精液がおいしいわけはないだろう。  
噂で聞く限りは苦いらしい。  
 
 
「……おいしい……おいしい……」  
 
 
でも伊里野はそう言い続けた。  
一目でわかるウソ。  
粘つく白い精液をなめるたびに、伊里野は眉をしかめている。  
 
 
「……見ないで……」  
 
 
そう言われて、ようやく僕は自分の状況に気が付いた。  
下半身を丸だしで、その上さっき出したばかりなのに、ギンギンにいきり立てている。  
自分がどんなにマヌケな様を晒し出しているのか解っても、  
僕は伊里野から目を逸らすことはできなかった。  
 
 
ザーメンまみれでぐちゃぐちゃになった顔が、真っ赤になっている。  
それは――  
苦い精液をおいしいだなんて、ウソをついているせいなのかもしれない。  
それは――  
精液をなめとるという行為に、倒錯した悦びを感じているせいなのかもしれない。  
それは――  
これからのことを予想して、期待しているせいなのかもしれない。  
 
 
ごくり……と僕の喉が音を立てた。  
びくり……と僕のものが動いた。  
ぎりっ……と歯を鳴らして、震えそうになるのを堪える。  
 
 
腹の底からこみ上げる熱い塊に突き動かされて、僕は口走った。  
 
 
「伊里野と……一つになりたい……」  
 
 
 
 
「浅羽と……一つになる?」  
 
 
伊里野は首を傾げている。  
予想はしていたけど、やっぱりこの手の知識はないらしい。  
一応、説明を試みた。  
 
 
すごく恥ずかしい想いをするかもしれない。  
痛い想いをするかもしれない。  
もしかしたらその後で気持ち良くなるかもしれないし、  
やっぱり痛いままかもしれない。  
とにかく伊里野が経験したことのない目にあうのは間違いなくて、  
でも心配はいらない……多分。  
 
 
上手く説明できないのが歯がゆかった。  
こんなことなら隣で聞き耳を立てるでけじゃなく、  
ちゃんと猥談に参加しておけばよかった。  
クラスの連中がどれだけ経験したのかは解らないけど、  
でも説明の役には立っただろう。  
 
 
全く要領を得ない説明をしておいて、それでも厚かましく確認してみる。  
 
 
伊里野は首を左右に振った。  
 
 
やっぱりか……落胆の思いが広がる。  
僕ごときが口で上手く説明しようだなんて、やっぱり虫が良すぎたのかもしれない。  
上品に言おうとせずに、そのものズバリを言った方がいいのかもしれない。  
そう思った時だった。  
 
 
「わかんないけど……浅羽と一つになれるのは……うれしい」  
 
 
僕は自分の耳を疑う前に、反射的に聞き返していた。  
 
 
「ホントに?! 伊里野のおマンコに、僕のチンチンが入るんだよ?!」  
 
 
自分のあまりに露骨な言い方に、目の前がくらくらした。  
はっきり言われて、伊里野が爆発したように真っ赤になった。  
激しく視線を動かして、伊里野自身と僕のものを確認する。  
そして思いっきり顔を俯かせて、蚊の鳴くような声でつぶやいた。  
 
 
「……入れても……いい……」  
 
 
 
 
ありがとう……と言ったらいいんだろうか。  
それとも、優しくするからね……の方がいいんだろうか。  
とにかく目を見ながらの方がいいだろうと、  
伊里野の俯いた顔をのぞきこもうと試みて……そっぽを向かれた。  
 
 
何回試してみても、伊里野は決して視線を合わせてくれない。  
僕の目に写るのは真っ赤に染まったほっぺのみ。  
僕はその頬に手を当てて、強引にこちらに顔を向けさせた。  
 
 
伊里野は目を閉じていた。  
何か言うはずだったのに、自然と口を合わせていた。  
伊里野の体に両手を回した。  
僕の腕の中で、伊里野の両手が僕の肩をつかんだ。  
 
 
伊里野の体が微かに震えている。  
はっきりと解るほど、僕の肩を掴む指に力が込められている。  
合わせた唇からは、熱い強張りが伝わってきた。  
 
 
伊里野がすごく緊張しているのが解って、少しほっとした。  
僕自身もすごく緊張している。  
心臓が早鐘のように鳴っている。  
伊里野もきっと同じなんだろう。  
 
 
できる限りゆっくりと、そうと感じさせないように、伊里野の体を押し倒していった。  
ぎしり……とベッドのスプリングが軋んだ音を立てる。  
その音に反応して、伊里野が僕の肩に爪を立てた。  
 
