「おじゃましまーす!」
さつきはかなり大きな声で挨拶したのだが、しんと静まりかえった家の中から返
事は返って来なかった。屋内に入ったおかげで少し小さくなった蝉の鳴き声だけ
が虚しく響いている。
「…あれ?」
「…だからさ、親は二人とも出掛けてて居ないってさっき言ったろ?やっぱ話聞いて
なかったのかよ」
キョトンとする彼女に向かって、淳平は玄関の戸を後ろ手で閉めながら呆れた
ような声を出す。さっきから、いや、ここに来る途中もずっとかもしれない。やけに
浮かれている彼女を見て、やっぱり二人きりってのはマズかったかなー、と淳平
は思い始めていた。
放課後、勉強に誘ったのは淳平の方だった。何しろ学期末テストでの淳平とさつき
の点数はひどいもので、二人の点数の合計を足しても、もしかしたら外村一人の点数
に勝てていないのではないかという程だ。先生には「夏休みに入る前の追試に合格し
ないと休み中も補習だぞ」と言われている。映研の合宿をひかえている夏休みを前に
して、淳平はそれだけはどうしても避けたいという思いだった。
元々は二人きりで勉強をするはずではなかったのだが、余裕で追試を逃れた東城
や外村、さらには同じく追試なはずの小宮山らには用があるからと言ってあっさり断
られ、結局はさつきと二人で勉強する羽目になってしまったのだった。
「え?きゃ〜、うっそマジで?ちょっと真中、誰も居ない家に高校生の男女が二人き
りってマズくない?」
…なんだか予想どおりの反応だ。相変わらずテンションの高いさつきは上目遣いで
顔を覗きこむ。口元はにやにやと笑みが浮かんでいる。
‥‥妙にはしゃいでるんだよなぁ…自分と二人で勉強できるのがそんなに嬉しい
んだろうか…。淳平は複雑な気分になった。彼女の自分への好意はもちろん知って
いる。彼女は想いをまるで隠そうともしないし、態度もあからさまだ。さつきはなんで
俺みたいなのがいいんだろうか。
「あ、あのなぁ、さつき。俺たち勉強しないと追試がヤバいんだぜ」
「わかってるわよ。なに顔赤くしてんの。大丈夫だって、襲ったりしないから」
また上目遣いでさつきはにっと歯を出して笑う。淳平の反応を楽しんでいるようだ。
「襲…」
襲う‥‥‥さつきが‥‥あのたわわな胸であんなコトやこんなコト‥‥あん真中
‥‥‥キモチよくしてぇ‥‥‥真中ぁ‥‥‥
「‥‥‥‥‥真中。お〜い真中。何ボケ〜っとしてんのよ」
「え?あ‥‥悪い(やっべぇ、完全に妄想入ってた…)」
「あ、わかった。エッチなコト考えてたんでしょ?やだ〜も〜!あたしで変な妄想
しないでくれる?まあ、真中なら別にいいけどね」
‥‥‥ああ、してました。ごめんなさい…。淳平は身を縮める。
「襲ったりって…お前さ、そういうのは普通、男が女に言う台詞じゃない?」
「あら、じゃあ真中があたしを襲ってくれるの?それならそれでもいいんだけど」
さつきは頭の後ろで手を組んで、胸を強調するようなポーズをしてみせた。大き
な胸が揺れる。
「う…何言ってんだよ。バカな事言ってないで早く勉強するぞ」
淳平はさつきをなるべく意識しないように部屋に向かう。後ろで含み笑いが聞
こえた。
「はいはい。連れないね〜。ったく、素直じゃないんだから♪」
「なんか真中の部屋久しぶりだなー」
「そうか?みんなで集まった時以来だからそんなにたってないだろ」
ここで映研の合宿の打ち合せをしたのは、ちょうど一ケ月前の事だ。話しな
がらさつきはベッドに腰掛け、カバンをぽん、と適当に放り投げた。
「さて、じゃ、早速やろうか。あたし数学ダメなんだよね。真中教えてよ」
「お前・・俺のテストの点数知っててそれ言ってるわけ?」
「なんだ、苦手教科も一緒なんじゃん。あたしたちってほんと仲いいよねー。ね、
付き合っちゃおうか真中。」
「なんだよそれ」
淳平は照れたように笑ってごまかした。 確かに彼女はどこからどう見ても魅
力的な女性だ。かわいいし、胸も大きいし、何よりクラスの誰よりも自分と話が合う。
こんな女性が自分を好きだと言ってくれる事が淳平は素直に嬉しかったが、東城
と西野への感情が断ち切れない以上、中途半端な想いでさつきと付き合うなんて
事はできなかった。それでは彼女を傷つけてしまう。我ながら贅沢な悩みだと思う。
「あ、そうそう、へへ、真中、エロ本どこよエロ本」
