すっかり見慣れた自分の部屋も、女の子1人いるだけで  
こうも雰囲気が変わって見えてしまうことに俺は少なからず驚いていた。  
以前にも部活のメンバー全員がこの部屋に集まったことがあったけど、  
その時はこんなにも自分の身体を固くしてしまう空気は  
流れていなかったように感じる。  
外村や小宮山といった、華やかな女の子の存在を  
掻き消してしまうほどの野郎が居たせいなのか。  
でも今は奴らはいない。  
開けられた部屋のドアの前に立ったままだった彼女にちらと目線をやると、  
やや緊張したような面持ちで部屋の中へ視線を泳がせていた。  
何度か入ったことはあるはずなのにしきりに首をふって部屋を確認しているあたり、  
彼女もまた2人の間に漂う雰囲気の妙を感じているのかも知れない。  
「お邪魔します……」  
 
玄関に続いて、彼女が2度目の言葉を呟いた。  
だけど1度目のそれよりもわずかに上ずっているように  
聞こえたのは俺の気のせいだろうか?  
冷たい風を受けながら俺のところへきたためか、  
彼女の頬には紅みがさしている。  
血色良い真っ赤な頬をさせて大きな瞳をキョロキョロと忙しなく動かすその様は、  
普段の彼女の可愛さをより際立たせているように見えた。  
「い、今お茶持ってくるから座って待ってて」  
やべ、ドモった。  
俺も緊張してるのバレたら余計固くさせちゃうかも…。  
雰囲気を和らげようと懸命につくった笑顔を向けると、  
ちょっとびっくりしたような表情で彼女は頷いてくれた。  
「う、うん」  
暖かそうなマフラーに覆われた首をわずかに竦ませて、部屋に入ってくる。  
俺は彼女と入れ替わるようにして再び廊下へ向かった。  
 
「温かいものの方がいいか…」  
冷蔵庫に用意していたペットボトルを手にしようとして、  
俺はすぐ横に居座っていたポットにその手を伸ばした。  
誰も家にいないことを示すかのようにポットの中は空だった。  
新しく足した水が沸騰するまでの間、頭に浮かんでくるのは今日の経緯ばかりだった。  
 
学生にとって長く辛い2学期を終業する今日、  
生徒の大部分は短いながらも学業から離れられる冬休みを思い  
気持ちを高揚させていたに違いない。  
俺もまた朝から自分の気持ちが高まるのを感じていたけど、  
それは彼らとは少し違ったものだったと思う。  
俺はこれから始まる『冬休み』にではなく、今日この日にドキドキしていたからだ。  
クリスマス・イブ―――世間では恋人同士が過ごす特別な日だと認知されているようだけど、  
特定の彼女がいない俺には普段と何ら変わりない日だった……去年まで、は。  
幸運にも俺にはお互いの気持ちが通じかけていると思う女の子がいる。それも複数人。  
今まではそんな彼女達との危なくも心地好い関係に甘えてきたけど、  
いつまでも今と同じようなポジションのまま居続けることは、  
彼女らにとっても自分にとってもプラスにはならないだろう。  
彼女達を傷つけてしまう前に、俺は安穏とした日常を切り捨てなければいけない。  
それが俺に好意を持ってくれた彼女達に対する”誠意”だと思うからだ。  
気持ち良い今の状況に浸かっていたいと思う優柔不断な自分にハッパをかける  
”区切りの日”に制定していた今日、俺は行動を起こした。  
 
「東城!」  
終業式が引けてすぐ、俺は東城に声をかけた。  
整列場所もあまり離れていなかったためか、  
すぐに彼女を見つけられたことに俺は運を感じた。  
もしも東城を捕まえることに時間がかかったら、またいつもの優柔不断な俺が顔を出して  
途中で「やっぱ止めよう…」なんて考えてしまっていたかも知れない。  
こんなにも早く東城と引き合わせてくれた現実に俺は感謝した。  
「真中くん。どうしたの?」  
いつもの澄んだ声と、可愛い笑顔。  
もしそんなしぐさの原因が俺が声をかけたからだとしたら、こんなに嬉しいことはない。  
俺ははやる気持ちをぐっと押さえつけながら、東城をじっと見つめた。  
「今日この後何か予定ある?」  
「えっ?」  
……唐突だったかも知れない。  
今日初めて顔を合わせたのに挨拶もなくいきなり予定を聞かれたら、  
東城じゃなくても聞き直すだろうと考えたのは声をかけた後だった。  
「あ、いや、その……、ちょっと」  
慌ててフォローの言葉を捜すが、こういう時にいい言葉が出ないのは  
俺の日頃の行いのせいか。  
なかなか次の言葉を出せない俺を見かねてか、東城が先に問いに答えてくれた。  
「今日? まだ何もないけど…」  
彼女の答えを最後まで聞かないうちに俺は細い東城の手を握っていた。  
外気に晒されて冷たくなった指先とほんのり温かい掌をまとめて握りしめ、  
俺は手を引いて騒がしい学生の群れから走り出した。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ」  
大きな胸を上下させながら必死につき走ってくる東城をよそに、  
俺はまだ生徒のまばらな廊下で足を止めた。  
わざわざ走ることはなかったかもと息を荒くする彼女を見て少し後悔したが、  
いつまた邪魔が入るかも知れない……そう思うと一刻も早く2人きりになる必要があったんだ。  
「ちょっ、ちょっと待ってね……はぁ、真中くん、いきなり走り出すんだもん……はぁ、はぁ」  
「わ、悪い」  
困ったような、苦しそうな表情で数秒大きく深呼吸を繰り返してから、  
東城はようやく俺の顔を見る。  
急激な運動からくる苦しさからか彼女は眼を潤ませていて、  
それを含めた表情が普段の可愛さに色っぽさを上乗せしているように見え、  
俺の鼓動は速さを増す。  
「でもどうしたの? 急に……」  
俺の心の中の動揺をまるで察する様子もなく、  
東城は視線の先にまっすぐ俺を見据えてそう聞いてきた。  
俺は紅潮を始める顔を押さえつけるように、  
走り出した時のまま離さないでいた彼女の手をいっそう強く握った。  
「東城、今日一日俺に付き合ってくれ!」  
 
東城はぎゅっと握られた手に驚き、俺の表情に驚き、  
そして俺が吐き出した言葉に驚いていた。  
大きな瞳を見開いて俺をまじまじと見つめ、わずかに開かれた口許は  
呼吸さえ忘れているかのように動きを見せなかった。  
「………えっ!?」  
それはほんの数瞬だったが、東城は全身で心の動揺を現した。  
考える暇を与えず、俺は片手を口に当てたまま固まっている彼女にまくし立てた。  
「ほっ、ほら、終業式も終わったし、その……2人でちょっと……お、お祝いしないか?」  
緊張で口が上手く回らない。  
考えておいた誘い言葉さえ満足に吐き出せなかった。  
「ふっ、2人で……?」  
東城は耳に残ったのか、そう呟いてから口をパクパクさせている。  
いつもの俺ならそんな彼女の可笑しな態度を指摘できたかも知れないが、  
今日だけは、この瞬間だけはそんな余裕など俺の心には微塵もなかった。  
「だっ、ダメか?」  
一刻も早く答えを聞きたかった。  
東城の一言で今日の俺の行動と気持ちが決まる。  
もし断られても、今ならまだ外村や小宮山とバカやって過ごせば沈んだ気持ちを忘れられる。  
24日を今までと変わらない日だと思える。  
渇いた口内の空気を1つ飲みこんで、俺は赤面のまま俯いてしまった東城を見つめていた。  
 
