朝起きて、寝ぼけ眼を擦りながらヒーターの側に座り込む。
浅羽がそんなことをして夕子に足蹴り食らっているような土曜の朝、曰く「村上の実家」である水前寺家のとある蔵でも目を覚ます者が居た。それも2人程。
「っああ〜〜〜、随分眠った気がするな。今何時だ?」
首をポキンポキンと軽く鳴らし、布団から転がり出た水前寺。その辺の目覚まし時計を無造作に掴み、まだぼやける視界の中央にそれを持って行く。
目に映るのは「P 07:40」の表示だった。浅羽が母親にたたき起こされてズボンのチャックが開いたままの姿で部屋を出たら夕子と出くわしてぼこぼことげんこつで叩かれているような時間だ。
それより体が冷える。つい先ほどまでは布団の暖かさに縋っていたが、
ひとたび外に出れば凍える寒さだった。自分は所謂すっぽんぽん状態のまま早速こたつの電源を入れ、
家庭用石油ストーブの運転ボタンを叩く。後は待つのみだ、全裸で。
「ふー、寒い。おはよう邦ちゃん、先に起きてたんだね」
「つい先程な。ストーブは付けたばかりだから暖まるまで布団の中で待っとれ」
ん、と水前寺姉は首を縦に振る。寝起きだというのにパチリとした瞳が自分を見つめている。
「どうした?」
「邦ちゃん見てるだけで寒い・・・こっちに来なよ〜」
顔だけ出して招き猫の要領で手招きをされる。これから服を着ようとしていたのに、少しはみ出た彼女の素肌が言葉より「おいで」と誘っているように感じた。据え膳くわにゃ男がうんたらの理論だ。
水前寺は腰を上げ、コンピューターのコードの束を上手くかわしながら、もと居た寝床に歩み寄る。
「しかし今日はやけに冷えるな」
「裸の人が言うセリフじゃないでしょ。いつもそうなんだから、もう・・・」
言いながらごそごそと掛け布団の下に身を潜り込ませる。かつての自分の体温と、起きたての姉の体温がまざって温々していた。姉弟共に冬には強い、それだけでなくきっと1年中気候には悩まされない体質だろう。
「邦ちゃんやっぱり暖かいね」
長くさらさらとした黒髪をシーツに泳がせ、一糸纏わぬ姿の女性は水前寺の胸板のあたりにすり寄ってくる。柔らかい身体の感触と白く凍った吐息がすぐそこにあった。
「──男の子はね、」
「ああ?」
「こういうときに腕枕をしてくれるいい男の子がね、いい男って言われるんだよ」
明らかに間接的なおねだりだった。大学生になってもこういうところは全然変わってないんだなぁと思った。
「いい男に定義も糞もあるか。腕枕よりして欲しいことがあるのではないか?」
口の端をつり上げて笑みを浮かべてみせる。我ながらいい顔がつくれたと陶酔するが、それはさておき。
姉は整った顔を少し赤らめて、
「あ〜わかった、邦ちゃんは2回戦がしたいんだね。おしゃまさ〜ん!」
「正解だ。部屋が暖まるまでの軽い運動代わりだ」
「──っ・・・邦ちゃんばっかりずるーいっ」
空かさず肩を捕らえ、白い首筋に口づけをする。昨夜自分が付けたキスマークのちょうど反対側だ。
「邦ちゃんっ、そこ・・・敏感だからあんまり乱暴には、んあぁっ」
夢中で上を取り、押し倒す形で手首をねじりあげる。舌先でピンク色の乳頭を突いた。
「んふっ・・・」
昨夜から既に全裸だった水前寺達は服を脱ぐ手間もなく、気分の(もちろん水前寺オンリーの)赴くままに身体を重ね合っていた。
さて唇同士を重ね合わせ、どちらからともなく舌を割り込ませる。唾液をめいっぱい垂れ流し、ぴちゃぴちゃと潤った音が耳に付く。水前寺は手を姉の頬に持って行き、これでもかというほどこめかみを掴み、完全にキスの主導権を取る。
「んぐ・・・はっ、れろらむんーーふっ、くちゅ・・・あむっ」
どちらのモノか分からない意味不明な喘ぎ声がした。そろそろ離しすことを考えるものの絡まってほどけない舌と、快感のせいで回ら
ない思考回路が妨げる。悩ましげに目を細める姉の表情と、腹の辺りにペッタリとくっつく胸に、自らの棒はひどく存在を主張していた。
「ふは・・・。邦ちゃん、その・・・当たってるよ・・・」
「気にすんな。まだ愛撫が十分では無い」
そして胸弄りの続き。全体を大きな手で覆い、そそり立った乳首を親指で擦りつつ乳房全体をくにゅぐにゅと揉みほぐす。こうすると無性に甘咬みをしたい気分に駆られるから不思議だ。
