「織斑く・ん、山田先生が呼んでる――きゃあっ!」  
 俺が振り向くのと、女の子――クラスメイトの鷹月さん――が悲鳴を上げるのとは、殆ど同時だった。  
 厳密に言えば俺の振り返るほうが若干早かったかも知れない。  
 冬の風は時としてささやかな……いや、大それたイタズラをする。  
 俺の目の前で、鷹月さんのスカートが風に煽られ盛大にめくれ上がった。下腹部を覆うレース付きの白い  
布地がハッキリと見えた。たいそう慌てた様子で鷹月さんはスカートの裾を押さえ、俺を見た。完熟トマト  
も平謝りするんじゃないかと思ってしまうほど真っ赤な顔をしている。心なしかうっすら涙を浮かべている  
ようにも見える。  
 じっと俺を見据える鷹月さん。眼を逸らせずにいる俺。  
 無言のままどれくらいそうしていただろう。鷹月さんが蚊の鳴くような声を出した。  
「……見た?」  
 
 

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