「向井ー」  
「は、はい」  
呼ばれて立ち上がり、教壇の前で講師が差し出した模試の結果を受け取る。  
「頑張ったな。この調子で行けば大丈夫だろう」  
「あ、ありがとうございます……」  
きゅ、と模試の結果を胸に抱き締めるようにして、こずえはうきうきと席に戻ろうとする。  
が、  
「……あ……」  
こずえの前に名前を呼ばれていた右島が、少し落ち込み気味にこずえの前を横切る。  
「……どうだった?」  
かたん、と椅子を引いて座ってから、こずえは隣の席の右島に声を掛ける。  
「……ほら」  
右島はがたんと乱暴に椅子に座ってから、こずえの正面に模試の結果を投げて寄越す。  
「あー…」  
こずえは思わずため息をついてしまった。結果は、B。  
「え、でも、すごいよ右島くん。この間は、確かE判定だったじゃない」  
「…………」  
右島はスネたように机に突っ伏してしまっていた。  
……教室は模試の結果が出る日とあって、久々にがやがやと込み合っていた。  
ただクラスの人々に「怖い不良」と恐れられている右島の近くに座っているのはこずえだけだった。  
右島の学校の友達も今日は休みだし、真中は勉強に集中する、と張り切って一番前の席に座っている。  
「すごい進歩だと思うよ?」  
こずえは覗き込むように右島を見る。彼はこずえの視線に気付いたのか、ちらりと腕の間から顔を上げると、  
「Bじゃダメだろ」  
「ダメじゃないよ!まだまだ挽回できるじゃない!」  
「……いやそっちじゃなくて」  
「え?」  
きょとんとこずえが首を傾げると、右島はぼそりとつぶやいた。  
「こずえのアナル処女、もらえねぇじゃん。楽しみにしてたのに」  
「…………!!」  
こずえは一瞬で耳まで真っ赤になると、持っていた教科書で右島の頭を殴りつけた。  
 
(ひ、人に聞かれたらどうするのよぉ!?)  
こずえは小声で囁くように右島に抗議する。  
きょろきょろと慌てて辺りを見たが、こちらに注視しているようなものはいなかった。  
みんな、自分の模試の結果だけが今の関心ごとなのだ。  
「別にいいじゃねーか。俺らはもう公認なんだしよ」  
「だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょぉ!?」  
おもわず結構な声で叫んでしまうが、それでも周りに気にするような人はいない。  
まぁ、こずえと右島はいつもこんな風に騒がしく勉強しているので、周りも慣れたのかもしれない。  
「あーあ」  
右島はこずえをちらりと見た後で、もう一度突っ伏してしまう。  
(……ちょっと可哀想かなぁ)  
右島のここ一ヶ月の頑張りは、相当なものだった。  
授業の無い日でも塾に来て、自習室で勉強をしていたし(当然こずえもつき合わされていた)  
土日は近所の図書館で、やっぱり勉強をしていたし(当然こずえも以下略)  
……その間、何一つエッチなこともせず、ただひたすらストイックに勉強に励んでいたのだ。  
そのお蔭で、成績も上がりEからBへと大躍進したわけなのだから――  
(A判定じゃなくても、別に……いいよね)  
頑張りを間近に見ていて、こずえは単純に右島を尊敬しつつあったのだ。  
それに、――はじめてあの日右島と結ばれて以来、こずえはずっと二度目を待っていたのだった。  
(あたしも……したいんだよね、ホントは)  
ぽ、と耳が熱くなる。こずえは頭の中をよぎったあの日の光景や感覚を思い出すと、  
ぞくりと背筋を振るわせた。きゅう、と子宮が締め付けられるような感覚。  
「……いいよ?」  
「あ?」  
つぶやくと、右島がこちらを向く。あいかわらずがやがやとざわめく教室の中で、  
俯き加減のままこずえは言う。  
「……してもいいよ?頑張ったもん、右島くん」  
「……くれんの?アナ――」  
「そういうことを普通にハッキリと言わないでっ!!」  
がつん、とこずえはもう一度右島を教科書で殴りつけた。  
 
