裸体で男にまたがり、腰を振る淫らな姿。  
 十日前には考えられなかった痴態を晒す身体が信じられない。それを嫌がる  
冷静な自分と、……それに興奮する狂った自分がいる。  
 惑わされるな。そんなものは幻だ。これはただ、主君を守るため嫌々やって  
いるだけのこと。どれほど身体を開発されようと、心には微塵の乱れもない。  
 なのに、  
「……どうした、そんなに腰をくねらせて。突き上げてもらえないのがそんな  
に不満か?」  
「んっ、……んぅっ……!」  
 この男に囁かれると、それが真実に思えてしまうのは何故だろう。  
 男――憎むべき敵である曹操孟徳は、情事の最中とは思えない平然とした  
表情で、真上に位置する私を眺める。  
 猛り立った肉棒を私の、……淫らな部分に突き刺しながらも、それを動かす  
ことをしない。そのまま経つこと数分、もどかしくて切なくて、私の腰は意志  
に反し、相手に媚びるように上下していた。  
 それが私……関羽雲長の、今の姿だった。  
 
 最初は、強姦だった。  
 訳あって、成都学園の人間でありながら許昌に与することになった私を自室  
に呼び出したかと思うと、突然押し倒された。  
 捕虜であり曹操の兵である私だが、娼婦になった覚えはない。すぐにやめな  
ければ実力を持って答えるぞと凄んだ私に、彼はこう言った。  
「俺の玩具になれば、成都を攻め落とした後に劉備をお前の玩具にしてやる。  
嫌なら、劉備を俺の玩具にする。どっちがいい?」  
 ……まったくもって卑劣な手段だが、私には抗する術がなかった。  
 私は私の信念のため、成都と戦わなければならない。それは主であった玄徳  
を倒すということだ。だが曹操に降った今でも、私の忠誠も親愛もすべて玄徳  
へ向けられている。  
 その玄徳を慰み物にすると言われれば、それ以上の脅し文句はなかった。  
どうせ捧げる男もいないただの膜など、破らせてしまえばいい。口約束とは  
いえ、それで玄徳の身の安全が少しでも増すのなら。  
 その使命感によって、私は曹操に身を任せた。あくまで玄徳のために。  
 ……劉備をお前の玩具にしてやる、という曹操の言葉に、一瞬踊った心には  
気づかない振りをして。  
 
 私の初体験は、そうしてさしたる苦痛もなく、勿論快楽もなく、ただ終わった。  
 
 曹操は毎日私を求めた。夜になると身体を清め、彼の私室を訪ねるのが私の  
日課になった。  
 そうして三日を数える頃、身体の反応に違和感を感じるようになった。  
 彼に何をされようと、私の心は動かない。歓喜も嫌悪もなく、ただ淡々と  
義務をこなすよう心がけていた。  
 だが身体は、徐々に心を裏切り制御できなくなっていった。戦闘の邪魔にしか  
思っていなかった乳房を揉まれたとき、その先端の突起を啄まれたとき、用途の  
知れなかった股間の陰茎を抓られたとき、そして一生使うことはあるまいと思って  
いた秘部を掻き回されたとき、どういうわけか身体に、……あろうことか快感の  
ようなものが走る。  
 開発されてきたなと、曹操は言った。女性の身体は、使えば使うほど磨かれる  
そうだ。毎日鍛錬を欠かさなければ筋肉が発達していくのと同じ原理だろうか。  
自慰行為と呼ばれるものも含めて性的経験、及び知識が一切ない私には何もわから  
なかった。  
 その晩、私は初めて、絶頂というものに達した。  
 
 次の日から、曹操は朝も昼もなく私を抱くようになった。  
 いや、抱くという表現は誤りか。彼は時に器具を用いて、自身は快感を感じる  
こともなく、ただ私を弄ぶことがあった。  
 自分が性的快楽を感じられないなら行為に何の意味があるのかわからなかったが、  
どうも彼は私がよがり、達する様を見るのが好きらしい。  
 私は達することが好きではない。あの状態になると、頭も身体も真っ白になり、  
気の抜けた姿を奴に見せてしまうことになるからだ。惚けた眼で涎を垂らす無様な  
顔(何度か鏡で見せられた)を毎回あの男に晒しているかと思うと、悔しくて仕方  
がない。  
 だが曹操は、そんな私を淫らな雌に堕とそうとすること、そして私がそれに逆らい  
抵抗を続けることが楽しいらしく、ありとあらゆる手で私を責めた。  
 
