ミカヅキノヨルニアメ
雲一つない快晴の夜空
その遥か下には二人が歩いている
一人はメガネ、一人は食いしん坊
デートといいたいがこれは趣味の後の帰り道の一幕
「霧山君飴もってる?」
突然の三日月の言葉に霧山が軽く上を向いた
「あるけど」
ポケットに手を突っ込んでモゾモゾと動かし、出てきた手の中には袋に入った赤色の飴が納まってている
それをひょいと取り上げると、袋を破り口に放り込んだ
「飽きちゃった」
今さっきいれたはずのなの飴をコロコロと転がしながら言った
「え~」
早過ぎる飽き方に驚くというより呆れて声がでてしまう
「どうしようか?」
「いらないなら地面にでも捨てなよ」
霧山の返事になぜか三日月はふて腐れている
「このポツネンめ」
「急になにさ」
霧山はその態度に気が付かずに不思議そうに三日月の顔を見つめた
「私はこの飴をどうしようか?って聞いたの」
意味を含ませながらもう一度三日月が霧山に意見を聞いた
「だから捨てなよ」
三日月はもどかしそうに
霧山を見つめ返した
「別の聞き方するよ。
霧山君今とっても飴欲しいでしょ?」
三日月の目には
「………あ、ハイハイ」
ようやく意味を理解して納得した霧山は顔を緩ませて口を開いた
「僕なんだか今とっても飴欲しいな~
三日月君持ってる?」
わざとらしく霧山が三日月の言った通りの言葉を繰り返した
「よろしい」
三日月の満面の笑顔を合図に霧山はすっと三日月の前に一歩前に
三日月はそれにあわせ軽く爪先立ちになる
空にある彼女の名前と同じ三日月の微かな月明かりが二人を照らし影は重なり合い一つになる
三日月の口にある赤色に輝く飴が、唾液と共に霧山の口にへと移動していった
飴の甘さと慣れ親しんだ三日月の味が霧山の口に広がる
「イチゴかな?」
霧山は飴を転がしながら
味を確かめる
「クラムベリーよ」
キスでできた糸をにふくと、嬉しそう霧山の腕を絡めて体を密着させた
「ところで三日月君。もっと飴いらない?」
「い~らない」
霧山の意見を否定するのが楽しいのかギュッと腕にからまる力を強めた
「そうきたか」
三日月に貸していない腕で頭をかき、二、三歩進むと何かを思いついたのかメガネを外して三日月にいつもの様に渡した
「じゃさ、三日月君キスいらない?」
「どうしようかな?」
三日月の顔には嫌という表情はでていない
口の端が軽くクイと上がっている三日月を見て霧山は話を続ける
「すっごい甘いし」
「甘いだけ?」
三日月が我慢出来ずにフフッと鼻から笑いが漏れてしまう
「ドキドキさせるし、中毒性があるんだよ」
三日月の返事を待たずに霧山の唇が三日月の唇とが軽く触れた
少し荒れた霧山の唇で艶のある三日月の唇の柔らかな感触を楽しむ
下唇を軽く噛み挟んだり、食べる様に唇全体を包み楽しんだり
「アハッ」
いったん唇が離れ、おでことおでこをチョンとぶつけあうと三日月が笑い声をあげる
そして、息の合ったタイミングでもう一度近づいていく
三日月はできるだけ深く深く合わさる為に霧山の背中に腕をまわした
心臓の音が聞こえる程の距離で愛しあう二人がやる事はもう決まっている
言葉はこれ以上意味をもたない
触れるより絡み合う例えが似合う力強いキスを時間を忘れて求めあう
息を吸う為にいったん離れても相手の顔を見つめあうとすぐに湧いてくる
外だという事を忘れ、さっきより強く一つになってしまうくらいに
舌と舌が最後の一瞬まで出来るだけと離れるのを拒んだ
キスが終わってから夜の雰囲気を楽しみながらのんびり歩いている帰り道
「エイヤ」
「こら、重いって」
突然、三日月がピョンと霧山の背中に飛んで抱きついてのオンブ
「白馬じゃないけど我慢してあげよう」
「僕もおしとやかなお姫様がよかったんだけど」
「いいから歩く」
後から頬を擦り寄せている三日月が霧山の首に絡まる力が強めると、霧山は大袈裟に苦しみヨタヨタとジクザクに動き回る
背中からはキャーキャーと明るい声が聞こえてくる
「それで今からどこ行くのさ?」
軽く息をきらせながら後ろに乗っている三日月に行き先を尋ねる
「決まってるで」
途中に止まった三日月の返事に霧山が振り向くのを狙って
「しょ」
頬に跡が残りそうな強いキスをする
「まったく君がいれば月までいけそうだね」
キスの度にそれは強くなっていった
恋という中毒症状
背中に感じる温かさをエネルギーに霧山は足を進めていく
我が儘なお姫様とポツネンな王子様
どこに行くかは二人と月だけが知っている
 ̄おしゅうまい_
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