「箒!」  
彼が慌てて私に駆け寄る。  
「ら、乱暴な奴だな」  
「……ごめん、つい腰が動いて……本当に悪かった」  
「……私は大丈夫だが。お前の欲望を受け止めてやるとは言ったが、もう少し優しくしてほしいものだな」  
私はとがめるように言ったが、本当は口に出された余韻を楽しんでいた。  
恍惚のあまり、倒れてしまったのだ。  
倒れるほどではないが、疲労も確かにあった。  
「何をぼさっとしている?次はお前が私にする番だろう?」  
「え?まだ続けるのか?」  
その答えに私はムッとなる。  
「当然だ。まだまだ精を精を溜め込んでいるのだろ?さっき放ったばかりなのに、全然萎えていないではないか」  
私が剥き出しの一夏のイチモツを指差すと彼は慌てて股間を両手で覆う。  
「何度でも受け止めてやれるぞ、私は。口だけじゃなくて、私の膣の中で果ててしまっても構わんのだから」  
「いや、でも……」  
彼はなにか躊躇っている様子だった。  
私に無理矢理させた罪悪感が彼をそうさせているのだろうと思った。  
「今したことを悪かったと私に対して思うならば、誠心誠意私を慰めろ。私はお前にしてやったのだぞ?」  
彼はしばらく考える顔をした後、私をうつ伏せの状態から仰向けにした。  
私の頬をなで、頭を少し持ち上げると、髪を束ねていたリボンを外す。  
それは服を脱がされているような羞恥があった。  
自分が奉仕する時にはあまり感じなかったが、奉仕される側になるというのはとても緊張するものだった。  
私が愛すならともかく彼から愛されることには自信がないのだろう。  
スーツから露出している肩を触られた時、びくっと反応してしまった。  
私の動きに、彼が目を向けた。  
「優しくするから」  
真剣な顔で言う彼に私は真っ赤になりながらうなずく。  
彼が私のスーツを脱がし始める。  
正確には私がスーツを脱ぐのを彼に手伝ってもらっていた。  
スーツは頑丈にできているが伸縮自在なので、一見脱ぎにくそうにも思えるが、強引にやれば脱げてしまう。  
まず、頭と腕の部分から体を抜いて、スーツを少しずつずり下げていき、最後に股から落として感じに脱ぐのだが、この内のずり下げていく部分は、男を前にしてやると、一種のストリップのようだった。  
一夏の目に私はさぞ扇情的に見えたことだろう。  
胸が露出される時が近付いて、いよいよ不安は高まった。  
「……あれ?」  
彼がスーツをずり下げてくれているのだが、胸のところで引っ掛かってしまったらしい。  
 