 
ちりっとした痛みが広がる。  
体を完全にベッドに預けても、伊里野は指に込めた力を抜いてくれなかった。  
肩に食い込む痛みがなくなるのに、しばしの時が必要だった。  
 
 
ようやく痛みがなくなって、僕は唇を離す。  
 
 
「……フゥ……」  
 
 
薄く開かれた口から吐息が零れた。  
伊里野は目を閉じている。  
 
 
 
 
目を閉じた伊里野の顔は穏やかだった。  
いつものようなすまし顔。  
でもそれが精一杯のウソであることは、僕の両肩にしがみついた指が  
ちゃんと物語っていた。  
 
 
両肩に手をくっつけたまま、僕はそろりそろりと体を動かす。  
少しずつ体を下げていくうちに、ピンクの乳首が目に入った。  
いたずら心が鎌首をもたげる。  
ちゅるん……と口に含んで、舌をはわせた。  
 
 
「! ふぅん!!」  
 
 
次はアソコにいくんだろうと思っていたはずなのに、  
不意打ちを受けて大きな嬌声をあげる。  
 
 
きっと咎めるような視線を送ってくるかと思ったのに、  
頑固な伊里野は目を開けてくれない。  
かわりに爪を立ててきた。  
ならばお返しにと、乳首に軽く歯を立てて甘噛みしてやる。  
 
 
「っ……!」  
 
 
今度は激しく吐息を漏らしただけで、声は出てこなかった。  
報復に爪を食いこませようともせず、手のひらで肩をぐいぐいと押してくる。  
 
 
それは、余計なことをするな、あっち行け……ということなのか。  
それとも、早く次の場所へ行け……ということなのか。  
 
 
勝手に後者だと思うことにした。  
何より僕が、次の場所に……アソコに行きたいと思っている。  
さっきは目で見るだけだったけど、今度はちゃんと味わいたい。  
指で、舌で、そしてコイツで。  
 
 
コイツがびくりと蠢いた。  
涎がたらりと垂れている。  
 
 
 
 
期待と緊張に胸を高鳴らせながら、伊里野の腰のあたりまで移動した。  
 
 
お臍からなだらかにラインが伸びて、恥丘の膨らみへと続いている。  
陰毛はおろか産毛も生えていないので、隠すものは何もない。  
恥ずかしげに太ももは固く閉じられているけど、  
股間には小さく三角形に隙間が空いている。  
その隙間から、ぴったりと閉じられた割れ目が覗いていた。  
 
 
ごくり……と生唾を飲み込んだ。  
足を閉じているせいで、今はアソコも閉じているけど、  
きっと足を開いたら、中を見せてくれるに違いない。  
アソコの合わせ目に薄っすらと姿を見せているのが小陰唇……  
そのピンク色に彩られた中を、早くこの目で確かめてみたい。味わってみたい。  
 
 
柔らかな太ももに手を忍ばせた。  
股をこじ開けるために、太ももの合わせ目に両手を差し込んでいく。  
 
 
最初にびくっと反応しただけで、別にそれ以上なにか抵抗はしてこないけど、  
だからといって、伊里野は自分から足を開こうとはしなかった。  
 
 
止む無く、むちむちとした張りのある太ももの間を、  
掻き分けるように両手を潜らせていく。  
 
 
「……ん……ふ……ん……」  
 
 
こじ入るために、まるで尺取虫のように指を曲げたり伸ばしたりしてるからか、  
手が進むたびに、伊里野の口から吐息が漏れた。  
少しずつ僕の両肩に当てられた伊里野の指にも力がこもっていく。  
 
 
指の先が太ももの合わせ目から抜けた。  
あまり力を入れすぎないよう注意しながら、太ももを押し開いていく。  
足が開かれていくにつれて、伊里野の指にも更に力が込められていく。  
 
 
ふっ……と突然に肩から指が離れた。  
見れば、両手で隠すように顔を覆っている。  
隠し切れない両耳が真っ赤に染まっている。  
 
 
目を転じてみれば、伊里野の股は完全に押し広げられていた。  
激しく赤くなった顔とはうらはらに、  
押し開けられてもアソコはぴったりと閉じて、すまし顔をしていた。  
 
 
 
