一夏の眠りは割と浅い。  
 千冬を姉に持ち、幼いころ割と厳しく剣の道を志したが故か、はたまた最近のただれた生活の故か。  
 正しく剣士であるならば自分の寝こみを襲おうと迫る悪漢の存在に気付くためにあるだろうその感覚はしかし、  
一夏の場合別のことに使われる。  
 
 
「んしょんしょ」  
「……何してるんです、束さん?」  
 
 それはたとえば、寝ている自分の手足をベッドに縛り付けている幼馴染の姉に気付くことだったりとか。  
 
 
「あ、ごめんねいっくん。起こしちゃった?」  
「いえ、起きたのはいいんですけど……話してる間も変わらず俺の手足を縛ろうとするのはなぜですか」  
 
 篠ノ之束は神出鬼没なおねーさんだ。  
 いて欲しいと思うときにはおらず、出てきたらいやだなーと思うときに出てきて場を引っ掻き回す天性のトラブルメーカーであり、その影響力たるや世界レベル。  
 ISを作り出して世界にもたらした混乱は計り知れない。  
 だが、一夏にとってみれば時々ちょっと話が通じないだけで至って普通のお姉さんという認識であったりもする。  
 まあ、つい先日その認識も少々変わったわけだが。  
 
「えー、だっていっくん……好き放題させておくと、束さんの勝ち目がないんだもん」  
 
 目元を赤く染めて恥らいながらそう囁くさまは乙女そのもの。  
 しかしながらいつものようにメカウサ耳を頭に不思議の国のアリスっぽい恰好で人の胸の上に馬乗りになりながら言われても清楚さなどかけらも感じられない。  
 この人にそんなものを望むのは無駄だとわかっているが。  
 
 そう、この人に望むべきは。  
 
「こんなことしても無駄だと思いますけど。また返り討ちにあうだけですよ?」  
「そっ、そういうこと言わないでよっ!」  
 
 こうして、ベッドの上では一夏にもてあそばれる姿である。  
 
 束が一夏に夜這いをかけて誘惑し、お姉さんぶってリードしようとするも圧倒的な経験の差によってあっさり逆転され、こってりと泣かされて快楽を仕込まれたのは数日前のこと。  
 その後しばらく姿を見せないと思っていたら、今日またもやこうして夜這いに近いことをかけてきた人類屈指の天才は、実のところあまり学習能力がないのではなかろうか。  
 
「ふ、ふっふーん。そうやって余裕ぶってられるのも今のうちだからね、いっくん。  
 いかにいっくんがあまたの女の子を泣かせてきたイケメンであろうとも! ほとんど動けないで上を取られた状態から逆転することは不可能だと、束さんの頭脳が囁いているのだー!」  
「へー、そうですか」  
 
 その頭脳とやらは、この前「イクときはちゃんとイクと宣言する」「お掃除フェラは基本」「その無駄に大きい胸は奉仕の為に育ったものだ」など数々の約束事を子宮経由で躾けこまれたドピンク色の脳細胞ではないのだろうか。  
 そんなことを思いながらも一夏は口には出さず、ふんすふんすと鼻息荒く服をはだけて胸を出し、さっそくパイズリで搾り取ろうと一夏の下半身に体を沈めていくのを見て、少し楽しんでみることにした。  
 
 
◇◆◇  
 
 
「ひゃっ、やぁ……っ! あひぃぃぃんっ! い、いっ……くんっ。ご、ごえんなさい……ゆ、ゆるひへぇ……っ!」  
「ダメです」  
「ひゃふっ、い、イクッ! またイク……っ」  
 
 しばらくして。  
 そこには、手足の拘束こそ解かれたものの相変わらずベッドに身を横たえる一夏と、その体の上で汗にまみれた全裸の肉体を晒し、呂律のまわらない口調で一夏に許しを請う束がいた。  
 
 二人の体勢自体は先ほどまでと大して変わらない。  
 しかし束の口元から胸元にかけては一夏が吐き出した精液が大量にこびりつき、胸の先の乳首はビンビンに立ち上がり、一夏のペニスを深々と咥えこんだ秘裂は自身からあふれる愛液と一夏の精液によって既にドロドロになっていた。  
 
 束も、頑張りはしたのだ。  
 一夏とするのが二度目とは思えないほどの技巧を身に付けパイズリで搾り取ったあたりまでは良かったのだが、その後は既に体に覚え込まされた精液の匂いと味に誘われて体がうずき、気付けば一夏に言われるがままに服を脱ぎ、ペニスを受け入れていた。  
 