無理もない。  
 
自慢ではないが、私の体の中でも豊かに肉がついている部位なのだ。  
「……それっ」  
「うわっ!」  
彼は強引に引き下ろしてしまったらしい。  
そのせいで、スーツから2つの膨らみが勢いよく飛び出した。  
急激な動きのせいで私の乳房も圧迫されて一瞬形を変え、それが刺激になって思わず声を出してしまう。  
「……すごいんだな、箒の」  
「……ッ!」  
彼の視線を強く感じて、私は胸を手で覆った。  
自慢のバストとはいえ、普段隠しているものを褒められても羞恥しか覚えない。  
私が奉仕してやった時も彼はこんな気持ちでいたのだろうか。  
「隠すなよ。誠心誠意慰めろって言ったくせに」  
彼が不満そうに言う。  
言葉を返せず、私は顔を反らす。  
ため息がもれるのが聞こえたが、彼はあきらめたわけではないようだった。  
覆い被さってきた彼が、私の反らした頬に口づけをした。  
大した刺激ではないが、私は微かにみじろぎしてしまう。  
さらに首を持ち上げさせ、そこへ舌を這わしていく。  
「箒のにおいがすごいぜ……」  
「んっ……」  
舐められている感触から、彼は私の首筋に浮いた汗を味わっているらしい。  
私が彼にしたように。  
ずっとスーツに覆われていた首は、汗にまみれていた。  
私はといえば、彼の優しい愛撫に、声を漏らさずにいられなかった。  
「おいしいぜ。箒の肌は甘い感じがするのに、汗はしょっぱいからな」  
一通り首を舐め終わると、彼はそんなことを言ってきた。  
私は「言うな」というものの、声は弱々しい。  
彼の言葉に悶絶していると、今度は肩を吸われる。  
甘く噛まれたと言うのが正しいか。  
「ほら、ここも」と言って彼は、胸を覆っている腕を持ち上げさせようとしている。  
私の脇を舐めようとしているのだ。  
私は反対の手で慎重に胸を覆い隠すと、左手を持ち上げる。  
すぐさま、割り開かれた私の左の脇に顔を埋めてくる。  
「いい匂いだ」  
「……っ!」  
またも私は言葉に悶え、その間に彼は脇へ舌を這わす。  
わざとらしく音を立てて、脇の汗を吸う。  
「あっ……あっ……ふふっ……」  
敏感なところを責められて声を漏らしてしまうが、同時にくすぐったさも覚えて私は笑ってしまう。  
彼も私の反応に気をよくしたのか、念入りに脇を責める。  
反対側に同じことをされる時にも、私は手で胸を隠したが、両脇を征服された頃には心のよろいが取れて、胸を解放する気分になった。  
私にそう思わせるこてが、彼の思惑だったのかもしれない。  
 
だが、そうしなければ、どのみち彼とは先に進めないのだ。  
私が胸から手をどけると、彼は再び驚いた顔をする。  
「……やっぱ、すげえな」  
先程呟いたことと同じセリフを口にする。  
「あんまり……、見ないで欲しい」  
私は真っ赤になって言う。  
気を許したとはいえ、羞恥がない訳ではない。  
「それは無理だな」  
彼は無遠慮に私の胸を眺め回す。  
それだけなのに、妙に気恥ずかしかった。  
今度は私が視姦される番なのだ。  
「大きい割りには形も整ってるよな。乳首も小さいし。汗で、エロさが倍増してる」  
彼が品定めをするようなコメントをする。  
私はただうつむく。  
「匂いはどうかな?」  
言って顔を胸元に近付けてくる。  
彼が匂いをかぐ、わざとらしい音が聞こえてきて、私の頬は羞恥で赤く染まる。  
「汗のにおいも強いけど……いや、むしろそれがいいな。味はどうかな?」  
「ひゃぁっ!?」  
いきなり乳首の辺りを舐められて声を上げてしまう。  
そのまま、胸に浮いた汗を舌で舐めとっていく。  
優しい愛撫だったが唐突だったので、予期しなかった快感に、声を抑えられない。  
「味も最高だな。肌の味と、汗の味が引き立たせ合ってて。ついでに感度もいいみたいだな」  
「……馬鹿。解説なんかするな……あっ……」  
今度は両手で私の胸ん揉みしだきながら、乳首を深くくわえこんだ。  
いやらしく音を立てて私の胸の頂きを舐めしゃぶる。  
片方だけではなく、両方の乳首にも同じ刺激を送ってくる。  
がっつくように私の胸に顔を埋め、しばらくは解放してくれそうになかった。  
「いやぁ……やあぁぁ……」  
私は自分でもびっくりするような甘い声を上げつつ、彼の愛撫を受け入れ、いつしか両腕で彼の頭を抱き寄せていた。  
こうしてみると、彼が赤ん坊のようにも思えた。  
赤ん坊―。  
言葉が頭の中で連想を生む。  
今まで考えもしなかったが、今の私達には可能性があるのをはっきりと意識した。  
そんなことを考えつつ、彼の愛撫を受けていると、まだ触られてもいない私のやわらかいところ―赤ん坊が出てくるところ―が潤うのを感じた。  
激しい口での奉仕は乳首が千切れるかと思うほど、深く吸われたのを最後に終わった。  
「弾力も申し分なしだな。乳首も良かったぞ。吸った方をはなさないって感じ」  
まだ快感の余韻に浸って息をついている私をよそに彼は呑気なコメントを口にしている。  
「ホントにエロいな、箒のおっぱいは」  
「ふん……この、おっぱい星人が」  
 
