体育祭当日。彼らに最高の環境を与えようとすべく、初秋の陽射しがとても  
まぶしいグラウンドのもと、生徒達は体操服にきがえ、整列していた。  
生徒達はぎこちないながらも行進を終えて台の前に整列しているが、  
その異様な光景にざわめきは収まらなかった。  
教職員・保護者・来賓が誰一人としていないのだ。  
ふだんはうざったいと皆が思うはずの「大人」の集団は影をひそめ、逆に心持を不安にさせる。  
当然校長の開会宣言も宣誓もなく、みなが戸惑っていた。  
そこで、前年に引き続き生徒会長を務める松井賢太郎が壇にあがることとなった。  
「えー、校長先生も来られていらっしゃらないようなので、代わりに僕が軽くでは  
ありますが、開会宣言並びに式辞の方を・・・。」  
「ちょっと待ったーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」  
不意に甲高い声が空気を切り裂いてスピーチをさえぎった。  
エッホ エッホ エッホ エッホ エッホ エッホ  
見ると、皮村が御輿のように何人もの仲間からいすごと持ち上げられ、ふんぞりかえって  
校舎の方からゆっくりグラウンドへやってくる。林田は血管が顔の外へ飛び出そうになった。  
「皮村ーーーーー!!!!!!!!!またおまえかーーーーーーーーー!!!!!」  
「んだよ、林田。せっかくの記念すべき日に切れるのはよしとこうぜ。またハゲちまうだろ。」  
「何だとぉぉぉl!!?」  
「はーーーいはい、松ちゃんご苦労さんご苦労さん。」  
そういうと、皮村は松井を押しやって壇の上に立った。  
溜め込んでいたものを吐き出すように、皮村は吼えた。  
「それではー!!ただいまより、『血湧き、肉踊る!!』炎の伊手高ぬるぬるパラダイス  
in体育祭の開会を宣言しまっすー!』  
全校生徒は、みなあっけらかんとしていた。皆はまだこの恐るべき計画を飲み込めていなかった。  
所々に散らばっている皮村の仲間達を除いて。  
 
「皮村ーーー!!どういうこったーーー!!」  
林田がキレのある大きな声で皮村に問いかける。  
「どうしたもこうしたも・・・。決まっちまったものはしょうがねえしよ。このまま  
普通に体育祭やったとこで盛り上がんねえだろ?だったらもう一工夫こらしてみようって  
思ってさ。最初から最後までエロ満載、男女のくんずほぐれつオンパレードの一生忘れられない  
メモリアルな日にしようと思ってなー。」  
林田は、頭の中が真っ白になってつっこむ言葉すらろくに思い浮かべられなくなった。  
「許スかーーーーーーーーーー!!!!このボケカス!!!!!!!!!」  
不意に、群衆の中の一人の女子が叫びだした。  
「あ!あいつ皮村よ!去年生徒会長になった!ブルマー復活とか分けわかんない校則  
通そうとしてた最低なやつよ!!」  
「そりゃ本当か!?バカやろう!!ひっこめーーーー!!」  
観衆から大ブーイングが起きた。それを諌めるように、松井は話し出した。  
「皮村前会長・・・いえ、皮村君。これはどういうことです?横暴は許しませんよ。  
全て僕と生徒会の裁量によってイベントは進められるんです。勝手な真似は慎んでもらいたい!」  
そう松井は堂々と言い切って見せた。  
「いいぞ!!いいぞ!!会長!!」  
群集から拍手が沸き起こる。皮村はそれでも何なしという余裕の表情を見せた。  
林田には、あの皮村の表情が気になって仕方なかった。  
「ふーん、相変わらず固いね、松ちゃん。でもな、あの時のへたれだけだったオレとは  
違うぜ!どうせ皆オレのいうことを聞かなきゃいけなくなるんだからよ。」  
「何だって!?」  
皮村はもったいぶったように息を吸い込むと、全力で叫んだ。  
「行けーーー!!皮村特攻隊たちよ!!!みなさんを夢の世界へ引きずり込んでやりなさい!」  
すると、所々に散らばっていた皮村の仲間達が、いっせいに5円玉を当たり一面に向かって  
振りはじめた。  
「ワーーーーーーーーー!!」「キャーーーーーーーーーーー!!」  
そこは、地獄絵図と化した。  
 
