目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。  
白い天井に白い壁。  
僕は白いTシャツの上に白いYシャツを着ていて、  
屋内だから靴は履いてなくて白い靴下、  
そして間が抜けて白いブリーフ。  
 
 
なんでズボンを履いてないんだ? という疑問と  
ここまで白に拘るか? って感心が湧き上がった。  
けど次の瞬間、そんな思いは吹っ飛ばされる。  
 
 
隣に……真っ白なシーツの上に  
やっぱり白い寝巻きを着た伊里野が眠っていた。  
 
 
白! 白! 白!の白尽くし。  
僕の心は当然のように白く染められて、ハング・アップする。  
現実逃避しようとする僕の意識に。はぁはぁという荒い息遣いが割りこんできた。  
 
 
伊里野が激しく喘いでいる。  
園原中学のシェルターでの出来事が、僕のまぶたに白く白くフラッシュ・バックした。  
慌てふためいて、部屋を見まわす。  
――何もなし。  
せめて白い電話機ぐらいは……  
――404  
つまり僕一人で、なんとかしないといけなかった。  
 
 
幸いなことに、あの拷問機具のようなゴツい注射器もなかったんで、  
僕は常識的な対処を……つまり伊里野のパジャマの上を脱がせた。  
ボタンの上2つぐらい外せばOKかと思ってたのに、  
変わらずハァハァと聞こえるんで、ボタンを全部外す。  
それでもハァハァは治まらない。  
それではと、寝巻きの胸元の合わせ目を、大きく肩口まで開いたところで  
こっちを見ている伊里野と目が合った。  
 
 
えーつまり、ハァハァしてたのは僕の方だったんでしょうか?  
 
 
 
 
なんで、こうなってしまったのか? は解らないけれども、  
とりあえず、これがマズいことには違いがなくて、  
僕は情けない悲鳴をあげて飛び起きた。  
けれども更に情けないことに、ちゃんと動いてくれたのは上半身だけで  
腰から下はつまりその、抜けちゃってて僕の意思には従ってくれなかったんだ。  
 
 
他人には見られたくない僕の無様な姿を、イリヤはじっと見つめてて  
一言「浅羽だ」と言って体を起こす。  
起きあがって、そのまま止まってくれたら良かったのに  
伊里野の体は近づいてきた。  
 
 
そして、伊里野の頭が僕の肩に乗せられた。  
そして、伊里野の腕が僕の体に回された。  
そして、伊里野の口が「やっぱり浅羽だ」とささやいた。  
そして最後に、伊里野の胸がぎゅっと僕の体に押し付けられた。  
 
 
ビジー状態で機能を停止していた僕の思考は  
最後のぎゅっとだか、ぷにっとだかの強制終了コマンドを受け入れて  
「うわぁぁぁ!!」っと再起動のファンファーレを鳴らし  
反射的に伊里野の両肩を掴んで突き飛ばそうとしたんだけど  
途中で伊里野の「どうして?」という悲しげな瞳に捕えられてフリーズした。  
 
 
しばらく僕と伊里野は見つめ合う。  
やがて伊里野の視線が下の方に向けらる。  
恥ずかしがって目を伏せている……わけではなさそう。  
何を見ているのだろうか?  
 
 
僕も伊里野の視線を追って……追って……追いきれなかった。  
つまりその……  
高く険しい2つの山があって……  
登りきったはいいけども、降りるに降りられず……  
2つの頂きの間を行ったり来たり右往左往……  
僕の両目は伊里野のピンクの乳首に捕らえられて、  
離れることができなかった。  
 
 
 
 
『いまさら同級生の胸でビビるタマじゃねえだろうが!!』  
どっかで誰かが叫んでる。  
ビビる。ビビります。  
これにビビらないで、何にビビるっていうんですか?  
 
 
『小6まで妹と一緒に風呂入ってたのはどこのどいつだ!!』  
妹のとは違います。  
その頃の夕子のは男の胸に毛がはえたようなもので、  
乳首のまわりがちょっとだけ膨らんでる……かな? ってぐらいだったし、  
何より、あのその  
当時の夕子のは凹んじゃってて埋没しちゃってて、  
乳首って呼べるようなものはなかったんだ!!  
 
 
つまり、あー  
こんなちゃんとしたツンって感じの乳首を……  
それも生でじっくりと見たのは初めてで……  
しかもさっきまでそれは僕の胸にぎゅっと押し付けられていて……  
もしかしたらすりすりとこすりつけられていたかもしれなく……  
あぁ  
なんで僕は服として生まれてこなかったんだ?  
なんで僕は伊里野の服を脱がす時に、一緒に脱いでおかなかったんだ?  
 
 
脳ミソが下痢をする。  
脳ミソのクソは  
「浅羽、はなぢ」  
鼻から垂れていた。  
 
 
 
 
うっとなって俯いて、とんでもないものが目に入った。  
僕が乳首に目を奪われていた間、  
伊里野がじっと見つめていたもの。  
元気になった僕自身。  
そいつは真っ白なブリーフを突き上げて、  
てっぺんに鼻血で真っ赤なキルマークを刻んでいた。  
 
 
いつからこうなってたんだろうか?  
伊里野の乳首を見たときから?  
伊里野を抱きしめたときから?  
それとも、それとも。  
伊里野の寝巻きを脱がせたときから?  
 