 ある時は縄で縛られ、バイブとかいう小さな器具を胸と股間につけられて、朝から  
晩まで放置された。バイブは弱い振動を間断なく伝えてくるだけで、小さな快感は  
あっても絶頂まで運んでくれない。まるでかゆいところを掻けないのにかゆみが  
収まらないというような静かな拷問と、あまりにもゆっくり経つ時間に狂わされそうな  
ころ戻ってきた彼に、突然バイブの強さを最大にされて、我慢していた尿を吹き出し  
ながら達した。  
 ある時は彼の肉棒に奉仕させられた。口に収まりきらないほどの巨大なそれを、喉の  
奥まで使って舐め、吸い、しゃぶることを強要される。その鼻につく臭いは、いつも  
挿入される前に嗅がされるせいで、パブロフの犬のように私を昂ぶらせた。顔面に  
白濁した液体をブチまけられ、それだけで私は達した。  
 ある時は肛門を開発された。排泄のためだけにあると思っていたその穴も、彼に指で  
掻き回されれば極上の性感帯となった。果てには肉棒を抜き差しできるほどに拡張され、  
浣腸をされて中を綺麗にするだけで達した。  
 ある時は延々と口内を求められた。俗に言うキスだけを、何分も何十分も続けた。  
外国人なら挨拶代わりにしているそれは、本当は口という性器を犯す性行為なのだと  
知った。自分と彼の口臭が解け合い一つになったころ、私は絶頂の嬌声を彼の口内に  
響かせながら舌で達した。  
 
 そうして十日が過ぎるころ、私の身体で彼が触っていないところはなくなっていた。  
全身のありとあらゆる部位が、彼によって快楽を感じるようになっていた。  
 私の身体は、堕ちたのだ。  
 
 「……どうした、そんなに腰をくねらせて。突き上げてもらえないのがそんな  
に不満か?」  
 そんなわけがあるものか。これはただの生理的現象であり、私は悦んでなどいない。  
 そう言いたかったが、すでに私の口は喘ぐことにしか使われておらず、全身は心から  
解き放たれて淫らにくねる。  
 確認しておくが、私の心は十日前と何も変わってなどいない。心は玄徳のもとにあり、  
彼女を守るため仕方なく身体を捧げているだけ。  
 奴が股間を晒した無防備な姿でいるとき、何度それを蹴り上げて逃げてやろうと思ったか  
知れない。そうしなかったのは、万一玄徳の身に何かあっては悔やみきれないと思ったからだ。  
彼女が標的にされかねないうちは滅多なことはできない。決して私が悦んでいるわけでは、  
……ないのだ。  
「んっ……た、頼む……動いて、ン、くれぇ……」  
 甘えた声。  
 最初の頃は声を上げることが屈辱に感じて沈黙を決めていた私だが、今ではこのくらいの  
ことは言うようになっていた。  
 だって、感じてしまうのは仕方ない。腹が減って餓死しそうなときに敵からの施しがあれば、  
プライドを捨てても食べるだろう。それは生理現象。生理現象ならば仕方ない。  
 だから感じても、いいんだ。心は凛として堕ちてはいないのだから。  
 だが曹操は、酷いことにまだ焦らすつもりのようだった。  
「考えてみたら、なんで敵のお前にそんなことをしてやらなけりゃいけないんだ? 俺が  
楽しませてもらうつもりだったのに、すっかりお前はこの時間を待ちわびてるじゃないか」  
 そう、不敵に笑いながら言う。  
 私が楽しんでいる? とんだ勘違いだ。私は普通のことをしているだけ。腹を満たすため食事を  
するように、身体を休めるため睡眠を取るように、……とても気持ちいいからあなたを求めて  
いるだけ。  
 だから、私のあそこを突いてくれない曹操は酷い。どうすればいい? どうすれば突いてくれる?  
 
「そうだな……曹操様、と呼べ。俺を興奮させるよう媚びてみろ。俺は自分に尽くす部下に  
ご褒美を与える分には、出し惜しみをするほどケチな男じゃない」  
 そんなことか。お安いご用だ。  
 口で何を言ったところで、私の心が動かせるわけじゃない。私が内心でそんなことを思って  
いるとも知らず、義務感で言う台詞に満足していればいいんだ。  
「そ……曹操、様っ。お願いだ……あそこが疼いて、もどかしてしかたないんだ」  
「誰のだ? 名前を言わなきゃわからないぞ」  
「私の……関羽の、」  
「はしたない雌奴隷の関羽、だ」  
 
