「…う」  
6月もそろそろ終盤に差し掛かるといった日の朝。  
夏場も近づき朝でも少しきつくなった日差しが瞼をやさしく焼き、甘い香りが鼻につく。  
 
 
俺、織斑一夏は常とは全く違う寝起きの不快感にあてられもう一度眠りの世界へ戻りたい欲求に駆られ、目を開くことを無駄と知りつつ拒んだ。  
いつもはこんな不快感など無いはずなのだが…。それも日ごろからレム睡眠とノンレム睡眠を計算して就寝時間を決めるからである。  
うん。健康一番!  
 
…そういえば、変な夢を見ていた気がする。…確かシャルルが…?  
あれ?  
まぁ思い出せないならしょうがないか…。  
 
 
もう一度寝ようと何度も試みるが、一度覚醒しだした意識は頑張っても引いてはくれないようで、今度こそ俺は瞼を開けた。  
 
 
「うわ、わ…!」  
「ん?…シャルル…?」  
 
だんだんとぼやけた意識がハッキリしたものに変わっていく。  
目の前にあるのは間違いなく、ルームメイトであり転校生であり実は女だったシャルルのものだった。  
 
「シャルル…何してんだ?」  
「え?えと…いや、あの……お、おはよう?一夏?」  
「あ、ああ。おはよう。」  
 
なんだ…その、そうだな。一度状況を整理しておこうと思う。  
俺はふつうに寝て起きたそのままだ。仰向けで寝ていて、目だけ開いている。顔はまだ枕に埋まってるし…。  
一方のシャルルというと、俺が目を開ける瞬間までベッドの端から身を乗り出して俺の目と鼻の先まで顔を近づけていた。今は驚いて、床に尻餅をついている。  
 
 
よく、考えると…アレ?なんか変な状況だな…それに、女の子特有のあの甘い香りが俺の脳を揺さぶってだんだん変な…  
 
 
「わああ、それ以上はストップだよ!一夏!」  
なぜ、俺の考えは誰これかまわず受信し放題なのか  
 
 
まあいま大事なのはそんなことではない。  
 
「あのさぁ、シャルル?」  
 
「な、なんだい?」  
起き上がり、冷静さを若干取り戻したようにシャル。  
「昨日ってさぁ…」  
ビクゥ!  
これが漫画だったら効果音がでかでかと表示されるような勢いでシャルルが飛び上がる  
「どうかしたか?」  
「う、ううん…つ、続けて」  
「いいけど大丈夫か?顔真っ青だぞ?」  
「だ、だいじょうぶだから…ね?」  
「ああ、じゃあ続けるが…」  
「うん」  
 
ずっと気にかかっていた事を口にする。  
「俺、昨日の夜の事が思い出せないんだけど、いつの間に寝たんだ?」  
と同時にできる限り記憶を遡ってみることにした。  
 
 
昨日も昨日で箒に斬られそうになったり、セシリアに振り回されかけたり、それを鈴に見られて甲龍を部分展開されそうになったり。  
クラスの女子にはちやほやされ、クラス外の女子にもちやほやされ。挙句の果てには、あのラウラ・ボーデヴィッヒに刺すような冷たい目で見られたり。と心労絶えない1日だった。  
 
 
「それ、最後以外ほとんど一夏が原因なんじゃ…?」  
記憶の中のシャルルがそうぼやく。  
「だけどなぁ…シャルル。さすがにISや真剣だすのはどうかと思わないか?」  
「ま、まぁね…みんなそれだけ熱中しちゃってるんだよ…」  
最後の方は小さすぎて聞き取れなかった。  
「ん?なんて?」  
「へ?い、いや、なんでもないよ?」  
そう言って笑みを投げかけてくる。やっぱり女と分かっていてもシャルルは優しいし、和むなぁ…。  
 
 
ちなみに、場所は第3アリーナの更衣室だ。  
学年別トーナメントのタッグをシャルルと組むことになり、俺の力量不足からシャルルの訓練を兼ねた俺の特訓をしている。なんだか申し訳ない…。  
「そんなこと言わないでよ一夏…。一夏は覚えるのも早くて容量がいいし、僕としても教えがいがあるよ。」  
「なんかそこまで言われると照れるなぁ…。」  
「それに、学年別トーナメントはなんとしても勝たなきゃならないしね…。」  
「そうだな…。」  
先の私闘で敗れたセシリアと鈴。  
あいつらの代わりでは無いが、ラウラには一矢報いたいところだ。俺自身の鬱憤も溜りに溜まっている。  
 