「あぁっ・・・邦ちゃん、最近どんどん上手くなって、私追いつけないや・・・」
「そうだな、あとで調教モノのAVでも見ながらしてみるとするか?」
「またエロビデオ増えたの!?わたしというものがありながら〜よよよぉ〜」
「っと、口が滑った」
そう言いながら構えていた歯で乳頭をくわえる。
「っっんあ!・・・イジワルな邦ちゃん」
「おーおー、お褒めに使わし光栄だ」
水前寺はものすごくいいかおで笑った。毎年毎年、少なからぬ新入生女子がこの笑顔に騙され、貴重な紙資源をラブレターに変えて水前寺の下駄箱に突っ込むという最悪の愚行に走る。
「んん・・・もう邦ちゃんったら」
姉であれこのハイスペックな顔の笑みが自分に向けば、アレを突っ込まれるのもついつい許してしまうという。
気づけば身体はほかほかに温まっていた。互いの汗のにおいが性欲を刺激し、クライマックスへ駒を進めることになるのだ。水前寺は指の腹でねっとりと恥部を弄りはじめ、クリトリスから快感を送っていた。
「あぁっ!!やっそこは・・・」
水前寺は邪魔くさそうに下から姉の脚を持ち上げると、男を迎え入れる準備OKの女性器が露わになる。無理に急がずに、指を差し入れて中をならすかまたは舌で玩ぶかちょっと迷い所だ。無論、両方も選択肢の内にはいる。
「あ、」
「え、何かしら?」
「ゴムだゴム、すっかり頭から抜けていたな。直前に付けるのも何だ、今の内に装着しておこう」
「こら、折角いい雰囲気だったのに酷いじゃない。ぶち壊しじゃないのよ」
「仕方なかろう。ああ──昨夜何処に放り投げたんだ?」
「無い?枕の向こうの方だと思うんだけど、ゴミ多いからなぁ・・・」
言われるままに枕の向こう側に手を伸ばしてみると、鼻かみ済みティッシュやら飲みかけのペットボトルやらバナナの皮やら様々な種類のゴミくずの感触がした。更に手を伸ばすと小さな紙箱に触れた。
「これか」
ひっ掴んで、箱の中からそれらしきモノ引っ張り出す。見れば小さな包装の中身は空だった。もう一つそれらしきものを漁ってみるが、「あったの?」
「いや、全て使用後のゴミ滓ばかりだ。多分もう無いな」
またコンビニで調達してこねばなぁ、と水前寺は思った。
「昨日も言ったけど・・・あんまり安全な日じゃないから、中出しは遠慮してちょうだいね」
「了解した。何とか外出しにするよ」
水前寺は諦めて、空箱を放り投げる。そして続きを始める。
指を入れる方にするらしい。利き手の中指を自らの口に含み、唾液をたんまりと塗りつけた指を膣の入り口まで持って行く。
「あぁっっ・・・んんっ、んふ──」
「おー、どうだ?気持ち良かろう」
ずぶずぶと第二関節まで中指を埋め込み、くりくりと慣れた手つきで膣中をこねくり回す。内部が十分潤っているのを確認すると、2本目の人差し指も挿入した。
「んんっ邦ちゃ・・・もう来て大丈夫、だかっっ・・・」
「ああ」
ずぶりと2本の指を引き抜くと、ガンガン元気に血走っている棒を秘部にあてがった。股を大きく広げさせて、相手の顔色を窺いつつ、膣中に進入させていった。
「んあ、はぁはぁ・・・くに・・・ちゃ、」
「──っあ、はぁっ〜〜やけに締まりが良くないかぁっ?」
「生は、久しぶりだからかな・・・・・・はあっ」
姉も水前寺も性感で眉間に力が加わる。一通りすっぽり収まった水前寺の肉棒に姉の肉壁がぎゅんぎゅんにまとわりつく。この時点で結構な射精感に見舞われるが、いやいや未だお楽しみはこれからだ。迂闊にも、考えが顔に出てニヤニヤと顔が蠢く。
同時腰もリズミカルに揺すり始めた。
「っあ・・・ああっ・・・邦ちゃん、またすけべぇなこと考えてるぅ・・・ふあっあぁ!」
「っっっっ畜生──中でしっかりくわえ込みやがって・・・あへあへだこりゃ」
などどおっさん臭いことを口にしながらも、腰の動作は緩めない。横の動きだけではなく、ずぶりと半分抜いてまた戻すという縦の動き
も始めた。ぐちゃぐちゃと粘着質な音が耳に届いた。
「ああっやあぁっっ、そこ、そこぉ・・・はぁはぁ、んぁ!」
「っおおお、Gスポだぁ────────!!!」
「いっっきゃぁあっっ・・・・・・はぁ、はぁ、んあああっ」