突然、さつきは思いついたようにあちこちの棚を勝手にあさりだした。
「バカ!やめろっての」
淳平は慌てて止める。
「真中の部屋に来たら探してやろうと思ってたんだよね〜。ホラ、みんなのいる
前で見つけたらかわいそうじゃん?‥‥‥‥‥東城さんとか、ね」
さつきは口元に意味ありげな笑みを作る。
「な、何言ってんだよ…」
淳平は内心ドキリとしたが、平静を装った。
「いいじゃんよ。年ごろの男の子なんだからエロ本ぐらい読むでしょ」
そりゃまあそうだけど、と思いながら淳平は困った顔で笑った。さつきはからかう
ようにキョロキョロとエロ本を探すふりをやめない。すると、さつきの目が机の上に
置いてある一冊のノートに留まった。
「あれ?何、このノート」
ひょいとそれを拾い上げる。
「あっ!それは…見ちゃダメさつき!」
淳平はバッと慌ててノートを取り上げる。エロ本を探された時よりも数倍焦って
いた。
「な〜によ、その反応。あやしいな」
「な、なんでもないって」
「見せて」
「ダ〜メ」
「いいじゃん」
「ダメだよ」
「なんでもないんでしょ?じゃあ見せてよ」
「ダメだって」
そのノートは、東城の書いた小説のノートだった。「見せるのは真中くんだけだ
よ」と言っていた東城の顔が浮かぶ。さつきには悪いけど、これは人に見せては
いけないものだ。ノートを机にしまう。
「…ふ〜ん。あっそ」
さつきはあからさまに不機嫌な顔になった。不穏な空気。
「な、何怒ってんだよさつき…」
「別に、怒ってなんかないよ。なんであたしが怒るのよ」
「う…」
「ま、いいや。それよりさ、真中、この部屋暑くない?冷房無いなら窓開けようよ」
パッと表情を戻してさつきは言った。セーラー服のすそを持ちバサバサと服の
中を扇ぐ。へそがちらりと見えた。
「え?あ、そ、そうだな(良かった‥‥あんまり気にはしてないみたいだ)」
確かに部屋の中は少し蒸し暑い。ホッと息をついて、淳平は窓を開けようとさつ
きに背を向けた。
淳平はその瞬間何が起きたのか理解できなかった。
背中をどんっ押され、急にベッドが目の前に迫ってきた。うつぶせに倒れこむと
ころだったが、反射的に身体が反転した。一瞬、視界に入ったのはひらりとひる
がえる制服のミニスカート。ドサッという音と共に、気付くとさつきの身体はぴった
りと自分に重なっていた。
「なっ、なにすんだよさつき!」
わけがわからない淳平に彼女は身体をあずけたまま、いたずらっぽく笑っている。
「ふふ。やっぱさっき言ったの取り消し。真中と誰もいない部屋に二人きりだよ?
こんなチャンスめったにないもん」
「なっ!?何を‥‥」
「犯しちゃおっと」
混乱する淳平の口を塞ぐように、さつきは突然唇を重ね合わせてきた。
「っ!?‥‥‥‥」
「ん‥ふ‥‥ぅ‥‥‥‥」
驚きに目を見開く淳平に構わず、さつきは強引に舌で唇を押し開いて、舌を絡め
とるようにキスを続ける。
「ぅん‥‥はぁっ‥‥‥ん‥‥はあ‥‥‥‥はぁ‥‥‥」
(ぅ‥‥さ‥‥さつき‥‥…)
信じられない思いだった。
さつきとキスをしている。前にしたことのある、触れ合っただけのキスではない。
「や‥‥め‥‥さ‥さつき……はぁ‥‥ぁ‥」
さつきは首に手を回し、更に激しく淳平の唇を求めてくる。口内に感じる柔らか
い舌の感触。淳平は麻痺してしまいそうな神経をどうにか繋ぎとめるのに必死だ
った。身体を引き離そうとするが、うまく力が入らない。心臓がものすごい速さで
動いているのが分かった。
「んふっ‥‥‥‥真中‥‥‥」
唇を離し、続けて首筋にキスをすると、彼女はこちらの考えを見透かしたように
胸板に耳を当てて言った。
「すっごいドキドキしてる‥‥‥」
鼓動はさらに速くなったかもしれない。キスをした事もそうだが、それ以上に淳平
の心搏数を上げているのは彼女が見せているいつもとは違う、何か発情したよう
な表情のせいだ。
「あはっ、あたしもだけどね…ホラ‥‥‥‥」
さつきはうっすら紅潮した顔に微笑みをうかべながら右手を取り、大きな胸に当
てた。制服の上からなのに彼女の胸はものすごく柔らかかった。心臓のテンポが
また一段階跳ね上がる。そのまま喉から飛び出して、どこかへ跳ねて行ってしま
いそうだ。
「よいしょっと」
急にさつきは上半身だけを起こし、淳平の股間にまたがるような体勢になった。