 
その通りですゼ、ダンナ。  
そいつがびくりと首肯した。  
 
 
「あ」  
伊里野が驚きの声を上げる。  
「わたしもはなぢ。浅羽とおんなじ」  
 
 
あー、それはどういうことでしょうか、伊里野さん?  
えー、僕は白状しちゃいます。  
伊里野さんの乳首を見て、興奮して鼻血しちゃいました。  
つまり、おんなじとはそういうことなんでしょうか?  
 
 
「また動いた」  
 
 
だからお前が返事するんじゃない。  
 
 
 
 
沈黙の時が流れる。  
妖精でも天使でも、UFOだって通り過ぎれる巨大な間が空いている。  
 
 
僕達は2人して、脳ミソを鼻から垂らしてる。  
垂れて流れて固まんなくて、僕の思考はまとまらない。  
 
 
じるる  
 
 
伊里野が鼻をすすった。  
僕は垂らしっぱなし。  
伊里野の顔が近づいてくる。  
僕は動けない。  
 
 
そのままどんどんアップになって、  
僕の視界は伊里野の顔で埋め尽くされて、  
そして……  
 
 
ちろっ  
 
 
伊里野は僕の鼻血を舐めた。  
最初は舌先で撫でるように、続いて唇も押し付けてくる。  
僕の鼻血を味わって、そして伊里野の唇は離れていった。  
 
 
「浅羽のはなぢ」  
 
 
伊里野の唇が赤くなっている。  
 
 
「きれいになった」  
 
 
僕の血で赤く染まっている。  
 
 
「なめてみる?」  
 
 
僕の目にはもう、唇しか写っていない。  
言われるままに頷いて、血に染まるそこに近づいていった。  
 
 
「ちがう!!」  
伊里野が激しく首を振る。  
真っ赤になって、そっぽを向く。  
ぎゅっと目をつぶって、固く否定する。  
 
 
 
 
「こっち」  
伊里野は震えるまぶたを押し上げて、  
それでも顔は半分そむけたままで、  
おずおずと手首を差し出してきた。  
 
 
卵の黄身ほどの大きさの、銀色の金属の球体がそこにはあって、  
僕はそれごと包むように手首を握り、  
ぐいっとこちらに引き寄せて、伊里野の唇を奪っていた。  
 
 
僕の手のひらの中で、伊里野の手首が暴れる。  
抱きしめた腕の中で体が暴れる。  
押しつけた唇の下で、伊里野のが暴れる。  
それでも僕は離さなかった。  
 
 
口の中に血の味が広がる。  
それは伊里野の鼻血か、それともさっき舐められた僕のものか。  
血の味を舐め尽くすかのように舌を動かす。  
固く閉じられた唇の柔らかな弾力を味わうように。  
割りこんだ僕の舌を挟みこむ、その閉めつけを味わうように。  
最後の抵抗を試みる、可愛らしい前歯を小さく尖った八重歯を味わうように。  
交わり絡み合う伊里野の舌を味わうように。  
 
 
僕の体は興奮に熱くなっていた。  
抱きしめた伊里野の体も、負けずに熱くなっている。  
ただ、僕の手に包まれた金属球だけが、冷たいままだった。  
 
 
伊里野の体から力が抜けていく。  
2人の体が傾いていく。  
ぎしりと揺らしてベッドに沈みこんでも、僕は唇を離さなかった。  
 
 
まだ、あの金属球は冷たいままだ。  
それが熱くなるまで、僕の体温と同じになるまで……離さない。  
 
 
「ん、んん……ふぅん……」  
 
 
驚きに止められていた伊里野の息が、苦しさに耐えかねて鼻から漏れる。  
頬にくすぐったさを感じつつ、僕はなおも伊里野を求めて、舌を動かし続けた。  
血の味はもうしない。  
くちゅくちゅと音を立てているのは、僕と伊里野の混ざり合う唾液だけ。  
僕の舌に広がる味わいは、伊里野の味なんだ。  
 
 
いつのまにか金属球の冷たさは感じなくなっていた。  
 
 
 
 
「ふは! ……はぁ……」  
 
 
解放された伊里野の口が、新鮮な空気を求めて大きく開かれる。  
覆い被さった僕の体の下で、伊里野の胸が激しく上下している。  
 
 
「浅羽……どうして?」  
瞳を涙で潤ませながら、伊里野が訴えてきた。  
 
 
どうして?  
――それは伊里野がなめてみる? って言ったから。  
 
 
僕は言葉では答えずに、唇を伊里野の尖った顎の先につけ、  
そして首筋のラインに沿わせて舌をはわせていった。  
 
 
「あ、浅羽!」  
 
 
伊里野が激しくイヤイヤをする。  
動きに合わせて、首筋も大きく左右に振られた。  
でも、僕の舌は振り落とされることなく、肌の柔らかい感触を捕えていった。  
 
 
「ちがう!!」  
 
 
ちがう?  
――でも、伊里野は“どこ”とは言わなかった。  
伊里野が教えてくれなかったから、僕は自分で探す。  
伊里野が求める場所を。  
 
 
 