「そうじゃなくって。……その、普通のエッチだったら、あたし別にイヤじゃない……よ?」  
もじもじと手を合わせながらそう言って、右島を見る。  
右島は初めこそぼーっとこずえの顔を見ていたが、唐突に理解したようで、  
「マジで?」  
真剣に聞いてくるので、こずえはそっと頷いた。  
「………」  
途端に、がたん、と右島が席を立つ。  
こずえが驚いて立ち上がると、彼は一瞬の速さでこずえの耳元に口唇を寄せると、  
「――五分したら六階の男子トイレな」  
「へ?」  
きょとんとこずえが聞き返すと、右島は声をひそめて、  
「だから。いいんだろ?しても」  
「じゅ、塾で!?」  
思わず叫んでしまってから、慌ててばっ、とこずえは両手で口を塞ぐ。  
右島は呆れたようにこずえを見ていたが、すぐにそっぽを向くと、  
「――塾じゃなきゃどこですんだよ」  
ぼそりとつぶやいてから、鞄を引っつかんでさっさと教室を出て行ってしまった。  
「……うそぉ……」  
こずえが呆然と呻くが、その声はやはり誰も聞いてはいなかった。  
 
……こずえたちの通う塾は、ビルの二階フロアを使用していた。  
他の階にはすべてテナントや事務所が入っていたが、六階だけはひとつ事務所が入っているだけで無人だ。  
その理由も、あからさまなものだった。  
「うう……」  
四階辺りまではとことこと登ってこれたが、五階のあたりになるとこずえの足も重くなる。  
受験勉強一色でロクに運動もしていないのに、階段登りはきつすぎる。  
(本当に、するのかなぁ)  
学生鞄を両手で抱きかかえるようにしながら、こずえは階段をゆっくり登っていく。  
「塾で……えっち……」  
ぽつりとつぶやいてしまうと、ぼう、と顔が熱くなる。  
このまま引き返してしまえば、何も起こらない。  
そもそも、勉強をする場所で、受験生が行為に及ぶなんて……  
(いけないことだよね。それに、みんなが勉強してる合間に、右島くんとえっちするなんて……)  
なんて背徳的なんだろうか。じゅん、と秘所が潤んだ気がして、こずえは頭を振る。  
(なんだろ……悪いことしに行くのに、あたし、もう興奮してる……!?)  
 
「よぉ」  
初めて入る男子トイレにドキドキしながら足を踏み入れると、右島がそこにいた。  
「……うん」  
なんて答えていいのか解らなくて、こずえは曖昧に頷く。  
「こっち」  
ぐい、と右島がこずえの手を掴む。大きな手に包まれて、ついキュンとなってしまう。  
鞄も右島に奪われて、見ると、彼は乾いた洗面台の上に乗せた自分の鞄の上に、こずえの鞄を載せてくれた。  
「え、あの、どこに……?」  
「ここの便所、一番奥だけ洋式なんだよ」  
「そ、そうなんだ」  
右島は窓際の個室にこずえの手を引いて入ると、すぐにドアを閉める。  
「ふう」  
どっかりと蓋の開いた便器の上に、右島が腰を下ろす。  
「え?あの、右島くん……?」  
座ってしまった右島の正面に立つようにして、こずえはおろおろと尋ねる。  
「なんだよ」  
「その、あたし、どうすれば……?」  
スカートの裾を両手で掴みながら、こずえはおろおろとした。  
これから何かが始まるのは当然解っていたけれど、いま、どうすればいいのかが解らない。  
「おまえも座れば」  
「へ? どこに??」  
「ここ」  
そういうと、右島はこずえの腕を強く引き寄せた。  
「きゃっ!」  
すとん、と思わず座ってしまってから、こずえはぼう、とまた赤面する。  
ちょうど右島の正面、彼の膝の上にちょこんと座ってしまっていた。  
脚も思い切り開いているし、何より正面より少し下に、右島の顔がある。  
「――こずえ、」  
名前を呼ばれて、手が耳に触れる。  
そのまま右島の顔が近づいてきて、こずえは目を閉じる。  
 