「な、何する気だ‥‥さつき‥‥‥ダメだよ‥‥」
プチンッと音が鳴る。ブラジャーのホックが外れる音だ。ブラは制服の中でする
りとさつきのしなやかなくびれの部分まで落ちたようだった。挑発するような目。
「ダメ?」
淳平の股間の上にはスカートの中の恥丘の部分が下着越しに当たっているようだ
った。言葉とは裏腹に、充血してすっかり膨張した股間はすでに彼女に気付かれて
しまっているだろうか。淳平は恥ずかしくてさつきの顔を見る事ができなかった。
「だ、だめだってさつき…やめろ…」
口では言っても体が反応しない。
「へへ〜♪じゃあやめたらあたしと付き合ってくれる?」
「そ、それは…」
「じゃあやめない」
今度はするすると夏服のセーラー服のスカーフを外すと、バッと一気に服ごと脱
ぎ捨てた。見事な形と大きさの乳房があらわになる。淳平は咄嗟に目をつむった。
「な、何してんださつき!やめろよ!」
「真中‥‥見て‥‥‥‥あたしの身体」
声に反応して反射的に目を開けてしまった。薄いピンク色の乳首が目に入る。
(うわあっ!さつきのおっぱいさつきのおっぱいださつきのおっぱいが…)
淳平はますます混乱する。頭に血が昇り、思考回路がうまく回らなくなってきた。
普段は制服や体操服に包まれている、絶対に見る事など無いだろうと思っていた
一番仲のいいクラスメイトのナマ乳。その想像していた以上に豊かなフォルムは、
いよいよ淳平のわずかに残った理性を消し去ろうとしていた。
「あたしね」
「‥‥?」
飛びそうな意識の中、上半身が完全に裸になったさつきが話しだした。ふと、
外から聞こえる蝉の鳴き声が止んだような気がする。
「もうガマンするのやめた。真中が誰を好きでも関係ない。だってこうするしか
ないんだもん。あたしはあたしのやり方でしか、真中に愛情表現できないみたい。」
さつきの口調は妙にはっきりとしていた。
「初めは友達でもいいって思ってた。でもやっぱりダメ‥‥あたし、真中が欲し
いもん‥‥‥真中だって‥‥‥あたしの事、キライじゃないでしょう‥‥‥?」
(さつき‥‥‥)
「好きなの‥真中。あたしの心も身体もみんな真中のものだよ。だから…」
そこまで言うとさつきは再び唇を重ねてきた。舌の絡まり合う音。甘くて熱い吐息。
柔らかい唇。胸元に擦れる豊かな膨らみ。
「真中も‥ガマンしないで…」
もう、限界だった。ぎりぎり繋ぎ止めていた理性が溶けるように無くなり、淳平
は抵抗するのをやめた。いや、体自身が抵抗することを拒んだようだ。東城の事、
西野の事。たぶんその時は何も考えられなくなっていたと思う。それほどに、
さつきのキスは、まるで全身麻酔のように淳平の思考を完全に奪い去っていった。
(さつき‥‥‥‥‥‥)
「ん‥‥‥よし‥‥いいコ‥‥‥‥ふふ‥‥‥‥‥」
とろんとした目で、さつきは無抵抗の淳平にちゅっ、ちゅっと二回ご褒美のような
キスをする。
夢を見ているようなふわふわとした意識の中、淳平はこんな事を思っていた。
「骨ヌキにされる」っていうのは、たぶんこういう状態の事を言うんだろうな、と。
どれぐらいそうしていただろうか。淳平とさつきは長い長いキスをした。快晴の
夏の午後。冷房の効いていない蒸し暑い部屋。既に二人とも汗だくだったが、そ
んなことはまったく気にならなかった。互いの唇と唇、舌と舌が触れ合う音、二
人の荒い息遣いが延々と部屋の中に響いていた。
キスってこんなに気持ちいいんだな‥‥。身体が熱く、脳みそがとろけてしまい
そうだ。淳平はこのままずっと何時間でもキスをしていたいと思った。だが、さ
つきの発した声でふと我にかえる。
「真中‥‥‥」
長い間、夢中でキスをしていたせいか、さつきの声を久々に聞いたような気がし
た。胸がきゅんとなる。淳平はキスを続けたまま目線だけで返事をすると、さつ
きはうっとりとした目をして囁いた。
「‥‥‥さわってもいいよ」
‥言われた時、何の事か一瞬考えてしまった。目の前には、たわわに実った
二つの果実が淳平を誘惑するように揺れている。淳平は半ば放心状態で頷いた。
さつきに‥‥さつきにもっと触れたい‥‥‥。本能の赴くまま、淳平はその誘惑に
向かって手を伸ばした。慣れない手つきで乳房を下からやさしく揉み上げる。
「んっ!‥‥」
ピクンっとさつきの身体が僅かに弾んだ。
