「あむ……はぁ、はぁ……一夏……♪」
あたりにピチャピチャといやらしい音が響いている。 それは私の唇から発せられる卑猥なものに他ならなかった。
剥き出しになった両膝が床のタイルによりやや冷たい。 私は今愛する男の前に奴隷のようにひざまづきながら、一心不乱に頭を動かしていた。
ここはIS学園のとある一区画――。 授業終わりの休み時間を利用し、私達はこの廊下で逢瀬を重ねているのだ。
――だが周囲はザワザワと騒がしい。 人気が無いとはけっしていえないのが正直残念だが、私と一夏が愛し合うのには時と場所を選ばない。
私は周りの状況などどこ吹く風といった感じに長い髪を掻きあげていくと、咥えているペニスを更にジュルリと勢いよく吸い上げた。
「んんっ……! あぁ、おいしい……一夏……我が嫁のペニス……♪」
この場に鏡は無い。 だが自分の瞳が熱っぽいものを灯しているだろうことは疑いようも無かった。
まるで夏の日にアイスキャンディーにむしゃぶりつくよう、必死になって唇を動かしていく――そのたびに視界の端では銀色の髪が前後へと揺れていた。
あまりにジュポジュポと激しく、そして乱暴に吸い付いているためか、口の端からはダラダラと唾液が漏れ出すのが止まらない。
……なんとはしたないのだ。
少し前の軍人時代の私が知れば、自分のこんな淫らな姿に呆れ果てていたことだろう。
「ああ……ど、どうだきもちいいか、一夏? 私の口は?舌は? ……んんんっ!」
けれどそれでもこの卑猥な唇は止まらない。 止まることを知らないのだ。 むしろ愛する男のペニスということで、唇の肉は一層強くそれを締め上げていた。
常識、モラル、軍規――それらよりも優先すべき『愛の力』とやらに目覚めてしまったこのラウラ・ボーデヴィッヒにとっては、この奉仕の時間は何事にも変えがたい至福の瞬間なのだから……。
「はぁ、はぁ……ああ、一夏、た、たまらない……肉が舌の上でびくんびくん跳ねて……じゅるるるるるっ!!!」
もっと強く感じて欲しい。 そのためにほっぺをひょっとこのようにだらしなく窄め、おもいきりペニスを吸い上げる。
途端、舌の上で肉の塊がビクビクと震えた。 それは私の舌の上でまるで喜びの声をあげているようだった。
……喜んでくれている。 我が嫁、一夏がこの私の口の中で愛を感じてくれているのだ。
もはやいままでに何度となく繰り返してきた彼への口淫愛撫だが、私は自分が女としての幸福感に満たされているのを感じざるを得なかった。
「ん……嬉しい。 感じてくれているのだなお前は。 こんなにも私の口の中で……♪」
奴の反応が知りたくて上目遣いに見上げていく――そこには我が愛する嫁、一夏の気持ち良さそうな顔があった。
何やら手元で携帯電話を弄ってはいたが、それでも私の奉仕に感じてくれていることにはちがいない。
ああ、この一夏の顔を見るだけで私はあと五年は戦える……。
外気に晒されている裸体も冷えるどころか、ますます熱く火照っていくばかりで――。
やはりこのラウラ・ボーデヴィッヒの身体と心はもはやこの男、織斑一夏のためにのみ存在し、彼のためにのみ滅びることを許されるのだ……。
「ん……い、痛……ぅ……ッ!!!」
そしてそんな私の抑えきれない愛を、もちろん一夏の奴もとてもよく理解してくれている。
奴はひざまづくようにしてペニスに奉仕している私の頭をグっと掴むと、それを乱暴に引き寄せた。
長い髪がポニーテールのように引き絞られる――続けてペニスを喉の奥にまでグチュリと突き刺されると、私は呼吸器官を封じられたまま奴に更なるフェラチオ奉仕を望まれるのだ。
ああ、やはり私はこんなにも愛されている。 軍人として女として、こんなにも喜ばしいことはない……♪
「ん……わ、わかった……んっ、んっぷ♪んっぷ♪んっっぷ♪ こ、こうでいいか、いち……んぶぅぅぅぅっっっ!!!」
自分なりに精一杯やったつもりだった――けれども我が嫁はそれでも満足しなかったらしい。
更に容赦なく私の髪をグイ!と引き絞ってくると、プチプチと何本か抜け落ちる音を伴わせながら唇にズボズボとペニスを突き入れてくる。
恐らくもっと激しくしゃぶれという奴の意思表示なのだろう。 口でお願いしてくれればそれぐらいいくらでもシテやるというのに、この恥ずかしがり屋の我が嫁め……♪
