PART.4
「DVDの売り上げがなかなかいい感じだ。大手ストアや通販サイトでも軒並み上位を占めている。大ヒットとまでは
いかなくてもソフト面でも充分な成績は残せるだろう。とりあえず君の初監督作品は成功したといえるだろうね」
尊敬する先輩映画監督・角倉から真中はそうお褒めの言葉を頂いた。
映画の実質的な上映期間は約2ヶ月間ほどで興行成績としては悪くないものであった。
評論家サイドからも、演出面等でまだ粗さがあると指摘されはしたがそれでもメジャー資本での初監督作品としては
まあ充分な合格点であろう、と一定の評価は与えられた。
主演の役者らも好印象で特に主演の女の子は映画の中で見せたそのフレッシュで瑞々しい感性と高い演技力に加え
抜群のアイドル的容姿から既にいくつかの私的ファンサイトまで立ち上げられているのだという。
ただ何よりの話題になったのがシナリオ担当の東城綾一人に絞られた熱くホットな論争がネットを中心に渦巻いてるのだという。
やれ、もっとすっきりした話にして欲しかった、好きなのに離れ離れにされて可哀相、でも考えさせられた、感動した、或いは
東城綾の書く話だからもちサイコー!とか、綾たんマンセー、綾のストーリー以外観るべき所がない等々・・・。
映画ファンや東城ファンの読者から中立の一般人からの視点など随分真面目なものから無責任かつ面白おかしな意見が
満席してるらしいのだが、ただ彼女のその無駄のない構成力と甘さを排した人間描写はやはり認めざるを得ない、という
評価が一般的らしい。
やっぱ東城は凄いや・・・。
監督の自分がさほど話題になっていない事など気にもせず単純に真中は感心しきりだ。
東城のシナリオは読んだ途端もうその世界に引き込まれた。
彼女が自分の小説風にシナリオを書けばこうなるのだろう、という云わば小説で確立させているその素材によるスタイル
そのままのものであった。
いい意味で自分だけのオリジナリティーを脚本の中でも充分に発揮していたのだ。
月並みに言えば持って生まれた才能なんだろう・・・・全く羨ましい限りだ。
彼女のおかげで彼自身の才能もまた刺激されたにも関わらずどこかその才能に微かだが嫉妬を覚えてしまう真中であった。
「真中君も良く頑張ったよ。この仕事に君を推薦した僕も鼻が高いって訳だ」
角倉は愛弟子のような存在の真中をそう褒めながらもちゃっかり自分にフォローを入れたりもする。
だが実際そうなんだ、俺は角倉さんがいなきゃあこんなチャンスには巡り合えなかっただろう、絶対に・・・。
真中は今までの経緯を静かに回想した。
世界放浪から帰国しある国での映画祭の映像部門で小さな賞を受賞できたのを皮切りに真中は角倉の元を訪ね
そのまま彼の門をくぐる事になった。
彼の監督作品での現場の演出助手として初めて大掛かりなセットや撮影現場というのを目の辺りにした。
撮影現場は実に過酷で助手というのはとどのつまりいい様な使い走りみたいなものだった。
重労働な上に低賃金でとてもじゃないが映画への情熱が無ければ勤まらないものであろう。
しかし真中は全く弱音など吐かず黙々とだがしっかりと仕事をこなしていった。
やがて普通の助手から助監督的立場へと引き上げられたが立場はさほど変わらないものだった。
やはり助監督と監督では雲泥の差があるものだ・・・・なかなかシビアな現実に真中は自嘲する。
しかし転機が訪れた。
ある音楽アーティストのミュージックビデオクリップを手掛けてみてくれないか、という話が舞い込んで来たのだ。
実は元々角倉に要請があった話なのだが角倉が多忙な為、という理由でそれを断り代わりの代理で真中に
話が回って来たというのが事の真相だった。
角倉としてはここらで真中を試させてやりたい、という師匠としての気遣いがあったのだろう。
それに応えるべく真中は二つ返事で了承しその仕事を引き受けた。
はっきりいえば自分の撮りたい映画作品でなくましては自分が好きとは言えない様なタイプのジャンルであったが
贅沢など言える立場では無かった。
少しでもチャンスを次に生かしていかないと!
