冷たい風が本格的な冬を告げる中、伊手高校も終業式を迎えようとしていた。  
そんな中、だるそうな表情をしながら皮村はいつものように部室のドアを開けた。  
一足先にHRが終わったとあって、他の部員はまだ誰も来ていなかった。  
中でも林田がいないことを確認した皮村は、安心してヌル天を取り出した。  
「あー、やっと2学期終わりかよ・・・。だるかったな、相変わらず。  
ま、家帰っても何もすることねえし、ちょいと休憩すっかな。」  
そうやってヌルヌル天国を読みながら寝転がっていた皮村だったが、  
ふいに武道場の方から声がするのに気付いた。  
「はおおおお・・・・・ふおおおお・・・・!!!」  
「愚地君、頑張って!!」  
必死に声を張り上げている一年生の声が耳に入ってきた。  
(何だ何だ!?あいつら何やってんだ?これは、もしかして、もしかしますかもよ?)  
と、変な期待を抱きながら、皮村は慌てて武道場に駆け込んだ。  
そこにいたのは、声のした通り、よしおと朔美だった。  
今日も練習日だったので、先に武道場に来た二人は、自主トレーニングを行っていた。  
よしおは必死に腕立て伏せを試みているが、恐ろしく非力なため、  
ただの1回でさえも腕がおぼつかなかった。  
朔美は、自分は腕立て伏せをせず、いつのまにか必死によしおのサポート役に回っていた。  
「ぐぬぬぬぬぬ・・・ふぎぃぃぃぃ!!!」  
よしおの顔は、みるみる真っ赤に染まっていく。  
危険を感じた皮村は、慌ててその場に割って入った。  
「はーい、ストップストップ!よっしー、無理しなくていいからさ、少し休憩したら?」  
「あ、皮村先輩、お疲れさまっす!」  
「皮村先輩、こんにちは。」  
周りに2人しかいないことを確認した皮村は、にやりと不気味な笑みを浮かべて、  
よしおを耳元に呼んだ。  
 
「よっしーさぁ、そうやって何もかもすぐ身に付けようとするからダメなんだよ。  
できることからこつこつ始めていかなきゃ。な?だから、ちょいと頼みあるんだ。  
お金渡すからさ、ジュース買ってきてくんない?先輩の言う事に従うのも立派な  
練習だぜ。後で林田たちも来るだろうから、なるべく多く買ってきて欲しいんだわ。」  
「そうっすか・・・わかりましたっす!すぐ買ってくるっす!!」  
今一の表情を浮かべながらも、よしおは納得したようで、お金を持つと武道場を後にした。  
「さあてと・・・まだ誰もこねえみたいだし、困るだろ?中山。」  
皮村は、うやうやしく朔美に話しかけた。  
「え・・・はい、そうですけど・・・。みなさんが揃うまで、私待ってます。」  
「いやいや、無理に待つこともないじゃない。このおぢさんがいろいろ手取り足取り基礎を  
教えるからさ、少しでも上手くなってみんなに褒められたいだろ?」  
林田に褒められる姿を想像した朔美は、顔を赤らめてうなずいた。  
その姿に余計に欲を刺激された皮村は、冷静さを失わずも自らを高めながら  
朔美を畳へと連れて行った。  
 
それからまもなく、満を持したかのようにほとんどのメンバーが揃い、道場に集結した。  
「ん?なんか道場の方からかなり怪しいオーラが漂ってくるな・・・。」  
普段から慣れている非常に苦々しい空気を、林田は敏感に感じ取っていた。  
慌てて道場に駆け込むと、皮村が朔美に寝技の四方固めをさせていた。  
四方固めは、下側に抑えつけられている者の顔が、技をかけているものの股間の辺りに  
位置する技である。  
皮村は、非常に幸せそうな表情で、朔美の「匂い」を楽しんでいた。  
朔美は嫌がっていたが、皮村が朔美の帯を掴んで離さなかったため、逃げられなかった。  
「皮村ああああああああああ!!!!!!!!!!」  
林田は特大のジャンプから強烈なエルボーを皮村の腹にくらわした。  
 
「皮村てめぇ!!せっかく身に付けた柔道の知識をそんなことに役立てるんじゃねえ!」  
激しく咳き込みながらも、皮村は愛敬をふりまいた。  
「グオッホ・・・ゲェッホ・・・・冗談、冗談w」  
「何が冗談だ!!何が!!お前自分のやってることに相変わらず自覚ねぇな!!」  
桃里は慌てて朔美に駆け寄って、抱きしめた。  
「朔美ちゃん、大丈夫?」  
「いえ・・・大丈夫です、ホントに大丈夫ですから。」  
「はぁ・・・相変わらずしょうもないわね。これだけ救われない人間を見るのも辛いわ。  
自分のやってることに自覚のない人間は、脱出することの出来ないスパイラル  
にはまってる証拠よ。地獄にでも落ちないと反省できないわ。」  
藤原は、冷静に言葉を並べるが、どれも心臓を槍で突き刺すような重みのある言葉だった。  
「おいおい、そりゃ困るぜ。おれだって自覚あんだからよ。ただ、自分のやりたい事を  
本能に従ってやってるまでだから仕方ない面もあんだよ。」  
「だから、何でそういう風になっちまうんだよ!ただでさえこんな物騒な世の中だし、  
お前絶対新聞の小見出しに載るみたいなことになっちまうぞ!」  
「皮村君・・ホント、やばいと思うよ。面白いとか通り越してひいちゃうしさ・・・。  
そういうこともう少し少なくしたらやさしくておもしろい皮村君になるのに・・・。」  
桃里も、皮村に正気を取り戻してもらおうと、必死に言葉を並べる。  
しかし、皮村には、自分の好きな事を否定されているようで、また自分の存在を  
否定されてるようでしかたなかった。  
「ふん!そうかい・・・てめぇら、オレの気持ちも知らねぇくせに!何が起きても知らねえからな!」  
皮村は、大声を上げて出て行ってしまった。ただでさえも最近ストレスがたまっていたので、  
頭に血が上ると、冷静に物事を考えられなくなっていた。  
「おい、皮村!」  
「ほっときなさい、どうせすぐ戻ってくるわよ。今日は菊も来るし、何かと大変だから、  
あいつのことにそんなにかまってられないわ。まあ大丈夫でしょ。」  
「そうだな、よし、練習始めるか!」  
皮村を残し、部員たちは本格的に練習を開始した。  
 
なりふりかわまず全力で廊下を走り抜けた皮村は、疲れて階段で休んでいた。  
ふと手前を見ると、東のポスターが貼ってあった。  
芸能活動をしてからますます充実感溢れる東の顔に、皮村は羨ましさを覚えた。  
「ぐ・・・ちょっとでいい、ちょっとでいいからあいつの身長と顔がほしい。  
そうすりゃ女なんか寄り放題で、あんなこともこんなこともできるのによ・・・。」  
落胆した皮村だったが、その呟きを遮るように、後ろの方から男女の声が聞こえた。  
(なんだありゃ・・・・理科室からだ。鍵閉め忘れてたんだな。)  
そう自分に言い聞かせながら、皮村は少し戸を空けて中を覗き込んだ。  
「ん・・・あ・・・・!!純、いいよ・・・いいよぉ!!」  
「おい、あんま大きい声出すなよ、もしかしたら近くに人いるかもしれねぇし。」  
「大丈夫だよ・・・こんな離れに人くるわけないし。」  
(う・・・うわ!なんだあいつら!こんなとこでヤッテるぞ!!)  
そこには、女子生徒が掃除用具入れに両腕を預ける形で、、立ちバックの姿勢で営みを行っている  
男女がいた。学年でも有名なアツアツカップルだった。  
「・・・や・・・や・・ぁ・・!!立って・・・られないよぉ・!!」  
「う・・・!!やっべ、オレいきそうだわ・・!中に出していいか?」  
「だ、ダメ!!服に出していいから外でお願い!!」  
「ち・・・わ、わかったよ。しゃあねぇな。」  
そんな会話が交わされた後、男は自分の分身を引き抜いて、女子生徒の背中に欲望を放出した。  
女子生徒は制服を脱いだ後、簡単にティッシュで拭いた後上着を鞄に入れて、代えの服に  
着替えた。  
「気持ちよかったよ、純、ありがと!!」  
「おう、来年もよろしくな涼子!!」  
カップルは、お互いに去っていった。  
皮村は、どうしようもない絶望感を覚えた。  
しかし、手はしっかりとあどけない息子を握っていた。  
それがまた、むなしかった。  
 