「はぁ、はぁ……まったくわがままな男だなお前は……ん、んん……♪」
私は口の中を熱い唾液でドロリと湿らせていく――そしてより激しく頭を前後させていった……。
――ここ最近、一夏の奴は私とあまり会話をしてくれない。
たまにこうして奉仕させてもらってはいるが、基本、私から話しかけてもいきなり押し倒されてしまうかこうして口にペニスを捻じ込まれるかのどちらかだ。
もちろん伴侶の性欲を解消するのは妻の勤め。 私に不満などあろうはずもない。 ないのだが……。
どうも学園の一部の者の中には、私達の関係をただのセフレだとか奴隷とご主人様の関係だなどど囁く者もいるようなのだ。
けれどもそれは筋違いも甚だしい。 私と一夏の間に結ばれた深い愛情は最早言葉など必要ない領域にまで達しているのだ。
言わせたい者には言わせておけばいい。 私はこうして奴の性欲を身体で受け止め、それに喜びの声をあげていれば問題ない……。
「うっわ……ねぇねぇ、見てよあれ。 ほら……」
「やだ……ありえない……」
「あー、またラウラさんでしょ? よくやるよねーほんと……」
――だから何も気にすることはない。 この声もただの雑音だと思って聞いていればいいのだ。
一夏に奉仕している最中の私はとても幸せ。 ただそれだけをこの頭の中に満たしていればいい。
周りの喧騒など幾ばくも気にする必要はない。 ……ないはずなのだから。
「ほらほら、見てアレ……。 またあの女、織斑くんに好き勝手ヤってる……」
「げ、しかも今日は裸じゃん。 マジでどっか頭おかしいんじゃないのあのドイツ女……」
「あんなピチャピチャ音させながらしゃぶってさー。 マジただのビッチじゃん……」
「いいかげん飽きられてるって気づきなよねー。 玩具にされてんの、わかってないのかなー」
………………………。
恨めしい。 私と一夏の二人だけの世界のはずなのに、どうしてこんな雑音が耳に入ってきてしまうというのか……。
私はゆっくりと視線を周囲へと向けていく。 できればこのまま一夏の顔だけを視界に入れておきたかったが、どうやら神はそれを許してくれないようだ……。
そこに目に入ってきたのは私達を取り囲むようにいる白蟻の大群――。
ISの制服に身を包んでいなければとても人間とは思えない、私と一夏の関係をねたむ醜い女子共の姿だった。
「毎日毎日、よくやるよねーほんと。 こんなとこで全裸フェラとかよくできるわー、ひくひくードン引きー」
「命令されたんでしょ? ここでしゃぶれってさ。 あいつ、もう織斑くんのいいなりじゃん」
「だまされてることに気づいてないのかなー。 かわいそー……」
「マゾなんでしょ? 男に命令されるの好きそうじゃん、軍人だけにー(笑)」
「ていうかこんなとこで盛るなって。 先生来たらどうなるかわかってないの?あの子?」
……一部の女子生徒は的を得ている。 たしかにこんな場面をもし教官にでも見られてしまったら……。
IS学園の生徒が山ほど往来する『渡り廊下』。 そこで私は一夏の命令により全裸になり、奴にこうして口での奉仕をしている。
もちろん今は授業中などではない。 よくある授業中に二人だけ抜け出してキャッキャウフフというシチュエーションではないのがひどく残念だ。
午前中の授業が終わり、お昼休みである今は次の授業までまだたっぷりと時間がある。
それをいいことにあたりの教室からは私達の逢瀬を見学(あるいわ邪魔)しようと、たくさんの女子が遠巻きにこの光景を観賞していたというわけだ……。
「いくら織斑くんに言われたからってさー、普通こんなとこであんなことする? 私達に見せ付けてるつもりなのかなー……」
「いや、きっと頭弱いんだよあの子。 転校してきたときから乱暴でどっかおかしかったじゃん。 いきなり織斑くんのこと殴ってたし」
「あんなので専用機持ちだっていうんだからほんっと、タチ悪いよねー。 たかが便器のくせに……」
「ほんとほんと。 おりむーがあんなのに本気になるわけないのにねー♪ 身の程を知りなよねー♪」
…………………………。
周りのザワザワとした――あるいはヒソヒソといった心無い陰口が私の耳に届いてくる。