そう決心する。
こうして真中は約2年間半ほど様々なプロモーションビデオ(PV)の制作に携わった。
かつて幼馴染の南戸唯をモデルに短編風映像スケッチなる作品を作ったことがあった。
それは角倉に酷評されて(内心は悪い物でなかったのだがあえてけなしたのだ)真中は忸怩たる思いを味わされそれが
再び東城綾との特別な絆を彼の中で構築させた(何よりそれは東城綾も同じ想いであったのだが)。
PV制作は南戸唯と共に作り上げた短編作品を思い出しながらも、だが決して独りよがりにならない様に苦心した。
それはまさに試行錯誤の連続であった。
まず彼らの音楽を徹底して聴き込み理解しその音楽観やスタイル、映像観までも的確に把握していく。
正直自分の感性にはマッチしないような音楽作品を聴かされそれだけでウンザリしそうにもなった。
現場では現場の苦労もあった。
彼らの主張やエゴのような言い分も聞かされたし、お前らなんか下請けだよ、という態度を取られる事もあった。
自分でもこんなの音楽を引き立てる為のおまけみたいなもんさ、と卑下しそうにもなった。
それでも真中は一生懸命その仕事に励んでいった。
これも未来の為だ、いつか来るべき映画作品の為の捲土重来を迎える為の貴重な経験なんだ・・・・。
常にそのような気持ちを闘争心と共に失わずにいられたのだ。
彼はしっかりと未来を見据えていた。
いつの日か東城綾のあの作品を作るその日の為に・・・・。
約2年間半のPV制作の監督として彼は音楽界でそれなりの立場を築いていた。
彼の作品はスタイリッシュさとファンタスティックさが持ち味であった。
PVとはいわば音楽(歌声と演奏)と新たに作られた映像(彼らの演奏姿か或いはドラマ風演技)の融合物なのだ。
つまりセリフや解説などはない為に作り方次第では意味不明で観る者には訳のわからない代物にもなりうる。
それが角倉に以前酷評された時の一番の要因だった事を彼は良くわきまえていたのだ。
彼はその点を一番考慮して単純かつカッコいいストーリーと眼を瞠る映像を考えて撮影していった。
やがて彼の作品はミュージシャンたちや音楽市場で徐々に話題を集めるようになっていき
彼に作品を依頼するミュージシャンは業界の大物ロック歌手等を含めて沢山の数に増えていった。
真中はここ2年足らずの期間で新進気鋭の映像家としての地位を手にしつつあった。
やがて真中はこの間で人生で一番の大きな転機を迎える事になった。
それは西野つかさとの結婚であった・・・・・。
ある祝日の午後、真中夫妻のマンションに妻・つかさの桜海学園時代の旧友3名が訪れた。
つかさにとってトモコ、アキ、ヒロミの3人は高校時代からの腐れ縁であり最も心許せれる女友達であった。
今日は真中夫妻の折角の御呼ばれを受け彼女たちはそれぞれ忙しい最中ながら快く時間を設けてくれたのだ。
何よりも卒業以来の久々の仲良し組の集まりなのだ、彼女たちは再会するや歓声を上げながら互いに抱き合ったりした。
つかさの手による手作り料理と特製オリジナルケーキに皆舌鼓を堪能した。
「真中さん、こんな可愛くて料理もケーキの腕も抜群の我らが桜海同期の華・つかさちゃんをお嫁にしちゃって
ホント羨ましい限りだねー」
既にアルコールで心地よく酔って口が滑らかになっていたつかさの一番の旧友のトモコが茶々をいれてくる。
他の二人に比べトモコはフランクな性質なのか堅苦しくならず自然体で真中にも接してくれた。
真中としてもその方が喋りやすくて打ち解けるのも一番早かった。
真中とトモコたちとは高校2年の時の関西方面の修学旅行時に一度面識があった。
寝静まったその日の深夜に真中がつかさと外で秘密裏に落ち合い午後からの自由行動時にトモコらや学年が違うのに
