拘置所……。
「何しに来た、裏切り者」
「差し入れだよ。食えよ。千冬姉の大好物だろ」
「誰が貴様なんかの……」
「いいから食えよ。ろくなもん食ってないんだろ」
「……もらってやる」
一夏は買ってきたケーキの箱を千冬に差し出した。
千冬は仏頂面を崩さず、ショートケーキ、チーズケーキを平らげていく。
「水も飲まずにそんなにがっついて、胸やけするぞ」
「うるさい」
食べ終わると、二人は改めて向き合った。
「もうIS学園は廃校だ。セシリアは帰国したし、みんなもよそへ行ってしまった。ISの復権は100%ない。
無駄な抵抗はやめて、白騎士事件のことを全部吐いてしまえば、楽になるぞ」
「中途半端にやったのが失敗だった。あの時、街一つくらい吹き飛ばしておけば」
「できもしないこと、過ぎたことを悔やむのはやめろ。教え子たちに合わせる顔がないぞ」
「何もかも、もう遅い。私は歪んでしまった。弟のお前や、教え子までに裏切られるほどに」
「そうか……俺の心配はいらない。国から補助金とかなんとかで、早い話慰謝料をもらったよ。
普通の高校に転入できることになった。そこにも寮があるから飯の心配はない。何とかやってくよ」
「……ケーキ、うまかったぞ。ありがとう、一夏」
面会時間は終わった。
それが、一夏が千冬と話した最後となった。