「ふっ……」  
久々のキスの感覚に、もう足腰がとろけそうになっている。  
右島の舌が、探るようにこずえの口内に侵入してくる。それを迎えるように、こずえも舌を動かした。  
舌を絡めとるように動かす。途中で右島が息継ぎで口を開けたが、こずえは抜かれた舌を追いかけて右島の口の中に下  
 
を差し入れる。  
「……うまくなったよな、おまえ。すげーエロい」  
「そっ……やだぁ」  
むちゅ、と口唇を離して、右島が笑いながらいう。こずえは否定しようとするが、すぐにまた舌に翻弄される。  
むちゅむちゅ、と唾液が糸を引き、お互いの口唇はもうべたべただ。  
少しだけ煙草の匂いのする右島のキスに、こずえはもう、そこが充分に潤んでいるのを知っている。  
「……あ、」  
右島の手が、こずえのスカートのウェスト部分からブラウスを引き出す。  
そのブラウスの裾から手を差し入れると、こずえのブラのホックを簡単に外す。  
ふる、と胸が自由になった。右島は正面のボタンを、キスをしながら片手で器用に開けていく。  
本当に、どこでこんなことを覚えたのだろうとこずえが思う合間にも、  
もうブラウスのすべてのボタンは外されている。  
ぐい、とブラを押し上げる。こずえのちょうど鎖骨の辺りにブラが押しやられて、  
ぷるん、と形のいい両胸が薄暗い個室内で浮かび上がる。  
「なんか、すげーエロいよな。こういうシチュエーション」  
「……うん。なんか、すごい……感じちゃう」  
こずえがつぶやくと、右島がにやりと笑う。  
(あ……ッ!)  
はっ、と自分がとんでもないことを口に出してしまったことに気付くが、右島は嬉しそうにニヤニヤとしている。  
「おまえもそうなのか」  
「え、や、その……!」  
「ふぅん」  
面白そうにつぶやく右島。こずえが弁解しようと口を開こうとするが、  
「きゃうっ!」  
その声は、高い喘ぎ声に変わってしまった。  
 
ツン、と立った乳首を、片方は口に含み、もう片方は指先でこりこりと摘む。  
「はぅん……!」  
びくん、と舌先で舐められた瞬間に仰け反ると、右島が囁く。  
「――あんまりデカイ声出すなよ。下じゃみんな、真面目に勉強してるんだぜ?」  
そんなこというなら、そんなに刺激しないで――そう言おうとした声も、  
「ふぁ!」  
息の混じったような喘ぎ声になる。右島が、口唇に力を込めたのだ。  
きゅう、と急所をぬるぬるとした舌で乱暴に嘗め回されて、こずえは声を抑えるだけで必死だった。  
「だめ……声、出ちゃう……!!」  
「やらしーな、おまえは」  
「そんなことっ……ないもん……!」  
必死で呻くが、右島は軽く聞き流している。こずえは右島の頭を抱き締めるように、しがみつく。  
「はうっ……あ、やぁ……」  
こずえに頭を固定されながらも、右島は器用に口唇でこずえの乳首を攻め立てる。  
そして、同時に右手をこずえのスカートの中へと侵入させた。  
「パンツ、湿ってるぞ」  
「…………!!」  
くちゅくちゅと音がした。  
「はぁっ……!」  
パンツを少し横にずらして、こずえの秘所に右島の指が侵入する。  
「すげぇビショビショだ」  
 