(はぁ・・・何なんだよ・・・あんあんうるせぇ!警察に突き出すぞ!  
言っとくけど俺は全然羨ましくなんかねえからな!)  
様々な思いを交錯させながら、皮村は廊下を歩いていた。  
しかし、深く考え込めば込むほど、自分が虚しくてしかたなかった。  
(おれ・・・このままずっとこんな状態なのかな・・生きてて何になるのっつう感じだな。)  
しまいにはそんなヒステリックな状態に陥り、皮村から威勢の良さが消えた。  
そうするうちに、また男女の声が聞こえてきた。音楽室からだった。  
(けっ!またかよ!今日はこんなの多いな。終業式だからか?  
やることだけやって今年を終わらせようって魂胆かよ。腐ってやがんぜ。  
そのめでたい面おがんでやるか。)  
そう言いながら、皮村はそっと覗き込んだ。しかし、次の瞬間心臓が飛び出すほど驚いた。  
女のほうは、かつて自分に恋した佐藤ちえだった。男のほうは、当然山田だった。  
「やだ・・・山田君、誰か見てるかもしれないよ・・・。」  
「わかってるよ、佐藤さん・・・。でも、もう来年まで会えないんだ。だから、  
後少しでもいいから君の顔を見たいんだ。」  
「山田君・・・。」  
そう甘くせつない言葉を交わしながら、二人は口付けに及んだ。  
長身の山田は佐藤ちえに合わせるようにゆっくり腰をかがめながら、濃厚な口づけを交わしていく。  
山田の手が佐藤ちえの腰に回った瞬間、皮村は思わずその場から走り去った。  
もしかしたらその足音が二人に聞こえたかもしれないが、そんなことはこの際どうでもよかった。  
皮村の目は真っ赤に滲んでいた。  
(は・・・はは・・・笑っちまうよな・・・本当ならオレがああなるはずだったのに・・。  
も・・・もうオレマジで駄目かも。このままドキュメンタリードラマなら自殺とかしちゃったり。)  
そう呟きながらも、自殺ができるはずもなく、皮村は気をまぎらわすために、人通りの  
多い場所へ出向いた。  
 
(もういい・・・短パンでも何でもいいや、スカートめくっちゃる!ブス以外だけど。  
パンツ・・・パンツ・・・パンツ・・・)  
しかし、終業式の後以外にも学校を後にする生徒も多く、女子生徒も見つからなかった。  
皮村は力のない足取りでよろめきながら、階段を上がっていった。  
すると、目の前に無地の白のパンツが飛び込んできた。しかも、3枚も。  
「どっひゃーーーー!!!パンツキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」  
「おー、皮チンじゃん。おっひさだねー。」  
「あ!いつぞやの在野の将とその取り巻きたち!!これは偶然ですな!!」  
いつか柔道部を見学に来ていたギャル風の女子高生3人組だった。  
ただでさえだいぶ短いスカートなのに、3人とも階段で足を開いて座るという格好だった  
ので、下からすればパンツは丸見えの状態だった。  
もっとも、誰も通らないだろうと見越してそうしていたのかもしれないが。  
「ねー、皮チンさぁ?今日東君くるぅ?サイン欲しいんだよねー。今年最後だし。  
ていうかさぁ、何泣いてんのぉ?」  
「男なのにかっこ悪いよねー。」  
「いやいやっこれには深いわけがありまして・・・。」  
皮村は、自分の見た通りのことを話した。  
そして、そこから話が広がるうちに次第に3人とも打ち解けてきた。  
エロい話をすると普通の女子生徒ならばひく所だが、3人は興味深々で話しにのってくれた。  
度のきつい下ネタをふってもみな気軽に笑ってくれたことで、皮村はつい先程まで持っていた  
様々な負の感情を、もう少しで消し去れる所だった。  
しかし、在野の将ことさおりが次に発した言葉で、皮村はまたどん底に叩き落された。  
「ところでさー、皮チンてまだ経験ないの?」  
「え・・・まあ・・・そうだけどさ・・。」  
「だっさー。男で童貞が許されるのは中学生までだよねー。」  
「うんうん、今時ここまでヤッテないやつってサイテーだとおもーう。」  
一言一言が、皮村に重くのしかかる。  
 
「なっ・・・何だ、てめーら。林田だってまだヤッテねーし、それに東だって・・」  
そこまで言いかけて、皮村は口をつぐんだ。  
東は別の形で既に少年使用済みを果たしているが、いくらこの3人でも真実を語るには  
忍びないと思い、あえて黙っておいた。  
「んー。でも興味ないんだったら仕方ないんじゃない?無理やりするもんでもないしさ。  
でも、皮チンみたいにそんなにH関心ある人がやってないのはつっらいよねー。」  
「みんな・・・やったことあんの?」  
「もち!最初は痛いけど、もう天国みたいにきもちよかったー!Hマジさいこー!」  
「東君なんか普通に経験済みだよー。皮チンと比べたらつらいってw」  
「て・・・てめーら言いたい放題言いやがって・・・。」  
そのとき、さおりの携帯がうるさい音を辺り一面に撒き散らした。  
「あー、ごめーん。じゃあ、皮チンまったねー。」  
そういうと、3人はどこかへ行ってしまった。  
残された皮村は、いよいよ谷底へ突き落とされた気分になった。  
「くっそ・・・いっそホントに死んじまったりしてな。」  
皮村は屋上に上がった。強く吹きぬける風に背筋が凍った。  
下を見下ろすだけで体が縮こまる。  
「や・・・やっぱやめとこ。でも、このままじゃ男がすたるなぁ・・・。  
じゃ、じゃあ怪我しても死なない程度に・・・。」  
そういうと、皮村は2階に降り、2階のの窓から身をのりだした。  
(これで怪我でもすりゃ、みんなオレを心配してくれるだろ。い、行くか・・・。」  
皮村は気がひけたが、勇気を振り絞って窓から半分身を乗り出した。  
(ふ、ふん!こうなったのもあいつらが悪いんだ!誰も止めるなよ!自分で決めたんだ!)  
しかし、誰も止めるものはいなかった。  
皮村は、勇気を振り絞って身を空中に任せた。  
そのとき下側から多数の女子の叫び声が聞こえてきた。  
「いっ!?」  
多数の女子生徒の群衆の中心にいたのは、東だった。  
 
「うわああああああ!!!東!!!」  
皮村は身をよじろうとするが、もう遅い。  
ゴッツウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン  
皮村はちょうど東と頭の天辺同士が正面衝突する形でぶつかり、地面に崩れ落ちた。  
東も、その場に静かに崩れ落ちた後動かなくなった。  
「きゃあああああああああああああ!!!!あずまくううううううん!!!!」  
「何すんのよ!!!!このバカー!!!どっか行ってよ!!!」  
女子生徒たちは、皮村を一斉に放り投げた。  
 
「むぐ・・・・・」  
皮村はまもなくめを覚ました。しかし、普段と違う自分に気付くのにそれほど時間は要しなかった。  
何か、自分の手足が普段の感覚とは違うような気がするのだ。  
「あ!!東君が目を覚ましたよー!!東君大丈夫!?」  
「大丈夫!?東君、何ともないですか?」  
口々に、女子生徒たちが声をかけてくる。  
(えっ・・・東?何言ってやがるんだこいつら?東なら向こうに倒れてるだろ。)  
皮村は、ひどい頭痛でまだ自分を認識する余裕がなかった。  
(しかしあれだな・・・。みんな意外とオレのこと心配してくれてんじゃん。)  
皮村はすぐに立ち上がろうとするが、頭がまだズキズキする。  
「だめよー、東君、まだ立っちゃ。痛みが治ってからでないとダメだよ!」  
「わ、私お薬取って来ます!!待っててくださいね。」  
「私も!!」「私が先よ!!」  
その普段の相手方の反応の違いで、いよいよ皮村は今の状態を認識できた。  
皮村は、おそるおそる自分の頭を触ってみた。  
普段の自分の髪と違い、後ろで束ねられている。しかも、サラサラだ。  
そして、胸元にかけてあるネックレスで、皮村はやっと自分の状態を理解できた。  
(ま・・・・まさか・・・・・・東と入れ替わっちまった・・?さっきの衝撃で・・・?)  
 
