「はッ…クション!!」  
 
昨日からどうも寒気がすると思ったら、ついにくしゃみまで出始めた。  
「風邪かよ…参ったな。明日は西野と映画に行くのに…ックション!!」  
まずい。これで風邪をこじらせて明日のデートが中止になったり、まして  
西野に風邪なんかうつしたりしたら…。そんなの絶対ダメだ!  
まだ昼間だけど、今日はおとなしく布団に入って寝ておこう。  
 
そうは言っても…  
 
「ぁー、腹減ってきたかも…。」  
 
とりあえずふらふらと台所へ向かっては見たものの、夕べのおかずの残りとか  
そんなものは見当たらず、冷蔵庫には野菜室にキャベツやにんじんが少し入っているだけ。  
 
「野菜炒め…」  
 
野菜を洗って、皮をむいて、切って、炒めて、味付けて…?  
とてもじゃないがやってられない。こんな時には母親のありがたさが身に染みてわかるが、  
感謝の気持ちを伝えつつ、食事を作ってもらう(こっちがメイン)にも、あいにく  
肝心の母親が今日は夜まで帰ってこない。  
 
どうするかな…と、働かない頭を必死に回転させて考えていると、電話が鳴った。  
 
「はい、もしも…ックショォン!!」  
 
受話器を上げた途端とんでもなくデカいくしゃみが出てしまった。  
 
「…淳平くん?」  
 
「あ、西野?!」  
 
うわ、なんてタイミングだ、カッコ悪い…。  
 
「風邪、引いちゃったの?大丈夫?」  
 
「うん、何とか平気。それより腹が…。」  
 
「おなか痛いの?」  
 
「違う違う!腹が減っただけ…」  
 
「風邪でも食欲はあるんだ、良かった。」  
 
そういや病気のときは食欲無いのが普通だよな…。俺って…。  
こんなに腹が減ってる自分がなんだかやたらいやしい奴みたいに思えて、  
少し恥ずかしい気になる。そんな俺に、西野は明るく言った。  
 
「じゃあさ、あたしがご飯作りに行くよ。淳平君のために」  
 
「え、マジで!?…いやいやいやいや、ダメ!絶対ダメだ!」  
 
「えー、どうして?」  
 
「風邪、うつるといけないから…。」  
 
「大丈夫!あたし、丈夫だから!!」  
 
「丈夫って…ホント悪いからいいよ、西野」  
 
「ダーメ。こんなときこそ淳平君のために何かしたいもん。病気の時って心細いしさ。」  
 
西野…なんて優しいんだ…(泣  
 
「…じゃあ、お言葉に甘えて…。」  
 
「うん、材料買ってそっちに行くから!待っててね」  
 
元気良く「あとでね!」というと、西野は電話を切った。  
 
 
「淳平くん…淳平くん…お待たせ…」  
 
何か手伝うという俺の申し出を頑固に拒否し、西野が台所に入っていってから1時間。  
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。俺は西野の優しい声で起こされた。  
 