「右島くんだって……!」  
こずえは仰け反りながらも、必死に反論する。事実、こずえが乗っかっている右島の股間部分が、  
もうかなりの硬さを持っているのは明らかだった。  
「生意気言うなよ。お仕置きするぞ」  
「やぁ……!」  
指が増える。二本になった指。中指が根元まで入り、奥の部分で中指の先だけを折り曲げる。  
「ひあああっ!?」  
突き上げるような快感に、こずえは右島の頭を離して仰け反る。  
くい、くい、とそこの部分を右島の指が刺激するたびに、びくんびくんと体が跳ねる。  
「ここ、イイだろ?」  
「ふあっ……!!」  
こずえは答えられずに、ただがくがくと体を震わせた。頭の中が真っ白になる。そして、  
「ひゃううううっ!!」  
目を瞑って叫ぶ。頭の中が真っ白になり、眩暈すらした。  
右島はまだ数回そこを刺激しただけなのに、こずえはもう絶頂に達してしまっていた。  
「……お。イった?」  
嬉しそうに聞く右島に、こずえは荒い息のままで答える。  
「…………ばか……」  
右島はこずえの言葉に苦笑すると、こずえの腰を掴んで立たせた。  
 
「そろそろパンツ脱げよ。換えのなんて持ってねぇんだろ?」  
「うん」  
「これ以上濡れたら、気持ち悪くてパンツはいて帰れないぞ」  
「あ……」  
こずえは、右島に刺激された秘所に自分でも触れる。もうすでにパンツはしっとりと湿っている。  
「やだぁ」  
いいながら、パンツを下ろす。脱いだパンツをスカートのポケットに入れていると、右島もズボンを脱いでいた。  
ばさり、と隣のトイレとの隔壁に脱いだズボンを下げると、右島はもう一度便器に腰を下ろす。  
「今度はドアの方を向いて座れ」  
「……え?」  
言われて少し迷ったが、こずえはおずおずと右島によりかかるように背中を預ける。  
「……すげぇ好き」  
ぽそり、と耳元で声が聞こえて、こずえは思い切り抱きすくめられた。  
(あ、そっか……)  
なんとなく理解する。きっと彼は、顔を見てこの台詞を言うのが照れくさかったのだろう。  
胸の中を、愛しさの塊のようなものが突き上げていく。  
「あたしも…すきだよ」  
抱きすくめる太い両腕をしっかりと掴んで、つぶやく。  
「あ……」  
背後から、右島がこずえの両胸を直に掴む。  
はだけた自分の胸を掴む右島の両手を見下ろすのは、なんだかとてもいやらしく見える。  
「んんっ……」  
こりこりと乳首をつままれる。硬くなったそれはとても敏感で、右島の手のひらの熱で溶けてしまいそうだった。  
むちゅむちゅ、と右島の口唇が首筋を撫でる。口唇から少し覗いた舌先に鎖骨の辺りを舐められる。  
「ひあ……!」  
するっと降りた両手が、こずえのスカートを捲り上げた。初めは脱ごうかとも思ったが――  
脱がないでよかったかもしれない、と思った。汚れる心配はあるが、スカートの中に右島の手が入る瞬間、  
ぞくぞくと、耐え難い衝撃を全身に与えた。  
 