 
改めて伊里野のアソコを見て、やっぱりキレイだと感じた。  
 
 
キメ細かな肌の中に、すっと縦線が引かれている。  
その割れ目を保護するように、小陰唇が顔を覗かせている。  
猥談とかで下の口とか言うけど、本当に唇みたいだ。  
 
 
自分の口から感嘆の吐息が漏れる。  
息吹を敏感に感じ取って、アソコがぴくりと震える。  
伊里野の口からも「ン!」と吐息が鋭く零れた。  
 
 
びくり……と僕のものも反応した。  
既に先走りが零れ出しているのが解る。  
一度出したのに、ビンビンにいきり立っている。  
 
 
早くブチ込みたいと思う一方で、不安を感じ始めていた。  
伊里野はちゃんと感じているのだろうか? と。  
 
 
『体は正直だぜ』とか何とか、ああいう物語は言う。  
実際、僕のものは正直過ぎるほど元気になっている。  
同じように伊里野のアソコもお口を開いて、愛液を零しているだろうと思ったのに、  
素っ気無いほどにすまし顔。  
まるで小さな女の子が唇だけで拙く拒否するように、  
アソコの秘唇を固く閉じている。  
 
 
少し悔しかった。  
僕ばっかり気持ちよくて興奮しているのは、不公平だと思った。  
 
 
伊里野も同じようにしてやりたい。  
ぴくぴくとアソコを蠢かせ、たらたらと愛液を先走らせてやりたい。  
伊里野の恥ずかしい反応が見たい。  
自分から秘唇を開かせたい。  
そんな暗い情熱に動かされて、アソコに舌をはわせた。  
 
 
 
 
「! ふぅん!!」  
 
 
ちょこんと舌が触れただけで、上の口は声を漏らす。  
けど下の口は頑ななまでに、涎を零さない。  
 
 
尖らせた舌先で、割れ目をなぞるように小陰唇をなめ上げた。  
 
 
「ふぅぅぅんんんっ!!」  
 
 
舌の動きに合わせて、喘ぎ声が上がり、ぴくぴくと反応を返す。  
けど、やっぱりアソコは開いてくれない。  
 
 
今度は舌の先っぽだけじゃなく、面で当たるように舌を押し広げる。  
小陰唇だけじゃなく、柔らかく盛り上がった大陰唇も刺激するようになめ下げた。  
 
 
「ふぁあああぁぁぁっ!!」  
 
 
2ヵ所を同時に責められたせいで、さっきよりも大きな嬌声が上がる。  
でも、アソコは開かない……いや、少し綻びかけている?  
ほんの些細な変化かもしれない。  
けど、そのつけいる隙を見逃せなかった。  
 
 
顔を傾け、舌を平らにし、僅かな隙間にはまり込むようにあてがう。  
割れ目に楔を打ち込むように力を込めて、舌を滑らせた。  
 
 
「ふぅん! ふあんっ!! ふぁああぁぁああっっ!!!」  
 
 
より深くなった刺激に、一際大きな喘ぎ声が零れた。  
反応の良さに満足感がこみ上げる。  
今度はただ滑らすだけじゃなく、波打つように変化を加えて、もう一往復動かした。  
 
 
「ひや! ひやはっ!! ひはやぁあああぁぁぁんんっ!!!  
 ふわぁあっ! ふわ! あはぁああぁぁぁああっっ!!」  
 
 
どんどんと喘ぎ声は高まっていく。  
けど変化はそれだけじゃなかった。  
口を開きこそしないものの、びくびくと痙攣するようにアソコの唇を震わせている。  
そして……秘裂のてっぺんに、何か硬いものが生まれていた。  
それが充血して尖ったクリトリスだと気付くのに、少しの時間が必要だった。  
 
 
 
 
伊里野も興奮している!  
喘ぎ声だけじゃなく、明確に体も変化を示したことに、僕は激しく感動した。  
 
 
伊里野は感じてないんじゃなくて、我慢しているだけなんだ!  
本来なら皮に包まれて縮こまっているものが、隠し切れずに飛び出してきたことで  
感じていた不安が『もっと激しくしてやろう』という嗜虐心にも似た気持ちに変化する。  
 
 
喜び勇んで、いきり立つクリトリスを咥えこんだ。  
 
 
「くぅぅうううんんっ!!」  
 
 
強すぎる刺激に、引きつったような叫びが走る。  
伊里野のアソコがぎゅっと収縮するのが解る。  
縮こまろうとする小陰唇に引きずり込まれて、  
クリトリスが僕の口から逃げようとするのを、唇に力を入れて抑えこんだ。  
 