皮村は、勇気を振り絞って後ろを振り返ってみた。  
ぽつんと見放されているはずの自分がいた。  
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!)  
皮村はショックで言葉も出なかった。  
(や・・・やべ・・・どうしよ・・・。まさかこんなことになるなんて・・・。  
おれ、このままこんななのか?もし自分の体に戻れなくなったりとかしたら・・・どうすんだ?)  
様々な思いが脳内を過るが、じっとしている暇はなかった。  
(と・・・とにかく、にげよっ!)  
女子生徒たちが目を離した瞬間に、皮村は走り出した。  
「あっ東君、待って!!まだ治療が終わってないわ!!」  
(お、かわいいな。電話番号でも聞いておけばよかったか。)  
「東せんぱーーーーい!!待ってくださ〜〜〜〜い!!!」  
(かわいいなぁ・・・。東のやつ羨ましすぎんぜ。)  
「あずまきゅ〜〜〜〜〜ん!!あたしだけをみて〜〜〜〜んw」  
(オエッ・・・なんだあのデブ。あんなのに抱きしめられたら圧迫死しちまう。  
東もいろいろ苦労してるんだな・・・。)  
体は違えど運動神経を駆使して、皮村はとにかく人目のつかない所に逃げ込んだ。  
「ふー、ここなら人もこねえし、大丈夫だろ・・・」  
「あら菊じゃない?お疲れ。上手く逃げてきたのね、ここまで。」  
ギクウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!  
振り返ると、ちょうどそこは武道場の横の庭だった。  
林田以下柔道部員たちの目に晒されてしまった。  
「何だよ藤原かよ・・・・!!びびらせんなって・・・!!」  
「あら?菊、ずいぶん言葉遣い荒っぽくなったわね。だめよー、人前でそんな風に話しちゃ。」  
「あああ・・・・いやいや、何でもない!!!」  
皮村は、いっぱい走った汗に冷や汗も手伝って、背中がべっとり濡れている。  
 
「じ、じつは藤・・・いや、虎呂助、さっき向こうで  
皮村とぶつかっちゃって・・・。幸い何ともなくてよかった。」  
「あらホント!?皮村のやついったい何考えてんのかしら。人に  
当り散らすなんていよいよ救われないと来たわね。」  
「そ、それが、あいつかなり発狂してたみたいで・・・万が一起きちゃったら  
大変なことになるかもしれない。だから、なるべく起きないようにしてほしいんだ。」  
「わかったわ。しっかりやっとくから。あんたも捕まんないようにしっかりやりなさいよ。」  
どうやら、まったくばれていないらしい。皮村は安堵の表情で胸をなでおろした。  
藤原は、林田と一緒に皮村の体を借りてまだ眠っている東を連れてきた。  
そして、縄で縛った後、倉庫に閉じ込めてしまった。  
「ふぅ。しばらくここで反省するがいいわ。酔いが冷めたらまた助けましょ。」  
「お、おおサンキュー(東、わりいな。おめーの体、しっかり利用させてもらうぜ)。」  
皮村は誰にも気付かれないようににんまりと微笑んだ。  
「おい東。どこ行くんだ?練習しないのか?」  
こっそりと場を抜け出そうとした皮村の手を、林田が掴んだ。  
「い、いや、その、ちょっとトイレに・・・。」  
「すぐ戻ってこいよ。今日は寝技の練習しねえけど、気を落とさずに練習しろよ。」  
「は、はいはい、わかりましたよ(こんなチャンス逃して誰が寝技の練習なんかすっか!)」  
皮村はそそくさと武道場を後にした。  
「あら・・・変ねぇ。いつもの菊ならもっとがっくりした表情隠せないもんなのに。」  
「ま、東もいろいろ忙しいし、ストレスたまってんだろ。」  
「そ、そうかしら(そういう時だからこそ、この男が発散の対象となるでしょうに・・・)」  
藤原の心中に宿る疑念は消えなかったが、そんなことはどうでもよくなり、  
藤原はいやいや練習に参加することとなった。  
皮村は、人通りがまだ残っている廊下をためしに歩いてみた。  
 
「キャーーーー東くんよぉ!!」  
「やだ、残っといてよかった!!こっちよ!!こっちこっち!!」  
たくさんの女子生徒たちがはやしたてる。一部の男子生徒はうざったい表情でこちらを  
睨みつけていたが、皮村にとってはあまり気にならなかった。  
(ふーん。人の視線を常に浴び続けるっつうのも何か違和感はあるが、悪い気分ではねえな。)  
皮村はまんざらでもないといった表情だった。  
そうこうするうちに、何人かが皮村の元にやってきた。  
そこは、みるみるうちに人でごったがえした。  
「わっ・・・ちょっちょっとそんなにくんなって。あぶなあぶなあぶな・・・!!」  
キャーーーーキャーーーーキャーーー  
皮村は、あっというまに女生徒たちの間に埋もれてしまった。  
そうこうするうちに、皮村は一人の生徒の胸を思い切りむんずと掴んでしまった。  
(あっ!!!しっしまった!!!またも天誅コーーーース!!)  
皮村は林田からの暴行が身に染み付いてしまっているので、さっと腕を顔の前で組んだ。  
しかし、自分が予想していたものとはかけ離れた反応が返ってきた。  
「あっ・・・。いやーーーん、東君のエッチィw」  
(は・・・な、何なんだ?オレの時はスケベだの死ねだの返り討ちにするくせによ。)  
皮村は不信感に囚われたが、それどころではなかった。  
「東くーーん、あたしもさわって!!」  
「私も!!!現役アイドルに触れられるのって一生の思い出よ!!」  
(ふん、どうせてめえら握手でもして、この手一生洗わなーいとか言っておきながら、  
次の日には何気なく普通に洗ってるって魂胆なんだろうが。何かムカつくぜ。)  
そう思いながらも、結局は本能に逆らいきれず、皮村は数人の生徒の体を触ってしまった。  
ただ、ぶさいくなファンについては、手だけで握手した(その後、手を入念に洗った)。  
皮村は、どさぐさにまぎれて数人の生徒のパンツも触っていた。  
手に残った感触を、人知れずそっと嗅いだ。  
その匂いは、何ともいえぬ芳香な香りが、漂ったような気がして、良い気分だった。  
 
皮村は、手に残った感触を確かめながら、フラフラと廊下をさ迷っていた。  
すると、向こうから2人の女性の声がしてきた。皮村は思わず柱の影に隠れた。  
「はーい、ほんじゃね、なつきー。校門辺りで待ってるから。」  
(あ、あの声はいつぞやのえみちゃんとさくらちゃん!)  
皮村は懐かしさをかみしめると同時に、「再戦」への想いを強くした。  
(散々あいつらには足蹴にされまくってたからな・・・。ようし、見てやがれ!)  
そう呟くと、皮村は満を持して二人の前に登場した。  
「あっ東君!!」  
「きゃっやだーーー!!こんな間近で見れるなんてあたしたちついてない?」  
皮村は、つい表情を曇らせてしまった。  
自分の正体がばれるのではないかという思いも完全には捨て切れなかったので、  
ぎこちない表情になった。  
「ふっ2人とも何の約束してんのかな?(やべっ何でこんなよそよそしい話し方なんだよ!)」  
「えー、3人で買い物ですよ、今年ももうちょっとですし、いろんな物買っときたいなーって。  
東君は、なにか予定とかあるんですか?」  
「あ、えーっと・・・はは・・・まあコンサートとかいろいろあるし、忙しいんだ・・・。」  
「えっ!?ホント?どこでやるんですか?あたしたちも行きたいです!!東京とかですか?」  
「年末に東君のライブに行けるのってホント感激だよねーー!なつきにも伝えなきゃ!」  
皮村は困り果てた。東なら当然脳内に予定は織り込み済みだろうが、全くそういう活動に  
縁のない身としては、詳しい予定など知る由もない。  
「そ・・・それが、いろいろスケジュールが埋まってて、今すぐにはわかんないんだ・・・。」  
「へー、やっぱ大変だね東君。」  
「そりゃそうだよー。あたしたちとは住んでる世界が違うもん。」  
(ふん。その言葉、こちとら散々浴びせられて耐えてきたんだ!てめえらにそっくり返すぜ!)  
皮村は内心ムッときたが、そこはあえて黙っておいた。  
確かに、東と自分を事あるごとに比べられるのは、全くの不合理であり、野暮というものだった。  
 