「制服ってなんかエロいよな」  
同じことを考えていたようで、右島が笑いながら言う。こずえも笑い返そうとしたが、  
「ふああっ!」  
その声は、またも喘ぎ声へと変貌する。  
右島の右手が、またこずえの秘所へと滑り込む。今度は奥を刺激するのではなくて、  
にゅぷにゅぷと緩やかに出たり入ったりを繰り返す。  
「あ、あっ、やぁ……!」  
空いた左手は、こずえの粒――ピンと立ったクリトリスを刺激する。  
それはこずえが普段ひとりでするときにする触り方と似ていて、肉の上から、こするようにいじっている。  
じかには触らずに、じらしているのだ。  
「んはっ……!!」  
首を仰け反らせると、右島の口元が首下に吸い付く。囁くような声が、すぐ側で聞こえる。  
「だから、あんまり声出すなって……聞かれたらどうすんだよ?」  
「だってぇ…!ん、あん、だめぇ……!」  
いじられるたびに、頭が真っ白になる。考えられないほどの快感の波の連続。  
小さな絶頂はすでに何度か訪れていて、今はそれを乗り越えながら、大きな波へと向かっているところだろう。  
「んんん……!!」  
右島もそれを察知しているのか、こずえの秘所を出入りしていた指を二本にすると、掻き混ぜる。  
ぬちゅぬちゅぬちゅ、といやらしい音を立てて蜜があふれ出す。両足をだらりと下げて開脚したこずえの  
秘所からこぼれた蜜が、ぽたぽたと便器の中に落ちていく。  
 
「すげぇ音してるぞ。おまえ、本当にやらしいよな。こんなに濡らしてよ」  
「い、じっ……わるぅ!」  
「これが普通なの。この間は初めてだから優しくしたんだよ」  
ぐちょぐちょっ、とひときわ大きく掻き混ぜた後で、右島はとうとう中指だけを最奥部に差し込む。  
そして中指の先をくい、と折り曲げるのと同時に、クリトリスもじかに触り始めた。  
「ひあああああっ!?」  
途端に頭が真っ白になり、こずえはのけぞる。イってしまった。ほんの数回触られただけで。  
絶頂の余韻にぴくぴくと震える敏感な秘所なのに、――右島はまだ手を止めない。  
まるでまだ、こずえをイカせていないかのように。  
「やだぁっ……!!……こ、こわ、壊れちゃうよぉっ!! 休、ま、せて……!」  
「だめ」  
耳元で、囁くように右島が言う。  
「一ヶ月我慢したんだろ? 存分にイカせてやる」  
「そんなっ……ひあ、あ、あああああんっ!!」  
またすぐに頭が真っ白になる。ぷしっ、と秘所から蜜が噴き出した気がする。  
一瞬呆然とするが、右島の手はまだ止まっていない。すぐに感覚は快感だけに支配されてしまう。  
「だめっ……本当に、もうだめだよぉ……!!」  
涙目で言うが、右島はまだ止まらない。  
 
「あっ!ああ、だめ、ああああああっ……!!」  
その後何度イかされたかわからないほどに愛撫された後で、右島はようやく手を止めてくれた。  
こずえはもう自分がどれくらいの時間中、そうされていたのかわからない。  
ただ全身はびっしょりと汗に塗れて、髪はほつれてしまっている。  
開脚した秘所は、快感に抗うために、いまでは壁にローファーの底を押しやっているような状態だった。  
ぴちゃちゃ、とこずえの秘所から、蜜ではない液体が染み出したのを見て、右島は満足する。  
「おしっこ漏らすほど、気持ちよかった?」  
「っ……ぁあ…………」  
声が出ない。喘ぎすぎたせいか、ひどく咽喉が渇いている。  
途中で声を押さえようと両手で口を押さえたのだが、右島は耳元で、  
「今更押さえたって無駄だぞ。それに、ここは最上階だから、別に悲鳴上げても二階の連中には聞こえねぇよ」  
そう囁いて、さらに指の動きを激しくしたのだった。  
「ひどいよぉ……」  
「なにがだよ。気持ちよかっただろ?」  
「そうだけど……怖かったんだから。おかしくなっちゃいそうで」  
「ごめんごめん」  
ぐす、と涙ぐむこずえに右島は苦笑すると、そっと口付ける。  
振り返りながらキスをせがむこずえに口付けながら、右島の手がこずえの腰に触れる。  
「ひゃ!」  
相変わらずの力で持ち上げられると、初めのように対面になる。  
「ちょっと待ってろ」  
右島は壁に下がっているポケットからゴムを取り出すと、さっさと装着する。  
ずらしたトランクスからそそり立つ右島の立派な男根に、こずえは息を呑む。  
 