(うわっ、めちゃくちゃ柔らかい‥‥)
二つの膨らみの柔らかさはさっき下着の上から触ったのとは比べものにならなか
った。
「あっ…ん‥‥」
淳平は乳房の外側から内側に向かって次第に激しく揉み始める。汗ばんだ肌が手
に吸いつくようだ。
「んんっ‥‥あ‥‥ん‥‥‥」
さつきが甘い声を漏らす。真っ白な柔肉に指が食い込む。指の間からこぼれおち
てしまいそう。
(やっぱ‥‥でかいな…)
中央の薄いピンク色の突起が、だんだん硬くなっていくのがわかった。淳平はそ
れをやさしく指で摘む。
「あんッ!‥‥‥ぁっ‥‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥‥っ‥‥‥‥‥‥‥」
更に強弱をつけて指で転がした。
「あっあっあっ‥‥ダメ真中‥‥‥もっとやさしく‥‥んんっ‥‥‥‥」
さつきが自分の手で感じている事に猛烈な興奮を覚える。
「はあ…はぁ…」
淳平は体勢を変え、上から覆い被さるように四つんばいになっている彼女の乳房
の部分まで顔を持っていった。重力に逆らわず垂れ下がる二つの豊かな果実。
(うわ‥すげ…)
下から覗き込むような格好になって、改めて間近に見るさつきの乳房はものすご
い迫力だった。グラビアアイドルなんて目じゃないかもしれない。淳平は両手で胸を
不器用に撫で回しながら、すでに硬くなった突起の片方にちゅうっと吸いついた。
「あ‥はぁっ!‥‥ん」
敏感な部分を唇と舌で刺激され、さつきはたまらず声をあげる。ちらりと目線を
上げ顔を見ると、眉をしかめ、口を真一文字に結び、快感を必死に押し殺そうと
している彼女の表情があった。それを見て淳平の興奮は一層高まっていく。
「‥‥さ‥‥つきっ!…」
ずぢゅぅぅ‥‥っといやらしい音をたてて、彼女の乳首を交互に吸いあげ、荒々しく
むしゃぶりつく。
「ぅんんっ!‥‥‥はぁ‥はぁっ‥‥‥あっあっ‥」
さつきの白い肌は、熱を帯びていつのまにか桜色に染まっていた。淳平は乳首に
舌を這わせたまま、さつきの腰の辺りを掴むと、少し強引に横に引いた。
「きゃ‥‥」
ゴロンと横倒しにすると、すかさず体を入れ替え、今度は淳平が上になった。瞬
間的に目が合う。
「‥‥っ」
急に恥ずかしくなって意味もなく笑ってしまった。
「…はぁ…はぁ‥‥は‥ふふ‥‥‥」
さつきも乱れた呼吸のまま、それを見て少し笑った。
さつきは淳平の胸元に手を伸ばし、制服のワイシャツのボタン外していく。
汗に濡れたシャツをするっと脱がすのと同時に、今度は淳平がさつきの
スカートを脱がせた。中には純白にレースをあしらったかわいらしい下着。
(か‥かわいい)
行為の最中にもかかわらず、淳平は思わず口に出して言いそうになった。
「あはっ、勝負パンツ。なんちゃって」
淳平の視線に気付いたのか、彼女は照れ隠しのようにそう言ってはにかんだ。
再び首筋にキスをするのを合図に、淳平の愛撫は徐々に下へと下りていった。
鎖骨から、汗がじっとりにじむ深い胸の谷間、すべすべのお腹、きれいなへそ、
そして下腹部に、順番に何かを確認するようなキスを落としていく。唇に感じる、
彼女の柔らかい皮膚の感触。
「ん‥‥くすぐったい‥‥‥」
さつきはふるっと少し身震いした。 そして一番下に辿り着いた。パンティの秘部
の部分には、じんわりと小さな染みができていた。淳平は指で下着越しにその
部分を触れるか触れないかぐらい強さでやさしく撫でる。
「ん‥‥」
パンティの上からでも、秘部のヌメりが伝わってくるようだった。焦らすように
そこを下着越しにぬるぬると指でなぞる。
「ああんっ‥‥もう‥‥真中ぁ‥‥」
我慢できないという感じで、さつきは切なげな喘ぎ声を漏らす。欲情に濡れ、
潤んだ目。さつきが欲しがるその声を待っていたかのように、淳平は下着の
中に手をすべらせた。
―――くちゅっ
いやらしい音が鳴ると同時に彼女は再び快感の声を上げる。
「ああんっ!」
ビクンッと身体が大きく跳ね上がった。続けて淳平はゆっくりと、やさしく丁寧に
敏感な豆を撫で回していく。
「さ、さつき‥‥ココが‥いいのか‥‥‥?」
淳平が指の動きに応えるかのように、さつきが甘く喘ぐ。
「んんっ‥‥ぅんっ‥‥ぁっ‥‥ん‥‥ぃいっ‥‥すごく‥気持ちいいよ‥‥
真中‥あぁっ‥あ‥‥」