「勝とうね!一夏!」  
少し沈んでいた空気を、明るい声で晴らしてくれる。こういう気遣いができるところがシャルルの美点だと改めて感じた。  
「おう!そうだな!…うん…そうだよな…。」  
 
 
「そうだ!」  
そして、ある決意を胸に俺は叫んだのだった。  
「うぇ?ど、どうしたの?」  
俺の大声に驚いたのかシャルルはこっちを見たまま固まっている。  
「ああ、これから追加でISの特訓をしようと思ってな!」  
「一夏…。さっきも詰め込んでたけど大丈夫かい?今日はもう休んだほうが…」  
「シャルル…でも、俺まだまだお前の足も引っ張っちまうくらいなんだ。頼む…やらせてくれ!」  
「一夏…うん、わかったよ。じゃあ僕もつきあ」  
「いや、シャルルは先に部屋に戻っててくれ。」  
「一夏…?でも…」  
言いかけて、言葉を飲んだ。シャルルの目に映ったのは紛れもなく一つの決心をしたまっすぐな瞳だった。  
 
「わかった。先に帰ってお茶の支度でもして待ってるよ。」  
「おう。先にシャワー浴びてていいからな」  
「うん。じゃあそうさせてもらうね?」  
 
シャルルは気を回してくれたのか、足早に更衣室を去った。  
 
「よっし、もうひと頑張りだ!」  
 
こうして俺は追加の自主訓練をして、シャルルが待っているであろう自室へと戻ったのだが…  
 
だが…。  
 
 
「ここから先が思い出せん…。」  
確かに自室へ入ったところまでは憶えているのだが…。  
 
「あはは、そんなに無理に思い出さなくてもいいんじゃないかな?」  
「だけどなー…なんかこうもやもやが晴れないんだよなぁ…なんか重大なものをな…。うーーん」  
「じゅっ、重大っ!?え、と…」  
なぜか急に真っ赤になるシャルル。大丈夫か?  
…というか  
「俺って結局どうなったんだ?」  
「そ、それは」  
 
 
◇  
 
 
ああ、どうしようどうしよう…!  
幸い一夏は全然記憶が無いみたいだけど(…それもそうか)  
あんなの説明できる訳ないよ!  
ああ…本当は思い出したくもないけど、言い訳つけるのにも状況を整理しないとなぁ…はぁ…  
 
 
一夏と更衣室で別れ、シャルルは自室に到着し閉めた玄関ドアにそのまま体預けた。  
「はぁ…一夏、反則だよ…。あんな目見せられたらそりゃ誰だって…」  
はっ、とつい声に出してしまっていた自分に気づき無性に恥ずかしくなってくる。  
それにしても…  
「みんなが夢中になる理由。だんだん実感してくるなぁ…。」  
僕が女だと知り、だましていたにも関わらず僕の…いや、私の心配をしてくれた。  
タッグを組もうと他の子に迫られたときもやさしくフォローしてくれた。  
甘え方を知らなかった私に、それを教えてくれた。  
 
…こんなの、惚れちゃっても文句は言えないよ…  
 
 
そこまで思ってああ自分も相当だなと羞恥の念がせり上がってくる、シャワーをあびていったん切り替えよう。そう考え、シャワールームのドアノブを捻った。  
 
サアアァァ  
暖かい湯が僕の体をなぞっていく  
ふと備えつきの鏡に自分の体を見やる。  
(やっぱり、一夏は大きいほうが好みなんだよね…)  
 
一夏の姉である織斑先生は、それはそれは羨ましいものをお持ちになっている。副担任の山田先生もすごいが。そういえば、転校してすぐの実習。一夏の山田先生を見る目はそれはもう目も当てられなかった…。  
 
 
(たしか、揉んだら大きくなるんだっけ?)  
どこで拾ったか全くわからない(恐らく、学園の女子の世間話)怪しげな情報だが、まあ試してみる価値はある…のか?  
とりあえず、シャルルは自身の胸に手をやる。  
 