控えめだが、可愛らしさと上品さを兼ね備えたその喘ぎ声が水前寺の部屋の中に響き、性欲を一層刺激す
る。2人は、はあはあと荒く乱れた呼吸でグイグイと腰を押し付け合い、唇を貪り合い、カラダを密着させる。
「んんっ・・・くちゅ、ぐちゅ、んふ・・・ぅはっ」
いい音だと思う。そしていい声を出す女だと思う。聞き慣れた軽やかな発音が、呂律も回らずただ動物的に挙げる声は、獣欲のいい餌と
して聴いて取れた。乱れる感じが最高だった。ピストン運動を加速させる。
「ぐ・・・ぶはっ!はあはあ、んっもう我慢ならん・・・」
「──なっ、ああっ!くにちゃ・・・これ、は・・・はぅーーああ!」
高みに登ってきたのは水前寺が先か、絡め合っていた唇を離して上体を起こし、姉も一緒に結合したまま抱き上げて、座った状態での性交に持ち込む。
床に敷いた布団なので、ソファーやベットのようにスプリングを効かせてのギシアンにはならないものの、重力と下からの突き上げで姉の高まり具合も水前寺に追いついてくる。
「あぁあぁっっ・・・くにちゃんっ邦、わたしぃ・・・んああっ」
「ぅああ・・・俺もヤバイっ!はあはあ・・・そうか、外出ししなければぁっっああっ」
ずぶずぶぐちゃくちゃと淫乱な、性器のぶつかり合う音がする。体中あちこちに汗を滲ませ、乳房と胸板を擦り合わせる2人だけのエロティック空間がそこにあった。ありとあらゆる体液が飛び交った。
「ふぁあああああっっ来る、きちゃう・・・くにちゃんっくにちゃんっ」
必死に名前を呼ぶその声に、正直頭がバカになっていた。かかるほど近い吐息と、目と鼻の先で乱れる姉のエロイ顔、忘れかけていた背徳感、自分の口は性感に開きっぱなしで多分ヨダレが垂れている。
なんとかギリギリのところで理性を保っていたがそれも限界が近づいていき、鼓動はバクバクと真っ赤になった肉棒と同じく脈を刻んでいる。
「んんあ、あ、ああ、っっっっんはぁぁあはああああ・・・・・・・・・っっ!!」
達した。一気に押し寄せてきた射精感に、最後の理性が素早く反応して、肉棒をすんでの所で抜き取った。
「ぐあ゛ぁぁぁ────────────────────────────────────────────────っ!!」
水前寺姉の白いお腹は、水前寺の白濁の精液でべったり汚れ犯された。そして布団に崩れ落ちた。
「はあ、はあ、はあっっ・・・・・・軽い運動だって言ったのに、邦ちゃんハリキリ過ぎ・・・」
「はぁっ、良いではないか。存分に暖まったことだし」
ストーブも保温に入っており、ことつも赤い光を照らせ、窓には曇りが出来ていた。冬の水前寺の部屋の姿だった。
「邦ちゃんが汚ししたんだから、ちゃんと拭いてね」
「わかったわかった」
水前寺は面倒くさそうに体を起こして、こたつの上に置いてあるティッシュ箱から2、3枚取った。姉はもう拭いてもらう気満々で仰向けに横たわって待っていた。丹念に拭き取る。
「今回はなんか薄いね。1回で終わっちゃったし」
「昨夜かなり出したしな、こんなもんだろ」
ティッシュをゴミ箱に投げ入れた。──見事に外れた。
「おう、」
2人は掛け布団をかぶり直し、また横になる。水前寺は引き締まった右腕を広げ、こう言った。
「何だ、要求していた側がこれでは意味がない。応答せよ」
姉は目をぱちくりさせた。何が言いたいの?という顔で水前寺を見つめていると、
「時代は腕枕だ」
「・・・くすくす、そうだね」
よっこらしょっと腕に頭を乗せた。あんなにくずれていた髪がもう既にシャンプーのCMのようにするすると滑らかになっているのが不思議でならない。
「両親はいつ帰宅するんだ?」
「大丈夫よ、夜遅くだって言ったから。いつまでもベタベタしてるのも嫌だろうし、直ちゃんでも呼んだらどう?」
「浅羽特派員をか。早速電話する」
「早速?」
「──仕方ない、あと10分だけだぞ」
と言いつつもえぐりこむよーなちゅーをする。
「ほら、邦ちゃんってちょっと気の弱いところがあるから」
うそお!?
「ほんとだよ。コンビニでゴム買うの恥ずかしいからって、いっぱい他の食べ物とか買い込んで誤魔化したりするし」
「・・・え?」
──終わり。