霧山が部屋で寛いでいると、携帯が着信を知らせている。見れば、発信元は三日月。
こんな夜更けに何だろうと出てはみたが、いつもの声とは違い無言。
「―――もしもし」と言いかけて、もしかしたら犯罪に巻き込まれたかも?と思い、霧山は電話の向こうに聞き耳を立てる。
すると、衣擦れの音と共にくぐもった三日月らしき声が微かに聞こえる。
「…っ…ふ、ぅんっ……は…」
具合が悪く、苦悶の声なのかと、更に霧山は耳をそばだてて聞き入る。
「…っあ、んあっ、や、ああっ…霧、山くぅんっ…!」
「もしもし三日月くんっ?……どうしたの?」
「…き、霧山くんっ!?な、なんでっ…!?」
突然の霧山の声に、電話の向こうで慌てふためく三日月が容易に想像出来る。
「なんでって…三日月くんがかけて来たんじゃないか」
「あ…ご、ごめんねっ。間違ってかけちゃったみたいで…寝返り打ったら足が当たったみたいなの」
「ふうん…」
「本当ごめんね、こんな夜中に…じゃあ」
そう言って三日月が電話を切ろうとした時、霧山がいつもの穏やかな口調のままで言った。
「三日月くんはそういう趣味なのかと思ったよ」
「!!?―――ちょっ、霧や―――」
呆然と携帯を手にしたまま動けず、一人赤くなったり青くなったりしているだろう三日月を想像し、霧山は一人笑いをしていた。
そしてまた、明日署でどんな顔をしているだろうかと楽しみにしながら―――
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終わり