 
「っっっっっっ…………!!」  
 
 
伊里野の叫びは、もう声になっていない。  
強すぎる刺激が荒ぶる力となって、全身を翻弄しているみたいだ。  
 
 
突然、僕の頭が伊里野の太ももに挟みこまれた。  
更にそれだけでは飽きたりないのか、顔を隠していたはずの両手で、  
上から抑えこんでくる。  
 
 
僕の頭をロックして、これ以上のことをさせないつもりなんだろうか?  
可愛らしい抵抗の仕方に、自然と笑みが浮かぶ。  
 
 
今、伊里野の体を翻弄している刺激の源は、僕の口の中にある。  
そのことを身を持って解らせるために、少し強めにクリトリスを転がした。  
 
 
「くうんっ! ふぅんっ! ぅんっ!! んっっ!!」  
 
 
何とか声を漏らすまいと、歯を噛み締めているのだろう。  
けれども僕の唇にねぶられるたびに、  
刺激が体中を駆け巡り、喘ぎ声となって零れる。  
必死に踏ん張って僕の頭を抑えこんでも、快感は一向に治まらない。  
びくびくとアソコを蠢かせてしまう。  
 
 
 
 
ふと、ホラー映画のワン・シーンが思い出された。  
ヒロインは殺人鬼から逃げている。  
部屋に逃げ込んで隠れるも、見つかってしまう。  
殺人鬼はドア・ノブをが力まかせにガリッと捻り、鍵をこじ開けてしまう。  
ヒロインは扉を開けさせまいと、力いっぱい抵抗するけど、  
結局、殺人鬼の力にはかなわなくて、扉は開かれてしまう。  
 
 
今まさに、そんな状況だ。  
伊里野がどんなに頑張って、秘唇の奥を隠そうとしても、  
僕の口の中に恥ずかしい突起が奪われている限り、  
いつかはさらけ出さなくてはならない。  
 
 
もう伊里野の秘密の扉のノブは奪われているんだ。  
鍵だってこじ開けられているんだ。  
だからいつまでも抵抗してないで、そのドアを開けてよ。  
 
 
僕の頭を締め付ける圧迫感は、痛いぐらいに強くなっている。  
最後の力を振り絞っているのか、抑えつける腕や太ももが  
ぷるぷると痙攣し始めている。  
 
 
とどめにと、激しく音がするほどに、クリトリスを吸い上げた。  
 
 
「! くぅんっ! くはあん! くぁっ、ああぁぁぁあああぁああっっ!!!」  
 
 
今までと比べ物にならないぐらい、大きな絶叫があがった。  
伊里野のアソコが開かれた。  
 
 
どんなに今まで我慢していたのか。  
どれほどに気持ち良かったのか。  
それら全てを物語って余るほどに、大量の愛液がまるで湧き出すようにあふれ出た。  
 
 
 
 
ずずず、ずぅぅぅ……わざと音を立てて、あふれ出た愛液を啜った。  
 
 
「浅羽! 音出しちゃ……だめ……」  
 
 
上の口だけじゃなく、下の口もパクパクと開いたり閉じたりさせて、伊里野は恥らう。  
息も絶え絶えという感じで、弱々しく僕の頭を抑えつける。  
その様がたまらなく可愛らしい。  
 
 
もっと恥じらい、乱れるところが見たい。  
伊里野の全てをさらけ出させたい。  
 
 
伊里野の秘裂に舌を刺し入れる。  
愛液にぬめる小陰唇がからみつく。  
もて遊ぶようにかき回す。  
 
 
「あぁっ、 あんっ! ふあぁぁあんんっ!!」  
 
 
伊里野はどんどん淫らになっていく。  
駆け巡る快感に体の自由を奪われたのか、もう抑えつけようともしてこない。  
 
 
頃合か確かめるために、舌を錐のように鋭くして  
伊里野の秘唇に突き入れてみた。  
 
 
「あ! 浅羽ぁああああんんんんっっ!!」  
 
 
もう大丈夫なようだ。  
過激な責めを受けても、伊里野は抵抗してこない。  
準備は整った。  
いよいよ伊里野と一つになれるんだ。  
 
 
伊里野のアソコに、ちょうど僕のものがくるように体を動かした。  
 
 
刺激の余韻で、アソコがひくひくと蠢いている。  
何度も何度もついばむように、大陰唇が僕のものにキスをする。  
 
 
伊里野の秘唇が触れるたびに、びくんびくんと一物が反応した。  
心臓がドキドキしている。  
万感の思い込めて、突き入れようとして……失敗した。  
 
 
 
 
角度が悪かったのか、  
それとも先走りまくった潤滑液のせいで滑りがよくなり過ぎたのか  
僕の突っ込みは伊里野の大陰唇に弾かれた。  
 
 
思い直して、もう一度……失敗。  
逸る気持ちばかり高まる。  
焦りまくっていては、上手くいくはずがない。  
僕の行為は伊里野の上を滑りまくった。  
 
 
「ふぅぅぅうううんんん……」  
 
 
結果的に素股プレイみたいな感じになる。  
僕のものがアソコを通過するたびに、伊里野は頼りない吐息を漏らす。  
でもその声は、舌で弄繰り回していたときほど激しくない。  
 
