ふっと気がつくと、高彬に抱き上げられるところだった。
宿直が続き、やっと今日来れると文を貰って高彬を待っていたのだけれど、
訪れがあんまり遅いものだから、脇息に寄りかかってうとうととしているうちに、
あたしはうっかりうたた寝をしてしまっていたようだった。
いつの間にか高彬が来てたのね。
まだ半分夢の中で、高彬の香りに包まれて抱かれているのがここちよく、
あたしはそのまま目を閉じていた。
高彬はあたしを寝所に運び、寝かせるとそのまま軽く接吻した。
そしてあたしが幸せな感触にうっとりしているうちに、胸元をまさぐり始めた。
そういえば、あたしは今、素肌に緋袴と薄衣という透ける夏の衣を一枚着ただけの姿なのだった。
暑さのあまりの軽装だったのだけど、高彬が来る前にちゃんと着替えておこうと思っていたのに・・・。
久しぶりの逢瀬には、ちょっと刺激が強すぎたかしら、なんて思っていると、
耳元に高彬の熱い吐息がかかり、高彬の指が胸の頂を巧みにつまんで撫でさすった。
「あっ」
と思わず、あたしは声をもらしてしまった。
すると高彬は起きているあたしに気付いて、
「瑠璃さん、会いたかった・・」
とささやいた。
目を開けると、灯台の薄暗い明かりの中、ぼんやり高彬の姿が見えた。
顔を上気させ、あたしを見る目は鷹のように鋭い。
「たかあ・・・」
あとは言葉にならない。
接吻で口を塞がれたのだった。
次第に感覚が夢から現実に戻ってくるなか、
激しく深い接吻が繰り返された。吐息を交換し、舌で口腔をさぐり合う。
そうしながら、高彬は左手で胸をもみしだき、右手で腰紐をほどいていく。
この手順はもう慣れたもの。
あたしの衣をすっかり剥いでしまうと、
しばらくの間があり、高彬は自分の衣を脱いでいる。
それにしても、この待ち時間って、いつもどうしたものかわからない。
高彬を見ているのも恥ずかしいし、そっぽ向いたり、目をつぶってるのもわざとらしいし。
ま、いいんだけどね。
そうこうしているうち、高彬は自分の衣を脱いでしまって、あたしに覆いかぶさって手指と舌で優しく全身を愛撫し始めた。
徐々に力が抜けて、吐息が漏れてくる。
結婚して一年ちょっと、最近の高彬はあたしの体をあたし自身よりもよく知っている。
例えば耳たぶ、うなじの生え際、背中の真ん中、どんな風に愛撫するといいのかを。
微妙な部分を攻められ、体がだんだん熱くほてってくる。
高彬のぬめった舌があたしの胸の頂を包み込んで、小刻みに震わせた。
「ああっ・・」
頂はすっかり固く立ち上がっている。
高彬は頂を右、左と順に吸いたてながら、
同時に指で下の溝を柔らかくゆっくりとなぞっていく。
指の動きにしたがって、そこが潤っていくのがわかる。
舌がだんだん胸からお腹、太腿へと移動するにつれて、
あたしのその部分はより強い刺激を求め、潤いを増していく。
と、高彬はあたしの両足首をつかんで膝を折り曲げると、自分の肩にかつぎ上げ、
秘所にくちづけた。初めは優しく、段々激しく。
舌先でそこをくすぐったかと思うと、
中をさぐったり、深く舌を差し入れて、震わせる。
そして、指で敏感な突起を剥いて撫でながら、
間断なく甘い刺激を与え続けている。
あたしの秘所は、高彬の唾液とあたし自身の愛液と両方が交じり合って、しとどに濡れて音をたてている。
「いや・・」
脚を突っ張り、閉じようとすると、
「瑠璃さん、力抜いて」
高彬が優しく呼びかける。
だって、そんな風にされたら・・・。
「瑠璃さんのここ、可愛いよ。もっと見せて」
「いやあっ・・」
そういって頭をふりながらも、あたしはもう脚を閉じることができない。
どうしようもなく恥ずかしいのだけど、
そこをもっと高彬に見て、愛して欲しくてたまらない。
頭の芯がぼうっとなって、ただただ身をまかせることしかできない。
高彬はあたしの突起を舐め上げながら、
指で割れ目に出し入れを繰り返す。
「あああっ・・」
あたしは思わず知らず、腰を浮かせて高彬の顔に秘所を押しあててしまっていた。
「あああん、もう・・」
下半身がとけてしまいそうにヒクヒクとしている。
高彬が唇と舌で突起を強くすすると、
甘い快感の頂点に達して、あたしの全身は脱力した。
目をつぶって、人形のように動けなくなってしまったあたしに、
高彬がささやく。
「瑠璃さん、挿れるよ」
「ああっ・・」
我慢できなくなったというように高彬があたしの中に入ってくる。
充分に潤っているその部分は難なく高彬を受け入れた。
ゆっくりと高彬が動き出す。
すぐにまた、つながっている部分を中心にして、体中に快感が広がっていく。
脚は高彬の腰あたりに絡みつき、手は高彬の首と背にぎゅっとしがみついている。
強く抱き合いながら、腰を深く打ちつけられ、捏ねまわされる。
「んっ、あんっ」
抑えようとしても声が漏れてしまう。
そうしているうち、
高彬が身を起こして、あたしの反応を見ながら意地悪く言う。
「瑠璃さんはどういう風にするのがいいの、こう?」
高彬はあたしの腰をややあげて膝の後ろを持ち上げると、膝をついた姿勢でいっそう、深く激しく突いていく。
我ながらなんという格好なの、と思うのだけど、
前の姿勢とは違う、強い快感に抗うことができない。
高彬は動きをゆるめることなく、打ちつけ続ける。
「高彬、たか・・ああんっ、あんっ」
あたしはもう、全身が総毛立ち、ただただ、高彬の動きに合わせてあえぐことしかできなくなっていた。
動きはどんどん早く激しく、あたしを追い詰めていく。
頭の中に火花が散っていく。
もう、もう・・。
「瑠璃さん、っ・・・」
高彬のかすれたような声をききながら、あたしの意識はゆっくり遠のいていった。
気がつくと、あたしは高彬の腕枕で寝ていた。
隣の高彬もすうすう寝息をたてている。
頭の納まりのいい位置に身じろぎすると、高彬は寝ぼけて腕枕したまま、寝返りをうって、こちらを向いた。
高彬の顔がすぐ近くにあって寝顔を眺めていると、愛しいなあ、と思ってしまう。
結婚した当初こそ、初めて同士でぎこちなかったあたしたちだけど、
高彬はこうして何よりも、あたしを喜ばせようと大事に愛してくれる。
あたしもそんな高彬に応えたいと素直に思う。
でもまさか、自分が物語のように、こんな風に我を忘れて夫と愛し合うようになるなんて、
独身主義の頃は思ってもみなかったわよ。
高彬だって、いつのまに、こんなに食えない殿方になってしまって。
男も女も季節のようにくるくる変わっていくものなのね。
でも、こうして喜びを共有しながら、
これからもずっと、仲良くしていきたいと思うわ。
あたしはなんとなく満足して、眠っている高彬の頬をそっとなぜて、
「大好きよ」
と、ひとりごとのようにつぶやくと、
寝ぼけた声で高彬は
「ぼくもだよ・・・」
といって、あたしを両腕でぎゅっと抱きしめて、
そしてそのまま、再び深い眠りに落ちていったようだった。