【誘惑と、思惑と】  
 
 「はぁー……もう動けん」  
 
 織斑一夏は、自室への道を歩いていた。  
 
 「ったくあいつらみんなして……俺が何をしたって言うんだよ」  
 
 相も変わらず持ち前の鈍感さをあますことなく存分に発揮した彼は、実戦形式の訓練において1組の専用機持ち4人にボコボコにやられていたのである。  
 そうして愚痴をこぼしていると、ふと気づけばいつの間にかすでに部屋の前。  
 とりあえず体を休めることが先決だ、と彼はドアノブに手をやった。  
 
 「……あれ? 鍵開いてる」  
 
 また楯無さんが待っているのかと、少しだけ開けたドアの隙間から内側をそーっと覗いてみる。が、そこには裸エプロンを着た生徒会長などいなかった。  
 
 (鍵かけ忘れたかな……)  
 
 1組の4人は近道やISを使えば彼の部屋に先回り出来るかもしれないが近道などない上に指定範囲外でのISの使用は禁じられている。  
 そう、彼は誰もいないと思い込んで部屋へと入って行った。  
 いつものメンバーとは違い1人欠けていることに気付かずに……  
 
 
 
 「……は?」  
 
 開口一番出た言葉は、呆れとも驚きともつかない間の抜けた声。  
 それも仕方ないかもしれない、なぜなら―――  
 
 「あ、ちょっと一夏! 手伝って!」  
 
 ―――2組の中国代表候補生、鳳鈴音がそこにいた。  
 
 しかも、その両手を手錠で繋げて。  
 
 「……なにやってんのお前」  
 「見てわかんない? 手錠が外せないのよ」  
 「いやそうじゃなくて……なんで手錠なんか持ってるんだよって話だ」  
 「……」  
 「……」  
 「……べ、別にいいじゃない!? そんなことより鍵探すの手伝ってよ、この状態だと制服の内側まで手が届かなくてっ……!」  
 
 当然両手を手錠で繋がれた状態では思うように腕を動かすことはできず、鍵を取り出せないらしかった。  
 
 「まったく……どこだよ、鍵の場所」  
 「制服の内ポケットだったと思うわ」  
 
 ここで一夏は重大なことに気付いた。内ポケットを探るためにはボタンを外さなければならない。その動作が、いかにもこれからいかがわしいことをするのではないか……ということに。  
 
 (……ええい、無心だ無心!)  
 
 「ボタン、外すぞ」  
 「うん。……やっ、ちょ、どこ触ってんのよ」  
 「しょ……しょうがないだろ!」  
 「わかったからさっさと探しなさいって」  
 
 ブラウス越しに少しだけ鈴の肌に触れてしまったが言われたとおりに内ポケットを探っていく。  
 が。  
 
 「……おい、ないぞ?」  
 「え……ならブラウスの胸ポケットかも」  
 
 ここで鈴が一瞬ニヤリと口元を歪めたことに気付ければ展開はまた違っていたのかもしれない。  
 しかし、他のことを考えず鍵を探すということだけに執心していた一夏に到底、それができるはずもなく。  
 
 「い、いやさすがにそれはまずいだろ。誰か呼んでくる」  
 「ちょ……こんな醜態見せろって言うの? ……それにあんたがやったと思われるわよ」  
 「ぐっ……」  
 
 それはさすがに、まずい。  
 ここで織斑一夏はか弱い(?)女の子に手錠をつけて愉しむような変態プレイが好きなのだと校内に知れ渡ってしまえば今後3年間の学生生活はお先真っ暗だ。  
 それだけでなくISを扱うことのできる唯一の男子として注目されているのだ、もしかしたら全世界に……  
 鈴の巧みな言葉遣いに一夏の思考は負の連鎖を描き、ついに屈した。  
 
 「じゃ、じゃあ……」  
 「はやくー」  
 
 (できるだけ鈴の体から離して……!)  
 
 「……んっ」  
 「うわ、ごめんっ」  
 「い、いいからさっさとやっちゃってよ」  
 
 女盛りの体に触れるか触れないかという思春期の男子にはつらい状況、そしてこれが終わったら「変態!」といわれて殴られるのではないかという恐怖が入り混じり、一夏の思考はさらに混乱を加速していく。  
 
 (は、早く見つけないと)  
 
 焦りからゴソゴソと手を動かすが虚しいことに空を切るばかり。むしろその手がたびたび鈴に当たってしまっていたために……  
 
 「んっ」  
 
 「やん」  
 
 「あっ……」  
 
 などと悩ましい吐息を漏らさせてしまうのだった。  
 
 「もしかしてそこら辺に落としたのかも……この部屋に来たときはまだあったのよ」  
 
 だからベッドの周りを探しましょ、という鈴の言葉に従い精神的に救いを感じた一夏であったが、それが誤りだということにすぐに気付くこととなった。  
 
 「一夏ーそっちあったー?」  
 
 背を向けながら問いかけてくる鈴。その姿勢は下方を探すため四つん這いになっていて……  
 
 「いや、ない―――!?」  
 
 (パ、パンツ見えてるって! でもこれ言ったら蹴られるんじゃないだろうか)  
 