 一夏の唇をむさぼって気を紛らわせようとしても無駄なこと。  
 絡め捕られた舌と触れ合う肌の感触が高めた官能が脳髄を貫いて最初の絶頂を決めさせられ、この時点で至極あっさりと縄抜けをして自由になった両手に体を起こされ、束自身の体重を一夏の亀頭と子宮で受け止めさせられる段に至り、勝負は決していた。  
 
 
「や、やぁ……もう、もう無理ぃ……っ」  
「何言ってるんですか束さん。そっちから誘ってきたんだから、もっと頑張ってくれなきゃ」  
 
 ずん、と一夏の腰が突き上げられ、束の最奥が衝撃を受け止めて震える。  
 その振動はすべて快感となって背骨を上り、頭を狂わす悦びと喉から迸る喘ぎ声へと変換される。  
 
 一夏の指が束の体の感触を楽しむように這いまわされた。  
 さっきまで散々いじり倒して少しは満足したのか、下から見上げてもなお目立つ巨乳には軽くしか触れず、脇を滑って横腹をなぞり、へそのすぼまりに指を入れてくすぐってくる。  
 
「ひゃぁっ、やめ、やめて! ダメなの! 束さん……もうなにされても感じちゃうからぁ……っ!」  
「わかってますよ、そんなこと。……それにしても本当にいい身体してますよね、束さん。不摂生してるでしょうに、胸が大きくて尻と太腿もこんなにむっちりしてるのに、おなかはきゅっと締まってるし」  
 
 一夏の指先が精液のしたたる胸を下から支えて揺らし、腰回りをマッサージするように揉みこみ、腹筋の弾力を確かめるように指で突いてくる。  
 その間もペニスで貫かれた束は子宮を人質に取られたも同じ。  
 抵抗の余地はなく、快感が走るたびにあえぎ声を上げて一夏の耳を楽しませ、羞恥に身を焦がす以外のことはできないのだ。  
 
 
 ……実のところ、一夏はこうして束の体を触っているうちは手以外の体を動かしておらず、代わりに束が無意識のうちにくいくいと腰を揺らしていたりするのだが。  
 今も失神しそうなほどいっぱいいっぱいになっている束には言わぬが花だろう。  
 体以上に下半身が素直だとこうなってしまうという悪例だ。  
 
「よいしょっ」  
「ひぃあっ! あ、当たるところ変わってぇぇええ!? そ、それにいっくん、ま……またおっぱいなの?」  
 
 束の無意識の痴態を楽しんだのち、一夏は腹筋を使って上半身を起こす。  
 対面座位に近い形となると、ほぼ同じ体格の束とは位置関係的にちょうどその胸が一夏の顔の高さにくるので、遠慮なく谷間に顔を埋める。  
 自分が放った精液の匂いは確かにするが、それ以上に甘酸っぱい束の汗のにおいと、かすかに甘い匂いが混じっている気がするのはなぜだろう。  
 
「すぅーっ」  
「あぁ……嗅がれてる、いっくんに……束さんの匂い、嗅がれちゃってるよう」  
 
 もはやめそめそと泣き言をいうだけで従順に胸を捧げるしかなくなった束である。  
 乳首を口に含み、根元のあたりを甘噛みしたり舌で先端を弾いたりするとその度に先ほどまでと変わらない見事な喘ぎ声を聞かせてくれるので一夏としては満足なのだが、なんかもはや諦めきった感がある。  
 というか、さわさわと一夏の髪をいとおしげに撫でてくるあたり、口調とは裏腹に思いっきり楽しんでもいるのだろう。  
 ちらりと胸元から見上げた表情は、涙をこぼして快感に蕩けながら、しかしはっきりと嬉しげな笑みを浮かべているし。  
 
 
 では仕方ない。  
 とっておきの刺激を与えて差し上げよう。  
 
「てなわけで、行くよ。束さん」  
「へ? イクって、もう何度も……おふぅっ!?」  
 
 口で胸をしゃぶりながら左手で反対の胸を揉みしだき、体を抱きしめている……と見せかけて蛇のように束の背を這い、背骨にそって体を下った右手の指が、束の菊穴を深く貫いた。  
 さすがにそう何度も経験があるわけでもない束のこと。こうして徹底的に快楽攻めにされることに慣れてもいなければ、二穴攻めなど軽くすら経験したことが無い。  
 