「………えっと……」  
何か言い淀んでいる東城に望み薄だと感じ、揺れていた心がいくらか定まった。  
軽くなった息を吐き出して、俺は東城の手を離した。  
「そ、そっか。ちょっと急過ぎたよな……びっくりさせようと考えてたんだけど、  
 東城にとっても大事な日に決まってるもんな。ゴメン、無理言った」  
さっきまでの固さがウソのようにスラスラと滑らかに動く己の口に多少ながらも驚く。  
自分に言い聞かせるようにそう言いながら、俺は自分の計画が浅はかだったことを悔いた。  
当日にいきなり言ってOKできるほど東城も暇な訳がないというのは  
少し考えればわかることだ。  
俺は改めて良い方向にのみ計画を進めていた自分のアホさ加減にうんざりしていた。  
「……ご、ごめんね……さっき、友達と遊ぶ約束しちゃった……」  
最後通告とも言える東城の呟きは俺の心に少なからずダメージを刻んだが、  
それでも彼女の口からはっきり応否が聞けたことで  
俺は今日のこの行動にわだかまりを残さずにいられそうだった。  
「いや、いいんだ。俺の方こそゴメンな」  
この事に関してはここで終わらせたいと思い、俺は東城に背を向けた。  
背中に彼女の視線を感じたが、1度断られた手前振りかえることは  
返事を撤回してほしいと訴えているように思えて、  
ちっぽけながら存在する俺のプライドが許さなかった。  
 
「ダメだったかぁ……」  
部屋に辿り着いた途端、着替えるの億劫に感じて  
俺は制服の上着を脱ぎ捨てて重い身体をベッドへ投げ出す。  
東城に断られたという事実は思ったより深いダメージを残していた。  
「しょーがねーじゃん。大体急すぎるんだよ……バカか俺は」  
勝率の良い計画だったと信じ込んでいた自分を蔑むようにそう呟いて、  
寝ている間に抜け落ちた数本の髪の毛をまとった枕に顔を埋める。  
いつもと変わらない匂いが、今日という日が昨日と何も変わらないことを俺に伝えてくれる。  
机の上には、プレゼントと言うにはおこがましい心細い包み紙。  
今日の計画を思いついた時にはすでに金も時間もなく、なけなしの予算内で用意できる  
東城へのプレゼントだったそれも、今は心無しか寂しげに見えた。  
小宮山達との約束まではまだ時間がある。  
「……ちょっと寝るか」  
このまま寝たら制服にシワができてしまうとも思ったが、それも今は些細なことだった。  
どうせ明日から学校は休みだし。  
そう思い、俺はロクに眠れなかった昨日の夜の睡眠時間を  
わずかでも取り戻そうと降りてくる瞼に身を任せた。  
 
ピンポ―――ン。  
俺を眠りから呼び戻したのは、やけに大きなチャイムの音だった。  
俺以外は留守だということを思い出し、まだ眠り足りないという意識を  
引きずりながら玄関へと向かう。  
ピンポ―――ン。  
シンと静まりかえった家の中に聞き慣れたチャイムが響く。  
「誰もいないとやけにやかましく聞こえるなぁ…」  
誰にともなくそんなことをボヤきながら玄関を開けると、  
俺の意識は一気に現実へ引き戻された。  
目の前の彼女は乱れた息を整えながら、俺の立つ玄関を覗きこんでいた。  
「こんにちわ……」  
ついさっきまで見ていたような、彼女の顔がそこにある。  
もしかして俺は夢の中でも目の前の子の姿を追い求めていたのかも知れない。  
「とっ、東城……どうしてここに?」  
驚かずにはいられなかった。  
つい数時間前に俺を誘いを断ったはずの東城が、俺の家のチャイムを鳴らしていた。  
 
「う、うん………あ、あの、真中くん、今日はこれから時間あるかな…?」  
今朝の俺の言葉をそのまま返すように、東城は聞いてきた。  
混乱を始める頭で懸命に現実を整理しようと努めたが、俺の口から出たのは、  
「え? だって、東城……今日は約束があるってさっき…」  
彼女が俺の誘いを断った理由だった。  
それを口にしてますます、東城がここにいる意味が解からなくなる。  
そんな俺の疑問を察したように、彼女は少し気まずそうな表情を浮かべた。  
「………断っちゃった……」  
「え?」  
「先約……断っちゃった」  
白い息を吐きながら、東城はまるで俺の反応を確かめるようにじっと見つめてきた。  
その意味を理解するのに少し時間を要したけど、東城の行動の意味が解かり  
俺は自分の頬が紅潮していくのを感じた。  
およそ信じられない状況に絶句していると、東城が心配そうに表情を曇らせる。  
「やっぱり、もう用事入れちゃった……?」  
「い、いや! そんなことないよ!」  
慌てて答えた俺に東城は嬉しそうな笑顔をくれ、しかしすぐに口をきゅっと横につぐんでしまった。  
その表情はどこか緊張感が含んでいて、俺の心を否応なく跳ね上げる。  
「じゃあ……」  
東城の頬がより紅みを増したように見えた刹那、彼女の瞳はまっすぐ俺を見つめ返してきた。  
彼女が小さく息を吸いこむのと同時に、俺の喉が鳴る。  
「……私と今日、一緒に過ごしてくれませんか……?」  
 
 
水が沸点に達したことを告げる悲鳴じみた音を聞いて  
ふと我にかえった俺は急ぎ部屋へ戻った。  
「お待たせ」  
ドアを開けてまず目に入ってきたのは東城の後ろ姿。  
艶やかで真っ直ぐな黒髪は素人目の俺にでもよく手入れされているように見える。  
振りかえった東城の表情はいくらか普段の柔らかいそれに戻っていたけど、  
それでも完全にいつも通り、という訳には言い難い”硬さ”が感じられた。  
申し訳程度の大きさをした来客用のテーブルに2人分のお茶を載せて、  
俺は東城と向かい合うように座った。  
彼女が紅茶に口をつけるのを見てから、改めて問う。  
「でも良かったのか? 友達との約束……」  
そこまで言って思い出す。外村達との約束まであと少しだった。  
入れたてのお茶をすするより先に俺は立ち上がる。  
「わ、悪い! また席外すけど、適当にくつろいでてよ」  
「え? う、うん」  
戸惑いを含んだような東城の返事を背に、俺は再び部屋を出た。  
 
『何だって?』  
「だから、急な用事が入ったんだ。今日行けなくなったから小宮山にも伝えといてくれ」  
要件だけ先に伝えると、案の定外村の怪訝そうな声が聞こえてきた。  
『そんなこと言ったってもうみんな集まってるんだぜ?  
 急な用事って何だよ、それが終わってからなら来れるんだろ?』  
……東城は今日、何時まで俺と一緒にいてくれるんだろうか?  
”今日一日”と言ってはいたけど、具体的な時間は聞いていない。  
『おい真中、聞こえてんのか?』  
「あ、あぁ………悪い、いつ終わるか解かんないんだ」  
でもわざわざ友達の約束を断ってまで俺のところに来てくれた東城に、  
今日一日だけは時間を空けておきたかった。  
例え彼女とこの後過ごす時間が一時間だとしても、  
きっと今日は幸せな気分でいられるだろう。  
『ちょっとでも顔出してくれよ〜……お前が参加するならって、北大路も来てんだぞ』  
「え? さっ……さつきもいるのか?」  
その言葉に心臓が大きく爆ぜる。  
東城と同じく、俺の中で気になる存在である彼女。  
オープンな性格のさつきが今日何らかのアプローチをかけてきそうな雰囲気はあったが、  
俺は敢えて彼女との接触を避けて東城を選んだ。  
好意を寄せてくれている彼女への罪悪感からか、受話器を握る俺の手が急激に熱くなる。  
 
『あぁ……あ、ちょっと待て。今北大路と代わる』  
動揺して掌を湿らせている俺をおいて、電話の向こうはガヤガヤと騒がしくなる。  
東城と一緒にいる今、俺にさつきと話す勇気はなかった。  
受話器から離れようとしていた外村の耳へ向けて、精一杯の声を張り上げる。  
「わっ、悪い! やっぱ今日は勘弁してくれ! 今度埋め合わせするからっ!!」  
そう一息に吐き捨てて、俺は返事を待たずに受話器を戻した。  
これ以上会話が続いたら、今の状況を説明しないといけなくなるかも知れない。  
東城と2人きりで過ごすことを許してくれるほど甘い連中じゃないよな……きっと。  
「………ごめんな」  
口から出た謝罪の言葉は誰に伝わることもなく、自分の心を軽くしてくれただけに過ぎなかった。  
 