「それじゃー、東君、あたしたちもうそろそろ行かないといけないんで・・。」  
「また予定とかわかったら教えてくださいねー。」  
2人は、その場を立ち去ろうとする。  
皮村は、慌てて2人の前を遮った。  
「あ・・!!ま、待って!!も、もうちょっとだけ話していかない?どうせ暇なんでしょ?」  
「え・・・うーん、暇っていっても人待たせてるし・・。なつきに悪いなあ・・。」  
「だーいじょうぶだって!!なっちゃんにはオレの方からいろいろ言っとくから!」  
そういうと、皮村は2人を鍵の開いていたままだった空き教室へ招き入れた。  
(ふ・・・今までためてきた恨み、まとめてはらすぜ!!)  
皮村の理性が、いままさに切れようとしていた。  
皮村は、えみの服に手を這わせた。  
「やっ・・・ちょ、ちょっと・・・東君・・・」  
「たっぷりお互いの体同士、全身で話し合いたいな・・・。ねえ・・・えみちゃん。」  
「あ・・・東君・・・これって・・・夢・・・夢だよね?」  
「え・・・・えみずるいよ!!」  
隣で、さくらが声を震わせる。  
「まあ待ってなって、さくらちゃん。オレは2人もいねえんだ。平等にいかねえとな。  
それまで自分を高めて待ってな。」  
そういうと、皮村は手を離して、えみに命令した。  
「うーん、無理やり脱がせるもなんだか興奮しないなぁ・・・。自分で服を脱いでくれるかな?  
えみちゃん。」  
「う・・・うん、わかったよ、東君。」  
悟ったかのように、えみは自分で服を脱ぎ始める。  
靴を脱ぎ、横にきれいに置く。かいがいしくも、清楚な育ちの良さが伺われた。  
えみは、まずスカートの止め具を外し、制服を足元に落とす。  
ピンク色の下着から、すらりとした白いナマ足が生えている。  
えみの顔は、みるみる赤く染まってきた。  
 
えみは、上着を脱ぎ、これも床へ音を立てずに、静かに落とした。  
ピンク色の下と合わせた小ぶりのブラジャーが、意外な胸の膨らみを強調している。  
「あ・・・東くん・・・これで・・・いい?」  
えみは、下を向いたまま、皮村に問いかけた。  
「それで終わり・・・?えみちゃん。」  
ゆっくりと低い重みのある声で、皮村は話しかけた。  
「え・・・で・・・でも、これ以上は・・・・。」  
「それじゃあ・・・互いの一線を越えられねえよ・・・。全て出し切ってもらわないとな!」  
皮村は、えみのブラジャーを下にずり降ろした。  
乳房がおもむろに露出され、胸がプルンと震えた。  
「ほほう・・・。綺麗なピンク色だ。こちらはそれほど弄ばれてはいないようですな。」  
皮村は、手先でえみの乳首を、やさしくさわさわとなでた。  
「あんっ・・!!」  
えみは、小鳥がさえずるような甲高い声で、ビクンと震える。  
(ふん、知ったような羞恥心いっちょまえにつけやがって・・・。えらい違いだぜ!)  
パンツに手をかけ、東に内蔵されているしなる弾力で、一気にパンツをずり下げた。  
「きゃっ!」  
えみは、思わず顔を隠した。  
しかし、一生懸命顔を隠すのとは同時に、無防備な股間が辺りに晒された。  
うっすらとした産毛の中に、割れ目が少しではあるが見える。  
(うおお・・・こ、これが・・・・。エロ本じゃ何度も見てっけど、生で見たのは  
初めてだぜ!)  
皮村は、興奮を抑えきれない。  
「あ・・東くん・・・な、何するつもりなの・・・?」  
(へっまだ自分たちの立場を理解してねえようだな・・・。てめえらはもはや、  
オレの肉奴隷と化すんだよ!!)  
口に出してこそ言わなかったが、皮村の心は徐々に火照っていった。  
 
えみは、皮村の思うがままに揉みしだかれ、弄ばれるだけの存在となっていた。  
えみは、両手を縛られて頭より上へ押しやられていた。  
乳首を弄繰り回され、背中に指を這わせられ、耳に息を吹きかけられるような感触に  
耐えるのは困難であった。  
「あっ・・・んっ・・・ふう・・・東くん・・・やめて・・・・」  
びくびくと体を震わせながら懇願するが、皮村は脇の下からへその辺りまで、  
すぅーと舌を這わせた。  
「は・・・ああっ!!!」  
もはや、えみの理性は限界に近付いていた。  
皮村は、舌をしまって体をおこすと、えみの股間に指を這わせた。  
「そこは・・・・・・・・・・・・・ああああああん!!!」  
皮村は、人差し指と中指の2本で、えみの性器に指をつきたてた。  
そして、ゆっくりかき混ぜ始めた。  
えみは顔がますます赤くなり、涙がにじんできた。  
「やめて・・・はああんぁぁぁ・・・!!あずま・・・く・・・」  
透き通るような声ながらも、上手く声を出せなかった。  
かろうして正気を保っていた皮村の中で、何かが弾け飛んだ。  
皮村はえみの乳房にしゃぶりつき、乳首を嘗め回した。  
「やっ     あああああああっ!!!!!」  
えみの素肌は汗ばんでいて、しょっぱい味がした。」  
(すげぇ。ホントに勃起してやがるぜこの乳首。こんなに突き立つもんなのかよ。)  
クチュクチュ  チュルチュル  
いやらしい卑猥な水音が、皮村の理性を削いでいく。  
「東君・・・あたし・・・もう我慢できない!!!」  
振り返ると、さくらは既に自分から服を脱いでおり、上と下それぞれの自らの性器を  
自らの手でかき回していた。  
 
「へっ・・・さくらちゃん。話が早いじゃねえか。」  
そう笑顔でつぶやくと、皮村はさくらの股間に顔をうずめた。  
(まあ経験は既に2人とも済ませてんだろうがよ・・。でも、彼氏はここまで  
してくれっかな?)  
「あ・・・・・あぁは・・・・・・・・ン」  
さくらは、声にならない悲鳴をあげる。  
「さくらちゃん、今の気持ちは?素直に言ってよ。」  
皮村は、ゆっくりとさくらに問いかけた。  
「う・・・・・・き、気持ち・・・・いい・・・・東くん。」  
羞恥心に囚われながらも、さくらは小さく返事をした。  
「それでいいんだ、それで。」  
皮村はうなずくと、再び舌を這わせ始めた。  
少女たちは、自分たちが不思議な感情に支配されている事に気が付いた。  
命令に従ってしまいたい気持ちが、なぜか湧き出してくるのだ。  
皮村は舌先をさくらの股間に這わせながら、再び指でえみの股間をまさぐり始めた。  
(おらっ!気持ちいいかよっメス豚どもがっ!!)  
今まで受けてきた屈辱を倍返しするような気持ちで、皮村は力を入れた。  
二人のこしつきが、だんだん落ち着きを失くし始めた。  
「へっ・・・いい反応だな。おら、もっと舐めて貰いたいのかよ?」  
「な・・・舐めて・・・もっと舐めて東くん!!」  
自分の頭の中で考えてることと、喋る言葉が乖離してしまう。  
2人は、自分のいった言葉でさえも自覚を持てなくなっていた。  
皮村は、もったいぶった時にけりをつけるかのように、さくらを突き放すと、  
まずはえみに全力を注いだ。  
ヌルヌルとした温かい舌が、性器の周辺を嘗め回し、穴に入れたり抜いたりを繰り返す。  
「ふはぁぁぁぁぁっっ・・・・ああっ!!!」  
えみは、頭の中まで赤くなるような気がした。  
 
チュ、チュという音が、ねばねばとした感覚を音で表現してくる。  
(かなり敏感になってやがる・・・こりゃもう少しでいくな・・・。  
気持ちよさそうにしやがって淫乱娘が・・・。)  
皮村は下からえみの顔を伺いながら、舌の勢いを速めた。  
「ああっ・・・!!!あっ・・・・!!!!」  
少女は、ついに焦点の合ってない瞳で、激しく背筋を震わせた。  
「あーーーーーーーーーーーっ!!!!」  
背中を反らせ胸を震わせて、少女はエクスタシーを露にした。  
「へっ・・・いっちまいやがった。さてと、もう一人っと・・・。」  
皮村は、自らの手で性器を弄ぶさくらの手をほどき、舌を入れた。  
さくらは、もはた甘い官能を受け入れるしかなかった。  
チュルチュルと唾液が充満していく膣内は舌の動きに耐えようとするが、  
もはや文字通り「なされるがまま」であった。  
皮村が舌を抜こうとすると、さくらはうつろな瞳で皮村に訴えかける。  
「やめないで・・・・」そう聞こえる。  
さくらは目を閉じて足を広げ、官能のなすがままになっていた。  
乳首をこりこりと舐められ、性器を舐め尽されている。  
小刻みに腰を動かし胸を震わせ、自ら官能を求める。  
「メス豚が・・・。」  
皮村は、急激に舌の動きを早めた。  
(おらっ!!おらっ!!イキやがれっ・・!!!)  
そう脳内でつぶやき、皮村は舌先に全神経を集中させた。  
「ん んんっ んんんん・・・・・・・・・!!!」  
その顔先に、少しではあるが、ぬるぬるした液体がかかった。  
えみと違い、さくらはまだそれ程の経験はないようだ。  
皮村は、ティッシュで自分の顔を拭いた後、立ち上がった。  
その顔には、達成感と同時に、何かやるせなさが漂っていた。  
 