くちゅっ、くちゅっという卑猥な音が響き、その度に身体は過敏に反応して
いった。普段の強気で男勝りなさつきの姿は見る影も無い。完全に『女』になって
淳平の愛撫を全身で感じているようだ。パンツの中はもうぐしょぐしょだった。
ゴクッと唾を飲み込む音がさつきに聞こえたかもしれない。淳平はいよいよ下着
をゆっくり、するすると下ろしていった。なだらかな恥丘、うっすら生える茂み
の中、きれいな濃い桃色に光る花弁が見えた。初めて見る女性のアソコは、想像
していたよりもずっと可憐だった。淳平は思わずまじまじと視線を向ける。
「やん‥‥あんまり見ないでよ‥‥‥‥」
「ご、ごめん‥‥‥初めて‥だからさ‥‥ははっ‥‥‥」
「くすっ‥」
さつきの秘部はすでにたっぷりの愛液にまみれ、ヌラヌラとなまめかしく光って
いる。女のコのここってこんなんなってるんだ‥‥。淳平はまるで吸い寄せられる
ようにそこに唇を持っていった。
「ああっ!」
ビクビクッと先程よりも更に敏感にさつきは身体を震わせる。ダラダラと染みだ
す愛液を舌で受けとめながら、淳平はじゅるじゅると音をたてて彼女の秘芯を刺
激した。
「ふ‥‥ぁ!ああぁ…」
快楽の声はどんどん激しさを増していく。頭を挟んでいる大腿に、グッ、と快感
を堪えるような力が入る。
「…あああああ!真中っ!真中ァッ!だめえ!」
だが興奮した淳平はより激しく舌を動かした。
「やっ…!だめっ!ダメッ!あっ!‥‥ッ‥あっ!あ!」
びくんっ!びくんっ!と身体を跳ね上げ、急激にさつきの身体が脱力する。
「‥‥っはぁ!はぁ!はぁっ!ぁはぁ‥はぁ‥‥‥はぁ…」
さつきは下半身をぶるぶると震わせていた。
(もしかして、イッ…ちゃったのかな…)
淳平は未経験の事態に呆然としていた。愛液で濡れた唇もそのままで、さつきの
息が整うのを待つ。
「…ん」
「さつき、大丈夫か?」
「うん…イッちゃった‥‥かな‥‥はぁ‥‥」
上気した赤い顔。さつきは無邪気に舌を出す。
ふぅっ‥と淳平は一つ息をついた。何に安心したのかは自分でもよくわからない。
ただ『さつきを口でイかせた』という事実に、まだ興奮がおさまっていない事は
確かだった。
「ちょっとお。何、じっと見てんの?」
さつきはふざけて笑いながら胸と股間を隠すポーズをした。
「いや…」
「…ん?」
淳平は急に真顔になって言う。
「すげー綺麗だよ‥‥さつきの身体」
「え」
さつきの顔がボッと火をつけたように赤くなる。
「な、なに言ってんのよ」
淳平の言葉がまったく予想外だったのか、どう反応していいかわからないようだ。
するとなぜだか彼女は突然瞳に涙を浮かべ、泣き笑いのような表情になった。
「さつき…?」
「…真中‥‥うれしいよぅ‥‥うれしい‥‥」
さつきは急に起き上がり、ギュッと淳平の顔を抱き締める。
「さつき‥なんだよ急に‥‥」
豊満なバストに顔がうずまる。なんという幸せな息苦しさだろう。だが、さつきは
おいおいと泣きだしてしまった。
「だって‥うれし‥ひっく‥だもん‥‥ぐすっ‥‥あたしだっ‥て‥‥‥不安だ
ったんだ‥もん‥‥っ‥‥」
「…!」
淳平はハッとした。
そう‥だよな‥‥‥さつきだって初めてだもんな‥‥
最初は襲っちゃうとか言ってたけど‥‥さつきも精一杯だったんだな‥‥本当は
不安だったに決まってるよな‥‥‥。
緊張の糸が切れたようにぽろぽろと大粒の涙をこぼすさつきを、淳平はたまら
なく愛しく思った。そっと頬に手をやり、涙を拭う。それから胸に抱き寄せて彼女
の頭をやさしく撫でてやった。
(ごめんな、さつき。俺には余裕も何もなくて、これぐらいしかできないけどさ。
でも、心から‥‥‥好きだよ)
声には出さなかったが、栗色の髪を撫でるその手に、淳平はありったけの感情と
やさしさを込めた。さつきに、この思いは伝わっているだろうか。しばらくして、
ようやく彼女は泣き止んだようだった。まだ涙に濡れた顔を上げる。
「‥‥‥たいの」
「‥‥え?」
「真中の‥も‥舐めたい‥‥」
「‥‥!」
淳平は驚いた顔をしたが、すぐにその表情を崩し、ふっと笑った。さつきもそれ
を見て、赤い顔でふふっと微笑んだ。
「真中‥ここ‥ほら‥‥こんなに固くなってる‥‥‥」
さつきはズボンの上からすっかり大きくなった淳平のモノを擦った。
「しょうが‥ないだろ‥‥‥」
息も絶え絶えに淳平が答える。
