−−授業中−−  
 
 朔美の頭からは昨晩の風呂場での事がどうしても離れない  
「(何してたんだろ…わたし…)」  
 授業中、黒板へ目を向けつつも内容は耳を素通りしていく  
 少し窓の方へ目を向けなんとなく景色を見ていた  
「(皮村先輩の事を心配してのに‥スケベが移っちゃったかな)」  
 などと行為やその原因となった皮村自体を曖昧にしつつ一人照れくさくなる・・・  
 
          キーンコーン♪カーンコーン♪  
 
 一時限目終了のチャイムが響き、教師も職員室へと戻っていき休み時間へと入る  
「中山ちゃ〜ん」  
 長身巨乳の幸子が駆け寄って来て、奥野有里や吉田みゆきも集まってくる  
「どうしたの?なんかあるみたいだけど?」  
「えっ!」  
「体調が悪いとか、精神的に辛いとかそういう事でもなさそうな感じみたいだけど…」  
「う、うん。まぁ」  
   
  いくら皮村が例外的に人一倍無節操でぶっとんでスケベだといっても、  
 朔美たち一同もまったくそっちの方の話をしないわけではない。  
  いや、むしろ23歳社会人と交際している吉田みゆきがいるのだ。  
 無経験の知ったかぶりや、浅い経験だけで見栄を張り全て知ったように語る未熟な者とは吉田みゆきは格が違う。  
 下手に自慢する人間より、大人の余裕を思わせるくらいだ。  
 そんな吉田みゆきの話を聞いていると  
 無理に背伸びして「やった」の「やってない」のだのと騒ぐだけで冷静さを欠く同級生の男女が幼く見える  
現にみゆきには他の女子から、その手の相談もある。   
  存在こそ目立つが行動こそ目立たないみゆきは、そういう話の時は4人の中で際立つ  
といってもいつもの優しい語り口だが、決して自慢というわけでもないから好感が持てる  
 朔美も興味深々で多少の参考になる。  
 
「あんまりここで話すような話題でもないようだね」  
 何かは分からないが、とりあえず朔美の様子から判断したみゆきが問うと  
「えっ、と…う、うん」  
「じゃあ、廊下に…」  
「そういう問題じゃないだろ!」  
 有里に突っ込まれる幸子は相変わらず鈍感だ  
   
   
  その翌日、部活もないので四人は奥野有里の家に集まることになった。  
 そっちの話題を全くしないこともないのだが何の脈絡もなくいきなり切り出すのはいろいろと躊躇するので朔美はなかなか口に  
 出せずに困惑していた。  
「まぁいつも通りというか、相変わらずだなコイツは……」  
 山崎幸子は美味しそうにスナック菓子を頬張る。  
「ふぁってふんほうぶなんだふぁら、ふぃかたないんふぁよ(だって運動部なんだから仕方ないんだよ)」  
 苦しそうに口を結びながら話すとジュースを勢いよく喉を通っていく。  
「ぷはぁ〜!」  
「………」  
 朔美はキョトンとしてあまり話そうともしなかった  
 吉田みゆきは気を使うように切り出す  
「話づらそうだね、なんとなくだけど……多分あっち系の話じゃないのかな?」  
「!!……」  
「あっ図星!?」  
「幸子!!」  
「………うん…」  
 確信を突かれ一瞬動揺してしまったが、嘘をつく理由もないので恥ずかしそうに認めるしかなかった。  
「流れもなく突然切り出すのつらいかもしれないけど……大丈夫だよ。」  
 とみゆきはいつもの笑顔で優しく諭す  
「中山ちゃんからだなんて、いつもと違ってちょっと緊張するかな」  
 と奥野有里もいつもの落ち着きぶりな様子とうって変わって好奇心顕わだ。  
「まぁ、ここはいつも通り経験豊富なみゆき主導で……」  
 
 話は進められていく。  
 
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
「ふ〜ん…朔美ちゃんの口からそんな事が聞けるなんて…意外ってわけじゃないけど、ちょっと予想外」  
「まぁ誰しも興味ある事だから普通っていっちゃ普通なんだけどね」  
「その点吉田は一人じゃないから、一人より二人のほうが気持ちいいの?」  
「幸っちゃん!」  
 制しつつみゆきは問う  
「先輩のこと考えててそうなったって事は、朔美ちゃんは皮村先輩の事好きなの?」  
「……(カァ〜)」  
「…なのかな?」  
 と聞き返してくる  
「なのかなって……いわれても…ねぇ、アレに関しては私もたまにするけど…」  
 落ち着きのある有里も返答の仕様がない  
「別に恥かしいといえば恥かしいけど…そういう恋心を抱けばそういう気持ちにもなるし…  
                          有里ちゃんの言うとおり普通の事だよ。」  
「……」  
 顔を赤くして無言のままだった  
 