「や、やああああっ! いっくん、そこ違う! 違うよぉ!」  
「違わないですよ、束さん。おっぱいまでぶるぶる震えてるし、膣内は全部絞り出そうと吸い付いてくるし、アナルだって指を離してくれないじゃないですか。  
 ……束さんってアナルも好きだったんですね、覚えておかなきゃ」  
「やめっ、許して! もうこれ以上気持ちよくしないでぇ!」  
 
 意識が朦朧としてきたのだろう。  
 もはや自分が感じていることを隠すことすら思いもよらず、束の体は千々に乱れる心と裏腹に徹底的に一夏へと奉仕していく。  
 尻穴の中でくいと曲げた指がつるりとした腸壁をなぞったことで、ますますしびれるほどの快感をもらい。  
 
「くぅ……ッ、出る!」  
「――ッ!!!」  
 
 胸を突出し一夏の顔を谷間に埋め、アナルは根元まで迎え入れた指に媚び、膣内での容赦ない射精は一滴残らず子宮で受け止めたのだった。  
 
 
 
 
「ぁ……ふぁ?」  
「あ、束さん。気づいたんだ」  
 
 一夏に徹底的に攻められて絶頂の果てで意識を失った束。  
 目覚めてすぐにそこまでの事情を理解して、同時に自分の顔を覗き込む一夏の優しい笑顔にほんわかと胸を温かくさせ、すぐに恐ろしいことに気が付いた。  
 
 絶頂失神した束を、一夏は気遣ってくれたのだろう。  
 いつの間にやらシーツは変えられているし、身体もある程度拭き清められたらしく不快なべたつきなどはない。  
 それはつまり意識の内身体中余すところなく拭きまわられたということであり羞恥を感じないでもないが、そんなことはどうでもいい。  
 
 今一番気にするべきは、一夏の姿。  
 さっきまで、束に寝込みを襲われたせいで寝間着を体にひっかけていたのだが、今や完全な全裸。  
 束と同じ、ある意味完全武装の体勢である。  
 
「い、いっくん……まだ、する?」  
「んー、そうですねえ」  
 
 しかしながら、そんな一夏が自分の体に覆いかぶさってくるとついドキドキしてしまうのが束の困ったところ。  
 いまだたくましくそり返るものがちらちらと目につくこともあって、やめてと言おうとしたはずが誘うような言葉になってしまった。  
 
「……束さん、ほら足」  
「ふぇ……?」  
 
 声に期待の色が籠っていることに気付いて気をよくしたか、一夏はにんまりと笑い、束の足を持ち上げた。  
 膝の裏に手を入れてすくい上げ、束の体の柔らかさを生かして膝が胸の横へ来るように。  
 いわゆるM字開脚というやつでかなり恥ずかしいのだが、今度はこの体勢でするつもりなのだろうか。  
 
 だがしかし、一夏のドSっぷりはとどまるところを知らない。  
 
「あとは自分で足抱えててくださいね」  
「え……えぇ!?」  
 
 一夏が望んだのは、このまま束が自分で膝を掴んで足を開いたままにすること。  
 ただでさえ恥ずかしいM字開脚を自分の意思で保ち続けろと、そういっているのだ。  
 ぱっと手を離され、既にほとんど腰が抜けていて力が入らず元に戻っていこうとする足を咄嗟に掴む束。  
 それは不安定な体勢を何とか支えようとする行動だったか、あるいはここで足を離してしまえばこの後一夏にしてもらえなくなると考えての反射であったか。  
 
 いずれにせよ、ベッドの上でわずかに背を丸め、膝の裏に回した手で大きく足を開く束の姿が、そこにはあった。  
 
 隠すすべもなくさらされる秘裂と菊穴。  
 さっきまで散々に弄ばれた束の一番感じる部分だ。  
 しかし、これは。  
 
「すごいな、この体勢。セックス以外何もできそうにないですね?」  
「はうっ!? ぅうう〜」  
 
 まさに思っていた通りのことを指摘され、束はますます赤くなる。  
 しかしながら一夏の命令に従ってしまう身体は秘裂も顔も隠しようがなく、赤く染まる頬に突き刺さる視線すら心地よく感じる被虐の快感に酔ってしまいそうで。  
 
 
「それじゃ、しましょうか。今度は、たっぷり愛してあげますよ」  
「あ、いっくん……んっ」  
 
 そんなときに限って優しく囁き、姫君にするかのように甘い口付けをくれるのだから本当にずるいと思う。  
 心の中で一夏をなじりながら、膣襞をかき分け挿入ってくる一夏のペニスの熱さに再び胸を焦がす束なのであった。  
 
