ぼくホリ○もん。
ネコ型ロボットでもネット長者でもないよ。22世紀からやって来たポロロッカ星人です。
ちなみに♂です。あんな夢こんな夢、魅惑の道具でみんな叶えてあげます。
今日も不幸せげな顔をした地球人を救いに、ちょっと公園に出かけてみよう――
そこのメガネかけたハカマ姿の青年、何か悩み事でもあるのかい?
何でわかるかって?
そりゃマル急デパートで買った荒縄と踏み台なんか持って、桜の枝っぷりを悲しそうに眺めてたらね。
さっそく魅惑の道具の出番だね。四次元半ズボンから道具出すから、ちょっと待ってて――
――はい、借金ポケット♪
借金ポケットを使うと無限にお金が借りられるんだ。
貧乏くさいデザインだけど、ア○ブラだってこのポケットほどの信用保証はしてくれない。
見ててごらん、ほら一千億円借りられた。このお金を好きに使えば悩みなんて吹っ飛ぶよ。
お金で解決できない悩みなんてないよ。所詮人間の心だってお金で買えるんだから。
さあ遠慮せずにこのお金で好きな会社を買ってみなよ。ラジオ局なんかお勧めだね。
ちょっと何引いてるんだい、顔色が真っ青だよ。一千億円って言っても、たかがお金なのに。
そんなお金要らないって?冗談でしょ、お金がキライな人なんているの?
何、絶望した?金汚い世の中に絶望したって?
こらこら青年、踏み台に昇るな。枝に荒縄をくくるなって、あーっ!
あーあ、あの青年ホントに首吊っちゃったよ。
何かセーラー服着た女の子が駆けつけてぶらさがって、運良く縄が切れたからいいけど。
死んだらどーするとか言ってるよ青年。ワケわからん。
それに借金ポケットから出した一千億円の札束に人が群がり始めたし。
それが公園からあふれて街に広がり、あっちこっちから悲鳴やクラッシュ音やサイレンが聞こえたし。
ぼく知ーらない、と。
やっぱりこういう時はトンズラを決めるに限るね。夕方のニュースでこの騒動取り上げるだろうから、
後でカウチポテトしながらゆっくり見ようっと。
何気ない顔をして、近くの駅から地下鉄に乗ったんだ。ビクビクしてたらかえって怪しまれるし。
でもなぜか周りの目を集めてしまう。しかもそれが珍獣でも見るかのような目ときたもんだ。
きっと半ズボンが良くないんだろうね。オシャレ過ぎるのも考え物さ。
さて、杖突いたおじいちゃんが乗り込んで来た。シルバーシートじゃないけど、お年寄りには席を譲ろう。
と――
左側のドアをはさんだロングシートの向かい、つり革につかまっていたのは間違いなくホリえもんだ。
こんなトコロで同胞に遭うとは思わなかったよ。しかも♀じゃないか。
鉛色の光沢を持った肌、ビア樽みたいなお腹、でっぷりと後ろに突き出た毛のない頭。
そしてTシャツの下から透けて見える乳首がとってもセクシー――
思わずアゴがボッキして左右に飛び出ちゃったよ。ちょっと彼女に近付いてみよう。
別にお茶しようって声かける訳じゃないよ。ぼくはシャイだからね。
――はい、うえくさミラー♪
これで半ズボンの上からでも彼女のパンツを見られるのさ。スカートの中をのぞくならともかく、
半ズボンを見る分にはチカンじゃないからね※。
イチゴパンツでも見えないかな。どーれ、って――
ノーパンは反則だろ?!鼻血噴いてまたヘンな目で見られちゃったじゃないか!
この♀は痴女じゃないかと思った。まさかぼくを誘ってるんじゃないだろうね?