 
この時点で切り替えのはずが、頭が一夏の事でいっぱいということに彼女は気づいていなかった。  
 
 
あ、あわわ…。どうすればいいのか分からないよぉ…。  
自分の手によってむにゅむにゅと形を変えていく、自身の胸。  
鏡に映っているそれをシャルルはいつの間にか夢中で揉みまわしていた。  
 
「んっ…」  
熱っぽい吐息が口から漏れ始める  
うわ…僕…今すごくえっちだよ…。い、一夏が見たら喜ぶのかな…?な、なーんてね…。  
一夏の事を想い出すと、頭が彼の事でいっぱいになっていく  
 
「い、いちかぁ…んんっ…」  
ふるりと身を震わせる。もう頭の中は彼の事で覆い尽くされていた。  
あ…。我慢できないよ…。  
 
更なる快感を求めて、シャルルの手は自然と自身の股の間にのびていく。  
彼女とて一般的な女子高生。なにもこういう事をするのが初めてというわけでは無かった  
が  
一夏を思ってだと…全然違う…。  
 
シャルルの指が、彼女の女性たる部分を覆った  
「んんっ……ふぅ…」  
中指の中腹から手のひらを優しく擦りつけていく  
それだけでジワリと奥から液体が溢れた。  
 
ニチニチと徐々に粘着質な音を立ててそれでも、とめどなく溢れ続けてくる。  
そんな自分が原因な音にすらシャルルは昂っていく  
 
「ああっ、…止まらな…いっ、よ…」  
だんだんと声を抑えられなくなり、最後も見えてくる。どんな快楽が待っているのかという好奇心と、今の快感に飲まれ頭がおかしくなりそうだった。  
 
「ただいまぁ!あれ…?シャルル?ああ、そっか…シャワーか…ゆっくりはいってていいからなー!」  
 
その彼がなんと帰ってきてしまったのだ  
頭から冷水を浴びせられた気分だった。こんなタイミングで帰ってくるなんて…。  
い、いちかが…かえってきちゃった……どうしよぉ…  
しっかりと危機感は覚えるが、股に伸びた手の指は止まる所かその中に今まさに侵入を目論んでいた  
 
「ふっ……んんぅ…。はぁ…」  
快楽に流されそうになりながらなんとか声をシャルルはおさえる。だが変わらず指は止まらない…  
と言うよりは  
(…僕、止めようとしてない…)  
(待ってよ、まさか、壁一枚隔てて一夏がいるこの状況に興奮しちゃってるの?…いやらしすぎるよ…)  
などと自己嫌悪してみても、結局指を止めることはない  
それどころか普段よりも激しくかき回してしまう。  
 
幸いIS学園の寮の壁は厚く、防音もしっかりしている。さっきの一夏のように大声を出さなければ、外に聞こえることは無いだろう…でも。  
 
(もし聞こえちゃったらどうしよう…)  
 
などという緊張がより彼女の感性を鋭くしていく。  
 
「あ、ああっ…む、りだよぅ…こえ…でちゃううぅ…」  
空いている片方の手で必死に口を押える  
が、やはり興奮している事は明らかだった  
こうなったら一気に終わらせてしまおう、そうシャルルはスパートをかける  
 
「うぁ…はげし……あぁ…ん。んんぅぅ…」  
挿入した中指を激しく出し入れながら空いている指が陰核を擦りつける  
全く意図したことではないが、それがうまくいってしまう  
 
「い、いちかぁ…いいよ……うっ、あはっ」  
いつの間にか、シャルルの頭の中では彼と自分の妄想が出来上がっていた。  
 
「うぅん……いちかぁ…ん…もっとぉ…」  
言葉に合わせるように指使いが激しくなっていく  
もうシャルルにはゴールが見えていた  
 
「だめ…あ、い、いちかぁ!いっちゃう…んんっ、よぉ…いちかぁ!」  
「ちか…いちか…あ、んっ…いちかぁ!ああっ!」  
もう果てるまですぐそこだった、だがそこで  
 
「どうした!?シャルル!?」  
慌てたような貌の一夏がシャワールームに飛び込んできたのだ  
突然のことに固まる二人。止まらないシャルルの指。ぐちゅ、ぐちゅという淫靡な音。  
ちなみに、シャルルは入口の方を向くように床に座って思い切り股を広げていた  
 