「はあ・・・はあ・・・東君、もっと・・・・。」  
「もっといろんなことして!・・・東くん・・・。」  
2人は途切れ途切れの声で皮村に訴えかける。  
しかし、皮村にはある種のむなしさに包まれていた。  
(・・・・・。虚しい・・・。何なんだよ、この虚しさは・・・。今は絶好のチャンス  
じゃねえか・・・。なのに、やる気が湧いてこねぇ・・。)  
皮村は、またゆっくりと徘徊し始めた。  
「あう・・・・ま・・・待って・・・・東君・・・・」  
2人の声も、皮村には届かなかった。皮村は、その場を離れた。  
皮村は、ぽっかりと胸に穴が空いたような気分だった。  
これが自分が望んでいたことなのだろうか。  
いや、何か自分が求めているものとは違う。  
しかしだからといって、何を求めているのか、自分でもわからなかった。  
皮村は、それからは何をしでかしたのか自分でもよく覚えていない。  
ただ、何となくすれ違いざまに自分の気に入った女を陵辱すること。  
これだけは、脳の片隅から自分をかろうじて捕らえていた。  
ただ、自分を止める事はできなかった。  
多くの女性が自分の舌や指使いの前にひれ伏せ、さらなる行為をねだる。  
ただ、そこから先は、どうしても一線を越すことはできなかった。  
「・・・・・・。おれ・・・・いったいどうしちまったんだろな。  
セックスって・・・何なんだろな。へっ何か悟り開いちまってるよ。」  
そうぐだぐだ呟きながらも、言葉では表現し得ない不思議な感覚に囚われた。  
軽々しく性行為に及ぼうとする自分が、どうしても納得できなかった。  
「おれがしたいセックスは・・・こんなんじゃねぇ・・・。」  
廊下に多数の女子生徒たちを失神させ、皮村はひたひたと廊下を歩いていた。  
 
ちょうどその頃練習に熱が入っていた林田は、一旦練習を止めることとした。  
皮村と東がいないおかげで余計標的にされた藤原は、チョメジを酷使されたことで  
衰弱しきっていた。  
「あぅ・・・・・へぁ・・・・も・・・・もう死・・・・死ぬわ・・・・・」  
藤原は今にも死にそうな声を絞り出す。その声もどんどん小さくなっていく。  
「もう・・・。わかったって!!すまねえな。ちょっといつもより余計に気合  
入れちまった。今日まだ売店は開いてたな。すぐカツサンド買ってくっから!!」  
林田は、一握りの小銭を持って武道場を飛び出した。  
「よ、よーし。今日こそは絶対に見逃さないぞ・・・。」  
桃里は、いつのまにかビデオを持って藤原の横に座っていた。  
藤原が変化する瞬間を、ばっちりテープに抑えようという目論見だった。  
藤原の顔がだいぶやせこけてきたので、桃里はビデオを構えた。  
ハ  ッ  ク  シ  ョ  ー  ー  ー  ー  ン  !!!  
べり子と壁にもたれかかって寝ていた三浦が、激しいくしゃみをした。  
そのおかげでビデオは飛び、スカートは激しくめくれた。  
今日は終業式だったこともあり、短パンを履いてきていなかった。  
「きゃあ!!!」  
桃里は慌ててスカートを抑えた。そして、ビデオを拾って手に取り直した。  
そのとき、桃里は何か物足りなさを感じた。。  
「そっか・・・。いつもだったらここで皮村君がカメラで私のこと撮って、  
林田君の人知を超えたつっこみを受けるとこなんだ・・・。皮村君が  
いないとつまらないこともあるのかなって・・・今さらだけどそう思う。」  
そういろいろ思い悩んだ挙句に、桃里は藤原のことを思い出し、慌ててビデオを構えた。  
しかし、時既に遅く、藤原は美形化をすませていた。  
「あーーー!!!!しまったぁぁぁぁぁ!!!またまた変わる瞬間見逃したぁ!!」  
桃里は文字通り地団太を踏んで悔しがった。  
 
林田は、カツサンドを買うため階段を登っていった。  
どこかへ消え去った東(実際は皮村)、眠らせたままの皮村(東)、  
そして終業式の時からずっと眠りこけている三浦さんのおかげで、  
なかなか練習に集中できなかったが、チョメジのおかげでなんとか  
くいつなぐことができた。  
「くっそ・・・。皮村のやつ、起きたらただじゃおかねーからな!」  
そう呟きながら、林田が売店へいこうと階段を登っていた時、  
林田は倒れている女子を目撃した。  
林田は慌てて駆け寄った。  
「おーーーい!!!大丈夫ですかぁぁぁ!!誰にやられたんですか・・しっかりして!」  
林田は一生懸命揺り動かすが、女子生徒は上の空でつぶやいている。  
「あ・・・あじゅまく・・・・ん・・・もっと・・・・」  
「あ・・・東が・・・どうかしたんですか?」  
しかし、女子生徒はそれ以上なにも言わなくなった。  
ふと先を見ると、他にも何人もの生徒が倒れている。  
とにかく、一人だけではどうしようもないため、林田はカツサンドを買って帰った。  
そして、事情をみんなに説明した。  
「ふーん。ただごとじゃないわね。とにかく、菊がなんか知ってるかもしれないから  
菊を探しましょ。皮村にはもうしばらく我慢してもらうしかないわ。  
とりあえず、部長は1棟の方から探してちょうだい。モリモリは3棟からね。  
あたしは体育館から探すわ。」  
そういうと、部員たちは各方面に散らばった。  
(あぁぁ・・・・結局最後まで見逃しちゃったよ・・・。)  
桃里は、ムダに終わったビデオをしまい、がっかりしながら道場を後にした。  
 
 
皮村は、当てもなくふらついていた。  
自分はどういう気持ちに抑えられているのか。自分はどこへ向かおうとしているのか。  
それさえも、知る由もなかった。ただ、その2本の足が動く方へ、なんとなく  
歩いているという感じだった。  
「あーーーー東君だーーーーー。」  
ふいに、夕陽の澄み渡る学校の中の物静かな雰囲気を一掃するかのような明るい  
声が、構内に響き渡った。  
(あ・・・なっちゃん・・・)  
通りがかったのは、学校帰りの中村奈月だった。  
「東くーん、えみちゃんとさくらちゃん見なかった?おかしいなー、  
せっかく約束してるのにー。どうしたんだろ。」  
いつもは同じほどの視線から眺めている奈月を、人より頭一つ抜け出ている東から  
眺めるのはとても心地よかった。  
奈月のしぐさの一つ一つが、皮村にはいとおしく思えた。  
皮村は、かつて奈月から「無理」の烙印を押されたことがある。  
皮村は、そのリベンジを果たすつもりだった。  
(おれが「無理」かどうか、全身全霊をかけて確かめてもらおうじゃねーか!)  
皮村は、すぅと大きく深呼吸すると、さりげなく切り出した。  
「な、なっちゃん・・・おれ・・・いや、僕と一緒に来て欲しいんだ。」  
そういうと、いったん気まずい空気を気にした後、皮村は再び切り出した。  
「だ、だめかな・・・?」  
奈月は首を傾けて不思議そうな表情を浮かべた後、にっこり微笑んだ。  
「いいよー。じゃあ2人がくるまでちょっと時間つぶしだね。」  
奈月はなんの疑いも抱かずけなげについてくる。  
皮村は、そんな奈月をいとおしく思うと同時に、むらむらと腹の底から  
湧いてくる感情に、うすうす気付き始めていた。  
 