だったら簡単にヤらせてくれる訳で――
あ、次で降りるみたいだ。うえくさミラーをしまって、後を追ってみよう。
♀のホリえもんは改札を定期で抜けた。どうやらこの辺りに住んでいるらしいね。
夕方なのに彼女の通った出口は人っこひとりいなかった。なのに彼女は辺りをキョロキョロ見てる。
尾行がバレたのかな、とも思って身を隠したけど、彼女はぼくの方をあまり振り返らなかった。
ぼくの存在には気付いていないみたいだ。こりゃ好都合♪
壁の所々がひび割れた古臭い階段を上ると、そこは商店街だった。
ほとんどの店がシャッターを下ろしたゴーストタウンだ。都心にこんな所が残っていたのかと思うと、
ここを植民地として再開発してやりたい衝動に駆られる。
♀のホリえもんは段ボールハウスが立ち並ぶアーケードをひょこひょこと潜り抜け、これまた老朽化した
住宅街の真ん中を右に左に千鳥足。
交尾とはご無沙汰なのだろうか、彼女は関節のない腕を欲求不満ぎみにブラブラさせた。
空家や電柱のかげに隠れて追跡を続けたところ、彼女は空き地の前に差し掛かった。
有刺鉄線で囲われ、土管が三本。ちょうどド○えもんに出てくるような空き地だと思ってくれたらいい。
今は六時ごろだろうか。夕闇がおおう空にカラスの鳴き声がブキミにひびく。
真っ暗闇よりも人目に付きにくく都合がいい。もう隠れている必要もないし、公園に連れ込んじゃえ。
――はい、さつじんカッター♪
刃渡り四十センチのさつじんカッターを持って、♀にダッシュで近付いた。後ろから、
「ヤらせろ〜!」
と声をかける。
♀が振り返った。ぼくの存在に気付き、口からスチームを吐き出して驚いている。
逃げるかと思いきや、♀はなんと半ズボンの中に手をやってごそごそ動かした。
下半身をいじって気持ち良かったみたいだけど、すぐに抜き手のかまえから魅惑の道具を取り出す。
――生肉ライト?
生肉が次から次へとぼく目がけて飛んだ。さつじんカッターを左右に振って、それに斬りつける。
けっこう脂身が多い肉だったから、四つ斬ったところで刃がダメになった。
ぼくの顔に雨あられと生肉が貼り付く。ベタベタして気持ちわるい。息が苦しい――
長い舌で生肉をなめ取って噛まずに飲み込む。視界が戻ると、彼女のライトも電池が切れたようだった。
♀が空き地に逃げ込んだ。ぼくも追い駆けなきゃ。
「まて〜!♀ぅ〜!」
ジャ○アンみたいなセリフだけど、シチュがシチュだけにしょうがないか。
♀のホリえもんは下半身をごそごそやりながら走るので、逃げ足が遅くなってる。
追い着いたと思ったら、彼女が振り向きざまに再び抜き手から魅惑の道具――
――心のドア?
うおう危ねえ。勢いあまって心のドアの中に吸い込まれそうになったよ。
あの中に吸い込まれたら、心の闇に切り刻まれちゃうよ……
何とかその場に踏み止まったけど、さつじんカッターをドアの向こうに落としてしまった。
まあどうせ刃がダメになってたからいいけど。その間に♀はものすごく高い声で必死に叫んだ。
「だれかたすけてぇ!!♂に犯されるぅ!!」
お生憎さま。そんな高い声で叫んでも地球人の耳には届かないよ。
ぼくらの金切り声は、地球人が超音波って呼んでる奴だからね。
遠くで犬の鳴き声がする。道では街灯の周りにコウモリがぽとぽと墜落する。
けどやっぱり、♀のホリ○もんを助けてくれる人間は誰も来なかった。
今の内に次の一手――
――はい、くぼずか草♪
このくぼずか草をいぶしてその煙を吸うと、とてもいい気持ちになれるんだ。
はいお終い。♀は目をとろんとさせて、赤茶色をした土の上にへたり込んだ。
ぼくもちょっと煙吸い込んじゃったから、頭がクラクラする。うーんマンダム。
ま、これも想定の範囲内だから全然オッケー。
うつぶせになった♀の頭を鷲づかみにする。♀はやっぱり巨頭に限るね。
「柔らかい、柔らかいよ♀」
ぼくのスペシャルテクで頭を弄られた♀が、たまらず喘ぎ声を上げた。
「ぬむぅ……んにゅ……」
そんなに頭を突き出さなくても、ちゃんと揉んであげるから。
「君だって男日照りが続いて我慢出来なくなってるんだろ?」
「そんな……へみむる……っ!」
頭頂部を吸ってあげると、♀がぴびゅくん、と身悶えた。頭全体を撫で回している内に、