(大きい……)  
じゅん、と秘所が潤む。欲しいと思う。これを、入れて欲しい。早く、ひとつになりたい!  
「だめっ……我慢できない!」  
こずえは腰を浮かせると、驚いたそぶりも見せない右島の顔を見ながら、  
手を伸ばして根元を押さえた彼のものを、自分の秘所に押し当てた。  
つぷ、と蜜つぼがそれを飲み込む。  
「あふっ!」  
息が漏れる。太いそれに満たされた秘所が、歓喜を表すように震える。  
「……本当に淫乱だよな、おまえ」  
右島がこずえの腰を抑えながら笑う。不敵な笑み。どこかサディスティックな笑みに、こずえの中の何かが外れる。  
「だって……だって……!」  
こずえはただそれだけを繰り返しながら、激しく右島の上で身体を上下させる。  
じゅぷ、にゅぷ、むちゅっ……そんな卑猥な音が聞こえるたびに、どんどん燃え上がっていくのを感じる。  
「ふうっ……!」  
こずえの激しい動きに、とうとう右島が声を上げた。  
彼が声を上げるのは珍しいことだ。この間は、最後の最後まで我慢していた。  
「っ……だめだこずえ、俺、もう……!」  
こずえが達する寸前に、右島が声を上げる。  
そして。  
「やああんっ!!」  
「ううっ!」  
殆ど同時に、ふたりは果てた。  
 
「……悪い」  
はぁはぁ、と右島にもたれかかりながら息をついていると、耳元で右島が言う。  
「え……?」  
顔を上げると、右島は汗ばんで崩れた髪を書き上げて、  
「おまえのそこ、すげぇんだもん。我慢できなかった」  
「……えへ」  
恥ずかしそうに言う右島に、こずえは笑いかける。  
「だって、一ヶ月もしてないんだもん。溜まってたでしょ?」  
「昨日のうちに抜いときゃよかった」  
本当に残念そうにいう右島に、こずえは尋ねる。  
「もう一回、しようよ」  
「ダメ。ゴムねぇもん」  
「……あたし、持ってるよ?」  
こずえが言うと、右島は驚いたように彼女の顔を見る。  
「マジで?」  
「うん。お財布に一個入れてるの」  
こずえは右島の上から身体を下ろすと、少しよたよたとしたまま外へ出る。  
個室の中より明るい。そして個室の正面には流し台。鏡もある。  
(わ……)  
自分の顔は、真っ赤だった。髪は乱れ、汗まみれ。  
ブラウスはボタンが全部外されて、ブラジャーがずらされているので胸も丸見えだ。キスマークまである。  
こずえは恥ずかしいので余り鏡を見ないように鞄をとると、財布の中からひとつのゴムを取り出す。  
「お。本当に持ってたのか」  
「うん」  
いつの間にか外に来ていた右島に、ゴムを手渡す。  
こずえは視線を戻すと、鞄の中に財布を戻す。  
「……え、」  
気がつくと、ぎゅ、と右島がこずえの腰を両手でつかんでいた。  
 