「ごめん、バタバタして」  
部屋を出ていった時と同じ格好で座ったままだった東城にそう言って、再び腰を落ちつける。  
俺が正面に座るのを見て、東城の表情は柔かいものへ変わったように見えた。  
「ううん。電話、誰から?」  
「え?」  
東城は適当な話題を振ったつもりだったに違いないけれど、  
その質問は、部屋の外へ置いてきた外村達への罪悪感を俺の中へ再び呼び戻した。  
 
「……えっと」  
言うべきだろうか。  
約束があったと聞けば人一倍相手を気遣う性格の東城のこと、  
自分より相手のことを気にしてしまうだろう。  
「真中くん?」  
言いよどむ俺へ顔を向けた東城の表情がわずかに曇った。  
何か気に障ることでも言ってしまったのかと心配そうに瞳を揺らしている。  
「あっ、べ、別に言いたくなかったら言わなくてもいいよ」  
「ち、違うんだ。そっ……外村達だよ…」  
慌てて俺は答えた。  
電話の相手を言ってしまうことで起こる東城の気持ちの変化よりも、  
目の前にある不安そうな彼女の顔を違う表情に変えたかったんだ。  
「外村くん……? 約束してたの?」  
「あ、あぁ……あ、でも違うんだ! それは東城にフラれちゃった後にした約束で…」  
俺の必死の説明も虚しく、見る見るうちに彼女の顔が曇っていく。  
「だ、だけど今断ってきた。外村達には悪いと思うけど、俺は…」  
「そんな、あたしはいいから外村くん達のところに行った方が」  
俺の言葉を遮った東城の反応は、やっぱり考えた通りのものだった。  
それでもかすかに垣間見せた彼女の残念そうな表情に希望をかけて、  
俺ははやる感情を自制させようと努めながら静かに低く、  
自分に言い聞かせるように続ける。  
「東城と一緒にいたかったんだ」  
 
一番伝えたかった言葉は結果、2人の間の空気をさらに張り詰めてしまったけど、  
真っ直ぐに東城を見据えて俺は答えを待った。  
涌き上がってくる感情を押さえるように唇を軽く噛む彼女の仕草は、  
何をどう答えるべきか困惑しているように見える。  
小動物のようにコロコロと忙しなく瞳を動かす東城の愛らしさに目を奪われがちだったが、  
それでも掠れた彼女の小声はしっかりと俺の耳に届いた。  
「……うん、ありがとう……」  
俺と同じように約束を断ってきた彼女もまた似たような想いを持っていたのかも知れない。  
そう呟いた東城は翳りを見せつつもどこか安心したような、控えめの笑顔を見せてくれた。  
 
「これさ、クリスマスプレゼント」  
2人の間にまだぎこちなさは残っていたけれど、じっと向かい合ったまま時間を消費する  
ことは避けたかった俺の視界に、机の上にポツンと置かれていた紙包みが入ってきた。  
「え、あたしに?」  
「金なかったから大したモン用意できなくて…」  
 
「あっ、ご、ごめんなさい!」  
俺が言おうとしていた言葉を東城が先に口にしたことにキョトンとしてしまった。  
彼女が謝る意味が解からず、紙包みを差し出したまま硬まってしまう。  
「突然だったからあたし、何も用意できなくてっ……」  
縮こまる彼女を改めて見ると、制服のままだ。  
約束を反古にした後、着の身着のままで駆けつけてくれたんだと思うと  
顔がニヤけてしまう。  
「いや、ホントにそんな大したモンじゃないからそんなこと気にしなくていいって」  
紙包みをずいっと東城へ差し出すと、東城は恐縮しながらも嬉しそうに受けとってくれた。  
手渡されたそれを大事そうに抱える東城に”開けてみてよ”と目で促す。  
ガサガサと耳障りな擦れ音を残しながらその中身が彼女の眼前に晒された。  
「ノート……?」  
大学ノート2冊。  
プレゼントと位置づけするにはおこがましかったけれど、  
少ない予算と東城に必ず使ってもらえる物を考えた時、真っ先に浮かんできたものだ。  
期待して見えた彼女に対してさすがにばつの悪さを覚えたが、  
そんな考えを振りきるように俺は言い訳がましい言葉を並べた。  
「今小説書いてるノート使いきったらさ……それに続き書いて見せてよ」  
 
手元のノートと俺を交互に見やってから、東城が今日初めてとも思える  
遠慮のないいつもの笑顔をつくった。  
「くすっ……うん、頑張るね。どうもありがとう、真中くん…」  
ともすればそこらの自販機の缶ジュース数本分の値段のものなのに、  
それでも全身から嬉しさを滲ませる東城に俺は感謝した。  
「ごめんな。プレゼントっぽくなくて…」  
「そんなことないよ。これならどんなにあっても困らないもん」  
別段普通のノートと変わらないそれを、東城は宝物のように抱きこんだ。  
普段は控えめな態度を取りがちな彼女も、こんなに豊かな表情ができるんだ。  
屈託ない笑顔を見せてくれる東城がすごく可愛い。  
高鳴りをさらに加速させる心臓の赴くまま、俺は嬉しそうに顔を綻ばせる東城を抱きしめた。  
「ま、真中くん……?」  
東城の温もりを直に感じ、より大きくなる感情に確信を持つ。  
俺の行動1つで喜んでくれる彼女が愛おしい。  
「――やっぱ俺、東城のこと好きだ」  
 
大事な想いを伝えるにはとてもか細いもの声だったけど、  
それでも東城の耳には届いたらしく、彼女は身体をびくりと竦ませた。  
折れそうに細い東城の手首を握り、しっかりと彼女を見据えて  
俺が真剣だということをわかってもらおうと努める。  
「俺、東城が好きなんだ」  
「………っ」  
俺は戸惑いの表情を浮かべて硬直したままの東城に顔を近づけた。  
緊張で枯渇した喉元から何かが這いあがってくるような感覚が俺を襲う。  
「今日、伝えたかったんだ」  
「……」  
一言を発するのがとても苦しかった。  
極限まで張り詰めた空気が、俺に眩暈さえ感じさせる。  
「ずっと、前から……」  
一文字に口をつぐんだまま、東城は俺を見つめている。  
喋り続けないと今この時が終わってしまいそうな…そんな衝動に駆られるも、  
重くなっていく空気に俺の喉は言葉を吐き出すことを拒み始める。  
「お、俺……」  
 
言葉が出なくなった。  
俺を見る東城の瞳は、まるで信じ難い事実を突き付けられているような  
不安げなものだった。  
それは苦しくも、今朝俺の誘いを断った彼女のものと同じものに見える。  
そこで俺は彼女の気持ちがわかったような気がした。  
常に相手を気遣う性格の東城にとって、自分の思い描く返事はきっと  
俺を傷付けてしまうと思うからこそ言葉を返せないんだろう。  
痛々しささえ滲ませる彼女を見ていることに居た堪れなくなった俺は、  
「ゴメン。いきなりヘンなこと言った」  
と会話を切り、場を閉じようと東城の側から離れようとする。  
そこで俺は初めて気づいた。  
東城の手が俺のシャツをきゅっと握っている。  
それはあたかも俺が離れるのを拒んでいるような、  
そんな彼女の気持ちに見えたのは俺の都合の良い考え方だろうか。  
しかし東城の手は依然シャツを離すことはなく、  
さらには何かを訴えたそうな瞳で俺を見つめ返してきた。  
「……あ、あたし……」  
 