皮村は先程の空き教室を使おうとしたが、鍵は教師の誰かによって閉められていた。  
先生はもう誰もいないようで、職員室前にも誰一人いなかった。  
皮村は、奈月を連れてどこか適当な場所を探していた。  
「おーーーーい、東ぁぁぁぁぁぁ。」  
不意に、遠くから林田の声が聞こえてきた。  
「あっ林田君だぁ。ねえねえ東君。林田君が呼んでるよ?」  
(やべっ!!林田だ!!見つかったら最後のチャンス逃しちまう!!)  
「なっなっちゃんこっちこっち!!」  
皮村は、急いで奈月の手をひいて、どこへとも当てもなく逃げた。  
そして、いつのまにか武道場へ来てしまった。  
先程まで武道場で寝ていた三浦とべり子は、もういなくなっていた。  
年末のパーティを、両方の家族そろって行うための準備をするためだ。  
皮村は誰もいないことを確認すると、部室に入った。  
そして、こっそり林田の制服から拝借していた鍵を使い、ドアを閉めた。  
「あれー。東くんどうしたのー。鍵なんか閉めちゃって。」  
奈月は怪訝そうな表情で皮村をみつめる。しかし、不安そうな表情はない。  
皮村は、冷や汗をつうとたらした後、ぽつぽつと話しはじめた。  
「な・・・なっちゃん・・・いつでも逃げられたはずなのに・・・。  
どうしてここまでついてこれるんだよ。年頃の男とこういう密室に閉じこもって  
どうなるかはわかってるだろ。なんでそういうことに無頓着なんだよ・・・。」  
皮村は、ゆっくりと声を震わせながら、恐る恐る奈月に尋ねた。  
「んー。」  
奈月は困惑の表情を浮かべた後、笑顔で語りだした。  
「大丈夫だよ。よくわかんないけど、東君は変なことする人じゃないし。どんなに  
普段あえなくても東君は私の大事な友達だもん。もちろん林田君もね☆」  
冷静に考えると、別に皮村にとって嬉しいことでもなんでもないが、今はそれはどうでもよかった。  
皮村は自分の中でこみ上げてくる感情を我慢できなかった。  
 
「うぅ・・・なっちゃん・・・かわいい!・・・もう我慢できねぇ・・・!!」  
皮村はすっと奈月に寄り添うと、そのまま背中に手を回し、一気に抱きかかえた。  
「きゃ・・・東君、だめだよぉ・・・。東君の恋人は・・・林田君でしょ?」  
奈月は、抱きかかえられたままながら、何とか声を絞り出す。  
皮村は、自分が東の体を借りている事を思わず忘れていたので、あわてて  
突拍子もない理由でその場を切り抜けようとした。  
「あぁ・・・いや、これはその・・・ほら、林田の・・・部長との恋の成就のための・・・その、  
あれだよ。シミュレーションみたいなものだよ。だから・・・。」  
奈月は、くすっと笑った後耳元で皮村に微笑みかけた。  
「わかった。私にできることなら何でも言って。ちょっとだけでもいいから、東君の  
力になりたいな。東君は私の大事な友達だもん☆」  
奈月は皮村の瞳を見返した。東を本気で心配している奈月の目は、心なしか潤んでいる。  
皮村が今までにためてきたテクニックが、いよいよその本領を発揮する時が来た。  
 
皮村は、そのまま奈月の背中を撫で続けたり、背中を服の上からやさしく触ったりした。  
こうして長くゆっくりお互いの体を触れ合わせることで、お互いの緊張がほぐれるからだ。  
皮村は、奈月の耳にかかっているおさげをそっと撫で、指にからめたりした。  
奈月の体から発せられる匂いとその息遣いに、皮村は虜となった。  
「少し楽にしてあげるよ、なっちゃん。」  
皮村は、奈月を膝の上に座らせ、椅子にもたれるような感じの楽な格好にさせた。  
そして、ゆっくり制服のボタンを外していった。  
皮村は、一つずつ自分に言い聞かせるように、慎重に作業を進めていく。  
何か、自分が求めていた答えが、少しずつ現れてきているような気がした。  
「やっ・・・」  
吐息が漏れる。薄いピンク色の下着がちらりと覗いた。  
身体的な拘束を少しずつ解くほぐし、後は、精神的にも楽な状態にすること。  
皮村に、あせりはなかった。  
 
皮村は、また奈月の背中をなで、腕を回してお尻もやさしくさすった。  
「いやん・・・・ダメ・・・・」  
「もうちょっと楽になろ、なっちゃん。苦しいでしょ?」  
皮村は奈月の制服を下半身にかぶせ、その下からゆっくりとスカートのファスナーを  
下ろしていった。  
「あっ・・・ヤーン、東君のエッチィ・・・」  
目の前にはパンツと、白くほどよい太さの健康的な太ももが見えている。  
これで、奈月はいつのまにか下着だけとなった。  
「どう?なっちゃん。気持ちいい?少しは楽になれた?」  
皮村は、耳に息をふきかけ、そっと囁いた。  
「んっ・・・」  
奈月は、目を閉じてわずかながらに息を乱している。  
そんな奈月を見ると皮村はまたたまらなくなり、耳を少し舐めた。  
「あっ んぅ・・・」  
奈月はたまらず、敏感な声を出す。ここぞとばかりに、皮村は攻めに転じた。  
左耳を弄びながら、自らの指で奈月の髪をかき、あごをさする。  
たまらなさそうに眉をしかめ、東をみつめる奈月の表情にも、皮村は満足感を  
感じることはなかった。  
最初は軽く、奈月の唇にチュッと口づけをした。  
そして二度目は、ねっとりと舌を絡めた。  
歯の裏側や歯茎の感触を楽しみ、舌を絡める。  
舌先をとがらせて内側から頬をなぞり、奈月の舌を吸った。奈月の唾液は甘かった。  
「これも・・・ふぅ・・・れ、練習の一環だと思って・・・ごめんね、なっちゃん。」  
「ん・・・だ、大丈夫だよ。東君。」  
奈月は、わらってこたえる。その笑顔を見て、皮村は安心したように再び行為に走った。  
 
皮村はかがんで奈月のふくらはぎに舌を這わせ、膝の裏をペロっと舐めとった。  
「ん…ッ!」  
奈月は、自分に正直な声しか出せなくなっていた。  
皮村は、そのまま太ももを撫でながら、おへそより下のお腹の中心線を舐め上げた。  
「ああっ!」  
快感に、奈月は身をうねらせる。いつのまにか、パンツは濡れ細っている。  
彼女はもう無意識に「スタンバイ状態」になっていた。  
ちょっと趣味が変わっているとはいえ、彼女も立派な年頃の女性だった。  
皮村は、ごくりと部室内に響くような音で、唾を飲み込んだ。  
(ダメだ・・・楽しみはもうちっとだけ後に・・・とっとかねえとな・・・。)  
そう思いながらも、ややあせっている様子の若者の両腕が、少女のウエストに延び、  
乱暴気味に自分の方に引き寄せた。  
開いた両脚の中に取りこむ様に引き寄せた肉体が、僅か数センチの距離をおいて  
若者の目の前で息づいていた。  
あまり膨らみの無い、小さいが形のくっきり浮きでた乳首が貼りついている胸が、少女の呼吸に  
連れて穏やかに収縮しているのを見た瞬間、どんなに普段自分の嗜好に沿った行動をしていでも  
決して失われる事の無かった理性が、この時若者の「意識」から姿を消した。  
皮村の唇が、奈月の乳首を捉えた時、少女は思わず大人顔負けの吐息を漏した。  
先程までと違い、皮村は自分の仕草一つ一つに充実感を味わっていた。  
皮村の手が少女の両脚の内側に当てがわれ、単純な形状のデルタ・ゾーンに  
沿って指を這わせ始めた。薄い茂みが生える中にある性器の形状を、  
皮村はじっくりと味わう様に撫で続けた。  
「んん・・・林田君、ずるいなぁ・・・。いつもこういう風にして、東君にやさしく  
包まれてるのかなぁ・・・。いいなぁ・・・。」  
本当に心底東を信頼しているのか、奈月は安心しきった表情で、そう呟いた。  
その言葉から、皮村は奈月に対する好奇心が、グッと以前よりも膨らんだ。  
奈月のけなげな態度が、皮村に単なる性欲以上の感情を芽生えさせた。  
 