 
僕の舌は伊里野の肌の上を滑っていく。  
柔らかなスロープを駆け上り、そしてピンクの頂きまで辿り着いた。  
 
 
「ちがう! ちがうぅ!!」  
 
 
顔は真っ赤になっているのに、  
肌だって赤く染まっているのに、  
伊里野は激しく首を左右に振って「ちがう、ちがう」としか言ってくれない。  
こんなに乳首を固くしているのに。  
 
 
試しに舌を引っ込めて、かわりに唇でついばむようにして  
口の中に頬張ってみた。  
 
 
「ちがっ……!!」  
 
 
それでも答えは変わらない。  
ちがうとしか言ってくれない。  
だったらと、軽く乳首に歯を立てて、コリコリと甘噛みをしてみる。  
前歯で挟みきれずに、ちょこんと飛び出した先っぽを  
ちろちろと舌でなめてみる。  
 
 
「ち、ちがっ……ちがふぅぅぅ……!!」  
 
 
もしかしたら、刺激が足りないのだろうか?  
僕は音が出るほどに、吸い上げてみた。  
 
 
「ぅんんんんん……っ!!」  
 
 
今度はちがうと言わなかったけど、  
ソコともイイとも言ってくれなかった。  
ということはここじゃない。  
伊里野がなめられたいと望んでいる場所は、ここじゃないんだ。  
名残を惜しむように、ちゅるっと一吸い一なめして  
乳首から唇を離した。  
 
 
伊里野の求める場所を探す旅を続ける。  
 
 
途中にあった窪みにも舌を潜らせてみたけれど  
「ひやっふ……」という答え。  
 
 
やがて、探索を続ける僕の舌の行く先に、白い寝巻きのズボンが立ちふさがった。  
 
 
 
 
どうしよう? しばし迷う。  
視線を上に向けてみると、そこには真っ赤になった伊里野の顔。  
力なげに首をやわやわと振り、瞳を朧にかすませながら  
「あ、浅羽ぁ……ひがう、ひがふぅぅ……」  
と呟いている。  
その姿が僕のためらいを吹き飛ばした。  
伊里野が履いているパジャマの下を、一気にずり下ろした。  
脱がそうとしていた僕の手が、途中で止まる。  
 
 
伊里野は……履いていなかったし、生えてなかった。  
ズボンの他に、それ以上伊里野自身を隠すものは何もなかった。  
目を奪われて、体の動きが止まってしまう。  
 
 
伊里野のアソコはぴったりと閉じられていた。  
すっかり紅潮した肌に、朱色の縦線が走るのみ。  
それ以外のものはなかった。  
 
 
それが伊里野のものらしいと思った。  
固かろうが柔らかかろうが、  
どんなのでもソコに何か生えているのは似つかわしくない。  
 
 
それに、あんなにも激しく息を喘がせているのに、興奮しているのに  
伊里野のアソコはぴったりと閉じてすましている。  
アソコの奥を見てみたい。  
きっと充血して真っ赤になっているはずだ。  
すまし面を暴いてやったら、きっと熱いものが溢れてくるだろう。  
 
 
実行に移そうと手を伸ばしたその時に、伊里野の腕が割りこんできた。  
アソコをさっと覆い隠し、更に太ももで手を挟みこんで  
絶対に見られないようにしてしまう。  
 
 
「浅羽、ちがう……ダメ」  
 
 
僕は呆然としてしまった。  
拒否されてしまった驚きと、  
何より伊里野のアソコを舌で確かめることができなかったという  
悔しさで胸がいっぱいになる。  
 
 
でも、伊里野がそう来るのなら。  
僕は腰に手をやると、くるりと体をひっくり返してうつ伏せにした。  
無防備なお尻がさらけ出される。  
 
 
「あ……」  
 
 
慌てた伊里野がアヌスまでは見せまいと、きゅって感じにお尻をすぼめる。  
アヌスは柔らかな尻の谷間奥深くに沈んでしまったけど……  
隠される間際に、紫桃色をしたソコが恥ずかしさに縮こまる様がはっきりと見えた。  
 
 
もう一度、見たい。  
僕はすべすべとしたお尻の丸みを両手で味わいながら思った。  
いや、見るだけじゃなくて、舌でなめてみたい。  
アソコを味わうことができなかった悔しさが、  
排泄器官をなめるという暗い情熱として燃え上がった。  
 
 
息が荒くなる。  
知らず知らずのうちに力がこもり、伊里野のお尻に指が食い込んでいく。  
ぴちぴちとした張りがあるくせに、まろやかな弾力性も備えた尻肉は、  
柔らかく包み込むように受け入れる。  
尻肉の海に沈みこんだ僕の指を、泳がせるようにやわやわと動かしながら、  
谷間へと進ませていった。  
 
 
「あ……ふぁ……浅羽?」  
 
 
僕のアヌスへの暗い想いを知ってか知らずか、伊里野が震えた声を発する。  
お尻の谷間に指が掛かった。  
 
 
「あ、浅羽、ちがう! そこ、ちがうぅ!!」  
 
 
こちらの意図を察した伊里野が拒絶の声を上げた。  
でも、僕はひるまない。  
アソコをなめれなかった悔しさを薪にして燃える炎には、  
否定の言葉など更に燃え盛らせる油に過ぎない。  
 
 
僕は力を込めて尻の谷間を押し開き、身を乗り出して……。  
 
 
 
 
何だ、あれは?  
 
