「んぅ… といれ…」  
まだ肌寒い早朝 シャルロットは用を足すために目を覚ました。  
耳を澄ませば聞こえるのは微かな鳥の声だけで、他には物音ひとつ聞こえてこない。  
さすがに4時過ぎという時間では誰も起きていないのだろう。  
隣のベッドで眠っている一夏を起こさぬよう、そっとベッドを抜け出す。  
 
事を終え、ベッドに戻る前に一夏の様子を伺うとやはりぐっすり寝ている。  
いい夢でも見ているのだろうか?  
その寝顔は微笑んでるようにも見えた。  
「一夏の寝顔…可愛いなぁ…ふふ…」  
つい悪戯心が芽生え、頬を指でつついてしまう。  
すると少し笑みが増したようにも見える。よほど幸せな夢でも見ているのだろうか?  
シャルロットは寝顔に悪戯をする魅力から抜け出せずについつい続けてしまっていた。  
 
「一夏可愛いなぁ…毎朝早起きしてみようかな…ずっとこうしていたい」  
が、長く続けていると一夏を起こしてしまう可能性もあるためそうも言ってられない。  
「名残惜しいけど… でもあと30秒だけ…」  
やめなければ、とは思うが、指はなかなか止まってくれない。  
 
ところが、頬の上で円を描く様な指に変えたところで一夏が動いた。  
なんと指を咥えられてしまったのだ。  
「…!?ちょ、ちょっと一夏、やめ……ひっ、やっ、やめてぇ……!」  
指を抜こうにも、咥えられると同時に被さるように一夏の手が置かれている。  
抜けないこともないが、無理矢理に引っこ抜くと一夏を起こしそうで怖い。  
 
その間も指は依然として指は一夏の口の中にあり  
ちゅーちゅーと吸われたり、ぺろぺろと舐められたりと非常にくすぐったい。  
「ひゃ…ッッ!…い、いちかぁ…許してよぉ………〜〜〜!!」  
 
そこでようやく口の中から脱出ができた。  
ただ咥えられていただけなのに呼吸は乱れていた。  
 
「はぁ…はぁ………もう…一夏のえっち………あ…」  
 
そして改めて指を見て、ハッと気付いた。  
 
こ の 指 を 舐 め れ ば 間 接 キ ス に な る の で は な い か。  
 
周りには誰も止める者はいない。邪魔する者もいない。咎める者も当然いない。  
シャルロットの中でも満場一致である。  
『舐めてしまえ』  
「…ぁー…んむ…ん…ッ!…ん…んー…んふふ…」  
なぜだろうか?  
ただ一夏が舐めていたというだけで、非常な甘美な味に感じられた。  
自分の指であるというのに。  
 
赤ちゃんのように指を咥えていたのだが、いつしか視線は一夏の唇に釘付けになっていた。  
間接キスでは満足出来ない。…したい。直接、したい。  
「…一夏…本当によく寝てる。もうちょっとくらい悪戯をしても起きないよね。もうちょっとだけ…」  
 
 
一夏は指を咥えた際に横を向いてしまっていた。  
仰向けで寝ていれば…その…出来るのだが、これでは出来ない。  
「ぁ、そうだ。お布団の中に入って…… ……お布団に?!」  
自分で考えたことであるというのに、その突飛な考えに驚く。  
「一夏と…一緒のベッドに… …///」  
 
その、直接するための手段は目的化しまっていた。  
今度は迷いは見せずすぐに行動に移る。  
 
 
未だ起きる様子を全く見せない一夏だが、そっとベッドの上に乗る。  
ゆっくりと一夏と同じ布団に入ると、布団の中は一夏の匂いで包まれていた。  
「一夏の匂いだ…// えへへ…いちか…」  
ちょっとだけ腕を動かし、一夏の腕の中に潜り込む。  
「やっぱり男の子…おっきぃ…」  
ぴとっと一夏の胸にくっつく。きっと今 自分はとても頬の緩んだ顔をしていることだろう。  
心臓は激しく脈を打っているのに、彼の腕の中にいるだけで気分は落ち着いていくようだった。  
 
頬ずりもしちゃおう。腕を回してもいいかな?…下からちょっと回せないや。  
この腕の中で出来ることを色々と考えていたシャルロットだったが、ふと顔を上げると一夏の顔が目の前にあった。  
 
「……!!…そう、だった……まだ起きて…ない…よね…?……」  
5秒ほど間近で顔を見つめていたが、思い切ってゆっくりと顔を近づけていき…  
「…ん…」  
ほんの数秒にも満たない時間だが、一夏も寝ているが。  
それでもできた。…一夏とキス。できた。  
 
「…んんー…」  
「!?」  
起きた?!と思うと同時に一夏の腕が動き、シャルロットの背中に手が回る。  
気付いた時、シャルロットは一夏に抱きしめられていた。  
「…!?! い、いちか…?!……………?」  
 
「すー………すー………」  
……寝てる……  
この状況で一夏が起きたら、一夏はどう思うのだろうか。  
言い訳出来なさそう?でも一夏だし…  
そう思うと心なしか気が楽になる。  
そして、更に近くなった一夏の顔が目の前にあった。  
 