先程まで乳首を味わっていた皮村の唇が、少女の唇に重ねられた。  
(なっちゃん・・!!なっちゃん・・・!!)  
奈月個人に対する興味と、奈月を抱いているという好奇心が皮村の中で  
融合し、それはより強い思いへと昇華しつつあった。  
「ん・・・ふぅ・・・」  
奈月の舌と唇をたっぷり味わった皮村は、ようやく口を放し、奈月の頬から首筋へと、  
舌を這わせた。  
細い肩口からさ骨へと舌を這わせ、愛しそうに両の乳首にキスをしたあと、皮村は上体  
を起こし、奈月の閉じた脚にとりついた。  
皮村は、股関節を痛めないように、ゆっくりと奈月の両足を開かせた。  
大きく開脚した太ももの付け根がへこみ、そのへこみを貫くように「すじ」が小さく  
盛り上がっている。その両側に、まだ小さい形状でしかない秘部が、わずかではあるが  
口を開けていた。  
皮村の差し指が、敏感で脆弱な少女の秘芽を、指先で転がす様に弄び始めた。  
淫猥で心地好いその感触を、皮村はゆっくりと愉しみ続けた。  
「あ、あ、ああ…」  
目をトロンとさせて小さくも色気づいたあえぎ声を出し、苦しそうな表情をしながらも、  
その快感ゆえ、奈月は脚を閉じる事はできなかった。  
込み上げる性感に必死に耐え、相手の欲求を余す所無く受け容れようとしている少女の健気さに、  
皮村は自分でも信じられない程の充実した気分を味わっていた。  
こんな素晴らしい女の子と出会う事が出来た事を、皮村は心から感謝する気持ちになった。  
(なっちゃん・・・ホントいい子だ・・!!)  
顔を近づけた皮村の鼻坑に、尿とはまるで異なる臭い…というより芳香が漂って来た。  
奈月が放つフェロモンの成分を感じた様な気がした皮村は、思わず開かれた秘裂に口づけ  
し、クリトリスの肉芯を舌先でしゃぶりあげた。  
「ひっ・・・!!あ、あ、んーー!!」  
奈月の今までとは違う声の発し方に、皮村は最後まで「進む」ことを決めた。  
 
 
一方、そのころ林田たちはえみとさくらを見つけていた。  
一番先に二人を発見していた藤原は、林田に鼻にティッシュをつめておくよう指示した。  
二人は、痛々しい姿で発見された。  
「・・・・ひへぇ(ひでぇ)・・・・。」  
「あんた、そんな顔で言ってもあまりかっこつかないわよ。」  
「そんな問題じゃないよ!だ、大丈夫ですかぁ!?」  
桃里は2人を交互にゆすった。2人は、涙を流しながらうわごとを述べた。  
「うあう・・・東君・・・ひどい・・・最後まで・・・してよぉ・・・」  
「東君・・・・はぅ・・・」  
「やっぱり東君が何か・・・藤原君!!」  
桃里は、助けを求めようと藤原を見た。一番冷静な藤原に頼るしか、局面を打開する  
見込みがなさそうなことあっての頼みだったが、林田は自分の頼りなさを改めて実感した。  
「・・・そういえば、やけに菊のやつ男言葉で喋ってたわね。なんか怪しいそうだったし、  
部長にも無関心だったし・・・。まさか・・・と、とにかく道場に戻るわよ!!」  
「よし、皮村を起こして事情を聞いてみよう!!」  
3人は慌てて武道場へ走り出した。  
 
皮村は、自らの肉棒(この場合は東のものだが)を突っ立てていた。  
東の肉棒は膨張度を高めており、血液の鼓動が体の中にまで響いていた。  
あまり使い込まれていない肉棒だが、林田のために使われていようとは・・。  
こんな状況だというのに、皮村は涙が出ていた。  
(今まで間違った使われ方をして・・・可哀想に・・・。オレが正当に使ってやっからな。)  
「なっちゃん・・・いくよ。こ、これも練習のうちだからさ、我慢してね。」  
皮村は、おそるおそる性器の先を、奈月の性器の先にあてがった。  
(い、いよいよか・・・。お、オレの長く辛かった人生に、今ピリオードが・・・。)  
皮村は大きく深呼吸した後、肉棒を一気に挿入させた。  
 
「あん・・・・・んんんんんんん!!!」  
奈月は一番甲高い声をあげた。  
思った以上に締め付けが強く、肉棒の周りをねっとりした肉襞が覆った。  
(うおおおおおおおおおおおおお・・・・こ、これが・・・・・)  
温かい肉に自身が包まれている事を、皮村は実感した。  
ゾクゾクと背中に迫ってくる快感に耐えながら、皮村はまた奥まで突き立てようとした。  
「いたい!!いたぁぁぁぁぁい!!!」  
奈月は全身をばたつかせて、激しい痛みを訴えた。  
自ら体内でこしらえた液によって痛みは軽減されてはいたが、収縮している膣壁の括約筋が  
押し広げられる痛みは避けようがなかった。  
「うわああああん、いたいよぉ!!!!」  
少女の悲鳴が、周囲にこだました。  
「わ、な、なっちゃん!!そんなに声出すと聞こえちゃうよ・・・・。」  
皮村は、仕方なく少しでも痛みを与えないよう、奈月の中でじっとしていた。  
しばらくすると悲鳴も下火になり、奈月の表情も次第に落ち着きを取り戻した。  
「ご・・・ごめんね、なっちゃん。ま、まだ痛い?」  
涙でくしゃくしゃになった顔を皮村に向けながら、奈月は小さく頷いた。  
その仕草に、抑えていた本能がぶちきれた。  
皮村は、自らを押さえつける肉襞を振り払うかのように、自身を前後に動かした。  
「あんっ あんっ あっ あっあっあっ だめ かはっ ああ あー」  
奈月は苦しそうに刺激に耐えて、悩ましげに背中を反らせている。  
挿入したペニスに繋がったカラダの中心線がひしゃげ、伸びて、  
カラダの中の快感を外に逃そうとする。  
「東君・・・こわいよ・・・私・・・どうしよう・・!!」  
感じたことのない快感に奈月は恐怖を感じている。  
ピストンをするたびにクチュクチュという卑猥な水音の中で、  
奈月はボロボロ涙を流していた。  
 
「な・・・なっちゃん・・・き・・・気持ちいい・・・・!?」  
皮村は息も途切れ途切れに言葉を搾り出したが、自分でも何を言っているのかよくわからなかった。  
「あっ ああっ あっ 何かくるよっ あっ あーっ!」  
何かがゾクっときたようで、奈月のカラダが痙攣を起こしはじめた。  
皮村は、奈月が最初はどうしたのかわからなかったが、彼女がイキつつあるということを理解した。  
(うわっ・・・やっやべっ!!・・・・オレもいっちまう・・・やべえよおお!!!・・・・)  
中に出すのはまずいと思ったが、肉棒を引き抜けない。  
「な・・なっちゃん!!もっと力を抜いてって!!」  
しかし奈月は自らの膣に力をいれすぎているため、半抜きの状態のまま引き抜く事はできなかった。  
「来ちゃう・・・・!!!来ちゃう・・・!!!!」  
「うわぁぁぁぁぁなっちゃん・・・!!!」  
2人に、至福の時が訪れた。  
「ああああああああああああああああああああああんっ」  
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・」  
ビクン・・・・・・・ビュリュッ ドプッ  グププッ  
皮村は朦朧とした意識の中で、放出の鼓動を感じていた。  
脳下部から脊髄までビクっとするような信号が走り、背中を通り腰から前立腺に溜まる。  
(や・・・やっちまった・・・・。)  
奈月の腰から力が抜けた事を確認して、皮村は肉棒を引き抜いた。  
最高のセックスだった。死んでもよかったくらいの。  
ただ、皮村は改めていろいろ思いなおした。  
「今度は・・・俺自身の体で・・・・こんな素晴らしいセックスができるんだ。  
オレだっていつかは・・・・」  
皮村は、そう心に誓った。  
 
さて、ここで終わりかといえば、そうは問屋が降ろさない。  
「おい!!!東!!!そこにいるのか、開けろぉ!!!」  
ドアの向こうから林田の声が聞こえた。  
 
「ゲッ!!!!!!!林田!!!!!!」  
林田たちが武道場に戻ってきていた。  
藤原と桃里は東を起こしに倉庫へ言っており、林田が皮村を見るはずだった。  
しかし、鍵は閉めている。  
(や・・・やべ・・・こ、このままあけるわけにもいかねえよなぁ・・・)  
皮村は、そこらじゅうに飛び散った白濁液を拭いていた。  
 