 
背中のちょうど真ん中辺り、白い肌の上に青痣が浮かんでいた。  
 
 
伊里野が戦闘機のパイロットだなんて荒事をやっていることは知っている。  
生きるか死ぬかの瀬戸際にいるんだから、  
怪我だってするだろうし、痣だって作るだろう。  
でも、何で背中の真ん中に?  
他には傷一つないのに。  
 
 
僕は顔を近づけて、しっかりと観察をしてみた。  
真っ白な肌の下に、青色というか緑色というか、内出血が広がっている。  
そしてそこには何か黒いポツポツとしたものが浮かんでいて……。  
これって、もしかして……。  
 
 
ショックと緊張に呼吸が荒く乱れる。  
背中に荒い息吹を感じて、伊里野の背筋がびくりと震えた。  
 
 
「浅羽、ダメ! そこは絶対……っダメぇ!!」  
 
 
僕は伊里野の訴えを完全に無視して、その醜い青痣に舌をはわせた。  
苦い。  
 
 
「浅羽! ダメ!! そこはお薬が……」  
 
 
間違いない……これは脊髄注射の跡だ。  
いったい何本打たれたら、こうなるのだろうか?  
そこは同じ肌とは想えないほどにがさついており、  
弾力性を失ってゴツゴツとしていた。  
 
 
「お願い、浅羽! やめて、お願いぃ!!」  
 
 
伊里野の悲痛な絶叫が、僕の胸に突き刺さる。  
弾かれたように身を起こす。  
真上から見下ろしたその青痣は、まるで奴隷の烙印のように見えた。  
 
 
シェルターでのことが思い出される。  
僕には一度きりの出来事だったけど、きっと伊里野は何度もあんな目に……。  
右手がずしりと重くなった気がした。  
治療機具というよりは、凶器と言った方が似つかわしいあの代物を、  
伊里野は何度も何度もその身に受け入れさせられてきたのだ。  
 
 
 
 
零れ落ちる涙を拭わずに、尻の谷間を強引にこじ開け、  
紫桃色のすぼまりに舌をあてがう。  
 
 
「! ひ、ひゃふぅ?! あ……浅羽? 浅羽ぁ!!」  
 
 
伊里野のアヌスが反射的にきつく固く閉じられる。  
侵入を拒絶された舌を、深く刻まれたシワの一本一本をなぞるようにして動かした。  
 
 
「き、汚い! あ、浅羽……そこは汚い! 汚ひぃ!!」  
 
 
汚いトコなんてあるものか。  
伊里野に汚いトコなんて一つもない。  
例え他の誰もが思っても、僕は絶対に思わない。  
 
 
「ふはぁ! ひあぁっ! あふあぁあぁぁ!!」  
 
 
僕が舌を動かすたびに、伊里野は激しく声を上げて、お尻をひくひくと震わせる。  
舌先でピクピクとアヌスが痙攣している。  
 
 
僕は前に逃げたんだ。  
痙攣する伊里野の前から。  
伊里野はきっと、何度もそんな目にあったのに、  
僕はたったの一度、それも目の当たりにしただけで逃げ出したんだ。  
 
 
「ひやっ! あ、あひゃびゃあ!! ダメ! だゃめぇ!!」  
 
 
激しい責めに、アヌスは痙攣し続ける。  
けれど僕は責め手をゆるめない。  
抵抗はいつまでも続かない。  
舌先に微かな綻びを感じて、僕はえぐり込むように突っ込んだ。  
 
 
「ふうぅぅぅぅんっ!!」  
 
 
捻り込まれる舌に押し出されるようにして、  
悲鳴のような長い吐息が伊里野の口から漏れる。  
不躾なる侵入者を追い出さんとするかのように、アヌスは僕の舌を挟みつけ  
ぎゅうぎゅうと締め上げる。  
 
 
伊里野の悲痛なまでの絶叫も、舌を挟みこまれる激痛も  
激情に駆られた僕の心を止めることはできなかった。  
ショックとそれに数倍する後悔に、僕は突き動かされていた。  
 
 
 
