<高彬の回想より>
瑠璃さんの裳着のすこし前(12歳ごろ?)だった。
僕たちは瑠璃さんの家で二人で遊んでいた。
融は自分の対屋で昼寝をしているとのことだった。
僕は瑠璃さんに、「男の子は小袖のしたはどうなってるの?」と、突然言われた。
今思えば、たぶん小萩かお母上なんかに、「そろそろ月のものが…」なんて言われて瑠璃さんも興味を持ったんだろうと思う。
そして、当時の僕は瑠璃さんには当然逆らえるはずもなく、しどろもどろで説明した。
瑠璃さんはその説明を聞くとますます興味深々な様子だった。
一通り説明し終えると、僕はなぜだか少し体が熱くなってしまって「瑠璃さんは?」とおそるおそる聞いてみた。
すると驚いた事に、あの瑠璃さんが丁寧 に教えてくれたのだ。
僕は思い切って「瑠璃さんの小袖のしたの実物を見てみたいよ」というと瑠璃さんが了解してくれたのでうち(白梅院)で見せあいっこすることになった。
この見せあいっこはこの時一回限りで終わってしまったし、子どもたちのささいなイタズラと言えるような可愛らしいものだった。
けれど、この時が瑠璃さんを「女の子」として意識した初めての時だったと思う。