「ん‥‥真中カワイイ‥‥‥」
チュッと一つキスをして、さつきは淳平の下半身に向かった。ズボンのベルトを
カチャカチャと外し脱がせていくと、不慣れな感じにパンツも脱がせた。大きく
なったモノがぶるんと解放される。
「‥‥。」
無言で見つめるさつき。
「真中の‥‥‥‥」
今まで擦ってたくせに、なぜだか顔を赤くする。
「…な、なんだよ。あんまじろじろ見んなって」
もちろん淳平も、勃起したペニスなど他人に見せた事はない。
「ご、ごめん」
さっきとまったく逆のやりとりだ。しかしまさか初めて見せる人がさつきだなんて
思わなかったな。淳平も少し赤面する。
「ふ〜ん、こんなんなってるんだぁ…」
言いながらさつきは恐る恐るといった感じに手を伸ばした。やさしくモノを握り、
少しだけ上下に動かす。
「あっ…」
思わず情けない声が出てしまった。
「キモチいいの‥‥?真中…」
今度は少し早く動かす。自分でするときとはまるで違う、女姓の柔らかい手と、
つるつるした指の腹の感触。
「う…あ…」
「あん‥‥なんか出てきてるよ‥‥真中ぁ‥‥‥」
さつきはしゃがみ込み、興奮を抑えきれない感じで淳平のモノの先から滲み
出ている汁を、舌で拭いとるように舐めた。
「はっ‥‥あぁ‥‥」
「ん‥‥ふぅ‥‥ん‥はぁ‥はむ‥‥ぅん‥‥‥」
歯をたてないように気を付けながら、さつきは淳平のモノを大事そうに口に含み、
舌を使って奉仕しだす。
(く‥はぁ‥‥ヤバい‥‥‥‥なんだコレ…)
想像を絶する気持ちよさに、気が遠くなりそうだった。ペニスに舌が這うねっと
りとした感触とさつきの口内の温度。初めて味わうその刺激に、今すぐにでも射
精してしまいそうだ。
「ねえ…こうでいい…‥の‥かな‥‥」
はぁ…はぁ…とさつきの吐息がモノにかかる。
「さっ、さつき…ごめん‥もう‥‥なんかヤバいかも…」
淳平は尻の穴のあたりにギュッと力を入れて射精を必死に堪えている。
「えっ!?もう?ど、どうしたらいいかな」
目を見開いてそう言いながらも、さつきのの口と舌は動くのをやめない。彼女も
初めての事に混乱しているようだ。
「と、とりあえずストップ!ストップ!」
ちゅぽっという音をたて、さつきは慌ててペニスを離した。あと少しだけ止める
のが遅かったら、間違いなく発射してしまっていただろう。とにかくどうにか淳
平はさつきの顔に向かって射精する事を免れた。
「はぁっ、はぁっ」
「なんだ、口に出しちゃってもよかったのに」
顔を覗き込み、さつきは薄く頬を染めながら、あっけらかんと言う。
「だってさ…」
「なに?」
「なんか、かっこ悪ぃじゃん?初めてで、その…入れる前に出ちゃうって。一生
言われちまいそうでさ、はは…」
「…。」
さつきの顔がなんだかニヤけている。そんなに深い意味で言ったわけではなかっ
たのだが、どうやら『一生』という言葉に気を良くしたらしい。
「何ニヤニヤしてんだよ」
それを察した淳平も顔が自然とニヤける。
「べつにィ…」
なんともしらじらしい顔で、さつきは目線を外した。
「きて…真中…」
向かい合うような格好で、さつきはゆっくりと、できるだけ広く足を開いた。秘所
はまだしっとりと充分に潤っている。
「う、うん…」
淳平は緊張が彼女に伝わらないようにと精一杯気を張っていた。が、そう思え
ば思うほど体に力が入ってしまう。
「ふふっ。やだ真中。キンチョーしてんの?表情がすごいカタいよ」
「え。ははは。そんなこと…」
自分でもわかるくらい顔が引きつっている。
「真中」
さつきは急に顔を近づけ、額をこつんと付けてきた。温かいさつきの体温。
「あたしは大丈夫だから。真中が相手なら怖くないよ」
目をつむったまま、はっきりとそう言った。
「さつき…」
「だから、ね?力抜いて。いつもの真中でいいから」
…こういう時に強いのはいつだって女性の方なんだなあ‥‥淳平は男の情
けなさを自分で受け入れると共に、相手がさつきで本当に良かったと思った。
どうやら、それでいくらか緊張がとけた気がした。ひとつ深呼吸する。
「…ありがとうな、さつき。俺、頑張ってカッコつけようと思ってた。自然でい
いんだよな」
「うん。いいよ真中、その顔。あたしの好きな真中だ」
ニコッとさつきが笑う。とろけるような笑顔だった。今日、彼女が初めて見せる