 
僕の唾液と伊里野の腸液のぬめりを利用して、  
厳しい締め付けの中、舌を動かす。  
微かに舌が動いただけで、伊里野のお尻は暴れまわった。  
 
 
「ひゃっ! ふあぁ!! はあぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁんっ!!!」  
 
 
伊里野の口から絶叫がほとばしる。  
お尻が爆ぜたように跳ね上がり、僕の頭を弾き飛ばす。  
食い込んでいた舌がちゅるんと抜ける。  
 
 
「ふあぁん!!」  
 
 
最後に一声大きく鳴いて、伊里野の動きは大人しくなった。  
沈めるように落ち着くように、緩やかに息をついている。  
呼吸に合わせて上下する伊里野の真っ白なお尻に  
僕の手形がくっきりと赤く刻み込まれていた。  
 
 
呆然となるしかなかった。  
ただ見つめるしかなかった。  
伊里野の背中の青痣と、お尻についた赤い手形が目に焼き付く。  
ゆっくりと体を傾けて仰向けになる伊里野の動きが、  
まるでストップ・モーションのように感じた。  
 
 
伊里野が僕の方を見ている。  
溢れんばかりに涙を浮かべて僕を見ている。  
右手はアソコを隠すように股の間に差し込まれ、  
左手もお尻を隠すように体の下へと伸ばされている。  
 
 
「浅羽……」  
 
 
耳を塞いでしまいたい。  
目を瞑ってしまいたい。  
伊里野の前から消え去ってしまいたい。  
そう……思ったけど……伊里野から逃げるのだけは……もう、絶対……嫌だった。  
 
 
「お願い、優しく……して」  
 
 
 
 
自分の耳が信じられない。  
本当かどうか問い質しそうになって、慌てて唾を飲み込んだ。  
伊里野の口は、はっきり言った。  
そう動くのをこの目で見た。  
 
 
だから問い返しはしない。  
ただ一言「ごめん」と呟いて、伊里野の口をついばんだ。  
 
 
「ん……」  
伊里野はそれだけ。  
 
 
それで充分だった。  
 
 
伊里野が安心するように優しく髪を撫でながら、  
僕は伊里野の体をついばんでいく。  
ゆっくりとしたペースで、でもリズミカルに  
決して跡など残らぬように。  
 
 
「ふ……ん……ん……は……」  
 
 
唇が体に触れるたびに、軽くチュっと音を鳴らすたびに、  
伊里野は微かな吐息を漏らした。  
 
 
僕の唇の進む先に、再び伊里野の乳首が姿を見せた。  
ゆっくりそうっと慎重に顔を近づけていく。  
過度の刺激を与えないように、おそるおそる口に含む。  
 
 
「ふぁん!」  
 
 
思った以上に大きな声が上がる。  
やっぱり乳首は刺激が強すぎるんだろうか?  
そう思って口を離したその時、僕の頭を優しく包み込むものがあった。  
伊里野の両腕が、秘部を隠していた両手が、僕の頭を抱きしめていた。  
 
 
 
 
伊里野は何も言わない。  
ただ黙って、胸に押しつけるように抱きしめる。  
トクン、トクン、トクンと押し付けられた胸の下で、  
伊里野の鼓動が響いている。  
 
 
伊里野の両手と心臓の音に包まれていた。  
今、僕は伊里野に包まれているんだ。  
そう確信した。  
 
 
不思議に安らいだ気持ちになって、伊里野の乳首を吸う。  
 
 
「はあぁぁぁ……」  
 
 
伊里野の喘ぎ声に包まれながら、無心になって吸う。  
 
 
「ふあ、はぁ、ふあぁあぁぁ……ん」  
 
 
赤子のような気持ちになって吸い上げる。  
 
 
「くあ! あぁ! ひあぁぁぁああぁぁぁん!!」  
 
 
伊里野の口から一際大きな嬌声が上がって、  
そして何かが僕の気管を直撃した。  
目を空けていられないほどに、激しくむせる。  
 
 
何とか呼吸を整えて、薄目を開けてみる。  
え……なんで?  
伊里野のピンク色の乳首を、紅潮した乳房を  
白くまだらに母乳が染めていた。  
 
 
 
 
「いつから? ねぇ伊里野、いつから?」  
 
 
伊里野にちゃんと見えるように、胸を下から押し上げるように持ち上げた。  
目尻に涙を浮かべたまぶたが、薄っすらと開かれる。  
 
 
「胸が大きくなりだしたのは、訓練が始まってすぐのときから……。  
 具体的には言えない。小さい頃」  
 
 
「じゃなくて、おっぱい! いつから出るようになったの?」  
 
 
「ずっと昔。具体的にはやっぱり言えない」  
 
 
「ずっと昔じゃ解らない!  
 日にちまではいいから!  
 いつ? いくつ? 何歳のとき?」  
 
 
僕は伊里野を困らせている。  
伊里野をすっかり怯えさせてしまっている。  
目尻には今にも零れ落ちそうなほど、涙が浮かんでいる。  
 
 
『ごめん、言わなくていい』そう口にしようとした時だった。  
 
 
「じゅ……10歳」  
 
 
搾り出すような声でそう言った。  
大粒の涙が零れた。  
 
 
「わたし、おかしい?  
 わたし、へん?  
 普通の人と、ちがう?」  
 
 
そんなこと知らない。  
普通の人の母乳がいつから出るようになるのか? なんて、聞いたことない。  
10歳の夕子の、陥没しちゃって区別がつかない乳首を  
思い切り吸い上げたら母乳が出たかなんて、試したことない。  
 