 
緊張に焦燥が加わって、僕のテンションは上がりっぱなしだけど、  
伊里野はボルテージ・ダウンしてるんじゃないだろうか?  
不安が鎌首をもたげた。  
 
 
「浅羽……どうしたの?」  
 
 
震える声でそう問い掛けられて、僕の心は縮みあがってしまった。  
 
 
僕が初めてで慣れてないせいもある。  
伊里野の入口が狭いせいもある。  
けれど、どんな理由があるにせよ、上手くできないことに違いはない。  
それを女の子に悟られ、口に出されることほど、恥ずかしいことはないだろう。  
 
 
「手伝う」  
 
 
えっ? と心の中で驚いて、「うわっ」と口で悲鳴をあげた。  
 
 
伊里野が僕のものを掴んでいる。  
なかなか侵入できなくて、いきり立っていた一物には、  
ただ触れられただけでも充分な刺激だった。  
 
 
 
 
くちゅ……  
 
 
伊里野の手に導かれて、僕のがアソコにくっついた。  
さっきまでとは違う感じ。  
産毛の一本も生えていない大陰唇のすべすべとした感触じゃなくて、  
もっと柔らかくて、ぬるっとしてて、熱い感じ。  
 
 
伊里野がもう一方の手で、アソコを開いているんだ。  
最初の扉はこじ開けられて、今2番目の扉、小陰唇に触れているんだ。  
 
 
そう思うと、いても立ってもいられない。  
一刻でも早く、全ての扉をこじ開けブチ破り、伊里野の中に入りたい。  
伊里野の導きを急かすように、腰に力を入れた。  
 
 
ぴちゅう……  
 
 
僕の亀頭に隙間なくぴったりと張りついた粘膜から、  
愛液が無理矢理に押し出されて、水っぽい音を立てた。  
 
 
今度こそ上手くいったんだ。  
アソコの表面を、ただ虚しく滑りまくっていた僕のものが  
ようやく正しい道を進んでいるんだ。  
 
 
その確信がさらなる力を与える。  
 
 
「ふうぅぅぅぅんんんん……」  
 
 
僕が侵入していくことで、まるで押し出されるかのように、  
鼻に掛かった吐息が伊里野の口から漏れる。  
 
 
僕の亀頭は伊里野の中に入った。  
包まれている感じがする。  
カリの部分を巻きつくように包んでいるのが小陰唇で、  
亀頭の先に当たっているのが……伊里野の処女膜……なんだろう。  
これを破れば……。  
 
 
心臓が激しく鳴っている。  
いよいよという想いが強くなる。  
 
 
「いくよ?」  
 
 
伊里野に覚悟させるために、自分の心に発破を掛けるために、  
確認の言葉を口にした。  
 
 
 
 
すうっと大きく息を吸って、一物に力を込めた。  
 
 
くちゅぅぅ……  
 
 
また愛液が押し漏らされて、湿った音を立てる。  
処女膜が張りつくように、僕の亀頭を包んでいる。  
行く手はまだ塞がれている。  
 
 
早く! 早く! と焦る気持ちが高まる。  
焦りが大きすぎる力となって、僕の体を突き動かした。  
 
 
「く! うぅぅぅんんん!!」  
 
 
伊里野が大きな悲鳴をあげる。  
その叫びに、はっとなる。  
また僕は自分のことしか考えていなかった。  
 
 
見れば、伊里野のまぶたは固く閉じられ、眉根に深い皺が寄せられている。  
伊里野の顔が苦痛に歪んでいた。  
 
 
その様が僕の心を激しく怯えさせる。  
しかし肉体は、もっと深く貪れ食らえと、獰猛なパトスを送ってくる。  
背反する心と体に挟まれて、僕はどうしたらいいか解らない。  
為すべきことを決めかねて、硬直したように動けなかった。  
 
 
「……浅羽……?」  
 
 
動かなくなってしまったことに不信を憶えてか、  
伊里野が僕の名前を呼んだ。  
上気し紅潮した伊里野の頬は、続きを急かしているようにも見える。  
けれど、薄く開かれた目尻に光る涙を見ると、  
これ以上の苦痛を拒絶しているようにも思える。  
 
 
伊里野の口はそれ以上なにも言ってくれない。  
潤んだ瞳で僕をじっと見つめている。  
 
 
僕は伊里野の視線に耐えかねて、自分のまぶたを閉じてしまった。  
 
 
ちゅっ……  
 
 
僕の唇に何かが触れた。  
伊里野が咎めようともせず、そして何も言わずに、僕に唇を与えてくれた。  
 
 
 