「に…西野!その格好…!!」  
 
俺の目の前に現れた西野は、なんと  
 
「裸…エプロン……?」  
 
ギンガムチェックのかわいいエプロンの裾から見えるのは、西野のスラリとした  
素足。上半身も、生腕が見えている。つまり、裸にエプロンのみを装着したような…  
 
「は…裸!?って…ああー!!」  
 
西野は自分の格好を眺め、顔を赤らめた。  
 
「違うよ、ホラ!ちゃんと服着てるもん!!」  
 
くるりと後ろを向くと  
 
「あ…確かに…」  
 
何のことは無い。スカートの丈がエプロンの丈より短く、そしてキャミソールの  
肩紐が、エプロンの肩紐の下に隠れていた、ただそれだけの事だった。  
 
「もー、どうしてそういう風に見ちゃうかな!」  
 
少し怒ったような顔をしながらも、西野は「でも、言われてみると確かに…」と笑い出した。  
俺もつられてハハハ、と笑ったら、拍子に腹までグゥと鳴った。  
 
「さ、あったかいうちに食べて。」  
 
西野はお盆に乗せた雑炊を持って来てくれた。蓋を開けると、ほわあ、とあつあつの湯気が立ち上り、  
土鍋の中では卵やにんじんの色がキレイで、いい匂いもして、しかもこれを西野が俺のためだけに  
作ってくれたという喜びで、俺は食べる前から幸せな気持ちで一杯になった。  
しばらく蓋を開けたまま俺が手をつけなかったので、西野は不安そうに、  
 
「嫌いなもの、入ってた…?」  
 
と尋ねてきた。俺が、そんなことないよ、幸せをかみ締めてただけ、と笑って見せると  
西野はたまらなく可愛い顔で  
 
「良かった…。あたしも今すごく幸せ。」  
 
と微笑んだ。西野は俺の手かられんげを取ると、そっと一口ぶんすくい、  
唇をすこしとがらせてふーふーとしてくれた。  
 
「はい、あーん」  
 
「あーん。…。う…!うまい…!!」  
 
「ほんと!?」  
 
「ほんとに!マジでうまいよ、西野!!料理、上達してるんだな!」  
 
「えへへ…ありがと、淳平君」  
 
始めは「料理得意じゃないんだ」なんて言ってた西野。きっとすごく一生懸命に  
料理を覚えたんだろうな…。西野のこういう前向きに頑張れるところ、俺は大好きだ。  
 
 
「りんご、持ってくるね」  
 
俺が雑炊をきれいに平らげると、西野はまた立ち上がり、今度はきれいなガラスの器に入ったすりおろし  
りんごを持ってきてくれた。味はもちろんのこと、盛り付け方を見ても、立派なデザートだった。  
 
「なんかすげぇ元気出た。ありがとう、西野…。」  
 
「他に食べたいもの、無い?」  
 
「ん、もうおなか一杯…」  
 
おなかは一杯なんだけど…でも…食べたいものが…  
さっきの西野の裸エプロン(に見える格好)を思い出し、俺は不謹慎にも…。  
 
「淳平君?」  
 
西野が俺の顔を不思議そうに覗き込んだ。あ、顔、近いよ、西野…。  
 
「…」  
 
二人の唇が触れようとした瞬間、ようやく俺は自制心を取り戻した。  
 
「ってダメだ!風邪うつっちゃうよな!危ない危ない!」  
 
俺は照れ隠しに豪快に笑って見せた。  
 
「淳平君…。淳平君がしたいなら、いいよ…。キスでも、その先でも…。」  
 
笑ってごまかそうとした俺に対し、潤んだ目で見つめてくる西野。このまなざしは、さすがにぐらりとクる。  
 
「あたし…淳平君となら、風邪だって…分け合いたいから。」  
 
身を乗り出してキスをしようとしてくる西野を、俺は必死で止めた。  
 
「だ、ダメ!!絶対ダメだ!」  
 
思わず自分の口元を手で覆う。  
 
「あのな、西野…。俺、今西野の言葉がすごく嬉しかった。すごく嬉しかったからこそ、  
もっと西野のこと、大切にしたいと思ったよ。だから、今日はやめとく。」  
 
「淳平君…。」  
 
「そのかわり、全力で早く治すから、そしたら、その…ご褒美、くれる?」  
 
気を悪くしちゃったかな…と恐る恐る上目遣いで西野を見ると、西野は敬礼のポーズを取り、  
 
「西野つかさ、了解しました!」  
 
と華やかに笑った。あの夜、初めて西野とキスしたあの夜。玄関先での西野を思い出し、俺も頬が緩んでしまった。  
 
「ごめんな、本当は明日だって約束してたのに…。」  
 
「ううん、いいよ。映画はいつでもいけるもん。」  
 
食べ終わった器をきれいに片付けると、西野は「ご褒美…期待しててね?」と言い残して帰っていった。彼女の残り香が部屋に残っている。  
 
 
 