それは一般的な女子が聞いたりしたならば、心に深い傷を負っていてもおかしくないほどの誹謗中傷だっただろう……。
だがそれも私、ラウラ・ボーデヴィッヒの心には少しも響かない。
当たり前だ。 今私は愛する一夏と愛の逢瀬を重ねている真っ最中なのだから、周囲のくだらない雑音など脳に刻まれるわけがないのだ。
しかもその中傷が私達の仲を引き裂こうとするありもしないものならば、尚のこと。 馬鹿女共のくだらない妄想など取るに足らない。
――ああ、なるほど。 周りがこんな低俗な女ばかりでは、一夏が後から来た私を選ぶのは当然の結果だったというわけだな。
思わず私の口元には優越感を含んだ歪んだ笑みが浮かんでいた。
「ふふふ……なあ一夏、もっともっと見せ付けてやろう。 奴等に私達の仲を……♪」
私は周囲から突き刺さる視線などどこふく風――そのまま一夏のペニスからチュポンと唇を引き抜いていった。
できればこのまま口の中で射精させてやりたかったが、奴のを咥えていた興奮で下半身ももう我慢の限界にきていた。
そのままクルリと後ろを振り返り背中を向けていくと、廊下の床にペタンと両手を付いて犬のような格好になっていった。
「こ、このまま後ろから入れてくれ……。 もう充分濡れているから、お、奥まで一気に突き刺してもいいぞ……?」
奴のためならば恥ずかしいおねだりも余裕で口をついていく。 そしてその言葉通り、私はすでにヌラヌラと濡れそぼっている割れ目をグチュリと指で開いていった。
裸で四つん這いになりながらのオネダリはまさにメス犬そのもの――本来ならば一夏の顔を見ながら繋がりたいのだが、私は奴に愛される時はかならずこの格好になれと命令されている。
割れ目から漏れ落ちる粘液がダラリとふとももを垂れていくと、床のタイルに向かって流れ落ちる――それがまた周囲にいる女子共の嫉妬心を煽っていった……。
「うわー……入れてだって。 ここ廊下だよーラウラさーん?」
「あーあ、もうただのメスブタじゃん。 ビッチもいいとこだし……ドイツの女ってみんなああなのかな?」
「いやいや、それは差別っしょー。 あの子だけだよー、どう考えても」
……………………なんとでも言えばいい。
どんなにお前達が私達を妬もうと羨ましがろうと、我が嫁、織斑一夏の愛を受けられるのはこの私だ……け、ぇぇぇぇぇ……っ!!!
「んはあぁぁっ♪♪♪ ああ、い、一夏ぁ♪ あー、あー♪あー♪ほ、ほんとに奥までぇ……♪」
そう思った矢先、お腹の中をズグリと熱い杭が貫いてきた。 内臓を抉られるような感覚が膣に一気に響きわたる。
た、たしかに奥までとオネダリしたのは私だが、まさかほんとに突き刺してくるなんて……。
よほど待ちきれなかったのか、一夏は私のお尻の肉をガッチリと鷲づかみしてくると根元までその怒張を突き入れていたのだ。
「んっ……んっ!んっ!あぁっ! い、一夏……はあっ、あっ、あっ、あっ!!!」
身体と心が繋がった余韻に浸る間もなく、一夏はそのまま腰をガンガンと打ちつけてくる。 それが私の最近急に大きくなりだした尻とパンパンとぶつかり合う。
両手を床に付き四つんばいになった私がバックから犯される様は、それだけ見ればメスがただ犯されている様にしか見えないだろう……。
けれども私にはわかっている。 一夏は私を心底愛してくれているからこそ、こんなお互いの顔も見えないムードの無い行為でも繋がることを望むのだと……。
周りの女子達もさぞ羨ましいと思いつつこの光景を眺めていることだろう。 なにせ学園唯一の男が他の女と繋がっているのだ。
女としてここまで優越感を感じることはない……♪
「あーあ……ついに廊下で始めちゃったよ。 あの子、露出の気もあるのかなー?」
「私達に見られて興奮してるんでしょ? ああいうプライド高い女って、そういうマゾなとこありそうだし」
「織斑くんもあんなガバガバの便器使うことないのにねー。 私達の方が全然イイって言ってくれたのに……」
「あーそこはほら、やっぱり射精するためだけの穴ときもちよくなるのはまた別なんじゃない? いつでもどこでも出すだけ担当ってやつでしょ、あの子は」
「うわ、それ悲惨……なんか本気でかわいそうになってきたかも……」
パンパンパンパンパンパン!!!