 
こくり  
 
 
そして唇を離さずに頷く。  
 
 
伊里野の首の動きに押されるように、僕の硬直した頭が傾く。  
量りかねていた心の天秤が傾く。  
 
 
僕は望んでいる――伊里野と一つになることを。  
伊里野も望んでいる――僕と一つになることを。  
そして望みをかなえるためには、苦痛がともなうんだ。  
それは我慢しなくちゃいけないことなんだ。  
 
 
伊里野が僕を見つめている。  
僕はその視線をしっかりと受けとめた。  
目尻に涙が光ってる。  
僕はその輝きから目を逸らさない。  
 
 
そして僕は腰を沈めた。  
合わせた唇が強張るのを感じる。  
更に深く沈めた。  
少しずつ目尻に溜まった涙が膨らんでいく。  
 
 
伊里野の両腕がしがみつくように、僕の体を抱き締める。  
両手は爪立てられ、僕の背中に食いこんでいく。  
 
 
ぴち……ぴち……  
 
 
僕のものに押し伸ばされて、伊里野の処女膜が徐々に徐々に裂けていく。  
 
 
伊里野の目尻に浮かんだ涙が、限界まで膨らみ、そして溢れた。  
 
 
「っ……!!」  
 
 
合わせた唇から、声にならない激しい叫びが伝わった。  
 
 
ぴちぃ……!  
 
 
処女膜が弾けるのを感じた。  
 
 
無理矢理に扉をこじ開けて乱入した侵入者をなじるように咎めるように、  
痛いほど強く伊里野の膣は僕のを締め上げた。  
 
 
「入った……よ」  
 
 
唇を離してささやきかける。  
 
 
「……これが……浅羽?」  
 
 
「うん……僕だ」  
 
 
 
 
「じゃあ、動くからね」  
 
 
そう言って腰を引いた。  
腰の動きに合わせて、僕のものも引かれる。  
しかしカリにからみついていた肉襞は、決して咥えこんだものを離そうとしなかった。  
まるで接着したかのように、一緒についてくる。  
 
 
「くぁぁぁあああぁぁああっ!!」  
 
 
膣腔ごと引っ張られる刺激に、伊里野が悲鳴を上げる。  
まるで体までもが引っ張られたかのように、大きく背中を曲げている。  
それ以上後ろに行かせないようにか、僕を抱き締める腕に力がこもった。  
 
 
腰を引くのを中断し、今度は前に進んでみる。  
 
 
「っぅふうぅぅぅううんんんっっ!!」  
 
 
吐息混じりの悲鳴が零れる。  
伊里野の背中が弓のように反り返っている。  
さっきとは逆の姿勢になったけど、膣腔の中は変わらない。  
しっかりと咥えこんでついてくる。  
それ以上、奥へと進めないよう、からみ付いて離さない。  
 
 
一呼吸おいて、ストロークを繰り返した。  
 
 
「あぁぁああぁあ!……ふぅぅううぅんんっ!」  
 
 
伊里野のリアクションは変わらない。  
腰を引く動きに合わせて背中をまげ、突き込まれる動きに反り返る。  
 
 
もう少し大きく激しく動いても大丈夫だろうか?  
小さくゆっくりと前後しながら思った。  
しかし僕にとっては些細な変化でも、伊里野にとっては大きすぎるかもしれない。  
そう思わせるほどに、伊里野の体は跳ねまわるように動き、  
口からは大きな喘ぎ声が漏れていた。  
 
 
ズズッ……  
 
 
その時、僕のものが滑るのを感じた。  
 
 
 
 
「ひぁぁぁあああぁああぁっ!!」  
 
 
伊里野が一際大きな声をあげる。  
 
 
ようやく刺激に慣れたのか?  
それとも膣奥から湧き続ける愛液が染み渡ったのか?  
変化の理由は解らない。  
けど確かに、僕のものは咥えこまれていた肉襞の一つから外れ  
隣の襞へと移っていた。  
 
 
この機会に一気に加速させようと逸る気持ちを抑えて、同じペースを保つ。  
しかしピストンのリズムは同じでも、変化は確実に起き続けた。  
腰を前後に動かすたびに、1つ2つと僕のカリに擦れる肉襞の数が増えていく。  
 