 ああ――そこまで言わされるのか。  
 その淫猥な響きの言葉を聞くだけで、背筋に快感が走る。もう、我慢できなかった。  
 
「は、はしたない雌奴隷の関羽は、曹操様のものが欲しくてたまらないんだ……っ! ど、どうか、  
その逞しいものを私のあそこに入れてくれ……欲しいんだ、お願い、お願いだからぁっ!」  
 
 強要されていない言葉まで使って、私に出せる限りのいやらしい声色で求める。  
 にやり、と曹操が笑った。  
 その瞬間、下半身に衝撃が走った。  
「ッ! っ! イッ! ……っ!」  
 曹操が私の腰をつかみ、凄まじい勢いで自分の腰を打ち付けたのだ。そのただひと突きで、  
私は白い世界に飛ばされていた。  
 ああ、これだ……! どんな拳より、どんな蹴りよりも効くこの一撃。女を屈服させるための  
凶器による致命傷。痛みなら耐えよう、だがこれを耐えることなどできはしない……!  
「まあ、合格だ。欲を言えば敬語も使って欲しいが……それは後のお楽しみにしておこう。  
劉備たち成都の女の前で、俺に忠誠を誓わせてやる。無敵の関羽が、股を濡らしながら俺の  
足の裏に口づけるところを見せつけてやる」  
 ああ、それはなんて屈辱的で、最悪で、気持ちの良い想像。  
 曹操曰く、私はマゾというやつらしい。いじめられるほど燃え上がる変態だと。心外だ。被虐に  
興奮するのは身体だけであって心はなんともない。だからそんな光景を想像して快楽を感じようとも  
お前に屈することはない。  
 
「そうだ、劉備をお前にやると言ったな。せっかくだ、みんなまとめてお前の仲間にしてやろうか」  
「はぐっ、ふぅっ、あ、え、……みん、な、ぁ?」  
 快感に震えて回らない舌で問う。  
「そうだ、聞けば成都は美人揃いだそうじゃないか。粗野で元気な張飛は、お前と一緒に俺の尻の穴まで  
舐める従順な女にしてやろう。清楚で優雅な趙雲は、お前と一緒に拘束されて濡らす変態にしてやろう。  
冷徹で賢い諸葛亮は、お前と一緒に涎を垂らしながら鞭を求めるマゾに仕込んでやろう。そして――  
劉備は、お前と一緒に俺の側に使える一番の雌奴隷にしてやろう。どうだ、嫌か?」  
 ぞく、と背筋が震える。  
 その光景は、私の理想通りの世界だった。  
 いやいや違う、そうじゃない。それでは玄徳に手を出させないという約束が違うではないか。そう、  
必死の思いで内なる思いを否定する。  
 ああ、主よ、玄徳よ。私は決して曹操に屈したわけではないんだ。今でもお前のことを一番に思って  
いる。我が青竜刀に誓おう、嘘ではない。  
 だが今は。お前に手を出させないために、曹操に従わなければいけない。だから私はこう言おう。  
「最高、だ、曹操様……! 私はあなたのために戦う、あなたのくれるご褒美のために戦う。だから、  
玄徳もみんなも、私も……曹操様の雌にして……!」  
 ――――なんだ、堕ちてるじゃないか。  
 冷静な自分が言う。いいやそんなもの聞こえない。幻聴だ。空耳だ。  
 曹操は満足そうに笑い――そして、むくりと身体を起こす。  
「いいだろう、早速ご褒美だ……誰よりも従順な部下である、お前に」  
 そう言って力の入れやすい体勢になると、猛然と腰を突き出した。  
「はあっ! あっあっ、あああぁぁぁああ!」  
 思わずしがみつく。青竜刀を振るうため鍛えた腕、相手を蹴り砕くために鍛えた脚をぎゅっと彼の  
身体にからめ、激しすぎる快楽に耐えようとする。  
「イクッ! いく、いくう、あはぁっ、またイクイクうぅぅぅぅ!」  
 曹操に仕込まれたいやらしい言葉で、昇り詰めたことを知らせる。だが私の言葉が聞こえないかのように、  
いや聞こえた上で無視して、曹操はさらに腰の動きを早める。  
 いつもこうして私の哀願は聞き入れられず、彼が満足するまで十も二十も絶頂を極めさせられ、息は切れ  
腰は蕩け、何もできぬ雌へと変えられてしまう。そして、それがたまらなく心地良い。  
 
 私の心は堕ちていない。義を果たしたら、再び玄徳の元に戻る。そうすれば曹操など斬って捨ててやる。  
「いくぅぅぅ! 曹操様、曹操様あ! 私、もう駄目、駄目ぇええぇえぇぇ!」  
 だからそれまで、それまでは――曹操様に仕える雌でいよう。  
 

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