又来さんが婚姻届をまた拾ってきた。
「更衣室の前の廊下に落ちてたんだよ〜」
「おおっ、じゃあまたジャンケンかな?」
楽しそうな熊本課長。
いつの間にかいつものメンバーが机の周りに集まる。
「またどうせ霧山が負けるんじゃないのか?」
みんなでジャンケン。
今回は霧山に加えて三日月と熊本課長も負けてしまった。
三日月はなんとな〜くにやける。
「あ〜、じゃあもう一回ジャンケンですね」
霧山がポツリと言うと、三日月のニヤケが一瞬にして消え、霧山をキッ!と睨んだ。
しかし、サネイエが冷静につっ込む。
「いや、婚姻届には夫と妻と証人の欄がありますから」
「ああ、じゃあ3人で書けば良いじゃないですか」
なんとまぁ、真加出くんが極論を言ってしまった。
その二人の言葉により、時効管理課が(3人で婚姻届に書き込め〜)という空気に染まった。
ジャンケンに負けた3人は視線で会話を続けていたが、
「あ、じゃあ僕はもう結婚してるからコッチだね」
と、熊本課長がいち早く証人欄に名前を書き出した!
「え、ちょっと熊本課長!」
真っ赤になって慌てる三日月。
「じゃあ『夫になる人』のとこが霧山さんで、『妻になる人』が三日月さんですね」
「ついでに判も押したらどうだ?」
「これで本当に届け出られるじゃないか」
ギャラリーの面々は他人事なので思ったことをぽんぽんと発言していく。
「ほら、霧山、うだうだしてないで書けよ!」
「うーん、もう、仕方ないなぁ」
証人欄が熊本さんで埋まった婚姻届に、霧山が『夫になる人』欄を埋めていった。
「はい、終わり。次、三日月くんね」
「えぇっ!私も書くの〜!?」
嫌そうに、しかし若干嬉しそうな表情を隠せない三日月が過剰に反応する。
「何言ってんですか、三日月さんも負けたじゃないですか」
「そうだよ、三日月くん、僕だって書いたんだし」
「もう、そこまで言うなら書きますよぅ〜」
こうして、婚姻届が見事埋まった。
「えへへ〜書いちゃったっ!」
恥ずかしげ〜に三日月が書き終わると、さっきのメンバーは皆、昼ごはんを食べに席を立っていった後で、
うるさかった時効管理課は静まっていた。
「ええっ!ちょっと!」
テンションの上がっている三日月は思ったままに叫んだ。
「三日月くんが、書くの遅いんだよ」
一人、席に残っていた霧山が言った。
「霧山くんがもっと早く書けばよかったじゃない!」
三日月はプクーっと膨れた。
そんな三日月を、やれやれ、といった面持ちで一瞥して、霧山は言った。
「じゃあ、僕らも行こっか」
「も〜、今日も霧山くんの奢りね!」
「え、いや、食堂じゃなくて、市役所。」
「市役所?」
「そ、これ出しに」
霧山の片手には婚姻届がひらひらと。
「え、ちょ、霧山くん、それは、ええっ!?」
慌てふためき混乱する三日月。
「も〜。三日月くんこれ書くの3回目だろー。今回こそ出しに行かなきゃ。ほら、3度目の正直って言うじゃない」