 今までの経験上そうなるだろうと考えて極力目をそらすことにした一夏だったが、鈴がそれを許さず追い打ちをかけてくる。  
 
 「ちょっと一夏、ちゃんと探してんの?」  
 「あ、ああもちろん」  
 「ちゃんと目を見て喋りなさいよ。まさかサボってるんじゃないでしょうね……?」  
 
 四つん這いのままこちらに向きなおり鈴がにじり寄ってくる。  
 後ろは後ろでパンツが見えてしまっていたのだが、前は前で制服が重力に従って彼女の胸部の柔肌を露出させていた。  
 
 「ちゃ、ちゃんとやってるって!」  
 「だから目を見なさいって言ってんでしょうが」  
 
 (だからそっち向いたら見えちまうんだって!)  
 
 そんな一夏の葛藤にも構わず鈴は距離を詰めてくる。  
 
 「怪しいわね……コラッ、って―――きゃあっ!」  
 「っ! あぶねぇっ!」  
 
 誤ってベッドから手を滑らせ鈴が落下しかける。両手が手錠で使えないため手をつくことも出来ず頭から落ちる――――――前に、なんとか一夏がその体をキャッチすることに成功した。  
 
 「あービックリした」  
 「い、一夏……」  
 
 安堵もつかの間。無我夢中で鈴を抱きしめて捕まえたためその体勢は鈴を押し倒したような形になっていて。  
 
 「あ……」  
 
 潤んだ瞳、そして上気した頬が目の前に、あった。  
 
 (あ、あれ……鈴ってこんなに色っぽかったっけ……?)  
 
 もともと優れた容姿をしている彼女だったが今までは一夏から彼女に対する“幼なじみ”という感覚が抜けきっておらず、女性として見られることはあまりなかった。  
 けれど……  
 
 「一夏ぁ……」  
 
 甘えるような猫撫で声。  
 幼馴染のまた違った一面に、彼の胸は高鳴りを隠せなかった。  
 
 (な、なんでこんなに……)  
 
 可愛く見えるんだ、と彼の脳が言葉を繋げる前に。  
 彼女は、そっ……とその瞳を閉じた。  
 
 それはまるで王子様の口付けによって目覚めるのを待つ白雪姫のような……  
 
 (……ゴクッ)  
 
 その唇に吸い込まれるように彼も唇を近づけていき―――  
 
 「んっ……」  
 
 ―――2人の影が、重なった。  
 
 「んんっ……!?」  
 
 いきなり口内に侵入してきた鈴の舌に少し驚きつつも、一夏はそれを優しく絡めとり舐っていく。  
 
 「んっ……ふ、れろっ……はぁっ……いちかぁ……」  
 
 息をつむいだ少しの瞬間の、鈴からのおねだり。  
 一夏は、もう躊躇ったり考えたりすることをやめた。  
 
 「ちゅっ……んん……れろ、ぴちゃっ、ちゅぱっ」  
 
 それは1分だったのかもしれない。1時間だったのかもしれない。  
 だが、そんなことはどうでもよかった。  
 2人の離した舌先から伸びる銀糸が、彼らが口づけを交わしたという事実を物語っていた。  
 
 「鈴……脱がせていいか」  
 「……うん」  
 
 プチ、プチとブラウスのボタンを外していく。  
 
 「やぁん……」  
 
 ブラジャーのホックも外し、鈴の胸が露わになる。  
 以前には貧乳などと罵ったこともあったが、そこにはしっかり女の子特有のふくらみが感じられた。  
 
 「ちゅうっ……」  
 「あ、んっ」  
 
 突起を口に含み、舐め、時に吸い上げ、転がす。  
 
 「れろっ……ぴちゃ、ぴちゃ……ちゅっ、ちゅぷっ」  
 「あぁっ、ん……やぁ……はぁんっ。……ね、一夏。あたしもしてあげる……」  
 
 そういうと鈴は一夏の制服に手をかけ、ボタンを外して脱がせていく。上半身を脱がし終えると、そのままベルトに手をかけズボンのチャックをも下ろしていく。  
 
 「わっ……」  
 
 パンツを内側から押し上げるそれを、ツンツンと指先でつついては反応を楽しんでいた。  
 
 「今ピクン、ってした……」  
 「お、おい鈴」  
 「わ……わかってるわよ。がっつく男は嫌われるわよ?」  
 
 一夏に急かされ、ついにパンツを下ろす。  
 と、同時に鈴も一夏によってショーツをずり下ろされていた。  
 
 「ちょっ……は、恥ずかしい」  
 「……お互い様だ」  
 
 シックスナインの形になり、2人は互いの秘所を愛撫していく。  
 
 「鈴のここ、ぱくぱくして口みたいだな……それにこんなに濡らして……ぐちゃぐちゃじゃないか。ん……れろ、ちゅぷ」  
 「んむっ、じゅぷっ、じゅぷっ、んぁっ、じゅぷっ、はぁっ、い、一夏のだって、んんっ、こんなにビクビク、あんっ、させてる、じゃない」  
 