 
 
 
「はぁーっ……はぁーっ……。んっ、ひゃ……めぇ……」  
 
 一夏の部屋に響く音は三種類。  
 ぬちぐちゅ、と湿った水音。  
 時折ぱんぱんと響く柔らかい何かを打ち付ける音。  
 そして弱々しくかすれる束の喘ぎ声のみであった。  
 
 
 あれからどれだけされたことだろう。  
 気持ちよくはあったものの気持ち良すぎて抵抗もできず、膣内射精をされた回数はもはや覚えておらず、合間で気分転換のようにお掃除フェラをさせられたこと、アナルを奥まで穿り返されたこともあった。  
 一度はお姫様抱っこで風呂場へ連れて行かれて体を洗われた上に湯船の中で繋がるはめになり、浴室に高らかに自分の鳴き声を反響させられた。  
 なんだかやたらと絶倫な今日の一夏はそれでもなお収まらず、写真撮影プレイまでさせられた。  
 
 どういうことかというと、「一夏の携帯電話のカメラで」「後ろから一夏に胸を掴まれて」「寄せて上げてなどさんざ胸を好きに弄ばれつつ」「そんな自分のバストアップを自分で撮影する」というかなり倒錯した羞恥プレイである。  
 友人の弟の将来が心配でしょうがない。  
 
 その結果取られた写真はどれもがすさまじいものだった。  
 「一夏の手で胸を寄せて上げられ恥らう顔」などは序の口。  
 「胸を好き放題揉みしだかれて唇をかんで耐える」写真は涙目になっているところがポイント高かったらしく一層一夏を興奮させてしまった。  
 「乳首を摘ままれてついに口を開いて喘ぎ声を漏らした」姿は引っ張られて伸びた胸の形が大層卑猥で。  
 「首筋にキスマークをつけられながら舌をだらりと垂らす蕩け顔」はとてもではないが人に見せられるような表情ではなく。  
 「舌で耳穴を犯され仰け反って絶頂した」写真は震える体に釣られて跳ねる巨乳の動きまでも感じられるほどの、生涯類を見ないレベルの恥ずかしい写真ばかりになった。  
 
 ちなみに補足しておくと、こんなに恥ずかしい有様をさらすことになったのは紛れもなく一夏のせいだが、これら数々のシャッターチャンスを見事捕えたのは束自身である。  
 なんだかんだ言って楽しんでいるのだからお互いさまと言わざるを得ない。  
 
 
 もっとも、そのことに気付いて気をよくした一夏に、目の前でこれらの写真を突きつけられながらバックでねっちりと子宮を小突き回され、あまりの恥ずかしさにちょっと後悔したのだが。  
 
 
 
 
「い……いっくん……待って、ちょっと、あんっ! あれ……見てぇ……っ」  
「あれ?」  
 
 いい加減当人たちも何度目になるのかわからなくなってきたが、一夏に組み伏せられて好き放題貪られている束が、一夏に声をかける。  
 一夏としては、既に喘ぎ声すらほとんどでなくなってきたからさすがにマズイかなーと思いつつ、それでも極上の体から離れ難くいろいろしていたのだが、力を振り絞って声をかけてくるとは、一体なんだろうか。  
 不思議に思い、束が震える手で指さす方に視線を向ける。  
 こちらの気を逸らすための嘘だったらまたおしおきする口実になるな、などと黒いことを考えつつ目をやったのは、窓際。  
 カーテンこそ閉めてあるが、先ほど羞恥プレイで窓に押し付けて楽しみもしたベランダ側。  
 
 
 そこには何と、朝日に照らされた青空が!  
 
 
「……あー」  
「も……もう、朝だよぅ……」  
 
 どうやら、あまりに興が乗って徹夜コースであったらしい。  
 若い男女の淫臭煙る室内の空気を浄化するように、カーテンの隙間から清らかな太陽の光が部屋に差す。  
 
 
「だから、ね……そろそろ終わろう?」  
「んー、そうですね」  
 
 さすがにそろそろ潮時か。  
 今日は学校こそないが、だからこそ誰かが部屋を訪ねてくるかもしれないし。  
 そう思って、一夏はさっきからずっと覆いかぶさった姿勢のまま束ににっこりと微笑んで。  
 
 
「じゃ、最後にもう一回」  
「そ、そんなああああああ……あんっ」  
 
 
 窓辺を指さしていた束の手を恋人つなぎでからめ捕り、問答無用の最終ラウンドで天国へ連れて行ってあげましたとさ。  
 

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