ような表情をいくつも見た。だが、その中でも今の笑顔に一番ドキッとした。
「さつき…」
「ん…」
二人は短く深いキスをする。心の準備は整った。
「いくよ」
「うん…」
さつきは再び淳平を受け入れる為、足を開いた。淳平は硬くなったモノを秘部に
当てると、徐々に中へと侵入させた。
「あ…あ…」
肉棒は緩やかにさつきの中に飲み込まれていく。
「っ……」
さつきは目をぎゅっ、とつむり、痛みに耐えているようだった。
「さつき、大丈夫か?痛いか?」
「‥‥だ、だいじょ…うぶ…」
さつきの息は荒い。淳平はなるべく彼女の苦痛を和らげようと、できる限りゆっ
くりと挿入していく。
「く‥‥う…」
やがてぬるりとした感触が、淳平のモノを完全に包み込んだ。初めて入る蜜壺の
中はまるで溶かしたチョコレートのように生温かく、そしてたっぷりの蜜で濡れ
ていた。膣圧は、肉棒が鬱血して痺れてしまうのではないかと思う程にきつい。
「ぅ……あぁ…さつき…気持ちい‥い‥‥」
不思議な、ぐにゃぐにゃした秘肉の感触。かつて味わったことのない気持ち良さ
に、頭の中が真っ白になりそうだった。さつきは淳平の首に手を回し、前から抱き
つくような格好になった。ぬちゃっ、という音が鳴り、接合部の密着度はさらに増す。
「ほ‥‥んと?‥‥真中‥あたしも…はぁ…」
痛みよりも快感の方が勝ってきたのだろうか、彼女もだんだんに感じ始めたよう
だった。淳平は挿入した時よりもさらにゆっくりと、彼女を気遣いながらやさし
く腰を動かしてみる。
「あっ…ああっ」
初めてできついはずのさつきのアソコの中は、もはや楽にに動かせるほどに
潤滑液で満ち溢れているようだった。にちゃにちゃと音をさせ、淳平のモノに絡
みついてくる。
「……ぅ」
淳平はぎこちない腰の動きで、ほんの少しだけ抜き差しのスピードを上げた。
「あっ、あっあっ、あん!‥‥あぁあん‥‥真中‥‥いぃ‥‥あぁっ‥」
首に回されている手に力がこもってきた。大きな胸がふるふると小刻みに揺れ
ている。ぐちゅっぐちゅっ、という淫猥な音が二人の興奮をより高める。
「ああ………いいよ、さつき‥‥‥すごくいい…はぁ…」
淳平はもう限界が迫ってきていた。
「ああああああ、ああっ!ダメダメ真中!あたしもうっ……イッ……ちゃいそうっ」
その瞬間、肉襞がきゅうぅっ、と淳平のモノを締め付けてきた。ものすごい快感
が淳平を襲う。
「あぁっ‥さつきっ‥‥俺も‥出る…よ!…ぁ…あああああああ!あっ!……」
「あんっ!ま…なかぁっ!…いっ…くぅぅ!……あああぁんっ!んッ!…んぁあ
ああ!……あはぁッ!」
−−−−−びゅるるる!どくっどくんっ!どくっ!!
ものすごい勢いで、淳平はさつきの中に白濁液を発射した。
「ああッ!あっ…あっ…あっ……なんか…でてるよぉ…真中…」
さつきの秘肉は淳平の精液を最後の一滴まで搾り取るかのように肉棒を締め上げ、
ぴくんぴくん、と蠕動する。
「は‥‥あ‥ぁ‥‥‥」
「ん‥‥んんっ…」
彼女は下半身をぶるぶると震わせている。絶頂の余韻のような振動が淳平の身体
にも伝わった。
「はあ…はぁ…はぁ……はぁ‥‥‥」
「あ‥‥ん……はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥はぁあ‥‥‥‥‥」
しばらくの間、お互いが放心状態で、目を合わせたままじっと動かなかった。
いや、動けなかった。荒い息遣いだけが聞こえる。やがて少し息が整うと、ようや
くまっ白だった頭に感覚が戻ってきた。
「はぁ……真中…すき……だよ…」
「…俺もだよ…さつき…」
身体を繋ぎ合わせたまま、二人はお互いの存在を確かめるかのように深いキスを
した。
セーラー服を着終えると、さつきは「んーっ」と声を出して背伸びをした。火照り
の残る身体。二人とも頬がほんのり赤い。
「勉強、できなかったね。あはっ」
高かった夏の日差しは、もう半分ぐらい落ちかかっていた。穏やかな夕日が部屋
の中に差し込み、さつきの栗色のポニーテールはオレンジ色に染まっている。
「うん。…それどこじゃなかったな。はは」
薄く笑いながら淳平はそう答えた。正直な答えだ。
「ごめんね。だって真中がさぁ‥‥」
「何?」
「アレ、何かはわかんないけど‥‥東城さんのでしょ。反応でだいたいわかる」
それほど表情は暗くないが、少しトーンの落ちた声でさつきが言った。淳平は