一方、肉体を変えられた東は倉庫の中で起きていたが、体を縛られていた。  
「皮村!!」「皮村君!!」  
藤原と桃里は倉庫に入り、縄を解いた。  
東は、目に涙を溜めていた。  
「うーーーー・・・・虎呂助ぇ!!ひどいよぉ!!僕が何したっていうのぉ!!」  
東は、藤原の姿を見ると安心したように抱きついた。  
「どわわっ!!ちょいとやめなさいよ気色悪い!モリモリにでも抱きつきなさいな!!」  
「藤原!!ダメだ!!中から鍵が・・・!あっ皮村、起きたのか!!てめぇがいない  
間にいろいろ大変なんだぞ!!」  
「あっぶちょー☆」  
「しぎゃああああああぶっとばすぞてめぇぇぇぇぇ」  
林田は、東を拒んだ。体が違うから当然だ。  
「そんな・・・部長まで・・・みんなどうしたの?・・・ひどいよ・・・」  
「おい、こいつマジで泣いてるみたいだぞ。」  
「とにかく後よ。まずは部室を開けるわ。ミウミウがいないから力では無理ね。チョメジ!!」  
藤原はチョメジを呼び出した。  
「よし・・・ひさびさにためしてみるか!!名刀、藤原の守猪命次の切れ味を!!」  
そういうと、チョメジはドアの前に立った後、刀を構えて集中した。  
「・・・・・・・・・・・・・・・斬!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」  
ドアは真っ二つに割れた。  
 
「ふっ・・・またつまらぬものを斬ってしまった。」  
チョメジはそうつぶやき、刀を納めた。  
「うあう・・・ドアの修理代がぁぁ・・・また鬼藤先生にぶん殴られるよ・・・」  
「とにかく中に・・・・・菊!!!!!」  
「東君!!!」  
「東!!お前何やってんだ!!・・・・それに、中村さん!!!」  
(やっやべ・・・・)  
皮村は、しどろもどろの口調で、いいわけを喋りだした。  
「いやぁ・・・これはその成り行きで・・・・」  
「こ、虎呂助ぇ、なっちゃん死んでるの?」  
東が震える声で藤原に話しかけた。  
「・・・・・・・皮村・・・・・・・・あんたまさか。」  
藤原は桃里の手をひき皮村の体の東の前に連れて行き、いきなりスカートをめくった。  
「きゃっ!!ち、ちょっと藤原君!! 」  
「さっき、痩せてる時にあんたが短パン履いてきてないのが見えたのよ。  
これではっきりするわ!!」  
東は、当然無反応だった。桃里は完璧に無反応の皮村が恐ろしく思えたほどだった。  
「や・・・やっぱりおかしいよ!ね、林田君。・・・!!」  
林田は思わず上を向いていた。ただ、鼻血はそれでも垂れていたが。  
「あんた・・・菊ね!!体が入れ替わっちゃったのね・・・!!」  
「そんな・・・虎呂助・・・どうしよう・・・もう・・・戻れないのかな・・・。」  
皮村は、東の姿を見て可哀想にも思ったが、開き直った。  
「ど、どうせ仲良く体を入れ替えて元に戻すっつう展開になるんだろ・・。  
い、いやだぜ。おれはまだまだ楽しみてえんだよ!!」  
皮村は逃げ出そうとした。  
「皮村ぁぁぁ!!!そうとわかりゃ容赦しねえぞ!!!」  
林田が立ちふさがる。  
 
「ちっ・・・!!!」  
皮村は、捕まるのだけはなんとしても避けたかった。  
しかし、頭の回りが速い皮村は、いい案を思いついた。  
「フォーーーーーーーー!!!!」  
そう叫び、林田に踊りかかりる仕草を見せた。  
「わっ!!!!!」  
思わず林田はよけてしまった。ぽっかり空いたスペースから、皮村は外へ逃げ出した。  
「しまった!!つい、いつものくせで・・・!!」  
「部長!!こっちはホントに発狂しようとしてるわよ!!」  
見ると、皮村の姿をした東の目が凛々と燃えている。  
ただでさえ芸能活動に忙しく林田と接触する機会のなかった東は、長時間の拘束により  
限界を通り越していたのだ。  
「フォーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」  
「うあああああああああその姿だから2倍やだあああああああああああ!!!!!」  
林田は部室を出て逃げまくった。しかし、東にあっという間に追いつかれ、壁に追い詰められた。  
東は、勢いよく林田に突進していく。  
「もうだめだぁぁぁぁぁ!!!」  
皮村はこっそり道場から逃げようとしたが、藤原が髪を伸ばして捕まえた。  
「いちかばちかね・・・・・・・メリャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」  
藤原は思いっきり皮村を掴んで2人の間に放り投げた。  
ちょうど東の唇と皮村の唇が接近し、熱い口づけを交わした。  
ブチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ  
思わずお互いの舌がお互いの口に入るほどの強烈なものだった。  
「・・・・うぜぇ・・・・・ド、ドラゴン○ールか・・・・よ・・・・・」  
2人はそのまま倒れて動かなくなった。  
「皮村!!!」「皮村君!!!」  
2人は皮村にかけよった。藤原は東の状態を見る事にした。  
 
皮村は、うっすらと目を覚ました。  
「・・・・・・よ・・・よかった・・・・オレ・・・・戻れたんだな。」  
「皮村!!!」「皮村君!!!」  
皮村は、ゆっくりと語り始めた。  
「おれ・・・自分の好きなように生きて・・・自分のやりたいことやれれば・・・それで  
幸せかなって思ってたんだ・・・。だけど・・・間違った形で・・・それを表現しちまった・・」  
ゴフッ!!  
皮村は口から血を流した。  
「皮村ぁ!!そ・・・それ以上喋るな!!」「皮村君!!」  
「林田・・・森さんを、柔道部をよろしく頼んだぜ・・・。」  
皮村はそういい残すと目をつぶった。  
「皮村君!!いやぁぁぁぁぁ・・・・・」  
桃里は皮村を思わず抱きしめた。林田は涙ながらも、皮村を少しうらやましいと思った。  
「いっいやぁぁぁ!!」  
思わず桃里があえぎ声を出した。皮村は、桃里の胸元に自分の顔をうずめて動かしていた。  
「やっら〜〜〜!!!森さんとの初パフパフ成功ら〜〜!!!」  
皮村は桃里の胸にうずもれたまま、ピースサインを出した。  
「やっぱお前、死んでいいよ。」  
林田は皮村をつかみあげた。  
「んだよ!!!てめえのやったことと同じじゃねえかぁ!!これでイーブンだろ!!」  
そういって皮村は、林田の髪を掴んだ。  
「これで終わりだz・・・」  
「ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダァァァァァァァっ!!!」  
髪をつかまれたにもかかわらず、林田は雨あられのパンチを皮村に浴びせた。  
「あ・・・また林田君人知を超えちゃってるよ。」  
桃里は、またも冷静に迷走キャラならではのつっこみを入れた。  
 
「ムダムダムダムダムダ・・・・・・・・」  
林田のマシンガンパンチは続いていく。それでも皮村がひるまないのを確認すると、  
林田は最後の一発で皮村を高く打ち上げた。  
「ザ・ワールド!!!!!!!!!!!〜時よとまれ〜」  
皮村は空中でピタリと止まった。  
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!??????」  
桃里がべたなさけびごえをあげる中、林田は数十本のナイフを、皮村に投げて、突き立てた。  
「・・・・・・・・・そして時は動き出す・・・・・・・・・・・・」  
そうつぶやくと、皮村は再び動き、ナイフがささったままマットに倒れた。  
「あ〜〜〜〜林田君、人知を超えすぎて宇宙人になっちゃったよ。」  
「あんたねー。そうやって他社の人気漫画ぶり返すようなことしなさんな。  
小学館から苦情来ちゃうわよ。」  
藤原は元の雰囲気が戻ってきた事を肌で感じ、ふっと笑いながら話した。  
「東君〜〜〜〜。」  
振り向くと、道場の前にたくさんの生徒たちが押しかけていた。  
皮村が乗り移っていた時の施しを受けた生徒たちだった。  
「あの時の続きお願い〜〜〜!!!」「あたしにも!!あたしにも〜〜!!」  
「あたしが先よ!!!」「何よ!!私が先よこの豚!!」「言ったな〜アバズレ!!」  
「うわああああん、一体何々〜〜!?ぶちょ〜〜〜!!!!」  
東は慌てて外へ逃げ出していった。たくさんの群衆が東を追いかけていった。  
その様子を、にっこり笑いながら見つめている奈月がいた。  
 
-------------------------------------------------------------(完)----------------  
 

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