息が詰まったような表情のまま、東城は懸命に口を動かそうとしている。  
「……ごめんなさい……」  
今朝と同じ返事。  
しかし朝ほどショックを感じないのは何故だろう。  
自分の気持ちを東城に伝えられたことに満足していたのかも知れない。  
「……いいんだ。俺の方こそごめん」  
いくらか軽くなった息を吐き出した俺は、笑顔さえ見せることができた。  
意外なほどに気分はすっきりしていた。  
シャツを握ったまま固まっている東城の手の上に自分の掌を乗せて  
もう離してもいいんだとを告げるが、それでも東城の手の力は弱くはならなかった。  
「違うの……ち、違う……」  
小刻みに頭を横に振る東城の気持ちが汲み取れず、  
俺は彼女の言葉を待った。  
 
「うまく言えなくて……あ、あたし……」  
焦りながら必死に言葉を探している東城は、俺以上に混乱しているようだった。  
綺麗な顔をくしゃくしゃにして、自分の気持ちを説明しようとしている。  
「あたし……真中くんに好きだって言ってもらって……嬉しいのにっ……」  
東城が言ったその言葉は、ついさっき彼女が告げた『ごめんなさい』のそれを  
吹き飛ばしてしまうほど俺の意識を集めた。  
「う、嬉しいって…」  
「うん………うん。あたし、嬉しい……」  
俺を気遣ってその場しのぎの答えを言ったようには見えない。  
潤んで見える彼女の瞳はこれ以上なく真剣だったからだ。  
「ホントにあたしのこと……」  
もう一度聞きたい、と懇願を込めた表情で東城が俺を見つめてくる。  
今なら何度でも言える。彼女が聞きたいなら気の済むまで言ってあげたい。  
それが、今まで気持ちを曖昧にさせてきた俺が彼女にできる  
数少ないことの1つだと思った。  
「好きなんだ」  
「……」  
 
東城は黙って、自分から俺の胸に跳び込んで来た。  
熱く火照った顔を押し付けて、ただ何も言わず柔かな身体全てを俺に委ねてくる。  
「と、東城……?」  
こういう場合、どんな態度をとればいいのか。  
かけるべき言葉も探せないまま、俺は小さく震える東城の肩を抱きしめた。  
「ありがとう……すごく嬉しい」  
温かい吐息が俺の胸にかかる。  
心底安心したような、身体の中の緊張を全て吐き出したような熱い吐息。  
そこで初めて、俺は自分の想いは受け入れられたんだと悟った。  
黙ったままの俺に、東城が伏せていた顔を上げた。  
彼女を深く抱きしめていたため、お互いの呼吸のリズムがはっきりと解かるほどに顔が近い。  
こんなに間近で彼女の顔を見るのは修学旅行でのキス未遂以来か。  
あの時は未遂に終わったけど、今のこの状況、この雰囲気、  
そして完全に腹を決めた今の俺になら…。  
「……んっ」  
誰にも遠慮することなんてなかった。  
柔らかそうな彼女の唇の魅力に負けて、俺はその感触を確かめる。  
息を飲んだ東城の唇からは想像通りの柔らかさに加え、ほのかな温かさが伝わってきた。  
 
「は…………、むっ」  
俺は唇を通して彼女への溢れる想いを注ぎ込もうと努めた。  
東城のぬくもり、彼女の口内で戸惑う舌が俺に異性への欲望を目覚めさせる。  
「んっ、ぷぁ……」  
唇を解放して見た東城は、頬を染めたままキスの余韻に浸るように  
瞳を潤わせていた。  
「真中く………ん、んんっ」  
唾液で濡れた東城の唇はより紅く妖しく光り、俺の平常心をかき乱していく。  
『清楚』という文字を絵に描いたような普段の彼女を知っている人が見れば、  
今の東城に情欲をそそられない男などいないだろう。  
「んは、ぁっ……まっ、待っ……んんむ、はぷ、ちゅぷ………」  
「はぁ、はぁ」  
熱っぽい表情を見せる東城に欲望は加速していく。  
彼女の細い腰に腕を巻きつけてぐっと強く抱きしめると、  
東城の大きな胸のふくらみがむにゅりと俺の胸にその柔らかさを刻み付けた。  
制服の上からでもはっきりわかる、男にはない柔らかさ。  
クラス、いや同学年の女子の中でも東城の胸は明らかに標準以上の大きさだ。  
 
「んっ!」  
親指と他の4本の指で下から持ち上げるように東城の胸に触れると、  
驚いたように彼女は息を飲んだ。  
痛みを感じないように、腫れ物に触れる時のような心構えで指を動かしていくと、  
改めて東城の胸の大きさと柔らかさが伝わってきた。  
(俺今、東城の胸揉んでる……)  
これまでも成り行きで何度か東城の胸の感触したけれど、  
自分の意思で触れるのは初めてだ。  
「ん、んっ……、ぅん……っ」  
キスを受けながら、東城は喘ぎとも取れる小さな声を小刻みに発しては  
時折びくりと身体を跳ねさせる。  
その反応が歓喜から来るものなのか、それとも嫌悪から来るものなのかは  
解からなかったけど、東城は俺の手を拒まなかった。  
唾液にまみれてネチャつく唇の感触、可愛い吐息、掌に収まりきらない大きな膨らみ。  
東城の身体全てが俺を虜にして離さない。  
「ん、ぷぁっ、あふ、ん……」  
舌先で彼女の上唇を持ち上げると、戸惑いを含んだ声を残して東城の口内が晒された。  
たっぷりと唾液を乗せた彼女の舌に俺は自分の舌を絡ませる。  
唇だけじゃなく、東城の口の中全てを味わいたい……終わりのない欲望の沼へ進んで  
転がり落ちるように、俺は東城を求めた。  
「はぁっ、真中ふん、んあ、ふっ」  
 
「東城、もっと口開けて」  
「はう、んぶ、ぢゅっ……」  
舌の絡み合う音がこんなにイヤらしいとは思わなかった。  
東城の舌をねぶっているだけで身体がどんどん熱くなっていく。  
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」  
次から次へ涌き出てくる東城の口内の唾液を、俺は必死で吸う。  
「ぢゅずっ、じゅ、じゅっ」  
「ん、あっ……」  
口内の交接に集中しているのか、  
東城は今や俺の腕の中にだらりと身体を投げ出していた。  
舌を吸い、歯型をなぞり、東城の口内全てを楽しむ。  
彼女の胸を揉む手は次第に強く荒々しいものへ変わり始めていたが、  
東城は苦悶の表情を見せながらも俺の行動を拒まなかった。  
優しくしたいという気持ちと、東城の身体を思うがままに味わいたいという気持ちは  
絶えず俺の中で葛藤を繰り返していたが、  
東城は与えられる刺激全てを受け止めてくれている。  
 
口内から溢れ出た唾液で口許をベタベタに濡らしながら、  
俺はようやく東城の唇を解放した。  
2人の間に架かった唾液の橋が、さっきまでのキスの激しさを現していた。  
細い橋がぷつりと切れるのを見てから、俺の掌にずっと心地好い柔らかさを  
提供し続けてくれている東城の胸に視線を向けた。  
そこには確かに俺の手が東城の乳房を包みこんでいる光景があり、  
視覚的に俺を昂ぶらせることになった。  
ふにふにと指を動かすと、制服の上からでもしっかりと弾力に富んだ膨らみが  
いいように形を変えてくれる。  
「んん……」  
胸を揉まれ、東城が遠慮がちに声を出す。  
彼女の性格そのままの控えめな喘ぎに、可笑しさと愛おしさが涌き上がってくる。  
そんな東城をじっと見つめていると、彼女は恥ずかしそうに身をよじって視線を反らした。  
「真中くん……さっきからずっとあたしの胸触ってるから………んっ」  
伝わってくる刺激を1つ飲みこんでから、  
「あ、あたし……敏感に……なっ、あ、ぅっ」  
と東城が切なげに漏らす。  
 
