二人の唇が、そっと離れた。
互いに熱い息を漏らし、相手の瞳には自分が映っていた。
「浅羽のすきにして・・・」
数分前、伊里野はそう言って、電気の消された部屋の中
浅羽のベッドに横たわった。
早鐘のように高鳴る鼓動。
胸の奥どころか、お腹や頭の中までバクバク言っているような気がした。
期待と、それを遥かに凌駕する不安。
だが、それは浅羽も同じであった。
浅羽は動かない。 いや、動けなかった。
これから何をすれば良いのか、健全なる青少年である浅羽はこの日のために、
マグロのさばき方を事前にたっぷりと予習していた。
普段の学業でも同じ事をしていれば、
テストで120点間違いないだろうというぐらいに。
もちろん、己の頭の中での反芻・イメージトレーニングも怠らなかった。
怠らなかったハズなのに、頭の中は真っ白だった。
試合が始まる前から、すでに敗北していた。
燃え尽きた。 真っ白に燃え尽きた。
明日だか、明後日だったかのボクサーのセリフが頭の中をグルグル回る。
沈黙。
どうしたの? というふうに、立ちつくす青少年を見上げる伊里野。
再び沈黙。 長い沈黙。 伊里野は考える。
きっと浅羽は、ここからどうして良いのかわからないのではないのだろうか。
再び考える。 伊里野とて初めての経験であるし、たいして知りもしなかったのだが、
最近は晶穂や清美とエッチぃ話もしていて、男の子を悦ばせるための
偏った知識が頭の中に詰め込まれていた。
このまま寝転がっていてもどうしようもない気がする。
怖いけど、浅羽と結ばれたい。 一つになりたい。
そう思った伊里野は、大胆にも自分のスカートを捲り始めた。
スルスル・・・スル・・
衣擦れの音が、さして広くもない部屋にやけに大きく響いた。
窓から差し込む僅かな星の瞬きが、スラリと伸びた両の素足を照らし出す。
膝が露わになり、白くて細い腿が浅羽の目に映った。
布地がさらに上へと捲られる。 そして・・・
ここまで来ればもうおわかりですね? それでは皆さん、声を揃えて、さん、はい
『ぱんつはいてない』