 
「わたし、ちがう?  
 おっぱいのこと聞いたことないし、教えてもらったこともない」  
 
 
 
 
僕は知らない。  
伊里野以外の女の子のことを知らない。  
知らないものは言葉にできない。  
 
 
だから僕は乳首にむしゃぶりついた。  
乳首だけじゃなく、周りの柔肉まで吸い上げる。  
固く尖った乳首を転がすように弾くように舌を動かす。  
乳輪に浮かぶ微かな突起を確かめるように、なぞるように舌をはわせる。  
 
 
さっき溢れた母乳の味が、口の中に広がった。  
甘いとさえ言い切れる濃厚な味。  
牛乳とは違う少し粉っぽい舌触り。  
 
 
「ふぁ……あ、浅羽ぁ……わたし、おかしい? わたし、へん?」  
 
 
そんなこと言わないで。  
そんなこと聞かないで。  
そんなこと僕は知らない、解らない。  
僕には答える言葉がない。  
 
 
伊里野の体を抱きしめる。  
滑らかな肌、華奢な骨格、微かに香る甘い汗の匂い。  
男のものではあり得ない、女の子の体。  
 
 
背に回した僕の指先に、何か奇妙なものを感じた。  
柔らかな肌の中に、ごつごつとした何かグロテスクなものが浮かんでいた。  
伊里野の背中に刻まれた奴隷の烙印……脊髄注射の跡。  
 
 
つまり、伊里野からおっぱいが出るのは……  
 
 
『浅羽! ダメ!! そこはお薬が……』  
伊里野の叫びが頭の中でこだまする。  
 
 
伊里野にこんなことしといて……  
 
 
『そうだな。まぁ、その子の兄貴みたいなもんだ』  
男の声がこだまする。  
『加奈ちゃ――伊里野さんと、仲良くしてあげて』  
女の声がこだまする。  
 
 
あいつらは……  
 
 
 
 
こだまは互いにぶつかりあって、共振し、増幅する。  
灼熱の炎となって頭蓋を駆け巡り、目から零れ落ちる。  
僕の口は叫び声を上げるかわりに、音が鳴るほど激しく伊里野の乳首を吸い上げた。  
 
 
「浅羽! 浅羽ぁ!!」  
 
 
伊里野の口から、乳首から、熱いものが噴出した。  
僕はその全てを受けとめて、更に絞り尽くそうと、強く激しく吸い上げる。  
 
 
「く、ふ……ああああぁぁぁぁ!!」  
 
 
伊里野の叫び声が膨れ上がる。  
乳首からも大量の母乳があふれ、僕の口をなみなみと満たした。  
 
 
「ふあぁぁぁ…………」  
 
 
絶叫の残滓が残る唇に、僕は自らのものをあてがって、  
たっぷりと口に含んだ伊里野自身の母乳を、そこに流し込んだ。  
 
 
「! ぷはっ! ……けほっ、こほ」  
 
 
突然のことに伊里野の気管が激しくむせて咳き込む。  
乳しぶきが飛び散り、辺りに甘い母乳の匂いが漂った。  
 
 
「あ、浅羽?」  
目尻に涙を浮かべながら、伊里野が尋ねてきた。  
 
 
「どう? おいしい? 自分のおっぱい?」  
答えるかわりに逆に尋ねる。  
 
 
 
 
「わたしの……おっぱい?」  
 
 
「そう、伊里野の」  
 
 
「……へんな味」  
 
 
「そう? 僕はおいしかったよ」  
 
 
「……おいしい?」  
 
 
「うん。伊里野のだから」  
 
 
「わたしのだから? おいしい?」  
 
 
納得がいかないのか、伊里野は小首を傾げて目を瞑り反芻する。  
おそるおそるといった感じで、唇から舌をだす。  
びくびくしながら、自分の母乳をちろっちろっとなめる。  
 
 
こびりつく白濁した液体を舐め取っていく、伊里野の赤い舌の動きに  
僕は言い様のない興奮を憶えた。  
自分の母乳の味に意識を集中し、目を閉じている伊里野の前で  
僕はブリーフを脱いで、自分自身をさらけ出した。  
 
 
「伊里野?」  
 
 
呼びかけに薄く開かれたまぶたが、目の前にあるものを確認して、  
更に大きく見開かれる。  
 
 
かつて伊里野自身も見たもの。  
しかしそのときとは明らかに形が違うもの。  
 
 
伊里野の頬が瞬間的に沸騰し、あたふたと左右に向けられる。  
驚きにまぶたは再びぎゅっと固く閉じられ、そしておずおずと開かれる。  
頬を真っ赤に染めながら、なるべくソレを視界に入れないようにか、  
上目遣いで僕の顔を見つめてきた。  
 
 
「なめてみる? 僕のも」  
 
 
 
 
言ってしまって後悔した。  
臆面もなく一物を晒して、これみよがしに隆々と誇示させて  
恥ずかしげもなく「なめてみる?」だなんてカッコワルイ。  
でも心の片隅で「もしかしたら」と期待していた。  
 