私が悪口なのかよく分からない言葉を口にするとと彼はきょとん、となった。  
私の胸を再度揉みしだくと真顔で言った。  
「……あっ」  
「この胸を前にしたら、誰でもおっぱい星人になるさ」  
「そう、……そうなのか?」  
よく分からないが、褒めてくれているらしい。  
悪い気はしなかった。  
「下の方もを見せてくれよ」  
言って、一夏はまたスーツを引き下ろしていく。  
私は胸をさらした時以上に緊張し、身構えた。  
「うわぁ、凄いな」」スーツをずり下げる手を止めて彼が声を上げた。  
私の腹に見とれているらしかった。  
「な、何が凄いと言うんだ?」  
「だって、この腹筋が……」  
「なっ!馬鹿にしているのか!」  
確かに、剣道で鍛えた私の肉体は同年代の女子と比べたら、筋肉質な部類に入るだろう。  
だが、あからさまにそう言われるのは、一人の女として許せなかった。  
「違うよ。箒の体、綺麗だなぁって思ったんだよ」  
彼は激昂した私に対してなだめるように言う。  
「私の体が……綺麗?」  
耳を疑う言葉だった。  
引き締まっているとは思うのだが、それは筋肉を伴うもので、女性らしい体の美しさではないと思っていた。  
故に完全には自分の体に自信を持つことはできなかった。  
「こんな筋肉ばかりの体が綺麗なわけが……」  
「そんなことないぜ。ばかりって訳じゃないし。丁度いい感じについてるよ、筋肉が」  
言いながら、私の腹の筋を指でなぞる。  
「んぁあ……」  
下腹部の方まで指を這わすと、私の腹に顔を近付け、へその辺りにちゅっ、と口付けた。  
そのまま指が辿った道を舌が通過する。  
「駄目ぇ……」  
私は身をくねらせた。  
性器に近い部分を舐められているせいか、やけに感じるのだった。  
私の反応に満足したのか、彼は私の腹を征服し終えると、「やっぱ汗の味もいいな」と言って、私に向き直った。  
「腹筋はついてた方がむしろいいな。派手に割れたりしたらビビるけど、箒のは丁度いい感じ」  
 
「言うな……」  
「胸が大きくても腹がだらしないと魅力半減だからな。お前は胸も腹もエロくて最高だよ。腰もすごいくびれてるし」  
言って、私の腰をきゅっと掴んだ。  
「あ……」  
頭に変な連想が浮かぶ。  
彼が、私を貫く時もこんな風だろうか―。  
「筋肉がついていた方がいい、なんてまるで男が好き、と言っているようなものではないか」  
心では彼の言葉を嬉しく思っているのに、素直になれずに茶化すように言ってしまう。  
「女の子は筋肉がついてた方がエロいんだよ」  
彼は真面目な顔で言い張る。  
「筋肉、といえば男だろう?確かに私は、男のようなものかもな」「馬鹿」  
頭をこつん、と軽く叩かれる。  
ついで、片方の手で乳房を揉みしだかれ、まう片方では誰にも触られたことのない、私の女の部分を撫でられた。  
「いやぁ……」  
「ちゃんと女の子だろ?」  
彼はまだ手を離さない。  
女の子の部分を触っているほうの手に私は自分の手を重ねた。  
「慰めてくれるか?」  
私が弱々しく言うと彼は笑ってうなずいた。  
 
 

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