忘れかけていた事に気が付いて答える。
「ああ、ノートね…うん。そうだよ。東城には言っちゃダメって言われてたから、さ」
後ろめたさは無い。でも、彼女の言葉が胸に痛い。
「ふーん。二人の秘密、ってわけね」
「そ、そんなんじゃないって」
さつきは皮肉な目をして言ったかと思うと、いきなり顔を両手でばっ、と覆った。
「…ひっく……」
「さ、さつき…お前、泣…」
戸惑う淳平。
「…な〜んちゃってね!ウソよ♪言ったでしょ、関係無いの。真中が誰の事を気
にしてるとか。もうやめたの。あたしはどうしたって真中が好きなんだもん。これ
ってどうしようもないじゃない?」
いつものさつきの笑顔だった。無理しているようには見えない。自然な、教室で
いつも見ている笑顔。淳平は心の底からホッとした。
「…よせよ。びっくりするじゃんか」
「ふふ。ごめん」
「痛く…なかったか?」
「ん。大丈夫。ちょっと痛いけど。真中が優しくしてくれたし」
彼女はまたとろけるような笑顔でニコッと笑った。
「さて、と。そろそろ帰んなきゃね」
「…え」
「あー、真中寂しそう!さてはもうあたしのトリコだな?」
さつきはこちらを指差してにっ、と笑った。そうかもしれない。事実、淳平の頭の中はも
うさつきの事でいっぱいになっていた。たった一度の交わりで、相手の事がこんなにも
愛しくなるものなんだろうか。セックスって偉大だ。
なんだろう。他の事を考えようとしても、さつきの事ばかりが浮かんでくるのだ。彼女も
同じだろうか。
「寂しいよ」
淳平は素直に答えた。あまりに真剣な顔だったせいか、さつきは少しびっくりした顔
をした後、寂しい顔になった。
「真中にそんなこと言われたら…帰りたくなくなっちゃうじゃん」
短い沈黙。
「…ホントはあたしもね、今日は真中と離れるのが凄く寂しい。ずっと一緒に居たいよ。
でも、そうもいかないよね」
「…うん」
「だからまた明日。学校でね」
「おう」
「なんなら明日もする?お・べ・ん・きょ・う♪」
「え?う…」
すっかりさつきのペースだった。冗談よ、と彼女は言う。
「さつき、俺…」
「ん?」
「さつきのこと…好きだよ」
「!…。」
「…。」
「ホントに?…セックスしたから、とかじゃなくて?」
「そんなこと…」
無いとは言い切れなかった。だけど、今は東城や西野の事は考えられない。
さつきが本当に愛しい。それだれけは嘘じゃなかった。
さつきが胸にこつん、と頭をつけてきた。
「無理しないで…真中」
「無理なんか…」
「ううん、いいの、これで」
「さつき…」
「今は…これがあたしの精一杯だから」
またさつきは笑う。今度は少し無理していたかもしれない。淳平は愛しさを堪え
きれずに、強く抱きしめた。
「ま、そのうち本当にあたしの虜になっちゃうかもしれないけどね」
彼女は胸の中で不敵に笑った。淳平にはあながち冗談にも聞こえなかった。
なぜなら、胸のドキドキは止まらないままだったから。
「愛してるよ」
「んふふ、襲っちゃった甲斐があったかもね♪」
「バカ」
「ふふ」
「さつき」
「ん?」
「…送ってくよ」
少しでも長く一緒に居たい。その想いは二人とも同じだった。
「ホント!?ありがと。うれしい!」
さつきはカバンを持つと、本当に嬉しそうな顔でそう言った。
「おじゃましましたー」
誰も居ない家に向かって言うと、さつきはトントンと靴を履いて外に出た。鍵をかけた
淳平がそれに続く。綺麗な夕焼け空だった。
「手、つなごっか」
「お、おう」
ぎこちない手つきで、淳平はさつきの柔らかい手を握った。くすくすっと彼女が笑う。
「そういえば昨日さー…」
「あはは!何言ってんのよー…」
一歩家を出ると、不思議なもので普段の会話に戻っていた。体の芯にはセックス
の興奮や快感の余韻がまだ残っているのを感じる。でも、関係なかった。
いつも通りの二人の空気が、やけに心地良かった。
昨日のテレビ番組の話。となりのクラスの噂話。いつもと変わらない、バカな話。
だけど、放課後よりもずっと縮まった二人の距離。
淳平とさつきは、残された時間を惜しむようにゆっくり、ゆっくりと歩く。
まぶしすぎる夏の夕焼けの中、ぎゅっと手をつないだ二人の影は、どこまでも永く
伸びていった。
−−−−−−−−−−−−Fin−−−−−−−−−−−−