「ひん♪ひん♪ひん♪ ああ、き、きもちいい……一夏、あ、愛しているぞ我が嫁、ああああああ♪♪♪」
周りの低俗な女子達の口からは、やはりくだらない嫉妬と侮蔑の言葉しか聞こえてこない。
だがそんな言葉など耳に入ってこないほどに、私の身体は膣を中心にとめどない快楽に襲われていた。
昔は性行為など女を堕落させるだけの行いだと思っていたが、今こうして犯されていると女の喜びとやらを感じずにはいられない。
この内臓ごとお腹を押し上げられるような感触がたまらない。 今この瞬間だけは私は軍人であることも忘れ、よがり狂うのみだ。
口からははしたなくもヨダレを垂らしまくると、それがピチャピチャと床に落ちていくのも気にしなくなっていた……。
「ねぇねぇおりむー♪ ちょっとお願いがあるんだけどー、いい?」
……そんな時だ。 ようやく盛り上がってきたというところで、どこぞの女子が私達に話しかけてくる声が聞こえた。
私は背後から突かれながらもなんとか顔を上げていく――するとそこには何やらのんびりとした雰囲気を醸し出しているタレ目の少女が立っていた。
「あのねあのねー、私この子に落書きしたいんだけどーダメー?」
……この状況で声をかけてこられるとはなかなか良い根性をしている。 それともただの馬鹿か?
その少女は手に太いマジックペンを持ちながら一夏に身体を寄せると、指でツンツンと奴をつつきながそうのたまっていた。
――我が嫁に許可無く甘えるその失礼極まりない態度に、私は少しイラつく。
すぐさまISを装着しこの女を殺してやろうかとも思ったが、ふたたび背後からズグリとペニスが突き入れられるとそれも叶わなかった。
「ねーねー、いいよね? ほら、やっぱりこの子っておりむーの便器だし、ちゃんと書いとかないとー♪」
「あ、それじゃ私も私もー織斑くん♪ なんか最近この子勘違いしてるでしょ? ちゃんとわからせてあげないとダメだと思うんだー?」
「私もなんかムラムラきちゃった〜♪ ねぇいいでしょ〜織斑く〜ん、私にも落書きさせて〜お〜ね〜が〜い〜♪」
…………………なんだこいつらは。
そののんびりとした少女が話しかけてくるやいなや、続けて一人、二人…と同じようにマジックペンを持った女子が駆け寄ってくる。
どうやら私に『落書き』とやらの行為をしたいらしいのだが――けれどもそんなことはともかく、その時の私の胸にはとめどない不快感が襲っていた。
なにがねぇねぇおねがい〜♪だ。 あまりの切り替えの早さに反吐が出そうだ。
さきほどは遠巻きであんなにも汚く私を罵っていたくせに、一夏の前では急に猫撫で声でオネダリかとは……このはしたないメス豚共が、恥を知れ!!!
せっかく一夏に抱かれている最中だというのに気分が害される。 やはりISを起動しこの女子共を駆逐してやろ、う……ん、んっ……あっ、あっ、あっ……♪
「んひ♪ んひ♪ んひいぃぃぃぃい♪ き、きもちいい、我が嫁のちんぽきもちいいい♪♪♪」
子宮の入り口のグチュリグチュリとペニスの先端が何度も当たってくる。 そのたびに私の口からは別人のように甘い喘ぎ声が漏れていた。
ん……ま、まあいいだろう。 今は一夏の愛を噛み締めている瞬間だから許してやる……運が良かったな、メス豚共!!!
それによくよく考えれば彼女達の心情もわからなくはないというものだ。
なにせこの学園に男子は一夏ただ一人だけ。 おまけに彼はこの私が伴侶に選ぶほどの男なのだから、この平々凡々な女共が嫉妬に狂いそういったくだらない行為に及びたい感情も理解できるのだ。
ならば私は一夏の夫としてこの女達の嫉妬の捌け口にならなければならないのだろう。 それがこのラウラ・ボーデヴィッ……お、織斑ラウラの勤めなのだ……。
「え……いいの? やったー織斑くん、さっすが太っ腹ー♪」
「やっぱり優しいねーおりむー♪ もうお股もユルユルのラウラさんもちゃーんと使ってあげてるしー♪」
「こんなさんざヤリまくってる便器より、私達のほうが全然イイって言ってくれたし」 「「「ねー♪」」」
………………………何の話だ?