何故か修学旅行に参加していた端本ちなみの協力もあってか真中とつかさは二人だけの自由時間を満喫できたのだ。
用心の為に着替えたつかさの泉坂の制服姿がとても可愛かったのを今でも良く憶えている真中なのであった。
その時はまさかつかさの彼氏が(正確には当時の二人はまだ別れてから完全に恋人の仲に戻った訳ではなかったが)
このあまり冴えない感じの真中淳平だとはトモコたちは誰も思わなく真中が皆の前に表れた時も所謂代理の人間だと
勘違いしていたくらいだ。
後にその彼氏があの時の彼だった、と知った時はトモコたちは大袈裟に驚いたものだった。
しかし今の真中淳平の体格風貌は当時に比べても非常と逞しいものであの頃の少々ひょろっとし頼りなさそうな印象とは
随分と印象が違っていた。
曲がりなりにも4年間の世界放浪の旅は内面外面共に彼を著しく成長させてくれる貴重な月日だったのだ。
「真中さんの監督した映画観ましたよ。もおー凄く良かったです。最初はつかさの旦那さんだから、みたいなつもりで
観たんですけどホントに感動しちゃって凄く泣いちゃったなあー。DVDも買っちゃいました」
友達の一人、アキは根っからの映画好きらしく年間沢山の映画を観たりしてるがその中でも真中の初監督映画は
その年の個人的ナンバー1だとまで言ってくれて真中は恐縮しきりだった。
この3人の中では唯一結婚していて休日は旦那と買い物がてら映画鑑賞する事が趣味なのだそうだ。
「あたしもあの映画感動しました。最後のあの別れ方なんかとても切なくていたたまれなかったなあ・・・。あ、そうだ!
確かシナリオが東城綾さんなんでしょう?」
ヒロミ嬢もつかさを通じての映画鑑賞者の一人だったのだがお世辞抜きで感動したと言ってくれた。
やはりというか東城綾の神通力はなかなかのものである。
聞くとみんなDVDまでちゃんと購入してくれているのだから本当に有難い話だ。
間接的に妻のつかさもこんな形で真中の映画に貢献してくれているのであった。
つかさと彼女たちは他愛も無い話で大いに笑い盛り上がり久々の懐かしい貴重な一時を過ごしているようであった。
真中は彼女たちの会話に黙って耳を傾け一緒に笑ったりしながらこの空間に幸福な時を感じていた。
この日の為につかさは沢山のケーキや菓子を用意しており彼女たちは太っちゃう、と言いながらもそれらにパクついた。
トモコなどは同時に酒もいける口なようで上気分に酔いながらやがて泣き上戸な告白を展開し始める始末だった。
彼女はこんな風ではあったが都内でも名門の私立女子進学校・桜海学園で成績は常に上位であり大学は高校と同じ
女子オンリーの国立・お茶の水に進学した。
文京区に同じキャンパスがあったせいか最高学府・東大の男子学生とは特にかなり頻繁に合コンの類を試みたものの
なかなかいい巡り合いがなくそれどころかその席にはいつもフィールドワークと称してカメラ、ビデオを片手に女子らを
片っ端から誘うスケベな男がいたのだという。
真中とつかさはお互い顔をあわせそれがあの外村ヒロシだと直ぐに理解し苦笑させられた。
あいつは今でこそ新進気鋭の芸能会社社長だが一歩間違えたら変態と変わらんな、と真中は思う。
トモコはそれからも愚痴をこぼし続け、自分でも結構悪くない女だと思ってるのに今に至るまで男に縁がないのだ、と
終いにはワンワン泣き出しみんながよしよし、と子供をあやすように慰める。
彼女は大学を出てから学校の教師になり今は公立小学校の教諭をしているのだという。
真中はトモコを改めて観察してみたがよく見てみるとヘアバンドで束ねた黒のロングヘアーにそれほど悪くもない顔と
そしてなかなかの大きな胸といい結構いい女じゃないか、と確かに思えた。
でも色気では高校時代の黒川先生に、そして美しさと気品では東城綾に劣るな、などと実に余計な評価をしてみたりする。