 
先程のキスの感触がまだ唇に残っている。  
相手は寝ているファーストキスだったけど、それでも幸せなものだった。  
…もっと、欲しい。  
欲望の赴くままに、目を閉じて再び一夏のそれに近づけ、押し当てる。  
短い間押し当て離したら、再び啄むように口づけた。  
自身でも気付かない間に腕は一夏の背中に回っていた。  
一夏に抱きしめ抱きしめられ、恋人のように抱き合って、甘えるようにキスをした。  
問題は相手が寝ているということだが。  
「んっ…ちゅ…ちゅ…一夏のばか……全然起きてくれない…ん…」  
目を覚ました方がいいのか、それとも覚まさないほうがいいのか。  
正確には目を覚まして一夏もしてくれたほうがいいのか、覚まさずに悪戯兼甘えるのを続けれた方がいいのか。  
そんなことを考えながらも、キスは続けていた。  
甘えてもいい、と言ったのは一夏だ。めいっぱい甘えてやる。  
 
「えへへ…好き…ちゅ……  …?」  
なんだろう。太ももに硬いものが当たっている感触がある。  
…ベルト?いやいや、一夏はパジャマだ。ベルトをつけるようなズボンじゃない。  
…ひざ?流石に一夏のヒザがそんな足の根元の辺りにあるわけが…  足  の  根  元  ?  
「〜〜〜〜〜ッッ?!!」  
もしかして…もしかしなくても……男の人の…あれ?  
な、なんで寝てるのに大きくなってるんだよ〜〜〜〜ッ!  
「一夏のえっち〜〜〜!…ひッ!」  
少し動いたせいでずれた。位置がずれた。  
どこにって?…僕の足の根元の所に。更に言えばすごく押してくる。  
「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!や、やだぁ… …!?」  
不幸は重なるもの、とは言うがこの事だろうか。  
一夏の片方の手が、僕のお尻を触ってる。まだ触れているだけなのが救いなのだが…  
「やっ…ん、や、ぃゃぁ…」  
なんとか抜け出そうと動くのだが、抜け出せない。動くたびに少し、お股にあるソレがズれて擦れて、  
その、なんていうか…そう、くすぐったい。異論は認めない。誰でもない自分に言い訳をする。  
 
そして、そうして動いていると一夏の体も反応したのだろうか。  
触れていた手が、逃さないかというように触れていた手に力が込められる。  
「ッ! やっ、お尻…!ひぅ……あっぁ……やぁ…」  
ゴムまりを握るようににぎにぎしてる。僕のお尻はおもちゃじゃないのに〜〜!  
そして更に体を動かすと、やっぱりこすれる。  
前からは一夏の硬い物で擦られ、後ろからはお尻を触られ… 今度こそ白状する。…気持ちいい。  
…だんだんどうでもよくなってきた。バカになっている自覚がある。堕落している自覚はある。  
それでも、相手は一夏なのだ。良くならないわけがないし、イヤじゃない。ならば楽しまなければ損ではないか。  
目の前にある一夏の顔。念のため頬を抓ってみる。…ちょっと顔をしかめただけ。よし寝てる。もう少しだけ寝ててね、一夏。  
先ほどまで繰り返していた工程を再び繰り返す。  
「ぁ…んっん…ッ!…ちゅ…ぁん…いちかぁ…ちゅ…や、ぁっぁ…」  
どうしようもなく幸せだった。好きな人に抱かれて(寝てるけど)、キスをして、触られるのはこんなに気持ちが良いものなのか。  
いつしか抜け出す為の動きは快感を貪る為の動きになっていた。  
もちろん、自身を慰めた経験はある。この手の快感は初めてというわけではない。  
が、今までやっていた一人遊びとは比べ物にならないくらい気持ちが良かった。  
…どうしてだろう?やっぱり一夏が相手だから?  
こうしているのは、されるのは、日課にしてしまいたいくらい気持ちが良かった。  
 
「ぁっ…ちゅ…んっ…ッ!好きぃ…いちかぁ…ぁ、ぁっ、や……ぁ…なん、か、くる…き、きちゃう……だ、めぇ……〜〜〜ッ!!」  
 
一人遊びの時には到達したことのない所まできてしまった。  
「はぁ…っ……はぁ……はぁ…いっ…ちゃった…?これが…?」  
一夏は未だ寝ているというのに、なんだか自身の自慰行為に一夏を使ってしまったようで軽く自己嫌悪する。  
それでも、  
「気持ち…良かった…」  
また悪戯、してみようかな…でも…  
「…今度は起きてる時にしようね。一夏。」  
いつしか一夏の拘束も弱まっており、少し力を込めれば軽く抜け出すことができた。  
 
「…うー…でもちょっとぬるぬるして気持ち悪い…シャワー浴びてこよ…」  
今更ではあるが、音を立てぬようにそっと更衣室に移動して行った。  
 
 
 
おまけ。  
シャワーを浴びていると、一夏の絶叫が聞こえる。  
「う、うわあああああああああああああああ!!」  
「!?」  
何事かと思い、急いでシャワーを止めてバスタオルだけ巻いて顔を出す。  
「ど、どうしたの一夏!?」  
「い、い、いや!!なんでもない!なんでもないから!気にせずシャワーを浴びていてくれ!」  
あっちを向いて、背を丸めている一夏。  
「そう、なの…?大丈夫?さっきの声は?」  
「い、いや!悪い夢をみたんだ!そう!ちょっと怖い夢でな!ははは…」  
「そ、そうなんだ?わかった。」  
どうにも様子がおかしいが、よっぽど怖い夢だったのだろうか。…一夏もかわいい所あるんだなぁ。  
 
 
 
「…夢精だなんて…どうしちまったんだ俺…」  
 

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