「駄目だ!!それは許さない!どう考えても抜け駆けだっ!!」
関羽が血相を変えてそう言うと、孔明がむっとした表情になった。
玄徳はそんな二人を、ほけっと不思議そうに見ている。
自分が、二人の争いの焦点になっているとは理解していないらしい。
原因は、孔明の宣言だった。
「これからは、玄徳と毎晩一緒に寝て、水魚の交わりになるのだ。」
「そうだねー、孔ちゃん。」
玄徳は、ニコニコしつつ、それに同意する。
「ちょっと待て...毎晩?...交わりっ?!絶対に駄目だ!!」
関羽ひとりが妙に興奮し、反対していた。
「これは歴史の上からも重要な...」
「駄目だったら駄目だ!!」
「我らの交わりは...」
「勝手に交わるな!私が許さん!」
いつまでも平行線のまま言い合いを続ける二人に、張飛がキレた。
「あーもう、うっさいなぁっ!!そんなんガタガタいうくらいなら、
関さんも混ざって、今日から3人で寝たらええ話やんか!そうし!玄徳!」
「そっか!それいいかも!そうしようよ、孔ちゃん、関さん。」
「...。」
「...。」
「おやすみ。玄徳、関羽。」
「おやすみー。関さん、孔ちゃん。」
「おやすみ。玄徳。...孔明。」
孔明をちらりと見て溜め息をつきつつ、関羽は、玄徳を挟んで横になった。
玄徳はあっというまに眠ってしまった。
玄徳の規則正しい寝息が聞こえる。
無防備な玄徳の寝顔を見つめ、その可愛さにうっとりしていると、
玄徳の向こうから、孔明が関羽の様子をじっと見ているのに気づいた。
顔を赤くして、目を逸らす。
目をつぶって、寝たふりをしているうちに、本当に関羽も眠りに落ちていった。
夜中、体の上から妙な気配を感じて、関羽は目を覚ました。
小さな孔明が、関羽の上にのり、見下ろしている。
「何をしてる...?孔明??」
本気で何がなんだかわからなかった。寝首でもかくつもりなのか??
「将を射んと欲すればまず馬から、だろう。」
「はぁ?!」
「お前を崩せば、玄徳を至極簡単に私のものにできる。だから、お前を先にいただく事にした。」
「何を訳の分からない事を...。」
孔明を体の上からどけようとして、気がついた。
体がなんだか動かない...? これは...。
「孔明...?」
「桃源院の護摩。さっきの食事に仕込んだ。玄徳にも、少しだけな。」
そういいながら、孔明は関羽の寝巻の紐を解く。
「冗談だろ...?」
裾に孔明の手が入り込み、脚の内側を撫でる。ぞくっとし、思わず足先に力がはいった。
その反応を見て、孔明がくすくすと笑う。
妙に手馴れた手付きで、下から上へと着物を脱がされる。
「おい...大人をからかうのもいい加減に...!」
「この孔明が、ただの子供と思って貰っては困るな。」
関羽の額に冷や汗が伝った。
関羽の体を、上から下までじっくりと値踏みするように眺め、孔明は言った。
「お前も、玄徳に負けず劣らず美しい。悪くないな。」
「...全く嬉しくないんだが。」
くすくすと孔明は楽しそうに笑う。
正直言って、怖い。穢れを知らない、天使のような幼女の口から出てくる言葉じゃない。
しかし、行動はそれ以上だった。
乳房の上を、手のひらが這った。羽で撫でられるような、触れるか触れないかの感覚。
形をなぞるように、肌の上を指がゆっくり滑って円を描く。
乳房の先端に、孔明の指が掠った時、体がびくっと反応してしまった。
「あっ...!」
「万が一、玄徳が起きるとまずい。ここからはあまり大きな声をだすなよ。」
孔明の手が、関羽の口に当てられる。げ、玄徳...!こんな所を玄徳に見られたら生きていられない。
口元に当てられた指が下顎を押し下げ、孔明の唇が被さってきた。
開かされた口の中に、舌が入り込み舌を絡めとる。
「ん...ん...っ」
抵抗する間もなく、深いキスに支配されていた。
体の内部からくすぐられる不思議な感覚。
背筋がぞくぞくし、頭がぼんやりしてくる。
ありえない...!こんな子供に感じさせられるなんて!