……まあいい。 とにかく一夏はその女子達の申し出を快く了承したようだ。
本音を言えば私以外の女になど優しくしないで欲しいのだが、そこはさすができる男、我が嫁。
まったくしょうがない奴だ、ふふ、ふふふふ……♪
「えっへへー♪ それじゃあなに書こうかなー♪なに書こうかなー♪」
キュポン!と小気味良い音がすると、のんびりとした少女が私の身体にちょこんとペン先を乗せてくる。 どうやら顔に何やら描くつもりのようで、ほっぺのあたりが少しひんやりとするのを感じた。
続けてキュッキュッキューとマジックを滑らせる音が聞こえてくる――独特のシンナー臭が鼻に付いたが、今の私にはどうでもいいことだ……。
「んーっと……とりあえずこれは書かないとねー♪ あとはー……」
「ねーねー、こんなのどう?どうかな? やりすぎ?やりすぎかなー? まーべつにいっかー♪」
「うわ……あんたそれ、まさか油性? しかもそれでそんなこと書く?書いちゃう? ひっどー(笑)」
「えーひどくないよー。 だってほんとのことじゃん? この子が便器なのはー」
………………………。
キャピキャピと楽しそうな声――子悪魔達の嘲笑が聞こえていた。 天使ではなく、悪魔だ。
身体に感じたひんやりとした感触はほっぺだけではない。 続けて背中、二の腕、ふともも、お尻――私の裸体のいたるところにマジックが走らされる悪寒が走っていた。
それはまるで蛇が身体中を這い回っているようで、されている行為も相まって思わず鳥肌が立つほどだ。
おまけに気づくとそれを行っているのは三人どころではなかったのだ。 こんなものとても片手の指だけではおさまりきらない。
一人が描き始めるともう一人、更にもう一人と辺りから追加されていき、まるで私の裸体はエサに群がる蟻のような女子達によって、好き勝手に落書きをされていったのだ……。
「わー♪ ラウラさんって肌真っ白で綺麗だねー♪ これはグッチャグチャに汚しがいあるなー♪」
「ほんと、見た目は可愛いのにねー。 なんでこんなになっちゃんたんだろ、かわいそー……」
「あーマジむかつくこいつ。 便器代わりとはいえ織斑くんに抱かれて調子のってんじゃねーよ、っと……」
「専用機持ちだからって威張りすぎなんだよ冷徹女。 ……なにその目? 織斑くんにブヒブヒ言わされながら睨んだって全然怖くないし」
「…………ねぇ、これ撮った画像、どうやって掲示板に貼り付けれるサイズにできるんだっけ?」
女子達はキャピキャピと、あるいわ不平不満をタラタラとたらしながら私、ラウラ・ボーデヴィッヒという裸体キャンパスに嫉妬の矛先をぶつけていた。
それはまるで転校生に送る寄せ書きでも描くよう、とても楽しそうに――ドイツ勢の真っ白な素肌が彼女達の餌食となっていたのだ。
おまけに落書きするどさくさに紛れ、長い髪の毛を乱暴に引っ張ってきたり、背中を抓ったりしてくる者までいる始末。
あまつさえ携帯のカメラレンズを向けているモラルの無い者までいて、カシャカシャと響くシャッター音が私の身体を貫いていた。
…………これだから軍規に縛られたことの無い女など信用できないのだ。
欲望の歯止めの利かなさはまさに家畜同然――こんな平和ボケした女達のイジメになど誰が屈するものか。
私は身体中を弄ばれる痛みにジっと耐える。 そして自分の裸体に今現在も書き加えられている落書きに注視してみることにした。
『↑ドイツから来たムカツク女。 国帰れ。 二度とIS来るな』 『プライドの高い専用機持ち女、いまや織斑くんのセックス専用機(笑)』
『織斑くんに肉便器扱いされてることに気づかない、かわいそうな子』 『あんたがおりむーの嫁とかありえないからー♪』
『←フェラ専用の口。 汚いんで織斑くんとキスしないで下さい』 『さっさと捨てられろー♪』
『処女でもねーのに清純クールぶんな、ヤリマン』 『↓男咥えまくってるビッチまんこ』
『便器穴のくせに彼女とか勘違いしてんじゃねーよ、ブタ』 『ラウラ・ボーデブヒブヒ(^ω●)』
…………………………………………ひぐっ……。
……どうやら私はよほど女子達に怨まれていたらしい。 さすがの私もこれには驚きの感情を隠せなかった。