 
「あぁ! ああぁあっ!! ふぁあああぁぁああっっ!!!」  
 
 
伊里野の喘ぎ声も高まっていく。  
何とか堪えようと、抑えこもうと、必死になって僕の体にしがみつく。  
 
 
僕は構わず腰を使う。  
 
 
ずりゅうっ……  
 
 
ペースを全く変えていないのに、伊里野の膣腔で大きく滑った。  
 
 
「ひぐぅぅっ!!」  
 
 
伊里野が引きつった悲鳴を上げる。  
 
 
こつん……と亀頭の先が何かに当たった。  
 
 
「――――っっ!!」  
 
 
しがみついていた伊里野が、激しい刺激に首ごと後ろへ仰け反った。  
どうやら伊里野の最も奥深いところまで辿り着いたみたいだ。  
 
 
 
 
ここぞとばかりに、腰の動きを大きくする。  
ずんずんずんとストロークさせて、伊里野の子宮を突き上げる。  
奥に当たるたびに、伊里野は激しく背筋を仰け反らせた。  
 
 
「あ、浅羽!……浅羽ぁ!……あぁああっ!!」  
 
 
伊里野が息も絶え絶えになって訴えてくる。  
僕は当然、耳を貸さない。  
 
 
「……激しぃ……激しっ……すぎぃ!!」  
 
 
伊里野の手足が暴れまくっている。  
足を踏ん張り、手でシーツを掴み、何とか逃れようと、体を上へ動かそうとする。  
 
 
けど僕は逃がさなかった。  
伊里野の腰に手を回し、ずり上がった分、引き戻す。  
 
 
「くはぁあああぁぁぁああぁあっっ!!」  
 
 
体を固定された状況で突き上げられて  
伊里野が絶望の断末魔とも思えるほどの絶叫を上げる。  
それでも僕はひるまない。  
伊里野の悶える様が過激になるどほど、それに合わせて激しくストロークを打ち込む。  
 
 
上に逃れることができないためにか、伊里野は腰を左右に動かしだした。  
何とか刺激を逸らしたいんだろう。  
しかし、それは逆効果だ。  
腰をくねらせることで、膣腔を擦る場所にアレンジが加わり、刺激は一層強くなる。  
 
 
「はぁああぁんっ! ふぁ、ひぁ……んあっ! ん、ふ、はぁくふぁあああぁぁっ!!」  
 
 
ただ伊里野は必死なだけなんだろう。  
喘ぐ声に、涙に潤む瞳に、理性の片鱗は覗えない。  
完全に快楽に飲み込まれてしまっている。  
 
 
けど、それは僕も同じだ。  
伊里野の快感は僕の快感。  
伊里野の肉襞がひくひくと蠢いているように、  
僕のものもビクビクと震え、いつ射精してしまってもおかしくない。  
 
 
「伊里野……すごいよ……もう出そうだ」  
 
 
搾り出すように言った。  
 
 
 
 
「あぁああぁぁあぁああぁああああっっっんっ!!」  
 
 
伊里野からの返事は喘ぎ声だけだった。  
 
 
「い、伊里野……イッて! イクとこを僕に見せて!  
 そうしたら……外に出す……から……」  
 
 
理性を失うほどにヨガりまくっている伊里野に  
そう言っても解らないかもしれない。  
けど、とりあえず宣言した。  
どこまで伊里野が乱れるのか解らない。  
でも、ここまできたらイッて欲しい。  
 
 
突然、仰け反りまくっていた伊里野が抱きついてきた。  
それどころか両足を僕の腰に回し、動けないようロックする。  
 
 
「い、伊里野?」  
 
 
驚いて腰の動きを止める。  
耳元で荒い息吹が聞こえた。  
どういうつもりか確かめたくて、伊里野の返事を待つ。  
 
 
「……イヤ……」  
 
 
え?  
何がイヤなんだろう?  
もしかしたら激しすぎたのがダメだったんだろうか?  
 
 
「……外に出しちゃ……イヤ……」  
 
 
自分の耳が信じられなかった。  
いやその前に、伊里野は何を言ってるのか、ちゃんと解っているんだろうか?  
 