直に触れてみたいという欲求のまま、俺は東城の制服をまくり上げた。  
制服の中からまろび出てきたのは、雪のような白いお腹と  
その豊かな胸を苦しそうに隠す下着。  
「……っ」  
肌を晒したことに東城はわずかに動揺したようだったけど、  
特に何も言わず、俺の行動をじっと見張り続けていた。  
「とっ、取っていいかな……」  
俺の言葉に、東城がぴくんと反応する。  
普段なら恥ずかしくて絶対言えないような頼みも、  
今の雰囲気なら多少の勇気を出せば何でも言えるような気がした。  
そして、東城も聞いてくれるような気がした。  
部屋に充満している淫靡な空気に東城もまたあてられているのか、  
自分から進んで胸を覆い隠す下着を外してくれた。  
押さえつけていた布地から解放された2つの果実が  
ぷるんとその実を震わせて弾け出る。  
(東城の胸……)  
綺麗だった。  
形の良い、まんまるの乳房。  
こういうの、『美乳』って言うんだろうな……大きさも申し分ない東城の胸は、  
ただ俺を感嘆の溜息を吐かせた。  
 
「……そんなにじっと見られると、は、恥ずかしいかな……」  
そう言ってから、東城はたくし上げた制服でその胸を隠してしまった。  
網膜に焼き付いた彼女の乳房の残像を思いながら、  
俺は彼女の制服を脱がせてすぐ側にあるベッドへ横たわらせた。  
露わになった乳房の先端を片手で隠しながら、  
東城はゆっくりとベッドに身体を沈めていく。  
汗ばむ手で俺は乳房から離れようとしない東城の手をそっと退けた。  
ピンクの先端がその存在を見せ付けるかのようにツンと屹立している。  
これまでの過程ですでに東城の乳首は反応していたことが嬉しくて、  
俺はその感触を確かめたいと指できゅっと可愛い突起をつまんでみた。  
「きゃっ……!」  
捕まえた指を2、3度擦り合わせると、コリコリと固い感触が俺の指に伝わってきた。  
東城の呼吸に合わせてゆっくりと上下するふくよかで柔かいふくらみとは対象的に  
身体が反応すればするほど固さを増すその突起は俺をさらに興奮させる。  
「東城、固い……」  
「あ、んっ……! やだっ……そんなところ摘まないで……」  
 
ピンク色の突起をつまむ俺の指を見ながら、  
東城は身体をよじりながら恥ずかしそうに声を漏らした。  
くりくりと指でその感触を確かめる度に驚いたようにビクリと竦みあがる  
彼女の反応が嬉しくて、俺は夢中になってその可愛らしいしこりを転がした。  
「あっ……は、ぅん………」  
東城の口から漏れる声はいつものそれよりも熱っぽく俺の耳に響く。  
顔を赤らめながら俺の動きに応じていろんなリアクションを見せる東城の姿は、  
それだけで俺の気持ちを昂ぶらせる。  
「東城の胸、すごい……」  
俺のわずかなアクションにさえその乳肉をぽよぽよと惜しみなく弾ませる豊満な胸は、  
嘆息させるに充分すぎるほどの魅力を放っていた。  
その綺麗な形、甘い匂い、とろけるような感触に俺の鼓動はどんどん速く、加速していく。  
汗ばんだ東城の肌に吸い寄せられるように、俺は緊張に震える自分の唇を  
彼女の乳首へ寄せていった。  
「あ、あっ、真中くんっ……ゃっ!?」  
 
「ちゅっ…」  
唇で捉えた突起を吸い上げた刹那、東城の声が跳ねた。  
口内に入ってきたそれの味を確かめようと舌を絡ませてみる。  
「くぅ……ん……っ」  
彼女のオッパイに特別な味は感じなかったけど、  
それでも乳首を吸われて切なげな声を上げる東城に  
俺はかつてないほどの興奮を覚えた。  
「ちゅっ、ちゅば、ちゅば…」  
「はぁ、はぁ、はぁっ、ま、真中くん……っ」  
お椀型を崩さない東城の乳房に頬をぐっと押しつけて  
直にその柔らかな感触を愉しみながら、  
俺は乳首を吸う力をさらに強くしてみる。  
「あ……!」  
口の中で取れてしまいそうなほど引っ張られた突起を  
優しく歯で捉えると、胸をあらわにしてから目を瞑ったままだった東城が  
初めて俺を見た。  
 
「え?」  
その瞳にわずかな怯えが含んでいるように見えて、  
俺は思わず口を離して東城を見つめ返した。  
「あっ、ち、違うの。ちょっとびっくりしちゃっただけ……あ、でも、  
 だからダメってことじゃなくて……ああぁ、ええと……」  
俺の目の前で大きなオッパイをぷるぷるさせながら  
ちょっと焦っては見えるもののいつも通りの口調でそう言う東城が微笑ましくて、  
あまりに魅惑的な身体を目の前にして我を忘れがちだった  
俺をいくらか正気に戻してくれた。  
「その……もうちょっとや、優しくしてくれると……嬉しい……です…」  
語尾の方はお互いの息遣いと布擦れの音しか存在しないこの部屋であっても  
聞き取りにくいものだったけど、それでも東城の気持ちは充分に伝わってきた。  
 
そうだ。  
俺は今、東城とベッドに寝ているんだ。  
そりゃ東城がすごいカラダしてるってことはこれまでも度々思い知らされてきたけど、  
だからって俺は東城のカラダだけが好きってことはない。……ないはずだ。  
彼女の気持ちを考えずにただ自分の欲望をぶつけるだけなんてことは絶対にしたくない。  
今さらながら、東城の気持ちを置き去りにして初めて触れる女の子の身体に  
夢中になってしまっていた自分の愚かさを悔やむ。  
この身体の持ち主が東城じゃないと意味がないんだ。  
東城だからこそ、俺は……  
「悪い……俺、東城の気持ち考えないで1人で突っ走ってた」  
顔も向けられないと、俺は東城に深く頭を下げた。  
逃れられない男の欲求とはいえ、それに呑まれてしまった自分は  
恥じるべき存在に違いなかった。  
「真中くん……?」  
 
身体を離した俺を心配そうに見る東城に、俺は正直に心の内を明かそうと思った。  
「東城のハダカ、すげー綺麗だから……俺、夢中になっっちゃってた。  
東城のこと考えないでただ自分のしたいことして……最低だよ」  
ついさっきまで手の中にあった東城のぬくもりを握りつぶすようにぐっと拳をつくる。  
そんな俺を慈しむかのように、東城は上体を起こして俺の指にそっと触れてきた。  
優しさのこもった手つきに顔を上げると、東城は気まずさが混じったような  
はにかみを見せていた。  
「そんなこと、気にしなくてもいいよ……  
 真中くんは、あたしの身体…気に入ってくれたんだよね?」  
やや乱れた黒髪を押さえながら、東城は恥ずかしそうに俺を覗き込んでくる。  
呼吸のリズムを知らせるように静かに動くたわわな胸、そんな大きな胸を支えるには  
心細すぎるほどにキュッとくびれた腰、スカートに覆われているものの  
臀部から足にかけてのラインは綺麗としか形容できないほど魅力的だ。  
「も、もちろん! ……あ、いやっ…そうじゃなくて……」  
思いのほか大きな声が出てしまい、慌てて否定の言葉を探す。  
いや、別に否定しなくてもいいんだ。東城の身体がすごくいいってことは本当なんだから。  
「……真中くんに気に入ってもらえたなら、  
 あたしもちょっと自信持っちゃっていいのかな…」  
俺の慌てっぷりが余程可笑しかったのか、東城が思わずといった様子で笑みを漏らした。  
 
