「ふー……ふー……あれ?」  
 妙な寒気を感じて上原はふと我に返った。同時に腰元に違和感を覚えて軽くゆする。ずきり、と鈍い痛みが上ってくる。  
 
「しょ、正気に返ったか、上原。よし、まずは可及的速やかにそこを退け」  
 なんか普段は聞かない位置から声が聞こえてきた気がするが聞かなかったことにしてあたりを見回してみた。  
 少々薄暗くて見難いが、おぼろげな月明かりに照らされて大き目のベッドの周りを白いカーテンが覆っているのが分かる。病室――いや、保健室、だろうか。  
「おい、聞こえてんのか?」  
「あー、もう! うるさい! ちょっと状況把握してるんだから静かにしてくださいよ、先生」  
 先ほどからぶつぶつ言う声が煩くて、ふと見下ろした視線の先。刹那、ぼうと見つめてしまったその男は、声で気づいて判ってはいたが担任教師の仁岡だった。ただ、常とは少々違った姿であったが。  
「……なんで脱いでんの、先生」  
「て……てめぇー! 僕の言葉を散々無視していておいてそれか!?」  
「やだ、先生。その程度のことで」  
「貴様、言うに事欠いてその程度とは……」  
 いつものようにぽんぽんと言葉の応酬が続く途中、仁岡の言葉が急に途切れた。急に横を向いたその顔は、服と同様に、あるいはだからこそ当たり前のように眼鏡はずしていて、薄暗い照明の中でも赤く染まった顔はまるで少年のように幼かった。  
 まだ混乱してんのか、とかすかに呟いたようにみえた仁岡は、顔をそらしたまま途切れさせた言葉を続ける。  
「いいから、僕のことを言う前にまず自分のことを確かめてみろ」  
「私のことって……」  
 きゃあ、と聞いたことがない声が自分の口から飛び出したのを上原は知った。  
「な、なんで脱いでんの、私」  
「覚えてないか……いや、いい。今度こそ正気に戻ったんなら、とりあえずそこをどいてくれ」  
 はぁ、と深いため息が眼下の担任教師から聞こえてきた。意味もなくむかつく。教え子の裸見といてリアクション足りないんじゃないだろうか。軽い反抗の気持ちと、いまだ続く腰元の違和感に再び軽く腰をゆする。  
「ぐっ、お、おい分かってんのか」  
 なんか焦りだした仁岡が面白くて上原はもう一度腰をゆすろうとして――気づいた。  
「な、なんじゃこりゃー!」  
 再び聞こえてくるため息も今度は耳に入らない。  
「刺さってるぅー!?」  
 それは、かすかに滲む赤黒い血も相まって、まさに串刺しと言うのがふさわしい光景だった。  
 信じられなくて軽く持ち上げた腰の下からおそらく仁岡のモノだと思われるそれの一部が覗く。それ以上見ていられなくて下ろして隠すと、濡れていつもより少なく見えるまだ薄い上原の陰毛が仁岡のそれと混ざる。妙にエロチックに見えた。  
「せ、先生……」  
「今度こそ正気に戻っただろ、いいからまずはどけ。話はそれからだ」  
「いくら一人が辛かったからって教え子襲うなんてこの好色野郎――!」  
「んなっ、言うに事欠いて全部人のせいにするな襲ってきたのは貴様の方だ、上原――!」  
 
 しばし、口論が続いた。  
 それなりに長い間、腰元の痛みもなじんだ頃にやっと終わる。  
 裸の男女が二人、繋がったまま罵り合う光景はなかなか間抜けだったんじゃないかと思う。  
 
「で、つまり。家庭科で持ち込んだ日本酒に酔ってた私がその私を見つけて注意しようとした先生の口に無理やりビンつっこんで」  
「僕も覚えていないが保健室に連れ込んでこういうことになったんだろう」  
 くら、と一瞬揺らめいた。まさかよりによって――  
「さて、それじゃあいい加減どいてくれ」  
「分かった……というか先生、先に気づいたんなら自分でどかせばよかったじゃん」  
 あ、まさか  
「なんだかんだで中学生の肉体が惜しくて」  
「だれが貴様のようなガキを……良く見ろ、手を縛られてるんだよ」  
 呆れたように言う仁岡が腹立たしい。口論ですっきりしてしまったせいか、すっかり羞恥心もろもろはどこかに行ってしまったようで顔の赤みもすっかり引いたように見えてさらにむかつく。  
 しかし酔った自分も周到なものだ、と上原は感心した。  
「ふう、ま、とりあえず抜かないと、ね」  
 そうしてくれ、と言う仁岡。簡単に言うもんだ。今まで目をそらしていたソコに再び目をやる。もうあまり痛みも感じないが、血をまとうソコはいかにも傷口、といった風情で恐ろしかった。  
 
