人も少ない夜の列車の中。  
 
もうすぐ私の降りる駅が近づいてくる。  
左慈...もうちょっとだけ、2人で一緒にいたいのに。  
携帯で何か話し込んでいて、私の視線に気づいてない。  
 
ドアが開いた。左慈はまだ、ニヤつきながら何か話している。  
「左慈、お先に...。」  
「んー?ああ、蒙ちゃん、また明日。」  
私は寂しいのに!明るく笑って手を振る左慈が急に憎らしくなった。  
そして、左慈が携帯の相手が。  
 
「うわ!!」  
左慈を突き飛ばして、電車からホームにいきなり追い出した。  
降りた途端、ドアが閉まった。  
 
「ちょ...蒙ちゃん、どうしたんだよ?いきなり...。」  
「......。」  
「もしかして怒ってる??」  
「...携帯の相手、誰?」  
左慈はぷっと笑って、携帯の画面を見せる。  
...夏侯惇。  
 
「誤解解けた〜?」  
左慈がそう言って笑うが、恥ずかしくて、次にどうしたらいいのかわかんない。  
泣くのか、怒るのか、笑うのか、拗ねるのか、どんなのが左慈が好きな  
女の子なんだろう??結局私は、顔を赤くして、そっぽを向いて黙っていた。  
「蒙ちゃんあのさーさっきの電車、終電なんだけど。俺の家遠いんだよ。」  
「蒙ちゃん家、泊めてって言ったら怒る??...変な事、しないからさ。」  
「...やだ!」  
「怒るなっって。俺の事、ちょっとは信じてくれよ。だいたい...!?」  
左慈に、私から初めて抱きついた。  
緊張で口がこわばって、胸も凄くバクバクしてる。でも、もう言ってしまおう!!  
「変な事...してよ!!私、左慈の事、ずっと好きだったんだもの。  
 そのつもりで電車から無理矢理降ろしちゃったんだもの。してくれるまで...  
 帰さないから!!」  
「蒙ちゃん...。」  
駄目だ、左慈、きっと引いてる。私、泣いちゃうかも。  
 
左慈の腕がぎゅっと私の体を抱き締めた。  
「嬉しい。信じられね。すっげ、嬉しい。」  
顔を大きな手で包まれて、左慈の顔が近づいた。唇に柔らかい感触。  
キスしちゃった。...キスしてもらっちゃた。嬉しい。  
「俺も、蒙ちゃんの事大好きだよ。本当に。」  
 
「マジで、今晩変な事しちゃっていい?」  
ちょっと怖くなったけど、もう後に引けない。  
「そのつもりで降ろしたって言ったでしょっ!!ちゃんとしてくれなきゃ、  
 怒るからね!!」  
「お望みのままに。」  
くすくす左慈が笑う。  
 
 
 
 
明日は、一緒に朝ごはん食べて、一緒に学校行こう。  
私達は、手を繋いで歩き出した。  
 

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