鈴とのクラス対抗戦中に乱入してきた無人ISを一夏、鈴、セシリアでなんとか撃破できたものの、一夏は最後の一撃で気を失った
「っつ…ててっ」
目を覚ましたのは保健室のベッドの上だった
「ふん、目を覚ましたようだな」
ブツっと情報端末機の電源を落としながら言葉を続ける
「勝手に死なれては困るしな、お前は私のものなのだから」
「…そっか、心配してくれてたんだな、千冬姉ありがとう、それとごめんな」
無理に起き上がろうとするが、一夏の身体は軽く悲鳴をあげた
「まだ…無理をするな、では私は仕事に戻る。山田先生に怒られるのは嫌なのでな」
一夏のベッドから立ち上る前に一夏のおでこにキスをする
「これはまじないだ、ではな」
千冬はもっと一夏のそばに居たいのだが、他の生徒や教員に見られたらどんな
事になるか容易に想像がついたのかパタパタと保健室から出ていった
後から聞いた話だと無人ISが乱入した時に千冬はコーヒーに塩を入れて混ぜていたらしい。それを指摘した真耶に一気飲みをさせた事も…
千冬が去った後、鈴、セシリア、箒が駆け足で入ってきた。よほど心配してい
たのか三人の瞳は少し赤みがかかっていた。
「心配してくいれて、ありがとな、みんな」
三人の顔を見ながら一夏は伝えるのだが
「…一夏さん、先程までどなたかいらっしゃいましたか」
少し悔しそうにセシリアが尋ねる
「えっ?さっきまでは千冬姉が居たぜ、どうした?」
それを聞いた途端、三人ははぁっとため息をはいた
「あの人には敵いませんわねぇ」
「なんだかんだ言ってモニター室にいた時一夏の事を心配してたしな」
「わたしもあの人に勝てる気しないわ」
お手上げのポーズを取る三人、そしてそれぞれが
「あの人には敗けない!!」
そういって、一夏に挨拶をして保健室を出ていく三人だった
「もう、大丈夫か」
ドア開けると千冬はすぐに問いかける
「あぁ、まだ少しあちこち痛むけどもう―――」
パタンと入口のドアを閉めた瞬間に千冬は一夏に抱き着く
「ち…千冬姉……そっか…ありがとな」
一夏は千冬の背中に手を回し、後ろからポンポンと千冬の頭をなでる
暫く無言のまま二人は抱き合う。
「いち…か…」
瞼をそっと閉じ、唇を前に出す
「千冬姉…ほんと、ごめんな…」
そういって一夏は優しくキスをする
「…今夜で最後の寮長室だから…優しくしろよ」
それに初めてだしなと照れながらベッドに押倒した時に千冬に告げられる
「えっ、最後?なんでっ?それにはじめ―――」
「明日にはお前の部屋が用意できる、なにしろ二人目の男がくるからな」
暫くは面倒をみてやれとはぐらかす様に伝える
「男っ!!…わかったよ」
一夏は今の環境にこれ以上ない程、幸せを感じていた。実家にいた時は月に二〜三回ぐらいしか千冬は帰ってこず少しの会話をした後、すぐ家を出ていく。
大好きな姉…大好きな人とは少しだけしか逢えなかった。
しかし千冬も同じ事を思っていた。
だからこそ、今の環境、生活がとても大事だからこそ一分、一秒大切に噛みしめていた
「…まぁ、そんな辛気臭い顔をするな一夏…」
もう逢えないわけではないんだから、毎日逢えるのだからなと微笑む
「そうだな…だからこそ、今を大事にしていかないとな」
今はもう二人とも生まれたままの姿、こうして二人は最後の寮長室の甘い夜を
噛みしめて過ごしていった。