『ちょっと』だって?  
……前々からずーっと思っていたけど、上手い文章を書ける才能といいすれ違う男達を  
振り返らせるほどの顔といい献身的な性格といい学年1、2の頭の良さといい  
エッチすぎる身体といい、東城はもっと自分に自信を持つべきだ!  
「とっ……東城は、もっと自分に自信持っていいよ! 俺マジでそう思う!」  
東城がもっと自分の良い部分を見せていけば、今以上に人気が出るだろう。  
そうなれば、これまでより東城に言い寄る男達も増えて……  
「……ごめん、やっぱ訂正……」  
「えっ?」  
ついさっき吐き捨てた言葉をまた拾い上げることはとてもみっともなかったけど、  
東城に近寄る男をこれ以上増やさないためにも俺はもう一度言い直した。  
「俺の前でだけ、自信もって…」  
東城が自分以外の男と話したりしてるとやっぱ気になる。  
汚い独占欲だと言われればそれまでだけど、  
東城に一番近い男は常に俺でありたいと思う。  
「う、うん」  
俺の真意が伝わったのかどうかは表情から見てとれなかったけど、  
東城は少し照れたような顔で答えてくれた。  
 
「……あたしも、真中くんの前でなら…本当の自分を見せられそうな気がする……」  
「東城…」  
その東城の言葉が嬉しくて、俺は彼女の身体に再び手をかけた。  
今度は自分の感情だけで突っ走ってしまわないよう心掛けて、  
彼女の様子を常に気遣いながらゆっくりと進もうと思った。  
すっかり冷えた東城の身体を掌でさすりながら、改めてじっくりと堪能していく。  
「………ん…」  
胸の膨らみに手を添えた瞬間、東城の口からくぐもった声が漏れた。  
俺の手がくすぐったいのか、柔らかな膨らみを求める手から逃げようと身をよじらせる。  
それを追いかけるようにして手を伸ばした結果、  
東城に背中から覆い被さるような体勢になってしまった。  
眼前にある艶やかな黒髪から良い匂いがしてくる……俺はその長い髪の中へ  
顔を埋めるようにして、まだしっかりと手の中に捉えていた両の乳房をやわやわと揉み始めた。  
「んやっ……!」  
「東城の髪、すっげーいい匂いがする…」  
すんすんと鼻を鳴らしながら目の前に広がる香りをいっぱいに吸いこむと、  
東城はくすぐったそうに首を縮めて身体を小さくして見せた。  
 
「変な匂いしない……?」  
「いや、いい匂いだよ。なんか好きな匂い」  
ホッとしたのか、東城の肩からすっと力が抜けたように感じた。  
俺は両手の中で乳肉を踊らせながら、人差し指で中央の突起に触れてみた。  
「…はあぁ……」  
「ここ、どう?」  
東城に探りを入れながら、ちょんちょんと指の腹で軽くノックするように触れる。  
わずかに身体を動かしてレスポンスを返す東城がすごく可愛い。  
「わ、わからないけど……んっ、い、イヤじゃないから……」  
それは続けてもいいという答えなのか。  
少なくとも東城は乳首に触れられることが嫌いじゃないみたいだ。  
俺は突起の周りの乳輪に合わせて指を回転させたり、突起の先端のわずかにくぼんだ  
そこを上からそっと押さえつけたりと、東城がどんな反応を示すかを確かめるように  
自分の指に色々な動きをさせてみた。  
「んっ……ぁ………」  
小鳥が留まりそうなほどのか細い喘ぎを繰り返す東城。  
上気してきた彼女の顔を伺いながら、俺はいよいよスカートへ手を伸ばした。  
 
「っ……」  
そんな俺の動きに東城も気づいたようだったけど、  
さして拒絶する様子も見せずに俺を誘導するように腰を動かしてくれた。  
「ん……あ、あれ」  
どう脱がすのか解からない……。  
東城の腰にぴったり密着しているスカートの周りを指で辿りながら、  
俺はどうすればいいのか戸惑ってしまった。  
今まで女の子のスカートを脱がす機会などなく、それを履く機会ももちろんなかった俺に  
スカートはその口を決して緩めてくれようとはしない。  
頭を抱えてしまいそうなほど困っていた俺を見かねたのか、  
いつまでも下ろされないスカートのホックを東城はそっと外してくれた。  
苦笑いを浮かべているようにも見える東城に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。  
「……ご、ごめん……」  
「う、ううん…」  
ああぁ、なんか東城にすごく恥ずかしい思いをさせてしまったような気がする。  
心の中で東城に謝罪しながら、俺は彼女の脚からそっとスカートを抜き取った。  
白い無地のパンティに包まれたキュッと丸いお尻が目に飛びこんでくる。  
 
肌にぴたりと引っ付いた下着ごしに東城のお尻の形がはっきりとわかった。  
大きく綺麗な胸に負けず劣らず丸みを帯びた尻肉に、  
割れ目に沿って下着がシワを見せている様がすごいイヤらしい……。  
俺は誘われるままに東城の尻たぶに掌で触れてみた。  
伝わってくる柔らかさと丸みは胸と遜色なく正に感動ものだったけど、  
東城はこれまでにないほど身体を固まらせてじっとそのままの体勢で硬直していた。  
「……っ……」  
その様子は見ているこっちが可哀相になってくるほどで、  
自分が何かすごく悪いことをしているような気分になってくる。  
いつまでも彼女をこのまま力ませておく訳にもいかず、名残惜しくはあったものの  
俺は東城のお尻から手を離した。  
「……ぁ」  
東城はちらっと俺を見てから、小さく1つ息を吐き出した。  
その瞳には安堵の色が浮かんで見える。  
しかし俺の手が彼女の前、むっちりとした太腿が閉める股間の奥へ向かうのに気づくと、  
東城の顔にさっと紅みが走った。  
想像の中でさえはっきりとその姿形を思い描くことができない  
東城のアソコへ俺は今触れようとしている……。  
 
「ま、待って、真中くんっ」  
パンティの三角部の中央、柔かい土手の部分に指先が触れたかどうかのところで  
東城が初めて俺の手を掴んだ。  
その表情にははっきりと困惑の色が浮かんでいる。  
「そ、その……あっ、あたし、こ、心の準備が……」  
しどろもどろになりながら東城は必死に俺の手を拒んでいた。  
触る方の俺でさえ心臓が飛び出しそうなほど緊張するんだから、  
東城の方はどれだけのものだろうか、想像に難くない。  
「そ、そっか……」  
とは言うものの、出した手を引くこともできず、  
俺は東城と一緒にその場で固まってしまっていた。  
「…えっと」  
何か切りだそうとしたその時、東城が言葉を被せるようにして口を開いた。  
「ま、真中くんは……脱がないでいいの?」  
見れば、俺は学校帰りそのままの服装だ。  
目の前の東城は俺に剥かされてパンティ1つの裸体だというのに、  
すげー不自然だった。  
「そ、そうだよな……東城だけ脱いでってのもおかしいよな……」  
起こすべき行動を見つけたと、俺は急ぎ身につけている服を脱ぎにかかった。  
痛いほど大きくなった股間のモノに気をつけながらズボンを下ろしていくと、  
東城が俺を見ていることに気づく。  
 
服脱いでるところを女の子に見られるのって、なんか恥ずかしいな。  
普段、脱いでる場面でいきなり開いたドアからご対面……ってシチュエーションは  
考え得るけど、女の子の目の前で最初から服を脱ぐってのはこれが初めてかも知れない。  
そんなことを思っていると、俺と視線を合わせた東城がさっと顔を伏せた。  
「ご、ごめんなさい!」  
「あ、別に……でも結構恥ずかしいなぁ、人の前で脱ぐのって……」  
「そ、そうだよね。あたしもさっきからドキドキしっぱなしで…」  
そうこう言っている間に肌着以外を脱ぎ終えた俺は、自分の貧相な身体に改めて溜息を吐いた。  
(東城みたいにすごいカラダだと格好ついたんだけどなぁ……)  
しかしトランクス一枚で佇む俺は傍目から見ればとても滑稽に違いなかった。  
ましてやその中身をみっともないほどに大きくさせているその姿は…。  
(これじゃ脱いでも脱がなくても一緒じゃん……)  
トランクスを突き破らんばかりにそそり立つソレは、もはや形を曝け出しているも同じだ。  
この上なく恥ずかしかったけど、俺は覚悟を決めてパンツ一丁で東城の横に腰を下ろした。  
「こ、これで東城と一緒だよな」  
「そ、そうだね…」  
東城の視線がちらちらと俺の股間へ向いている。  
見まいとしてくれている彼女の気持ちが解かるだけにすごく恥ずかしい。  
 