「嘘でしょ……?」  
顔を上げると、鏡の中の右島と目が合う。  
「だってそんな、誰か来たら……!!」  
「もう塾も終わってるし、来ねぇよ」  
「も、もうそんな時間なの?!」  
こずえが驚いて腕時計を見る。確かに、時刻はもう10時近い。  
「いつの間に……!」  
もう、二時間じゃ過ぎている計算になる。驚くこずえだったが、  
「ふあああっ!」  
すぐに衝撃が思考を押しつぶす。  
ずん、とこずえに突き立った右島のそれは、もう充分な硬さを持っている。  
だが、一度放出したせいか、先ほどのようにすぐはち切れてしまいそうな予感はしない。  
「はぁっ!あ、ああん、だめだよぉぉっ……!」  
咄嗟に洗面台にしがみつく。尻を突き出すようにしているこずえの腰を押さえながら、  
右島はリズミカルに腰を打ち付けている。  
ぐちゅぐちゅぐちゅっ、と掻き混ぜられている音。  
「いやぁっ……!あん、気持ち、いい……!」  
こずえが悲鳴のような声を上げる。背後では、右島も荒い息をしている。  
ず、と右島の手が外れた。片手だけが器用に腰を支えている。  
こずえがもう一方の手の行方を案じたところで、全身に電流が走った。  
 
「ひゃああああっ!」  
右島の手は、器用にこずえのクリトリスを刺激し始めていた。  
じゅぷじゅぷじゅぷ、という音が激しくなる。反射のように、蜜があふれ出すのを感じる。  
「あ、ああっ、だめぇっ!」  
がくん、と体が揺れる。挿入の刺激とクリトリスの刺激に、あっという間にこずえは達する。  
だが右島の動きはまだ続く。  
ずんずんずん、と直線的な動きのほかに、ぐちゅぐちゅと掻き混ぜるようにそれを蠢かせる。  
その腰の動きは、こずえにとっては本当に彼は高校生なのかと疑うほどだった。  
「だめぇ!」  
悲鳴を上げて、また達する。ぱしっ、と電流が走るたびに、感覚が鋭くなっていくような気がする。  
「俺も……もう、出る……!」  
右島の動きが早くなる。こずえは叫ぶように、  
「いいよぉ……!出して、出してぇ、右島くんっ……!あああああっ……!!」  
「ふっ!」  
どくん、と体の中の右島のそれが揺れる。その最後の衝撃に、こずえ自身も数度目かの絶頂に達し、  
「はぁんっ……!」  
がくり、と洗面台に突っ伏する。  
じゅぽん、と右島のそれが引き抜かれて、こずえのそこからはちゅるちゅると、蜜が糸を引いて滴った。  
 
 
「でもさ、本当にすごく頑張ったよね」  
都電の車両にいるのは、右島とこずえだけだった。  
右島は本当は徒歩で塾に通っていたのだが、こうしてこずえを送ってきてくれている。  
繋いだままの手を、こずえはきゅ、と握り返す。  
「そうかぁ?」  
右島は眉を潜めると、  
「二回しかしてねぇし、あんまり頑張ってたとは思えな――」  
「そっちの話じゃなくてっ!!」  
こずえは顔を真っ赤にして叫ぶと、膝の上の模試の結果をとる。  
右島の模試の結果は、やっぱりBだ。価値のあるBだけど……  
「え?」  
こずえはふと、声を上げる。  
 
「やだ、これ……」  
B判定、という文字の近くにあるものを見つけて、こずえは声を上げた。  
「志望校、あたしと同じ大学……?」  
右島は、もともとこずえの志望大学より少しランクの低い大学を志望していた。  
だが――そこにあるのは、こずえと同じ大学の名前。  
そう変わらないとはいえ、レベルの違う大学の判定でいきなりBを取るとは……!  
「せっかくなら同じ大学でいいかと思って」  
さらりという右島に、こずえは鼻の奥がツン、と痛くなるのを感じた。  
「……何泣いてんだよ」  
「泣いてません……!!」  
こずえは強がってそっぽを向くと、目をこする。  
「そんなに嬉しい?」  
「……うん」  
ず、と鼻をすすると、こずえは赤い目で右島を見た。  
右島は照れたように鼻をこすってから、ふと――気がついたように、言う。  
「そんなに感激するなら、やっぱ来週にはアナル処女くれる?」  
「……ばか!!」  
こずえは模試の紙でぺしゃりと右島の顔をはたくと、そっとその肩に顔を乗せた。  
 
 
 

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