「ん……あ、あれ?」  
 抜こうと少々動かすと、なにか最初に感じた違和感とは別の感触を覚える。  
「くっ……ど、どうした?」  
 また顔を赤らめてこちらを見る仁岡の童顔を眺めながら、もう一度、と少しだけ動かしてたしかめる。  
 ぬちっ、とかすかな音が静かな保健室に響いたことに羞恥を感じるが、それで今度こそ確信する。  
「せ、先生」  
「なんだ?」  
「これ……」  
 
 
 きもちいかもしれない。  
 
 
 言った言葉が早いか動いたのが先か、ぬちっ、ぬちゅ、ぬちっ、と上原は今度は連続して動いていく。  
「待て上原早まるな自分を大事にしろというかやめろ――」  
 
 ぬちっ、ぬちゅ、ぬちっ、ぬちゅっ……  
「あ、あ、いい、ん、じゃない?」  
 ぬっ、ぬちゅ、ぬっ、ぬっ……  
「な、なんか面白いよ、これ、うっ」  
 時折違うリズムも混ぜながら動いてみる。なんとなくコツがつかめてきた気がする。  
 ぬちっ、ぬちゅ、ぬちっ、ぬちゅっ……  
 
 あまり大きく動いてはいないためか、控えめな水音だけが狭い室内に響いている。最初に抗議した後はときどきぶつぶつというくらいで、ただ頬を染めて顔をそらす仁岡もやはり気持ちいいんだろうか。  
 仁岡のことは少しだけ考えて、また上原は新しく知った遊びに没頭していく。  
 
 そういえばこういうのは試したことなかったな――  
 ぬちゅっ、ちっ、ぬっ、ぬちゅ、ぬちっ……  
 中学生としては大きいんじゃないか、と思っている胸にも手を当ててみる。常とは違って、つんと尖りまるで触ってくれと主張するような赤い核をちょっとだけこするように手を載せた。気持ちよさが増える。  
 上原の白い肌がカーテン越しの月光に照らされる。相手を気にせずに続けられるそれは一人遊びに似て――  
「ま、待て上原。これ以上はまずい。本当にまずい」  
「今まで黙ってたくせ、して、あ、いまさら、何いってんのっ。いいじゃん、先生も私も気持ちいいんだし――」  
「そうじゃなくて、で、出る。も、もう出るんだよ」  
 何が、と聞き返そうとしたときだった。切羽詰ったように言っていた仁岡の顔がかすかに緩んで、ついで絶望したようなそれに変わる。同時に、下腹部に広がる暖かさ。  
 くそっ、と呟く仁岡に、やっと上原はそれが何であったかを知る。動きを止めて、体内にじわりと染み込んでいくそれを感じた。  
 
「しゃ……しゃせい?」  
 保険の授業でならった時のことを思い出す。そのとき見たビデオの、必死に泳いでいく白いおたまじゃくしを幻視した。  
 
「そうだよ、くっ、お前みたいなガキに、僕は……」  
「せ、先生?」  
 泣いてる――?  
 少々混乱した頭に、拍車がかかった。  
「な、泣くことないじゃん」  
 射精されたことは置いといて、とりあえず何とかしないと、とまず腰を浮かせた。  
 ぬ、と長い間一体となっていたソコが離れて、ついでお漏らしをしてしまったようないやな感触とともに白い粘液が降りてくる。あれが精子かな、という感想も置いて、急いで仁岡の手を拘束していた細い布をはずした。それはきっとこの保健室で調達したのであろう包帯だった。  
「……先生?」  
 反応のない仁岡を不安に思って声をかける。布団の上、仁岡から外れたところにぺたんと腰を下ろす上原の見る先で、その教師は横を向き体を丸めたまま静かに涙を零していた。彼自身の童顔さと相まって、その様は仁岡が本当の子供に戻ってしまったかのようだった。  
「き、気にすることないって。ほら、先生だってそんな経験なさそうだし。先生がガキだって言ってる私にイかされたからってそんなショック受けることは――」  
 