  ボリ ボリ ボリッ  
「今度は煎餅かい!」  
「ひゃんとひいふぇるはら(ちゃんと聞いてるから) ゴクン!!大丈夫。大丈夫!」  
「朔美ちゃん自身まだよく判らないのかも?ちょっとスケベだけど人柄は悪いわけでもないし、いいと思うよ。」  
「有里ッぺもどこが感じるのか聞かせてよ。」  
「何を言ってるんだか、コイツは(自分でオッパイ揉んでやれ)」  
「なんにせよ、とにかく協力するから!」  
「みんな…ありがとう」  
 
  というわけでその後の3人組は例のごとく朔美抜きで話を整理、推進していた。  
「朔美ちゃんまだあまり自覚してないようだけどあれはもう確定だと思うよ。」  
「そうだろうね。」  
「朔ちゃんはオナニーの方が割合が大きくてでそこまでの気が回るにはもう少しかかると思うけど…」  
「雨降って地固まるってやつですか?」  
「まだ固まってないって…(汗」  
「でもせっかくだし今度はちゃんとお膳立てできそうだね。」  
「あとは皮村先輩だなぁ…まぁ一見するだけだとスケベだけど、実は意外と優しいし…」  
「どうやって気を引きますか……」  
 などと朔美のいないところで会議をするのだった・・・・・  
 
    
  同時刻朔美は家の自室で悩んでいた・・・  
お気に入りのアーチストのCDを聴きながら特に意識せずに自然と皮村のことを考えてしまう  
曲がリピートされてもう何度目になるだろうか。  
「あんなことしちゃったのも、元はといえば皮村先輩の事を考えてたからなんだけど……  
 やっぱり…好きなのかな?」  
 今までそういう対象として見てもいなければ特にカッコよいというわけでもなし、まして好みのタイプでもない分  
 混乱に拍車がかかっていた。  
「先輩…」  
 しかし確かに皮村の事を思う時が多く、何故か落ち着かない  
 あの時具体的ではないが皮村に体中を触られることを想像してしまっていた。それが嫌なのではなく、望んでいた・・・  
「………」  
 顔を朱に染めた朔美はベッドで寝転がりながら少し疲れたような息を吐いた。  
「…はぁ〜………やっぱり先輩のこと……」  
 最近元気のない様子だった朔美の目には新しい輝きが溢れていた。  
 
 
  翌日の部活の練習中  
「(あんな事があったからか?今日はやけに中山の視線を感じるな)」  
 朔美をこっそり見つめたいのだが、逆に朔美からの視線を感じてしまい見る事ができない。  
 それを知ってか知らずか朔美は皮村を見る。  
「……皮村先輩」  
  佐藤ちえ以来皮村に訪れた人生最後ともいえるかも知れない絶好のチャンスなのだが、皮村は公園での事で気まずく  
 なってしまったかなと思い込んでいる。  
  まして佐藤ちえとは違い、今回は自然な形での相思相愛という恋愛としては望ましく甘美な状態だ。  
 練習中に目が合っても互いに不自然に逸らしてしまう・・・  
 皮村にとって好機どころか夢を実現したに等しいのだが、皮肉なことに両想いのすれ違いも甚だしい、  
  林田への過去の思いを知られている分、朔美の気持ちストレートにいけずにどこか引っ掛かる。  
 他人の事に敏感な皮村も悲惨な経験上まさか自分が想われているとは予想できなかった。  
 
「おう、じゃあな」  
「おっお疲れ様です。」  
 冷汗をかきながら皮村は鼓動を早くしつつ朔美に挨拶すると岐路についた  
「……」  
 夕空の下、朔美は何もできずに校門で立ったまま小さくなる皮村の後姿をを見つめることしかできなかった・・・  
「はぁ…」  
 ため息をつく  
 
「中山ちゃ〜ん。顔赤いよ」  
「!!」  
「満足ってわけじゃないけど、空っぽって感じとは無縁の目だね」  
「心ここにあらずって感じかな?」  
「なっ!!みんな!!」  
 皮村の背を見送っている所に現れた三人組、心を見透かされような突っ込みに大きく動揺する朔美であった。  
   