 
コクンと伊里野が肯くのを確かに見たのに、全く信じられなかった。  
『え』とも『へ』ともつかない間の抜けた声を発して、  
何度も何度もしつこいくらいにバチバチと瞬きをして、  
それでもやっぱり信じられない。  
 
 
伊里野はひどく真剣な顔つきで、僕のものを見つめてる。  
眩しいほど色鮮やかに、頬が赤く染まってる。  
ふぅっと軽く息をつく。  
決心したかのように目を閉じて、代りに舌を小さく出して、  
ゆっくり顔を近づける。  
 
 
ちろっと舌が僕のをなめた。  
ぞくりと背筋を電流が駆け登る。  
 
 
ぺろ、ぺろ、ぺろと僕の言葉通りなめていく。  
最初は舌先だけだったけど、少しずつ触れる面積が増えていく。  
舌が触れるたびに、からまるたびに、快感が僕の体を駆け巡った。  
 
 
く、口に含んでくれないだろうか?  
舌をはわせる伊里野の顔を見下ろしながら、心の奥底でそう思う。  
 
 
僕の無言の願いが伝わったのだろうか?  
出していた舌を引っ込めて、伊里野は口を開く。  
可愛い前歯が顔を覗かせる。  
 
 
かぷっ  
 
 
伊里野は僕の亀頭に歯を立てた。  
 
 
「たっ!」  
 
 
噛まれた場所から熱いものが走った。  
じーんと痺れた感じが後を追いかける。  
 
 
「痛かった?」  
 
 
伊里野が上目遣いで問い掛けてくる。  
唇の間近にある僕の亀頭に、赤い線が微かに浮かんでいた。  
 
 
正直に『うん』と言おうか、それともやせ我慢しようか迷いに迷って  
結局「ン」とどっちつかずの声を上げる。  
 
 
僕の返事をどう解釈したのか解らないけど、  
「なめてあげる。赤くなったとこ」  
と伊里野は再び舌をからめてきた。  
 
 
 
 
傷口に舌が触れるたびに、じーんじーんと痺れが広がる。  
これって……やっぱりさっきの仕返しなんだろうな……。  
実はちょびっと涙が出てたんだけど、そう思うと何も言えない。  
 
 
でも僕だって、反省したんだし頑張ってたんだから、  
何かもうちょっとサービスしてくれたって……。  
いじけモードに突入するも、やっぱりこんなことは口にできない。  
でも、やっぱり……。  
 
 
その時、伊里野の動きに変化があった。  
両手を持ち上げると、そっと添えるように僕の竿にあてがう。  
もしかしたら手でしごいてくれるのかも? という期待以上のことを  
僕の念願通り伊里野は口に含んでくれた。  
 
 
ちゅぱ……ぴちゅ……  
 
 
小さくはあったけれども、伊里野の口の中で僕のものが唾液とからまる音が  
はっきりと聞こえた。  
アソコではないけども、確かに僕の一部が、今伊里野の中に入っているんだ。  
 
 
体を支えるためにベッドについていた両手がなくなった分、  
さっきよりも伊里野の体は前に傾いてる。  
その姿勢だと支えるのが苦しいのか、口の中で僕の亀頭をなめ回すたびに  
じわりじわり奥へ奥へと飲み込まれていく。  
 
 
伊里野の両手が竿から離され、僕の腰へと回された。  
その分より深く僕のものは咥えこまれる。  
亀頭の上っ面だけでなく、傘の裏側にまで舌がからみつく。  
 
 
僕のものはなめしゃぶられて、溶けてしまいそうだった。  
 
 
「い、伊里野……」  
 
 
熱い息が漏れる。  
僕の声に応じるように、伊里野はさらに深く咥えこむ。  
その格好は、ほとんど僕の腰を抱え込むような感じだった。  
 
 
ぞくりと快感が駈け抜ける。  
腰から力が抜けそうになる。  
 
 
くにゅっ  
 
 
その一瞬の隙を突いて、伊里野が……  
僕のアヌスに指を入れてきた。  
 
 
 