 だめなんだよ、と小さな呟きが上原の耳に届いた。  
「お前みたいなガキが、こんなことやっちゃいけないんだよ」  
「まして僕は教師で、お前は生徒なのに……」  
 そういって、体をより丸める仁岡。上原は数瞬それを眺めて――  
 
 
 
「うざい」  
 ぶっちゃけた。  
 
 凪の海に響く雷鳴のように低く渡る声に、びくぅ、と仁岡が反応する。ついで恐る恐るこちらに顔を向けてきたその顔に、  
「うえはっ」  
「んっ」  
 正確に言えばその唇に喰らいつく。舌を絡めるとかすかな苦味と甘み、普段仁岡の吸っているタバコの香りが口腔に広がる。逃げる仁岡の舌を追いかけて、上原はずる、と舌を差し込んだ。  
 はっ、と最後に吐息一つ残して、ファーストキスにしては激しかった口付けを終える。止めるために延ばされていた仁岡の腕は、上原の背の上でさまよってまるでゆるく抱きしめられているような心地。  
「上原……」  
 この意図がわからなかったのか、戸惑った顔を向ける仁岡に腹を立てる。一体乙女の一大決心を何だと思っているんだろう、と笑顔のまま上原はささやいた。  
「ほら、これで合意。今から私と先生は教師と生徒じゃなくて男と女。彼氏と彼女ってことでどう?」  
「どういう理屈だ! 第一僕はガキなんかと恋愛関係になるつもりは」  
「もうやることやったじゃん」  
 うぐ、と黙る仁岡に言葉を重ねる。  
「たってたんだし、満更でもなかったんでしょ」  
「いいよ、今は好きじゃなくて。私も別に先生のことがことさら好きってわけじゃないし」  
 えええええ、と展開についていけないのか仁岡が声を被せてくるが無視。  
「ただ、これから私たちは恋人になるの。さっきのエッチがきっかけで、今のキスがそのはじまり。私は先生のこと嫌いじゃないし、先生だって言うほど嫌いなわけじゃないでしょ、私のこと」  
「いや、僕は本当に嫌いだぞ、ガキは」  
 
「……空気よめよ」  
「……すまん」  
 
「まあ、いい。私だってもう中2なんだし、あと二年もすれば先生の言うガキの範疇からは外れるでしょ。いいじゃん、それぐらい我慢してよ」  
「そんな詭弁」  
「もうごちゃごちゃ言わないで」  
 まだ言葉を重ねようとする仁岡の口を再びふさぐ。口を通して鼻腔にまで達するタバコの香りはあまりよいものではないけれど、童顔な仁岡に残された大人の男の証のように感じて、少しだけ心地いい。  
 しばらく唇を重ねていると、諦めたように今度はしっかりと背に手が回された。ぐっ、と抱き寄せられると上原の乳房が潰れる。  
 大人としてはそう大きくもないはずの仁岡との体格差を感じて、上原は自分がひどく小さくなったように感じる。  
 口の中ではされるがままだった仁岡の舌が上原の舌を追いかけだし、上原同様つたない動きながら互いを求めて絡まりだした。  
 抱きやすいように、抱かれやすいように体を動かすと、互いの股の間に互いの足が落ち込んだ。  
 
「んっ、うん、ん……」  
 あちこち擦れあわせていると、また声が漏れ出してくる。しびれるような体の感覚。あまくて、刺激的な。  
「んん。む、ん……あ、たってきた」  
「そういう事を、言う、なっ」  
 きゃ、と声が漏れた。未だに最初のように上にいた上原を、仁岡が強引にひっくり返したためだ。思いも寄らぬ力強さに頬が熱くなっているのを上原は感じた。  
 朧な明かりに照らされた仁岡の頬が赤く染まっているのに、そうか、私もずっとああだったのかもしれないと今更に気づく。  
「僕はガキが嫌いだ」  
「分かってるよ」  
「もう、知らないからな。僕はガキが嫌いだから――」  
 手加減しないぞ、という仁岡の声は、何か幸せな気持ちとしばらくぶりに感じた股間の感触のせいでどこか遠くから聞こえてきた。  
 ぬちゃり、と入ってくる感触が上原を埋める。  
「あ」  
 ぷぷ、と泡のつぶるれる音が響く。さらに奥へ奥へと入り込んでくる仁岡のモノ。やがて一番奥まで収まって、動くぞ、と一言男が告げた。  
 ぬちゅ、ぱっ、つ、ぬっ、ぱっ、ぬっ……  
 上原が自身で動かしたときとは違う、力強い動きが上原を叩いた。  
 ぱつっ、ぬっ、ぱちゅ、ぬっ、ぬちぃ……  
「うっ、あっ、あっ、あっ、うぅ、んんっ……」  
 口から出て行く音は、聞いたことのない音色を伴っていてひどく恥ずかしいはずなのに、上原にはそれを思う余裕がない。  
 ぬちゅ、ぱっ、つ、ぬっ、ぱっ、ぬっ……  
 