「淳平君、風邪治って良かったね!」  
 
「ありがとう。西野のお陰だよ。」  
 
あれから1週間。西野が来て頭がのぼせたせいか、実はあの夜、結構高い熱が出た。  
翌日病院に行くと、「熱は高いほうが治りが早いですよ」と先生に言われ、  
「明日には治りますか!?」なんて聞いてしまい・・・先生にあきれられてしまった俺。  
でも確かに、その翌日には熱も下がり、くしゃみも少なくなってきた。  
本当はすぐにでも、「治ったよ」って西野に言いたかったけど、用心を重ねて、今日にした。  
 
「顔色もすっかりよくなってるし、ほんとに良かった…」  
 
西野は本当に安堵した様子で、俺の頬をそっとなでてくれた。その手を取り、  
ぎゅっと抱き寄せる。  
 
「西野…ご褒美、くれる…?」  
 
わざと西野が普段「弱い」と自白している右の耳に吐息交じりでささやいてみた。  
 
「んっ…ふ…」  
 
西野は身をよじりながらも、「いいよ…」と答えてくれた。  
「じゃあ」と俺が西野をベッドに横たえようとした時。  
 
「ダメ!」  
 
と突っぱねられてしまった。  
 
「ええ!?」  
 
だって、今いいよって言ったのに…。  
 
「今日は、特別なご褒美なんだから。淳平君は何にもしちゃダメ!」  
 
「ええええ!?」  
 
我ながら間抜けな声が出た。  
 
「淳平君は、ただ寝てるだけでいいの…!」  
 
「寝てるだけでって…。」  
 
「いいから!」と強い口調で言うと、西野は俺をベッドに押し倒した。そして、俺のシャツボタンを  
ひとつひとつ外し始める。  
 
「西野…。」  
 
自分で袖から腕を抜こうとすると、西野は「だーめ。腕、上に上げて…?」とあくまで主導権を譲らない。  
言われたとおり両腕を頭の上に上げると、西野は俺のシャツの袖を手首の辺りで止め、完全に脱がせようとは  
しなかった。そう、まるで俺は両腕を拘束されたような、そんな格好になってしまったのだ。  
 
「これでよし、と。」  
 
ふう、と一仕事終えたように息をつく西野。  
 
「じゃあ、ご褒美、あげる…」  
 
この間、触れそうで触れられなかった西野のやわらかい唇は、予想しなかったところに降ってきた。まずは、  
キスを期待して閉じたまぶた。そして額。鼻。頬。耳たぶ。唇が触れるたび、「ちゅ」と優しい音がする。  
 
「西、野…」  
 
こちらから動けないもどかしさが、いつもと違う感覚を俺に与え続ける。たまらず名前を呼ぶと、西野は  
ようやく、唇にキスしてくれた。始めは軽く触れるだけ。次は互いの唇を味わい。3度目は、舌を絡めた濃厚なキス。  
 
「ん…ん…」  
 
吐息までも絡めながら、西野は俺のTシャツを捲り上げた。  
 
「あ…」  
 
いつもと立場が逆で、変な感じだ。あらわになった俺の胸板に、西野はそっと顔を寄せた。すり、すり、と  
ほほを動かすと、今度は可愛い舌をぺろりと出し、俺の胸を舐め始める。まるで猫にでも舐められているような  
くすぐったさに身悶える俺。  
 
「淳平くん、女の子みたいになってる…。可愛い…。」  
 
西野はいたずらっぽく笑うと、硬くなり始めた俺の乳首を軽く唇ではさんだ。そして熱さを帯びた西野の舌が、ぬるりと  
まとわりつく。ヤバイ。頭の中が沸騰しそうだ。  
 

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