  最初はあまり意識していなかった修学旅行の土産の髪止めも、今ではすっかり大事な記念品となっている。  
 皮村は皮村でセクハラでもなければ、センスの悪いものを選んだわけでもなく自分なりに満足している。  
 というよりかは想いを寄せている分やはり嬉しいのだった。  
  最も一番喜んでいるのは以前のように不意に接近し、結ばれた筆のような繊細な髪で体をなぞられ身悶えるチョメジであったが・・・  
 
    
  明るくて巨乳な幸子、朗らかで男女共に癒す容貌のみゆきと来たら、本人たちは意識せずともグループは男子の間では話題になる、  
 有里も美人の引き立て役のブスというレベルではなく、姉御肌とは異なるがリーダーの風格を備えるとそれなりに頼もしく見える。  
 とくればもともと地味で大人しい目だが可愛い朔美も自然と男子の目に入り実はモテていた。  
 それを狙って3年引退後の柔道部に来た輩は、藤原に尿を浴びせられ撃退されたが、やはり影での評価は高い。  
 軽い感じでいいよって来る男とかみゆきに本質を見抜かれたり、有里の冷ややかな視線で追い返して成立していた不思議なグループであった。  
  そんな面々も皮村には大変苦慮していた。正多少はと思っていたのだが、直予想外であった。  
 ただのスケベ野郎なら朔美も惚れないし、最低な男として終わっていたが、  
 ちゃんと皮村の事を知るが故に3人組は返って苦戦せざるを得なかった。  
 客観的に情報収集しようにも、外見通りの不細工スケベ、生徒会長を下ろされた悪評しか出てこない。  
 かといって柔道部の面々に聞くと部員全員に漏れてしまう懼れもある。   
「手強い…」  
「う〜ん…」  
 作戦は難航していた。  
 
    
「〜♪」  
  そんな事も知らず部室で着替えつつ、ちょっとご機嫌に髪止めをつける朔美であった。  
 そうこうしてるうちに皮村が柔道場にやってきた。  
 
  皮村の事に悩みつつも  
「なんかこの頃、気分いいな♪」  
 と朔美は感じていた。  
 学校のみならず部活の時間が来るのをさりげなく楽しみにしている。  
 一応3年は制度上引退という形になっていたが、よく顔も出している。さすがに進路の事などいろいろあって毎回とはいかないが・・・  
 部長となって先輩達も含め指導するのも気を使うが、皮村が顔を出すとやはり嬉しい。  
 顔にこそ出さないが心中は少し落ち着かない。  
 逆に3年が来てもいないと少しガッカリする。  
 ここまでになるともう朔美自身も自覚する、しないとかの問題ではなかった。  
  一方の皮村も出来るだけ顔を出すようにしていたというよりも、行こうとか考える前に足が向いてしまう  
 純粋に顔を見に行きたいのだ。  
 
  今日はたまたま朔美が柔道場に一番乗りし、二番手は皮村だった  
「あっ!どうも…」  
「よう!…」  
 といつも通り定型的な挨拶を交わすが、やはりどうもぎこちない。  
 最近までは普通に交わしてた筈なのだが・・・  
「きょ、今日はまだ誰も来てねぇのか?」  
「は、はい…」  
「……」  
「……」  
 
「チャンスだよ!中山ちゃん!!」  
 柔道場を三人組が覗いていた。  
 
  授業も終わり、いつものように自然に解散した後廊下でバッグを持って帰り支度した同士が顔を合わせた。  
「あら、ブチョー、モリモリ、今日は帰るの?」  
「ああ、なんか今日はあまり調子が良くなくてな。」  
「あたしも心配だから、途中まで付き添おうと思って…」  
 と二人で出かける事を誤魔化そうとするが、他用事や正式に3年は部活動を引退をしているのもあり、  
 二人を含め3年は出ない時もあった。当の藤原自身もそういう理由で出ない事もあったので、藤原は特に気にかけない様子だ。  
 ただ今回は純粋に二人ともカップルで遊びに行くのだが・・・・・  
「お嬢も三浦さんと一緒に、この前新しくオープンした所のケーキ食べに行くって言ってたわよ。」  
「じゃぁ皮村くんも来てないのかな?」  
「さっさと帰ったんじゃないの?今頃、街で女を品定めしてるわよ、きっと……じゃあね。お二人さん!」  
「ああ、じゃあな」  
「またね〜」  
 先に藤原は帰宅していった。  
「そっか、今日は誰もいかないんだ」  
 この先卒業して、今のように会えなくなるのを改めて感じ少し寂しげに桃里はつぶやく  
「卒業まで楽しまなくちゃね!」  
 と明るく微笑むと林田の顔を見るのだった。  
「森さん、じゃあいこうか。」  
「うん♪」  
  二人は手を繋いで校門を出て、駅前の商店街の方角へ向かった。  
 