 互いに言い合いながらも愛撫の手は止めることはしない。  
 
 「……っ!? な、舐めながら指、いれちゃっ……!」  
 
 舌で愛撫しながらも一夏は指を使ってさらに鈴を責めたてていく。  
 
 「あ、あ、あ、ああっ、んぅ、はぁんっ、あっ、いいっ、いちかぁっ、気持ちいいよぉぉぉ……あっ、だめっ、なんかキちゃう、キちゃうぅぅぅ!」  
 「んっ……! んくっ」  
 「……あふっ、ふあぁ」  
 
 先に絶頂に達した鈴は快感に身を捩じらせる。  
 
 「俺、まだイってないんだけど……」  
 「はぁ、はぁ、はぁ……。今日、安全日だから……膣内(なか)にだしていい、わよ」  
 「鈴っ……!」  
 「来て、いちかぁ……」  
 
 彼の剛直を鈴の秘所にあててゆっくりと中へと滑らせていく。  
 
 「キツ……鈴、力抜いて」  
 「やっ……やってる、わよっ」  
 「腕を円にして俺の頭から通して……そう、俺の背中に手を回してくれ。……我慢できなかったら思いきり抱きしめてくれてもいいからさ。行くぞ……っ!」  
 「あああっ……!」  
 
 ズブズブと、彼のソレは鈴のカラダに包み込まれていく。  
 
 (痛ぅっ……! けど、鈴はきっとこの何百倍も痛いんだ……っ)   
 
 「あぁっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ」  
 「大丈夫か、鈴」  
 「だい、じょうぶ……でも」  
 「ああ。もう少しこのままでいような」  
 「……うんっ」  
 
 カラダだけでなく心も繋がることが出来たのだと2人は今、実感していた。  
 
 「……えへへっ」  
 
 抱きしめた鈴の頭を優しく撫で、鈴はくすぐったそうに、そして幸せそうにそれを甘受する。  
 
 「もう動いても大丈夫……だと、思う」  
 「わかった……ゆっくり動かしていくから」  
 
 鈴の言葉を受け、一夏は少しずつ腰を前後に動かしていく。  
 
 鈴の痛みもだいぶ薄れ、今では快感が上回るようになり始めていた。  
 
 「あっ……も、もうちょっと、んっ、激しくしても、だいじょうっ、ぶ」  
 
 一夏は徐々に前後の振り幅を大きくし、スピードも上げていく。  
 
 「ああっ……ああっ……ん、あ……あぁあっ」  
 
 鈴の口腔奉仕で精を放つことが出来なかったことも大きいのだろう、膣口のキツさに加えてぬるりと、そしてあたたかさを保つ内部を直に感じ、一夏はそろそろ自制をきかせることができなくなっていた。  
 
 ただひたすらに己の快感を追い求め、腰を大きくグラインドさせて突いていく。  
 
 「っ……はっ、あんっ……ちょ、一夏っ、激し、すぎっ……!」  
 「はぁっ……はぁっ……」  
 
 鈴の声も届かないまま自身の性欲に素直になって突き続ける。  
 
 「やぁ、あぁん、だめっ、さっきイった、あふっ、ばかりっ、んっ、なのにいぃぃぃっ!」  
 「うっ……出るっ……!」  
 
 ドクン、ドクンと精が鈴の膣内に放たれるたびに彼女自身もまたビクンとカラダを震わせていた。  
 
 「あ、あ、あ……」  
 「はぁ、はぁ、はぁー……」  
 
 「はぁ、はぁ……あ、あんたねぇ……」  
 「わ、悪い……その、鈴が可愛すぎるからさ」  
 「まぁ、それなら許してやらないこともないわ……ん、あんっ」  
 「……すまん、正直1回じゃ満足出来ないみたいだ」  
 「……はぁー、あんたの気が済むまで相手してあげるわよ」  
 「それならお言葉に甘えて……ん?」  
 「あ、鍵……」  
 
 ようやく見つかった鍵を手錠にさし、鈴の戒めを解く。  
 
 「ふぅ……やっと自由になれたわ」  
 「これでしっかり抱きしめあえる……な」  
 「……ばか」  
 
 頬を赤らめてぷいと横を向く鈴。  
 先ほどまでの妖艶さとは違って新鮮な可愛らしさを感じ、一夏は思わずクスリ、と微笑むのだった。  
 
 ―――Fin―――  
 
 

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