2.(前編)  
 
「さあ皆さん、レイプ☆メンの入場です!」  
 キャスターの報道とともに、会場の入口より一団の坊主あたまたちが入って来た。  
刈り上げにされた頭髪も未だ生え揃わず、ためにより一層、その集団の斉一性を物語る。  
頭髪だけでない、異常に大きな鼻や薄い眉毛、歪んだ口に不揃いな歯並びなど、面々の顔つきは明らかにある種の人間独特な特徴に統一されていた。  
身長はややバラつきがあるが、全員真っ裸で、恥ずかしげの欠片もなくスポットライトを浴びて、にやついているさまは確かに精悍だった。  
さらに、全員がチ××を隆々と反り返させている点で、非常に精密に統一された集団だった。  
「今入場中の選手達の平均逮捕歴は前科16犯、ムショで過ごした年月の平均は6,2年、刑法犯の経歴順で言うと、強姦殺人51パーセント、強盗傷害48パーセント、傷害致傷49パーセント、覚醒剤取締法違反30,5パーセント、暴行傷害が……」  
 キャスターの報道は栄子の耳にも届いているが、途中喚声でかき消されたようになり、また本人さしてが聞く気にもならなかったので、それ以上は頭に入らなかった。  
今目の前で起きている事実を現実として受け入れられているのだろうか、格別瞼を閉じたり、泣きさんだりもしない栄子は、なにやら広場の一隅をじっと見続けている。  
その目はどこまでも暗かった。たまに何か呟く。熱狂の群衆に聞こえるはずもないが、  
 
「望一郎、父上」  
 
と小声で呼んでいるらしかった。  
 「レイプメン」たちが広場の中央、栄子の縛られさらされている壇の前で四列横隊に整列する。  
「チ○ポ入れよう〜♪ チ○ポ入れよう〜♪ みんなでみんなでチ○ポ入れよう〜♪」  
途端、奇妙なメロディーが響く。全員が腹の底から合唱しているのは、女優が輪姦の最中マジイキして伝説の一つとなった、10世紀前の日本のとあるアダルトビデオで歌われた曲らしい。  
やがて中から一人が進み出て、宣誓する。  
「宣誓! 我々、レイプメン一同は、 レイプメンシップにのっとり、照屋栄子の腐れ×××の×××や×××など、体中に、ザーメンと鮮血を目一杯注ぎ込んで、メス犬の×××をイカせて孕ませてやる事を誓います!!」  
 再度、大歓声が湧き上がる。  
 
宣誓した元囚人にキャスターが駆け寄りマイクを向けた。  
「あなたの罪名と刑期は?」  
「強姦殺人7件と強姦27件、それに傷害と暴行も合わせると百犯近いっすね。刑期273年で、シャバにでるのはもう諦めてました」  
「随分大きなナニですが、これで栄子を痛ぶるんですか?」  
「あんな腐れ×××でも、出所できた恩人ですから。今まで犯しながらバラしてきた女ども同様、解体前の思い出にイカせまくって、ヒイヒイ善がらせてやりますよ」  
「もうびきびきじゃないですか」  
 男の逸物が画面に拡大され、同時に画面の端には、それを見つめる栄子の顔も映される。続いて、栄子の性器がズームアップされた。  
「おや、栄子の×××濡れてませんか? いやこれは確かに濡れています! いやー、さすが腐れ×××、犯されると知って、やり過ぎでガバガバの×××をもう濡らしています。クリトリスも立っていますよ!」  
 大笑いが会場を包む。栄子は顔が凍りついて一切の表情が抜けていたのだが、言葉の中身は伝わっているらしく、酷過ぎる侮辱を受けて唇がやや震えた。  
「見てください、今もっと拡大しますね。……ああ、これ確かに濡れてますね。クリもビキビキです。ほんとメス犬ですね」  
「いや、今から犯しまくってやるのが楽しみですよ。俺のザーメンで妊娠するまで中田氏してやります」  
 一しきりインタヴューが終わると、続いて内閣官房の辞令があり、ゆるゆると男たちが壇上に登って来た。  
 