  また同時刻、マスクをして辛そうに咳き込みながら、帰路につく春迫乙蔵の姿も山本のり子に確認されていた。  
   
「………」  
「………」  
「遅いな…」  
「遅いですね…」  
  ・・・気まずい・・・  
 互いにそ知らぬ顔こそすれ、鼓動は早かった。  
 いつもなら誰かしら来る筈の時間になったが今日は珍しく他に誰も来ない。  
 二人とも遅れてくるだろうと思っている。  
   
 そうとも知らない三人組のはこのまま誰か来る前にアクションを起こすよう祈っていた。  
 
「(さぁ、中山ちゃん!!ここは思い切って!ドーン…と…)」   
  時間が過ぎれば過ぎるほど、二人の間はぎこちなくなってきている  
 皮村も朔美、三人組はハラハラしていたのだが・・・  
    
  柔道場の戸が開き制服姿の生徒が現れた。  
「!?」  
 皮村は見たこともない顔に疑問を抱く、同級生では見た事がないのでとりあえず下級生だろうと納得する。  
「コラー!!いい所なのに来るんじゃない!!」  
 乱入しようといきり立つ山崎を奥野、吉田両人は押さえつけた。  
「バカ!!見てたのがバレるじゃないか!!」  
「とりあえず、あの人が無事去るのを待つんだ。」  
「そうだよ。まだもしかしたらチャンスがあるかもしれないけど、  
       私たちが見てるのが知れたら今度こそ終わりだよ!!」  
 なだめられた幸子は理解しつつ、勢いを挫かれたやるせない心の狭間で渋々と引き下がった。  
 
「伊東くん?」  
「あれ?伊東くんじゃない?伊東くんだよ!」  
 興奮冷めやらぬ中、吉田みゆきが指摘する。  
「あの中山さん、用があるんだけどちょっといいかな?」  
「え!?う、うん。」  
「(見た目こそ落ち着いてこそいるが只事じゃねぇな、あれは…)」  
 突然の関係者以外の訪問に驚き、普段の状態に戻った皮村の勘が冴える。  
「おいおい、せっかく二人きりなのに呼び出すんじゃないよ!」  
 道場を出て行く二人を皮村、三人組はつけていく  
「なんだろう?」  
 朔美もわからずについていく。  
 
  放課後の人気のない校舎裏へやって来たのだった  
 校庭の方から僅かに運動部員のたちの練習に励む声が聞えてくる、三人組と  
 皮村はもかち合う事なく、互いに気づかずに違う場所に潜みその様子を覗いていた。  
「(おいおい、この場所といい、シチューエーションといい……)」  
 偶然の一致に皮村は林田にバレンタインデイに悪戯した事を思い出した。  
「(って事はやっぱりアレか……)」  
 おいおい察しながら自分事のように緊張しながら見守るしかなかった。  
「(結構いい男だな……)」  
 皮村の心が焦燥感で不安に煽られる。  
 
「なんか予定と違う方どころか、ハプニングに流されるままにいっちゃってるね……」  
「でも今はどうしようもない…」  
「(ドキドキ はぁ〜 はぁ〜 ドキドキ)」  
 珍しく幸子はホラー映画でも見ているかのようにのめり込んで見据えている。  
 
「中山さん 好きです!付き合ってください!!」  
「!!……」  
 
「(おぉ!!一気にいきやがった!!)」  
 
「ぅおーーー!!中山ちゃーーん」  
 
「………」  
「………」  
静寂はたいした時間ではなかったが、突然の驚きや答えを返すに急する時は一瞬でも長い、  
ただの見物ならそうでもないのだが、集中して覗く者は当事者より長く感じるものである。  
朔美はまさか自分がそういう経験をするとは夢にも思わなかったので、動揺して返答のへの字も浮かばない。  
「………」  
 第三者は黙って見るしかできない・・・  
 
 
 
 
 
 
 

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