耳朶を舐めるような、甘く響く声。  
「俺は洋子の事愛してやれるんだぜ…」  
絶望の淵にまで染み渡る言葉。  
「だから…」  
耳元から吐息が離れ、乾ききった互いの唇が触れる。  
「ずっと、一緒だ」  
思わず眼を見開き、洋子は『彼』の眼を見た。  
 
真っ直ぐな瞳―  
 
どんよりと濁ってはいたが、彼女にはそう見えた。  
「くっ…」  
まだ淫液に濡れている膣口に、『彼』の男根が押し付けられた。行為の一部始終を処理も出来ぬまま見せられていたせいか、熱く怒張している。  
一息に貫かれると、散々犯し抜かれて性の悦びを覚えた身体は惨めな程た易く高みに押し上げられた。  
 
「あっ!くぅ…ん、はぁ、ぅ!!」  
「はっ、ぐうっ、洋子っ…」  
律動を止めずに、『彼』は虚ろに呟き続けている。  
「俺には、くっ…お前しか…いない、んっ、だよ…」  
洋子を見つめたまま動かない、昏い瞳。蔑んでさえいた眼が、今はひどく哀しそうに見えた。  
 
縋るように、ただ求めて続けている。  
 
 
―私を必要としてくれている―  
 
「大…丈夫…」  
『彼』の頬を撫で、洋子は呟いた。  
 
歪んだ形でしかなくても  
 
「大丈夫…だから…」  
 
自分がどれだけ惨めだったとしても  
 
―どんなに汚されても 『彼』が私を望んでくれるのなら  
 
 
きっともう 私にも 『彼』しかいない―  
 

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