「……や、やっぱ気になる?」  
「えっ!?」  
自分の視線は気づかれていないと思っていたのか、  
俺の一言に東城は気の毒なほど驚いていた。  
「そ、その……」  
「お、お、俺が見せたらっ……東城も見せてくれるか…?」  
その光景を想像しただけで股間に血が流れ込んでいく。  
東城も同じく頭の中で思い描いたのか、これまでの比じゃないほどに頬を紅くさせていた。  
『お互いの性器を見せ合う』なんて、日常じゃ考えられないことだ。  
それも相手があの”東城”だから、興奮度も跳ねあがる。  
「はっ……恥ずかしい………………けど……」  
このままでも恥ずかしさが消えることはないと踏んだ俺はその場に立ち上がり、  
東城の答えも最後まで聞かないまま徐にトランクスの縁に手をかけた。  
「俺が先に脱ぐから……べっ…別に、見るなとは言わない」  
緊張と興奮で語尾が震えた。  
そりゃそうだ。好きな女の子に自分のアレを見せようとしてるんだから。  
見て欲しいと思うわずかな感情と、恥ずかしいという大きな感情の中、  
俺は一気にトランクスを膝下まで降ろした。  
「きゃっ!」  
それほど自慢できるモノではないけど、取りあえず俺はお約束事であるかのように  
両手を腰にあてて仁王立ってみた。  
東城の身体のおかげで俺のシンボルは重力などそっちのけでその姿を禍禍しいまでに  
肥大させていたが、何故か羞恥心は次第に小さくなっていくのを感じた。  
 
全てを曝け出した今、これ以上の恥ずかしさに苛まれることはないという心境が  
俺の気持ちを軽くしてくれたのか。  
「ぬ、脱いだよ」  
息を吐きながら、俺は東城を見た。  
呆然と俺の股間を凝視する東城を見てるだけで、身体中の血がさらに股間に集まっていく。  
「あっ、大きく…」  
「も、もういいだろ。次、東城の番だから」  
俺はこれ以上見つめられるのに絶えられず、東城に三度覆い被さった。  
しかし東城は俺のように踏ん切りがつかないのか、  
最後の下着になかなか手をかけようとしない。  
「……っ……」  
「…東城…?」  
決して急かした訳ではなかったんだけど、  
俺の呼びかけに東城はわっと手で顔を覆ってしまった。  
「ごっ……ごめんなさいっ! あ、あたし、すごく恥ずかしくて……  
 真中くんはちゃんと脱いだのに、あ、あたし……」  
半分泣きが入ったように東城が口早に告げる。  
無理なら別に……と俺が声をかけようとした時、東城は俺を見ながら言葉を続けた。  
「じ……自分で脱ぐ勇気ないから、真中くんに脱がせて欲しい……」  
 
東城の言葉は俺の意識を数瞬跳ばすのに充分なものだった。  
「え、お、俺がっ!?」  
思わず上がった俺の声に東城も自分が告げた意味を反芻できたのか、  
紅を滲ませた頬をさらに火照らせて、ぎゅっと目をつぶってしまった。  
俺が目前にある純白の下着と東城の顔を交互に見合わせていると、  
それを薄目で確認していたのか、彼女が細い顎先をコクリと動かした。  
(……マジで?}  
乾いた喉を1つ鳴らして、俺は東城の意を汲むべく腰の布地に指をかけた。  
肉付きのいい彼女の臀部にぴったりとフィットしていた腰紐部に人差し指を差しいれて、  
東城の体温を感じながらそろそろとパンティを降ろしにかかる。  
「……っ」  
その刹那、自分の喉元あたりに両手できゅっと小さな拳をつくった東城が  
身体を強張らせるのが解かった。  
そんな彼女を見てるといけないことをしているような気分に苛まれたけど、  
俺の中でこれ以上ないほどに膨れ上がった東城の秘められた部分を見たいという  
強い想いが指の動きを突き動かした。  
細くくるまりながら落ちていく最後の布地。  
薄い恥毛が姿を見せて、下着で蓋をされていたムンとした熱気が  
解き放たれる。  
 
初めて見る異性の秘められた部分に俺は瞬きすることも忘れてしまっていた。  
薄く開かれた紅肉の扉には無色の液体がテラテラと光っていて、  
東城の綺麗な陰肉の形と色をより淫靡な光景にして見せている。  
「そんなに…み、見ないで…真中くん……」  
食い入るような俺の視線に気づいたのか、かすれた声で東城がそう懇願してきたが  
あまりに魅惑的な秘部から簡単に俺の目は離れてくれない。  
「う、うん」  
生返事をしつつも、俺の興味は彼女の呼吸と身体の動きに合わせてヒクヒクと蠢く  
その入り口に執着したままだった。  
東城の秘口から見える幾重にも重なった肉襞で造られた道、  
さらには自らの粘着性を現すようにその奥からトロリと溢れてくる液体……生で見る  
異性の身体は俺を誘惑して止まない。  
「も、もう……真中くん、聞いてる?」  
「……あ」  
俺の視線に抗議するように、声にわずかな怒気を含ませながら東城は脚を閉じてしまった。  
見えないことはなかったけど、開かれていた秘唇はキュッと口をつぐんでしまって  
その奥を見せようとはしない。  
 
「ご、ごめん」  
機嫌を損ねてしまったと思い一言謝まると、東城は俺を不安げな視線で見つめていた。  
彼女の考えが見えなくて、急に心臓の鼓動が速くなる。  
「……真中くん、黙っちゃうから……あたしの身体、どこか変…?」  
下着を脱がせてからずっと無言のままだった俺をいぶかしく思ったのか、  
東城が細い声で聞いてきた。  
『変』……俺は女の子の身体をじっくり拝んだのはこれが初めてなので  
東城の身体がおかしいかどうかなんてもちろん解かるはずない。  
ただ、今まで見たことがなかっただけに俺の興味は当然”そこ”にいってしまう。  
「いやっ……おかしくないと思うけど……はは、お、俺、見るの初めてだったからつい……」  
苦笑しながら言うと東城は少し驚いたように、  
「……真中くんも……?」  
そうポツリと呟いて、恥ずかしいような…それでいて嬉しいようなはにかみを見せた。  
「うっ……じ、実はそうだったりして……」  
彼女の反応とさっき自分で告白した内容から、東城がこういうことをするのは初めてだと  
いうのは解かっている。初めての女の子が相手なら、男がリードしてあげたいものだと  
思っていたけど……  
 
(……ヤバイ。俺、めちゃくちゃアガッてるな……)  
目の前に横たわる綺麗な裸体と、事を起こす度に身悶えて応えてくれる東城。  
童貞の俺には刺激的すぎる…。  
今さらリードする余裕なんて全くないけど、せめて東城を置き去りにしたまま  
行為に耽ってしまわないよう注意しておこう……。  
これからの心構えを再確認している俺の顔が可笑しかったのか、  
クスッと小さく東城の頬が緩む。  
「な、何? なんか俺おかしい?」  
不安になった俺が訪ねると、東城は綻んだ口許を隠すように手を当てた。  
「ううん。真中くんも初めてだって聞いて、ちょっと安心した……」  
さっきまでの不安げな表情が消えて、そこには控えめながらもいつも彼女が見せてくれる  
心が明るくなるような笑顔があった。  
東城も、そして俺も初めての経験……今まで見聞きしたことだけを頼りにここまで  
進んできたけど、お互いの緊張度合いや不安は似たようなものだったに違いない。  
だけどそれがかえって、俺と東城の”距離”が近いということを認識させてくれる。  
焦らなくてもいいんだ。例え間違ったとしても東城は決して俺を蔑んだりしないから――  
 