 
「……離れないで……ずっと一緒にいて……」  
 
 
 
 
そこまで言ってくれたことは、本当に嬉い。  
けど分別はつけなくちゃいけない。  
伊里野を傷つけるかもしれないことをしたくない。  
 
 
「で、でも……」  
 
 
何とか思い止まらせようと口を開いた。  
伊里野はそれ以上言わせてくれなかった。  
唇を押し当て、舌をからめて、何も喋らせてくれない。  
 
 
伊里野の熱い想いが伝わってくるようだった。  
でも……。  
迷いは抜けない。  
本当にそこまでしていいんだろうか?  
硬直したように動けない。  
 
 
一向に動こうとしない僕に業を煮やしたのか、伊里野が自分から腰を使ってきた。  
快楽を逸らすためじゃなく、生み出すために。  
 
 
僕の体がのしかかっているために、満足には動けない。  
両足を僕の腰に回しているために、充分に力を込めることもできない。  
しかし伊里野は諦めようとはしなかった。  
拙い腰の動きを補おうと、膣腔を締めつけてくる。  
 
 
伊里野は言葉だけじゃなく、全身で望んでいる。  
最期まで離れないでいることを。  
いつまでも一緒にいることを。  
 
 
迷いが消えた。  
 
 
唇を合わせたまま肯いた。  
それだけで、ちゃんと伝わった。  
 
 
 
 
僕の腰に回されていた戒めが解かれる。  
ゆっくりとピストン運動を再会する。  
伊里野も腰の動きを合わせてきた。  
中断されていた快感が蘇る。  
 
 
「浅羽! 浅羽っ!! 浅羽ぁっ!!! ふぁああぁあ……」  
 
 
伊里野が必死に僕の名前を呼んでいる。  
 
 
つっ……  
 
 
僕の背中に鋭い痛みが走った。  
伊里野が爪を立てている。  
背中の肉に食い込んでいる。  
 
 
痛みはそれだけじゃない。  
きゅっきゅっぎゅうとリズミカルに締め付ける膣腔も  
あまりにきつすぎて焼け付くようだ。  
 
 
「ふぁんっ! はぁああぁあっ! あはぁああぁぁあぁああああぁぁあああっ!!」  
 
 
喘ぎ声は最高潮に達している。  
伊里野の絶頂の時が近い。  
 
 
伊里野がイク! イッてしまう!!  
 
 
僕は心の中で絶叫を上げる。  
何故か置いていかれるような気がした。  
いつまでもこの瞬間を味わっていたいという思いと  
イクなら一緒にという思いが交錯する。  
 
 
何とか追い着こうと、腰の動きを加速した。  
 
 
「浅羽っ! 浅羽ぁ!! イク?! イクっ?! イクぅぅっ?!」  
 
 
 
 
待って! 待って!!  
心の中で必死に叫びながら、追いかける  
 
 
「くぁああああぁぁぁああぁあぁぁぁああああぁああぁああああっっっっ!!!!」  
 
 
伊里野の絶叫が弾けた。  
ぎゅうっと膣腔が激しく収縮した。  
 
 
伊里野はイッてしまった……と思った刹那。  
子宮の奥から、今までと比べ物にならないほど大量の愛液が湧き出し、  
灼熱の奔流となって浴びせかかってきた。  
 
 
「い! 伊里野ぁ!!」  
 
 
吼えた。  
雄叫びを上げた。  
 
 
どくっ……どぷっ……どくぅっ……  
 
 
僕も煮え滾るような熱い精液を解き放った。  
 
 
「ああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!!」  
 
 
2人の絶叫と、混じりあう蜜の中で、僕らは溶けていった。  
 
 
 
 
体の力が抜けていく。  
全てを出し終えて、僕はぐったりしてしまう。  
 
 
伊里野はまだ、荒れ狂った快楽の余韻に浸かっている。  
華奢な体が強張っている。  
僕の背中に爪が食い込んでいる。  
 
 
もしかしたら傷痕が残るかもしれないな。  
肉を食い破られる痛みを感じながら思った。  
まぁ……いいか……。  
僕が伊里野のものだという良い証になるかもしれない。  
 
 
伊里野の背中に刻まれた注射痕が頭をよぎった。  
 
 
「ふぁあっ…………」  
 
 
ようやく悦楽の大波が去ったのか、気の抜けた吐息が漏れる。  
背中に回されていた腕からも力が抜ける。  
 
 
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………」  
 
 
体中の力を全部長し出すのかと思うほどの、長い長い吐息が零れる。  
 
 
ぷっしゃぁぁぁ………………  
 
 
僕らが合わさった場所から、全ての行為を洗い流すかのように、液体が迸った。  
 
 
ぱさ……  
 
 
支える力を失って、伊里野の腕がベッドに倒れこむ。  
指の先に僕の血がこびり付いている。  
 
 
ふと、手首にある金属球が目に入った。  
 
 
『なめてみる?』  
 
 
それが全ての始まりだった。  
 
 
そっと舌をはわせる。  
苦いような、酸っぱいような味が広がった。  
 
 
『電気の味がするよ』  
 
 
これが……  
 
 
「わたしの味、だよ  
 忘れないで……」  
 
 
『イリヤの味 電気の味』 おひまひ  
 
 

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