♀の足から力が抜けて行く。
あーあ、自分ばっかり気持ちヨクなっちゃって。よし今度はぼくもいっしょに――
苦労して半ズボンを脱がせる。シャツはめんどうだから脱がさなくていいや。
♀がノーパンだったのはうえくさミラーで知ってたけど、今初めてそのことを知った風に
わざとおどろいて見せるんだ。それが交渉術ってやつさ。
「わーおノーパン♪ そんな格好で出歩いてたら、こんな目にあっても仕方ないだろ?」
「ぬやぁ……そんなトコ、見ないで……むきゅわおぐぇ……!!」
ポロロッカ星人の♀は足を開けば、地球人と同じ所に性器があるんだ。感じると入れやすく
なるのも地球人と一緒なのさ。
ほら、♀は知らんぷりで恥ずかしがっているけど、彼女のアソコはいい具合に白い粉を吹いている。
ぼくの愛撫に感じているのさ。今ならボッキしたあごもするっと入りそう。
びっしりと生えたイトミミズみたいな触角の中心に、青毛虫花を思わせる五つに割れた
ピンク色の肉ヒダがみえる。
ぼくはすっかり固くなった右あごを、肉ヒダにゆっくりと宛がった。
彼女の中は新鮮な生首魚みたいにヒヤッと滑ってとても心地良い。ドーテイの頃は良くあれで
あごを包んで代用した物だが、本物の♀には遠く及ばないね。
♀はというとぼくのダイナマイツあごを入れたいっしゅん、とても嬉しそうに鳴いた。
「べふっ……べふぢ……っ……ぬけぁぎ……」
細かい触角が顔を撫でる。挿入の時に嫌がっていたけど、身体はというか触角は正直だね。
ぼくのダイナマイツあごに冷たくまとわり付き、あごを往復させる度にキツく締め上げる。
彼女が名器なのもあるけど、久しぶりだからかものすごくイイ。意識的かそうでないのか
知らないけど、触角が挿入されてないぼくの左あごをワサワサ撫でた。
「初めてじゃないだろ。そんな風に触角であごを撫でるなんて」
きにゅぶん、と♀が鳴いた。ひとみを恨めしそうな様子でたてに細めた。
「どうでも……いいでしょ……へみぐれっ!!」
深々とあごを差し込んでやると、♀は目を瞑って黙り込んだ。彼女の奥にあるらせん状の
ヒダヒダが、毎秒三万二千回転で右あごをかき回す。
あまりの良さにあごに血流が集まって、それが彼女の腹回りを十倍にもボーチョーさせた。
♀は細かい触角と丸太のような脚で、ボクの頭を抱え込んだ。
合体した二人の様子はもはやビア樽じゃなくて、胴体とボクというおまけが付いた巨大なボールだ。
それが空き地の地面を所せましと転がりまくる。全身性感帯となった♀が地面を転がるたびに、
コンクリートの壁や土管やゆうし鉄線へとぶつかるたびに、♀は身体の中からわき上がる悦びで
たまらずに叫ぶ。
「げぴゅぶわああぁん!!」
これだよ。このゴロゴロと目が回る感じがないとセックスしてる気にならない。
♀に押し潰されたら死んじゃうけど、それもまた♂と♀との交わりって感じがしてイイね。
うーん久々の♀ということもあって気持ち良い。けどもう充分愉しんだし、そろそろ限界だから
イッてしまおうか。
「イクよ♀、イッちゃうよ!!」
それまで酔いしれていた♀の顔が、血の気を失って鉛色に褪める。
「イヤぁ……中に出さないで……」
ぼくは首をふってイヤがる彼女を無視して両方のあごを回転させた。身体の中で右あご、
そしてびっしり生えた触角で左あご、二箇所を同時に攻められたんだから♀はたまらない。
「イヤ……来る……あぎとぉあああああぁぺ……!!」
右あごから彼女の膨れた腹に相当するカタマリをぽっきゅりとひり出し、ボクは満足して
彼女の中からすっかりしぼんだ右あごを引き抜いた。
触角におおわれた五枚の襞がぱっかりと開いてヒクヒク言っていた。
中心からカタマリの分泌する深い緑色の粉が出ている。彼女の白い粉と混じってとってもエロティック。
「ヒドい……中に出さないでって言ったのに」
そう言って♀はボクに襲われた時の倍音を響かせて泣いた。だからそんな高周波で泣いても
誰も助けに来ないって言ったのに。
卵ができたらどうしよう、♀はゲズゲズと目粉をすすりながら言った。
「想定の範囲内じゃん」
ヒドイわ、と♀がさらに六オクターブ高い音で喚いた。一秒あたり1300×1000振動、地球人が