「え?」  
「うあ…とまら、ないよぉ」  
「しゃる…」  
「あ、ああっ!!…ああああぁぁ…ふ、ぁぁ…」  
 
こうしてシャルルは絶頂を迎えた。  
シャルルから放たれた愛液は、シャワールームに飛び散り一夏の体にもすこし付着してしまった。  
一夏のシャルルという言葉はシャルル自身の快楽に浸った叫びにかき消され、一夏は茫然と立ち尽くしてしまう。  
 
「はぁ…はぁ…」  
シャルルは快感の余韻に浸り、上気した頬で方を上下させる。  
二人とも、冷静になれるまで相当な時間がかかった  
 
「へくちっ!」  
シャルルが急にくしゃみをしたことでようやく、一夏は正気を取り戻した。  
 
「おい!シャルル、体冷えて風邪ひいちまうぞ!」  
「あ、うん。ありがと…」  
状況がしっかり理解できずに二人はふつうにとりあってしまう。  
 
「じ、じゃあ、俺はこれで……」  
だんだん顔が赤くなってきた一夏がシャワールームを後にする。  
「…い、いちか」  
 
「な、なんだ!?」  
ビクッとからだを震わせ答える。  
「なんで、入ってきたの…?」  
冷静に考えれば、女であるシャルルのシャワー中に男である一夏が入ってくるのは、どう考えてもおかしい。  
 
「あ、あのさ。お前がずっと俺の名前呼んでるし…苦しそうな声、き、聞こえたから…でも…その。ごめん!」  
「え、…えと……」  
いきなり謝られて、シャルルどうしていいのかわからなくなってしまった。  
「い、一夏。ど、どうしてこっち向かないの!?」  
苦し紛れに言った一言がとんでもない地雷だと気づかない程には…  
 
一夏はまたしてもビクッとなり、やや前傾姿勢になる  
「ど、どうしたのかな?」  
それが気になって、ついシャルルは覗き込んでしまった。  
そして見た。  
 
一夏のズボンが不自然に盛り上がっているところを…  
 
「え、えーーと…シャルルさん?」  
顔だけ振り返ると、そこには女神のごとき慈愛に満ちた笑顔のシャルルがいた  
「一夏?」  
 
シャルルは自分のIS ラファール・リヴァイブ・カスタムUを腕だけ部分展開すると、それを一気に振りかぶったのだった。  
 
「いいちぃかああのぉ…」  
「え、ちょっ…まっt!!」  
「えっちぃぃぃいい!!」  
 
ドゴッ!!  
鈍い音が響き。脳天に思い切り金属のグーを食らった一夏はその場で意識を手放したのだった。  
 
「い、一夏が悪いんだよ?それは、心配してもらってうれしいんだけど…」  
というシャルルの声が最後に聞こえた気がした  
 
 
◆  
 
 
「ふむ、なるほど。おれは自主訓練で疲れて、部屋に戻ってそのまま意識を失うように寝たのか…」  
即席のシャルルの言い訳に素直にうなずく一夏。  
「そ、そうそう…。運ぶの大変だったんだよ?」  
ちなみにそれは事実。多少ロケーションが違うけどね…  
 
「そうか、それはすまなかった」  
「い、いや?謝られるようなことじゃないんだよ?」  
「おう。シャルルは優しいな!ありがとう。」  
「…う、うん。」  
 
言えない。口が裂けても昨夜の事は言えない。  
 
 
「そういえばさぁ」  
「なにかな?」  
これで、なんとかごまかせたらしい…よかった。  
ほっと一息つく。  
 
 
「なんか、体から嗅いだことがないけど体の中心がムズムズするようなにおいがするんだよな…それに肌も一部かぴかぴしてるし…」  
「…」  
 
みるみる内に、シャルルの笑顔が花開いていく。  
あれ?なんかわかんないけどデジャブな感じがしなくもないぞ?  
脳内のもう一人の俺が遠くから「逃げろ!」と叫んでいるような…  
 
「いいちぃかああのぉ…」  
「へ?」  
 
「えっちぃぃぃいい!!」  
 
ラファール・リヴァイブ・カスタムUの剛腕が2回目のうねりをあげ、一夏とシャルルの部屋は大幅な修繕がひつようになるのであった。  
 
 
 

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