「東城、リ、リ、リラックスして」  
ドモりの混じった言葉は微塵の説得力もなかったけど、  
俺は東城に覆い被さりながらお互いの股間を密着させていった。  
俺の意図を察してくれた東城も、恥ずかしさを表情に滲ませながらも閉じていた脚を恐々開いていく。  
猛りまくった俺のモノが東城の濡れた秘口へ近づくと、さすがに恐怖があるのか  
東城の身体に力がこもるのが解かった。  
男には解からないこの瞬間、俺にできるのは可能な限りゆっくり進むことだけだ。  
「っ……」  
モノの先端が彼女の柔肉に触れる。  
東城が息を飲みこむと同時に、暖かく濡れた秘部の感触がダイレクトに伝わってきた。  
「うっ…」  
極度に敏感になっている箇所に与えられた快感が俺を呻かせる。  
だけど眼前に迫った『結ばれる瞬間』へ俺は腰をすすめた。  
「んっ……」  
「……、あ、あれ」  
前に倒れていく上半身に反して、俺の下半身は肥大した肉棒を突っかえるようにして  
進まない。東城の入り口付近で折り重なっている肉襞が異物の侵入を頑なに拒んでいた。  
 
「お、おかしいな」  
挿入部がズレているのかと、亀頭で東城の秘裂を上下になぞる。  
「あんっ……」  
う……!  
俺の股間が敏感になってしまっているように、彼女もまた敏感になっているんだろうか。  
先端を探る行為が東城を刺激してしまったみたいだ……けど、  
(その声はヤバイよ、東城……)  
今すぐにでも発射できる状態の俺にこれ以上そんな甘い声を聞かせないでくれぇ……!  
「真中くん……?」  
制止したままなのを不思議に思ったのか、東城がじっと俺を見つめてくる。  
ああぁっ、今はそんな可愛い顔を向けないで……頼む東城……。  
「も、もうちょっと下だと思うよ。あっ、あたしもうちょっと……脚広げた方がいいのかな……」  
「あ、いや、ちょっと待って東城、今動いたら俺ヤバイ…」  
むにゅっ。  
「うひゃっ!」  
む、胸がっ!  
大きなお椀型した東城のおっぱいが俺の胸に押しつけ、ら、れ……て……  
「あ、あぁ、ごめっ、東城……」  
「えっ…?」  
 
ビュッ!  
「きゃっ!」  
ビュクッ! ビュクッ!! ビュクッ!!  
「あ……」  
柔かくもハリのある胸の感触と、しきりに亀頭を刺激する柔肉が  
残酷なほど無邪気に俺を絶頂へ推し進めた。  
東城の白いお腹へ放たれた精液はみっともないほど大量で無遠慮に彼女の身体へ飛び散っていく。  
「う〜〜〜っ……」  
溜まったものを吐き出す快感に身体を任せながら、また東城に出してしまったというある種の  
達成感に身震いしながら、瞬刻俺は放心していた。  
が、それもすぐに終わり、勝手に達してしまった罪悪感がすぐさま俺を包みこむ。  
「わぁっ! ご、ごめん東城!! すぐ拭くから!!」  
急いで机の上に常備してあったティッシュを取り、  
俺は東城の身体に付着した粘液を念入りに拭き取っていった。  
「もうないっ? 大丈夫? もう全部拭き取ったかな!?」  
「う、うん。もう綺麗になったかな……あっ、ち、違うの。真中くんの…がき、汚い訳じゃなくて……」  
「東城! ごめん! 俺必死に我慢してたんだけど……その、東城のカラダすごくて…」  
ベッドの上に正座して謝る俺の勢いは、  
東城もたじろいでしまうほどだったみたいで。  
何か言おうとしていたようだったけど俺の勢いに押された形で黙ってしまった。  
 
「い、いや、言い訳には変わりないんだけど……ちょっと刺激強すぎ…」  
「……くす。ううん、平気……全然気にしてないよ」  
弁明する俺に、東城は一番欲しい言葉をかけてくれた。  
自分ではそうでもないと思っていたけど、どうやら相当慌てふためいていたようで、  
彼女はくすくす笑みをこぼしている。  
うう……東城の優しさが染みるなぁ……。  
そんな彼女を見ているうちに、節操のない俺の息子はその姿を再び禍々しいものへ変え始めた。  
(ま、また勃ってきた……)  
全裸のため隠すことなど当然できない俺の股間に東城も気づいたようで、  
目を大きくさせてその状態を凝視してしまっている。  
「ま、真中くん……大丈夫なの……?」  
東城の中では『男は一日一発』とでもインプットされているのだろうか、  
股間へ向けた視線はとても心配そうに揺れている。  
「あ、あぁ……全然平気。東城さえ良ければ、その……続き…」  
「……うん」  
もう彼女の表情について言うべきことはない。  
『恥ずかしいけど、好きな人のためなら……』みたいな、  
男にとってこれ以上ない可愛い表情だよ。  
 
「今度は……上手くやるから」  
コクリと頷く東城の秘部へ半勃ち状態のままの自分のモノをあてがい、  
さっき彼女が示してくれた部分へ押し当てた。  
溢れ出た愛液を乗せた亀頭が肉唇を押しこむようにめりこんでいく。  
「はぅっ……」  
東城の口から漏れたくぐもった声が意味するのは苦痛なのか快感なのかは  
解からなかったけど、俺の肉棒を包みこむ彼女の肉壁はすごい締めつけで捉えてくる。  
(くっ……スゴイぞ、これ……)  
センチ単位でさえ進むのに難儀しそうな快感の中、  
東城の表情の変化に気をつけながら俺はゆっくり腰を押しつけていく。  
この快感を手放すのは名残惜しいけど、彼女が拒絶の言葉を口にしたらすぐにでも  
引き抜くつもりだった。  
「ま、真中くん……ぅぅっ」  
「平気か? 東城…」  
きゅっと目を瞑って、侵入してくる異物の感触を確かめるように東城は身体を震わせていた。  
もしかするとその震えは痛みによるものかも知れなかったけど、俺の背中に回された  
彼女の手が俺を放さない。  
「もうちょっと……東城、もうちょっと…」  
「ん……だ、大丈夫…」  
 
肉の楔が彼女の中へ推し入っていく。  
それに比例して背筋を震わせるほどの快感が伝わってきて、  
俺の中にくすぶっている興奮を覚醒させるんだ…。  
どれくらいの時間をかけただろう。  
それはハイハイを覚えたばかりの赤ちゃんの歩幅に肩を並べるほどに  
頼りなくおぼつかないものだったけど、俺は自分の分身の頭身全てを東城の中へ埋めこんだ。  
「入った、東城」  
「うっ……ぜ、全部……?」  
止めていた息を吐き出すように東城が言葉を紡ぐ。  
俺が顎を引いてそれに答えると、彼女はうっすらと力ない笑顔を見せた。  
「あたし……真中くんと繋がってる……」  
自分自身で噛み締めるように、東城は自らのお腹に手を当てた。  
その先には俺の身体の一部が確かに存在するんだ。  
そう考えると彼女の笑顔の意味も理解できるような気がした……好きな人を受け入れている  
今この瞬間、お互いの想いが通じているということが形になっている。  
「動いていいよ、真中くん……」  
嬉しさで胸がいっぱいになりかけていた俺に、東城がそう声をかけてくる。  
『自分の身体で気持ちよくなってもらいたい』と訴えるような彼女の瞳……  
俺もまた同じ気持ちだった。  
東城が俺で気持ちよくなってくれたら、こんなに嬉しいことはない――  
「……ゆっくり動くから。我慢はなしな、東城」  
彼女の首を抱くようにして、ゆっくりとグラインドを始める。  
 

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