 くっ、うあっ、とか自分ほどではないにしろかすかに漏れる仁岡の声を聞いて、その真っ赤な顔を眺めて、揺らされながら、翻弄されながら、上原は笑った。必死だ、先生も。  
 おかしいな、私たちの関係はこんなんじゃなかったのに、今はなんだかこれが凄く自然だ。友達と遊んでいるときに感じる気持ちとはもちろん違う、先生で遊んでいる気持ちともちょっと違う。  
 ああ、もしかしたら、嘘をついたのかもしれない、と上原は知った。  
 
「先生」  
「ん、なん、だっ」  
「私さ、あっ、先生のこと、うんっ、嫌いじゃ、ないって、いったけどっ」  
 ぱつっ、ぬっ、ぱちゅ、ぬっ、ぬちぃ……  
 腰をあわせながら、上原はこちらを眺める仁岡の首を引き寄せた。少しだけ動きにくそうにしながら、それでも動く仁岡に笑いかけ、顔を見られないようにさらに引き寄せて耳元に口を当てる。  
 
「先生のこと、んっ、結構好きかもしれないっ」  
 は、と思わず笑ってしまった。答えず顔も上げない仁岡のことも気にせずに、ただただうれしくて、上原は笑った。  
 
 ぱつっ、ぬぱっ、ぱっ、ぱちゅっ、ちゅんっ……  
 急に仁岡の動きが激しくなって、上原は笑いを表情だけに残してそこに没頭していく。上原の小柄な腰に何かを伝えるように己のそれを叩きつける仁岡の動きは、激しくときに上原を気遣うように、波打っていく。  
 ぱっ、ぬぱっ、ぱっ、ぬぱっ、ぱっ……  
 最後にぱん、と大きめの音を残して叩きつけられた仁岡のモノから、上原にとって二度目の体内にしみこむあの感触が伝わっていく。  
「あ、あれっ……あっ、ああ!」  
 顔を上げ、驚いた表情でこちらを眺める仁岡を眺めながら、上原は、まるで先ほどまでの仁岡の動きが流れ込んだかのような、自分の中をかき回していく波に翻弄される。もう仁岡は止まっているというのに、その波が上原を攻め立ててどこかへと連れ去ろうとする。  
「せ、せんせいっ、な、なんかっ、ううっああ、だ、だめっ」  
「う、上原?」  
「ん――!」  
 ぱっ、と何かが通り過ぎていった。瞬間力が抜けて、初めて緊張していたことを上原は理解した。  
「い、イったの、か?」  
「イった……のかな」  
 ぼんやりとしながらびくつく仁岡に上原は答えた。そんな怯えるようにしなくても、むしろ初めての子をイかせたんだから自信のひとつも持てばいいのに、と益体もないことを考える――  
 
 
 保健室っていうのは便利だ。清潔なタオルが何枚もあるし、ついでに水道も部屋の中に通っている。  
 身支度を整えて、いつものジャージ姿の教師仁岡とセーラー服姿の生徒上原に戻り、こっそりと学校から抜け出した。  
「それじゃ、私帰るね」  
「あ、ああ、気をつけて帰れよ」  
 人目につかないように校門を乗り越えたところで、そんなまるでいつもどおりな挨拶をして別れる。  
「先生!」  
 ただ、いつもどおり過ぎるのもどうかと思ったりして、  
「浮気は許さないからねー!」  
「う、上原!」  
 また明日、の声を置き去りにしてかけ去る。  
 浅井ちゃんたちには悪いけど、仁岡先生はもう私のものだから――  
 
 
 
 
 
 
 次の日ばれたというか上原がばらして色々起こったりしたのだけど、それはまた別の話  
 

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