ラジオで遠隔地と交信する周波数だ。
夕方のラジオ番組を聞いている人間がノイズを聞き止めるかも知れない。そういう手合いなら
問題はなかったけど、ボクにはもっと心配な事があった。盗聴マニアだ。
既に彼女の泣き声を拾っているかも知れない。という事は僕の想定範囲よりも早くこの場所が
嗅ぎ付けられる可能性は充分に高いだろう。
早く退散しないと見つかっておナワになる、そう思ってボクは一目散に逃げる事に決めた。
しかしそれより早く、♀は半ズボンもはかずに空き地を後にした。青毛虫花みたいな
いやらしいアソコを隠さず、膨れたお腹で転がりながらだ。腹が十倍に膨れていたから
穿けなかったんだろうけど。
空き地を立ち去ろうとして、地面にまかれた緑と白の入り混じった粉がイヤにエロく見えた。
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「私のネタがパクられた!!」
名取羽美は内装がピンクに統一された自室の机に座り、デスクトップの画面を見つめて憤慨した。
丸みを帯びたボディに、15インチの液晶ディスプレイ。購入した三年前の時点で既に型落ちしていた
デスクトップだが、デザインが洗練されている為か古臭さをちっとも感じさせない。
そのディスプレイ一杯に拡大されたブラウザの中身は、真っ黒な背景にライトグリーンや
ショッキングピンクやらの大きなフォントを使った、素人くさい作りのウェブサイトだった。
画面上に張られた広告から18禁エロサイトらしいと見分けが付くが、それにしてもセンスが欠片ほども
窺えない。展示されたエロ画像は乳や女性器を異常に強調したもので、色鉛筆で塗ったのだろうか
所々塗りムラが残っている始末だ。
憤然たる表情で、羽美はオレンジのフォントで書かれた部分を凝視する。
――大長編人気マンガ ホ○えもん
これと全く同じタイトルのマンガを、羽美は小学生だった十年以上前から暖めて来たのだ。
大学ノート三冊にも及ぶ大作で、映画化も視野に入れていた。後は出版社に持ち込み、世間に発表する
タイミングを計るばかりの所まで漕ぎ付けたのだ。
羽美のプランでは作品の映画化に伴って大金を手に入れ、母や弟に小遣いを渡す身分になる筈だった。
そのアイデアが盗まれた上に、何者かの手によってエロ小説に書き換えられた上に発表されたのだ。
まだマンガや映画として発表されたのならいいだろう。原作者である羽美の手に金は入らないが、
しかし世の中に『さつじんカッター』や『猫専用なべ』がウケた事を示す証になるからだ。
羽美の機嫌を二重に損なっていたのは、『大長編人気マンガ ホリ○もん』が選りにも選って
こんなセンスの悪くアクセス数も少ないアダルトサイトの投稿小説掲示板で発表された事だった。
しかも悪文で読みにくい。羽美は○リえもんの姿を知っているからまだ情景の想像が出来たが、
単純に文章だけから登場人物の容姿を想像するのは極めて困難である。
実際作品に寄せられたコメントとして多かったのが「人物描写が判り辛い」という物だった。他に
「こんなのエロでも小説でもない」「キモい」という意見を合わせて、全体の九割以上を占めている。
羽美にとっては自作を汚された思いだった。
しばらくじっと明朝体のフォントを見続けた彼女が、やがて新規メールを立ち上げる。
羽美は唇を噛み締めながらキーボードを叩き、真っ白なメールの本文が猛烈な勢いで埋められた。
三時間もその作業に没頭していれば、文字列だけで百キロバイトを越す長文の猛毒メールでも
出来上がりそうな雰囲気を彼女は醸し出していた。否、実際に彼女はその程度はある長文メールを
某社のお客様相談窓口に送り付けた事もあるのだ。羽美の記憶が確かなら、その時は窓口の担当者が
メールを読むなり救急車で運ばれ、逆に母親が某社まで頭を下げに行った物だった。
送付先は言うまでもなくこの『小説』を投稿した人物、それにこのアダルトサイトの管理人である。
「呪ってやる…いや訴えてやる…!!」
鬼気迫る表情で十五インチを見つめながら、羽美はいつまでもキーボードを叩き続けた。
おしまい。
※半ズボン越しに下着を見たら痴漢になります。痴漢は犯罪です。