 
「うわぁ!!」  
 
 
たまらず悲鳴を上げる。  
突然の出来事に僕の腰は激しく暴れる。  
それでも伊里野は咥えたものを離さない。  
突っ込んだ指を抜いてくれない。  
 
 
「ど、どうして?」  
 
 
何で伊里野がこんなことをするのか解らない。  
僕は水前寺部長じゃないんだ。  
アヌスに何か入れたがるような趣味はない。  
 
 
「浅羽も、やった」  
 
 
一瞬だけ口を離して、ぽつりと伊里野がそう言った。  
 
 
そんなこと真似なくてもいいのに!  
僕は心の中で泣き叫ぶ。  
 
 
僕の気持ちをお構いなしに、伊里野はくにくにと指を動かす。  
幸い爪の先ぐらいしか入ってないようだけど、  
初めての経験に僕の体は翻弄される。  
 
 
アヌスの入口で伊里野の指が蠢くたびに  
刺激が前立腺まで伝わって  
ビンビンと僕のモノは跳ねまわる。  
 
 
口の中で暴れまわられて苦しいだろうに、伊里野は僕を解放してくれない。  
 
 
「ん……ふ……っ……ん……」  
 
 
時折苦しげに吐息を漏らしながら、執拗なまでに攻めてくる。  
暴れまわる僕のを絶対逃がさないように、唇でしっかりと挟みこみ  
激しく舌をからめてくる。  
 
 
「わっ! うわっ! くわっぁ!!」  
 
 
悲鳴が上がってしまうのを堪えることができない。  
がくがくと膝が痙攣している。  
伊里野の舌からの刺激と、そしてねじ込まれた指からの刺激が  
からまりあって脳髄を突き上げる。  
 
 
「ダ、ダメだ! ダメだよ、伊里野ぁ!!」  
 
 
何とか辞めてもらおうと最後の懇願をするも  
伊里野は全く聞き入れてくれない。  
まるで楽しんでいるかのように、頬を真っ赤に染め上げて  
僕の顔を眺めている。  
 
 
「も、もうダメだ! 限界……ゴメン、伊里野……いく! 出る!!」  
 
 
「! ヤ! 浅羽、やだ!! ……ひゃうぅ?!」  
 
 
 
 
何を思ったのか、爆発寸前でびくびくと痙攣を起こす僕のものから  
伊里野は口を放した。  
だからといって僕は止められない。止まらない。  
 
 
脳髄で沸騰していたマグマは爆発し、  
奔流となって脊髄を駆け下り、  
亀頭の先から白濁したシャワーとなって伊里野の顔に降り注いだ。  
 
 
「い、伊里野?」  
 
 
ハァハァと荒い息をつきながら、途切れ途切れの声で僕は尋ねる。  
伊里野の顔は僕の精液でどろどろになっていて、  
そこに沢山の涙があふれ出て、混ざり合ってぐちゃぐちゃになった。  
 
 
「ど、どうしたの?」  
 
 
どうしたもこうしたもないだおろう?  
女の子の口ん中に汚いものをぶち込んで、めちゃくちゃ暴れまわった挙句に  
たっぷりと臭いものをぶっ掛けたんだ。  
怒ったんだよ、嫌われたんだよ、お前は。  
頭の片隅が騒いでる。  
 
 
でも、でも、お願いしたのは僕だけど  
途中からは伊里野もその気になってたんじゃないのか?  
だって、だって、僕のアヌスに指を突っ込んだのは伊里野じゃないか!!  
それに……僕が出す前に、伊里野は口を離したじゃないか……。  
もう一方の片隅が言い訳してる。  
 
 
「……ゴメンナサイ……」  
 
 
え?  
 
 
「……ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……」  
 
 
伊里野が謝ってる?  
なんで?  
 
 
 
 
「泣かないでよ、伊里野。ね? ねっ?」  
 
 
どうしていいか解らない。  
泣いてる理由も尋ねずに、泣くなだなんて無茶なことしか言えない。  
 
 
「浅羽……怖い顔……してた」  
 
 
あー、どうしよう?  
うー、何て言い訳したらいいんだ?  
怖い顔ってのは、きっと出すのを堪えてた表情のことだろう。  
でも、どんな顔して説明したらいいんだ?  
『伊里野のお口があまりに気持ち良かったんです』って正直に言うのか?  
 
 
「それに……いくって……出るって……浅羽、怒った?」  
 
 
また一つ、大きな涙が零れた。  
 
 
「違う! 違うって、伊里野。怒ったんじゃない!」  
 
 
「……ホント?」  
 
 
「本当だってば! 怒ってない。  
 それどころか気持ち良かったよ!  
“いく”っていうのは、すごく気持ちがいいって、我慢できないぐらいってことで  
“出る”ってのは、精子が出るって……そうだ! 拭かなきゃ、伊里野の顔」  
 
 
説明の内容があまりに恥ずかしくって、強引に話題を変えることにした。  
 
 
けど改めて伊里野の顔を見直して、やっぱり恥ずかしくなった。  
まだ目を潤ませているけど、涙はもう止まってる。  
それはいい。  
だけど、たくさん涙が流れたはずなのに、  
僕の精液はねっちょりべったりと張りついている。  
 
 
 
 
そんなに僕のは濃かったんだろうか?  
そう思うと鬱になる。  
 
 
僕がじっと顔を見ているのに不信を憶えて  
伊里野が頬に手をあてる。  
よしてくれたらいいのに、それを拭って観察した。  
 
 
頬と手の間で白く糸を引いたのが情けなかった。  
 
 
「拭くもの! 拭くもの!! 伊里野は何か持ってない?」  
 
 
僕は必死に注意を逸らそうとしたんだけど……  
 
 
ぺろっ  
 
 
伊里野は僕の精液を舌でなめた。  
 
 
「だめだよ、伊里野。苦いでしょ?」  
 
 
伊里野は大きく左右に首を振って……  
 
 
「浅羽のだから、おいしい」  
 
 
うわあ。  
 
 
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