「ところでつかさと真中さんってどういう経緯で知り合ったの?なんか凄く興味あるんだけど」
アキが唐突に話題を変えて尋ねてきた。
「ああ、そういえばそこらのとこどうなの?ねえねえ、結婚するきっかけは?」
今まで酒でグダグダと愚痴こぼしをしていたトモコも途端に元気を取り戻し話に突っ込んでくる。
「え、えーと、俺たち実は中学3年の時から付き合っていて・・・えー」
何となく今までいろいろあった経緯を語りにくそうにしている真中に代わってつかさが助け舟でゆっくりと語りはじめる。
「・・・あたしたちは中学3年の冬の季節に出会いそして付き合い始めた。そのきっかけは旦那の淳平からの告白。
その告白がね、なんていうかとにかく無茶苦茶面白くてね・・・いきなり鉄棒で懸垂はじめてそこで大声で、つかさちゃん
好きだ!付き合ってください!って・・・。もう呆気に取られちゃったんだけどそれがあたしにはとても面白くてその場で
すぐにオーケイだしちゃった」
トモコたちは興味深そうに話に聞き入る。
「元々あたしは以前から淳平にはちょっと興味持っていてある時彼の友達が先生に風紀の事で説教受けてた時に
一人だけ果敢に先生に刃向かってた姿見てその時からなんでだろう、なんとなく興味を持っちゃって・・・。それから
廊下でその友達となにやらあたしの名前言いながら騒いでるものだからちょっとキザに自己紹介風に挨拶しちゃった。
それで何日かして彼に放課後グラウンドに呼ばれてその、例の告白を・・・・」
そこまで話し終えてつかさは一呼吸置く。
対するトモコらは腹を抱えて笑い出す始末である。
「あはははは、何その告白・・・・・ちょっと真中さん、面白すぎ、ありえないって・・・あははは・・・ねえ、真中さん今度は
コメディ映画撮るべきだわ。きっとお笑いの才能あるって」
ひとしきり爆笑しながらトモコが言う。
そ、そんなに可笑しいのかな?・・・・真中はなんだか素直に喜べない気分だ。
間を置いていたつかさが再び話を続ける。
「そんな感じであたしたちはずっと交際してたんだけど高校進学を境に少し距離を持つようになった。淳平は泉坂に、
あたしは試しに受けてみた桜海にまさか合格しちゃって本当は同じ泉坂行くつもりだったんだけど・・・。でもあたしが
桜海に進路を変えた本当の理由はそれとは別にある作戦の為かな?淳平の事でそうしなきゃ勝てないと思ったから・・・」
そこまで語ったつかさの表情にはいつしか硬いものを帯びていた。
「勝てない、ってどういう事?」
トモコが訊ねる。
「うん・・・実はある人があたしと同時期に淳平と知り合ってね、ちょっとその人が凄く驚異的な存在に思えたんだな・・・。
彼女が誰かは言えないけどあたし達と同じ泉坂に行くと知ってからはあたしいろいろ思う事があってここは一度
引くと見せかけた方がいいかな、って。高校が別々になったけどそれからもあたしたちは恋人のままでいたんだけど
その年のクリスマス前夜に一度別れちゃった・・・。あたしの方から振っちゃった・・・今考えたら相当馬鹿な事したと
思ってるけどね」
トモコたちはじっとつかさの話に耳を傾けそして真中はというと心中穏やかではなかった。
つかさが語るある人とは無論東城綾の事である。
そこまで詳しく話さなくてもいいじゃないか・・・どういうつもりなんだ?・・・。
「でもあたしは淳平の事を忘れる事が出来ずバレンタインのチョコをそっと家の前に置いたりイメチェンの為にそれまで
伸ばしていた髪切ったり・・・。淳平がある事情で桜海を訪れた時にあたしの為に凄く痛い目に遭わされた事があって
その姿見た時にもう涙が止まらなくて・・・凄く申し訳なく、そして凄く嬉しかった・・・あたしの為に体を張ってくれて・・・。