「ほら、こっちを向けよ」  
 男の一人が栄子の顔を手に取る。  
「なんとか言ってみろよコラ」  
「おい、もう×××がひくひく言ってるぜ。×れて欲しいのか?」  
 栄子は、体中きつく鎖で縛られて身動きもできない体を急に捩って、ぺっと男の顔に唾をかけた。  
「……この腐れ×××が」  
 「オラア」とレイプメンの一人がこみかめに青筋を浮かべながら、拳を栄子の鳩尾に叩き込んだ。  
「ぐはぁ!!」  
 腹を殴られた栄子が、胃液――ではなく、会場スタッフに前日まで飲まされていたザーメン、を吐きだす。  
横腹や下腹にもボディフックを入れられ、内臓が傷つき子宮が打撲されて血が咽て来るが、固い戒めの為体を折る事も出来ない。  
   
 男たちは続いて面白半分に栄子の顔面を殴ったり髪の毛を捩じ上げたりしたが、政府の監督席の方から注意が来た。  
「へへ、『壊し』はまだ御先だったな。玩具は簡単にすぐに壊さないようじっくり時間をかけて遊ばないと」  
 栄子は顔面を殴られ、鼻骨が砕け、鼻血が噴き出し、瞼も膨れて右の視界が閉ざされかけていたが、性器を男に弄られ、びくりとのけ反った。  
 
「汚ねえ×××だな」  
「おい、俺にも弄らせろよ」  
 男の野太い指に襞を目一杯引っ張られ、陰核を思いっきり捩じられた栄子は、顔を顰めて苦悶を露わす。意地なのか、悲鳴だけは上げない。  
男共はいい気になって、クリトリスの肉が壊死するまで指で捻り潰したり、襞がもげるまで引っ張ったりする。  
乳首も噛みちぎられ、外性器をほぼ損壊された栄子はびくびく震えるが、男共は構わず、栄子の片耳に噛みつき、力任せに噛みちぎりながら逸物を挿入した。  
「見えますでしょうか、今栄子の×××に選手のチ××が入れられました!!」  
キャスターの朗かな声とともに、大歓声が沸く。栄子の女性器に男根が挿入され、何度も抜き差しされている映像が、ドアップでVTRに映される。  
 栄子の顔にアングルが合わされた。  
「見てください、これはどういうことでしょうか、腐れ×××の栄子が泣きじゃくっております。いやー、これは善がり泣きでしょうか??」  
 
「……落ち着け!!」  
 会場の片隅、狂騒のさ中で、冷たく痛烈な声音が響いていた。  
「お前がこんなものを見ていられない気持ちは分かる。だが、今出て行けば、お前の正体をばらすようなものだ」  
 なおも言いつのる彼を、絢子は必死にとどめた。  
「これは、たぶん罠だ。内閣の連中もただ馬鹿騒ぎがしたいだけじゃない。恐らく、魔王をあぶり出す為に、ことさら騒ぎ立てている。  
栄子をバラして、全国放送、真犯人が出てこなくても内閣の責任をそらせて重畳、もし事件の真相を知るものがいぶり出されれば一石二鳥、まとめて殺す。たぶんそういう筋書きだ」  
 
 言いながら涙を流して、絢子は最期は言い捨てるような調子だった。  
「お前は間違ってない、どこの神を裏切ってもない、スハラ神にかけたって、きっとそうだ」  
「今、十発目の中田氏が決まりました! 見てください、栄子の腐れ×××からこゆいザーメンが溢れながら、栄子は泣くじゃくっています! いやー、今さら何を純情ぶってるんでしょう、このメス犬は!!」  
 キャスターがスタッフに耳打ちされ、興奮し上ずった声を出した。  
「内閣からのお達しです! 今、本格的な『壊し』にならない程度、ナイフの使用が許可されました!」  
続く…  
 

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