しかも玄徳が寝ているそばでーーー!!!
「反応がいいな。面白い。どこまで乱れるのか見せてもらおうか。」
下着の中に手が差し込まれ、するりと引き降ろされる。
「孔明!」
「静かにしろ。」
さらにあやしい動きをする孔明の手を止めようともがいた時、
思いがけず足先で青龍刀の柄を蹴ってしまった。
壁に当たり、ぎょっとする程大きな音がした。
孔明が舌打ちする。
「んー...?」
もそもそと、玄徳が起き上がってきた。
半裸でからんでいる孔明と関羽を、見つめる。
ああ、最悪だ...死にたい。
「げ、玄徳...その、あの、これは...。」
説明に困ってパニックになっていると、ふらりと起き上がった玄徳が、上から飛び込んできた。
「危な...っ!!」
ドサッ!
体の小さい孔明を、辛うじて左に逃がし、玄徳の体を受け止めた。
「痛たた...。」
体の自由が利かないせいで、まともな受身がとれなかった。
単に、飛び込んできた玄徳の下敷きにされた、という方が近い。
「ずるーい。孔ちゃんとぉ、関さんだけ、いい事して。玄徳も...。」
関羽と孔明を下にして、とんでもない事を口走る。
そして、そのまま、くーくーと寝てしまった。
「...我らが当主は、3人で、と仰ってるがどうする?関羽??」
玄徳の腕に抱きこまれ、結局動けなくなった孔明が言う。
「駄目に決まっている。」
孔明は溜め息をついた。
「頭の固い奴だ、全く。.........体は従順なのにな。」
「何か言ったか??」
「いや、前から思っていたが、関羽、お前は玄徳を過保護にしすぎだぞ。」
「それは自覚しているが...。」
「自覚してるなら...。」
「.........。」
「...孔明?」
すーすーという寝息。
こうやって静かに眠っていれば、本当に天使のように愛らしい。
悪魔のような天才だからこそ、成都に必要だったのだけど、
しかし、...できたら偉業の才能は軍略方面だけに留めて欲しかった。
明日からどうしたらいいんだ...?
考えても考えても答えがでないので、関羽も眠る事にした。
糸冬。(本当はここで終だったけど、以下おまけ)
翌日。関羽はあちこちで友人に頼み事をしていた。
「頼む、子龍...。私と、夜一緒に寝てくれないか?」
「...どういう風の吹き回しですか?貴方の方からそういう事を言ってくるとは
思いませんでしたが。なんでしたら、今からでも私は構いませんよ?」
「違う!違う!そういう意味じゃなくて!!」
道場の壁に追い詰められて、焦りながら関羽は言った。
「ちょっと事情があって、詳しくは言えないんだが。...人数が多ければ多い程良いんだ。」
「???」
「わーすごい。修学旅行みたいだね、孔ちゃん。」
「成る程...考えたな、関羽。」
寝室の中は、まさに修学旅行状態だった。いろいろな人間がうじゃうじゃいた。
どうだ、と言わんばかりに腕をくんで、挑戦的に関羽は孔明を見ている。
すたすたと関羽の元に、孔明は近寄り、ぼそっと呟いた。
「これで安全だと考えたなら、まだ甘いぞ。関羽。」
「え...?」
くすくすと孔明は笑う。
「じゃ、みんなで寝ようか。」
「はーい!!」
なんとなく嫌ーな予感がしつつも、玄徳に手招きされ、関羽も横になった。
糸冬。