それからは特定の関係に戻らなくても友達としてのお付き合いは継続していて高校2年の時は淳平の映画合宿にも
参加させてもらえて最高の気分だった。そうだね・・・今だから言えるけど3年の時に将来の進路で壁につまずきそうに
なりあたし淳平にね、一緒に旅に付き合って!と頼んでさ、淳平本当に付き合ってくれたの・・・一緒に3日間ほどね」
大胆告白に驚くトモコたち。
「言っとくけど何もやましい事は無かったからね、淳平はジェントルマンだったんだから。・・・そして忘れもしない、一緒に
水族館に行った帰りに公園の鉄棒で今度はあたしが懸垂しながら淳平に告白したの。ねえ、そうよね?」
つかさが真中に同意を求めてくる。
真中はただ黙って首を縦に振る。
「それから再び恋人の関係に戻る事が出来た。淳平がそれを受け入れてくれたから。でも正直どこか不安な気持ちも
あった。本当にこのまま恋人のままでいられるのかな、って。そもそも淳平にはあたしよりも相応しい人がすぐ近くに
いて淳平がその人の元に行っちゃうんじゃないかな、って心配してた・・・。でもその心配は打ち消された・・・ある泉坂の
大きなイベントがあったその日の夜にあたしは淳平に、抱かれちゃったんだ・・・・あーあ、言っちゃった・・・・」
つかさのその告白の内容に一同は驚きの表情を浮かべる。
「・・・でも結局あたしたちはまた別れちゃったんだ・・・。今度は淳平があたしを振る形でね。そう、別れ話を切り出された時
自分でも思っていたほどには驚かなかった。あー遂にこの時が来たのか、って。やっぱりあの人には敵わないのか、
ともね。でも淳平はそれは違うと否定していろいろ話したんだけど淳平の決意は固かった・・・。桜海卒業式の日の夜に
トモコたちにお別れ会してもらって次の日にあたしは成田でフランスに旅立って行って・・・。もうこれで終わりなんだと
思ってたんだけど運命なのかな?・・・3たびあたし達は巡り合いそして去年晴れてゴールインしたのでした・・・・。ハイ、
長かったあたしの話はこれで終了!」
最後はワザと明るい口調でつかさは話を終えた。
「なんだか夢のような作り話みたいだね・・・・2回付き合って2回別れてさあ、3回目でまた付き合ってゴールインって・・・。
なんだか執念のような間柄みたい・・・」
トモコがどこか感心したように呟く。
「・・・うん、そうだね。でもあたしね、随分悟ったんだ。あたしには結局真中淳平しかいないんだ!って。4年間二人は
別れて離れ離れだったんだけど最後はこうやって元の鞘に納まる、みたいな・・・。きっと運命の糸で結ばれているに
違いないんだ、とまで思ってる。ぶっちゃけて言えばもう少々の事ではあたしは動じない自信があるもの。だから例えば
この旦那が他所で浮気して女作ってもあたし焦らない。きっと最後はあたしの元に帰るからと確信してる」
「きゃあーー!つかさちゃん、超問題発言じゃん、それ!」
トモコが冷やかすもののつかさは不敵な笑みでそれを受け流す。
しかし真中の体は石の様に固まってしまっていた・・・・。
冷え冷えとしたなにかを感じた・・・・。
長い時間お暇していたトモコたちも日が暮れた時間になり重い腰をあげ真中宅を後にする。
今日は楽しかったわ、また来てね、ええまた会いましょう、そんな別れの話をしながら彼女達を外まで送る二人。
その別れ際にヒロミがふとこんな質問を投げかけてくる。
「あのつかさ、さっきのあのお話だけどね・・・その時々話の中で出てきたある人ってひょっとして東城綾さんじゃないの?
あたし聞いたことあるんだけど東城さんって元々桜海志望だったのにある事がきっかけで泉坂に行ったって話聞いた事
あったものだから・・・。それに東城さん確か真中さんと同じ映画部で一緒に映画作ってらっしゃったんでしょ?それで
ひょっとしてと思って・・・・」