ほっぺ、背中、二の腕、ふともも、胸、お腹、お尻――。 私の身体のありとあらゆる場所に、そんな卑猥かつ低俗な落書きが無遠慮に描かれていたのだ。
特にそれは今も一夏とジュプジュプと繋がっている割れ目周辺に多く、矢印で示されたそれらの単語はおよそ不埒な女性器への誹謗中傷がほとんどを占めている。
いくら学園唯一の男を取られたからといって、ここまで女の嫉妬とは醜く形を成すものなのか……ま、まったく、やれやれだな。
――――大丈夫だ、問題ない。
私の軍隊で鍛え上げられた類まれなる精神力は、この程度の誹謗中傷などでは到底突き崩せるものではないのだ。
所詮こいつらは私と一夏の仲を妬み、こんなありもしない想像妄想夢想空想を私の裸体に描くことでそれを発散四散妄散偶散しているだけにすぎ……な……のだ、から……。
だ、だからこれはけっ……して、涙、などでは……な、泣いてなんて、ない……ないもん……ないんだから……ない……ううう、うー……。
「…………あー。 ねえねえみんな、ラウラさん泣いちゃったよー?」
「うわー……涙ボロボロ流してる。 ちょっとやりすぎちゃったかなぁ〜?」
「えーまさかまさか、それはないっしょー? あの専用機まで持ってるドイツ代表者様が号泣〜?」
「どうせ嘘泣きでしょ。 織斑くんに同情してもらいたいからってさー……うざ」
「ていうか、今さら泣いたって許さないからー。 あんた人間じゃないんだし、便器でしょ? なに涙なんか流してんのー?」
「いやいや、織斑くんのがきもちよくて泣いちゃったんだよねーラウラちゃーん? さっきまでバカみたいにアヘ顔晒してたしぃ?」
「「「「「キャハハハハハハハハッッッ!!!」」」」」
…………………ひぐっ、えぐっ…………。
私がいくらその瞳から大粒の涙を零そうと、悪魔達は私への中傷と蔑みを止めはしなかった。
むしろ長い髪の毛が何人もの手によって乱暴に掴みあげられ、せっかく我が嫁の為に整えた綺麗な髪形がグチャグチャに弄ばれていくのだ……。
そしてそこにトドメを刺すように、下半身に感じられていた温もりがふっと消え失せていった。
今この状況では私にとって唯一の希望――。 繋がっていた一夏のペニスが私の身体から抜かれていたのだ。
「ふえ……い、一夏……?」
私はおもわず背後を振り返る。 まるで子犬がすがる様な目をしていたことだろう。
もちろん辺りにはいまだ私の心を苛む女子共が取り囲んではいたが、それでもそこには愛する我が嫁がいると信じて…………だが。
「!? そ、そんな……いち……かぁぁ……」
そこにはすでに一夏の姿は無かった。 代わりにそこに存在していたのは、小悪魔な女子共の白い制服の群れだけ……。
――そして私は見つけてしまう。 その群れと群れの間にかすかに見えた、遠ざかっていく一夏の後ろ姿を……。
「あーあ、ついに捨てられちゃった。 ラウラさんかわいそー……」
「自業自得でしょ。 あんだけ好き勝手ヤラせてたら織斑くんも飽きるって」
「おまけに締まりも悪くなってたみたいだしねー♪ おりむーぜんぜんきもちよさそうじゃなかったよー?」
「…………ねぇ、こいつもう織斑くんのモノじゃないんだよね? ていうことはー」
「私達がもらっちゃってもー……いいのかなー?」
……………………ひ……ぃ……。
私を取り囲む女子共の低い声色――それを聞いた瞬間、私の背中がビクンと震えた。
――わかる。 この感覚を私は知っていた。 それは今までにも何度か感じたことのある身の危険に他ならなかった。
ドイツでの訓練時代でならまだしも、なぜこんな平和な国の一学園の廊下でこんな感覚を覚えなければいけないのか。
私は身体中が寒さ以外のもので震える悪寒に襲われながら、恐怖から逃れるように言葉を搾り出していた。
「きょ、許可しない……わ、私をイジメることは許可しない! これは決定事項だぁっ!!!」
私は瞳に涙をいっぱいに溜めながら叫ぶ――それはさぞ滑稽な姿だったのだろう。
周りにいる女子生徒達はある者はクスクスと嗤い、ある者はキャハハと下品な笑いをしながら徐々に私の裸体に手を伸ばしてくる。
腕、足、頭、髪の毛――それらをかばう様に身を縮めるが、全裸である私に抗うすべはもう残されてはいなかった……。
おわり