「不覚だった…」
「何が?」
「…僕も男なんだなぁ、ってこと」
「何それ。相変わらず意味わかんないよ、霧山くん」
「君に言われたくないよ、三日月くん」
「そうだ!それよりご飯食べに行こう!駐禁のあとのご飯は美味しいだろうなぁ」
「胃に入れば何でもいいんじゃないの?」
「よくなーい!霧山くんは分かってないね、食べ物のすばらしさが」
「…はぁ」
不覚だった。
この歳になるまで独身だった僕の、人生最大の不覚。
「ほら、行くよ」
君のことが、可愛いだなんて。
思ってしまった僕は、普通の男なのか、それともおかしくなった男なのか。
そんなことを考えているとは露知らず、彼女は僕の大好きな笑顔を向けるんだ。