生徒達は、皮村の仲間達から逃げ惑っている。  
しかし、催眠にかかった生徒達はその場に突っ伏してしまった。  
「森さん!大丈夫ですか!」  
林田は急いで桃里の所にかけよったが、桃里は人ごみのなかに紛れて無事だった。  
「あ!林田君・・・どうしよ、何人かはやられちゃったみたい・・・」  
「くそ・・あのバカ、ただじゃおかねえからな!・・・でも、かかってないやつも  
いるみたいだな。」  
たしかに、何人かの生徒は術にかかっている生徒を戻そうと、ゆすったり叩いたり  
必死に努めている。皮村も気がかりになり、手元の手引きを読み返した。  
『・・・・ただし、個人差により、かかりやすい人とかからない人がいるので注意!』  
「なるほど・・・、でもま、大人数はかかったみたいだし、上手くいっただろ。」  
そういうと、皮村は再びマイクを手に取った。  
「よーし!んじゃ早速始めっぞ!まず最初は100M走だけど・・・んー、どうしよっか  
な・・・。ただ100M走るだけじゃつまんねーしなぁ・・。」  
そういうと、皮村はうやうやしく壇の上を歩き始めた。しかししばらくして、ポンと  
手を打ち再びマイクを持って絶叫した。  
「よっしゃ決めたぜ!『脱衣100M走!』これだな!野郎どもが裸で走るのは目に  
耐えねーから、負けたやつが裸になるってのはどうだ!?もちろん、女子もだぜ!」  
「キャーーーーーーーーー!いやーーーーーーーーー!」  
「サイッテイ!!ホント死んじゃえ!」  
まともな状態の何人かの女子が悲鳴をあげたが、多勢に無勢。情勢は結していた。  
「うおおおおおおおおお!!!やるぞおおおおおおおおおおお!!」  
大多数の男子が、もちろん術にかかった女子も、一斉に地響きするような唸り声を上げた。  
「みんな!しっかりしろ!元に戻ってくれ!」  
林田の声も、もはや術にかかったものたちの耳には、届かない。  
「くっそ、こんな時に藤原がいれ・・・!!・・・まさか・・・藤原の催眠術か!」  
時既に、遅し。  
 
「あいつ・・・まさか・・・藤原の催眠術を会得しやがったってのか!!」  
林田は、いろいろ考えを必死にめぐらせた。藤原があの皮村に親切に口頭で  
術を説明するはずもない。教えたらどうなるかは当然理解できるであろう賢い男が。  
「くそ、なんとかしてあいつの暴走を止めないと。どっかに何かタネがあるはずだ・・・」  
そう注意深く皮村を見ていると、皮村の右のポケットがやけに膨らんでいた。  
あの手引書である。皮村は右ポケットに入れていた。薄っぺらいコンパクトなもの  
だったので、表紙の上半分は見えるものの、なんとかポケットに収まっていた。  
林田は人ごみをかぎわけて壇に近付くと、いきなり躍り上がった。  
「皮村、覚悟!!!」  
「甘いぜ林田!!そうはいかねえよ!!」  
側に控えていた数人の生徒が、林田を一斉に取り押さえた。  
「くっそーーーーー!!うまくいったと思ったのに・・・・!!」  
林田は地団太を踏んで悔しがった。皮村はそんな林田をみて、急に白い歯を見せた。  
「はーやしーだくん。君にはいろいろと痛い思いさせてもらってるからねぇ・・。  
そろそろお返しもいいかなー、なんて思ってなw」  
「そっそりゃどういうことだ!!」  
すると、皮村は桃里を指差しながら叫んだ。  
「ルール変更でーす!今から5人くらいに一斉に走ってもらって、1着になった人が  
あそこにいる森桃里嬢を脱がすことが出来る権利を獲得できまーーーーす!!」  
「ぬううううううううわにいいいいいいいいいいい!!くぁwせdrftgyふj」  
林田は舌をかんで、まともに日本語を発音することもできなかった。  
「殺す!!!!殺す殺す殺す殺す!!!」  
林田は暴れるが、取り巻き数人によって身動きできぬよう取り押さえられた。  
「ちょ・・・ちょっと!!皮村君冗談はよしてよね!!」  
桃里もすごいダッシュで皮村のもとにやってきた。  
 
「どうにもこうにも・・・事実なんだから仕方ないっしょ、森さん。」  
「そ、そんなぁ・・・」  
桃里は顔を赤らめ拒否しようとするが、多くの男子生徒はすっかり盛り上がっている。  
「うおおおおおおおおおおおお!!!おれがやる!!」  
「いやおれだ!!」  
「おれだ!!バカ野郎!!」  
「まあ、というわけだ。森さーん、お笑いたるもの、人の前で恥ずかしがっちゃマズイ  
よねー。たまには違う自分を出してハッスルしなきゃなー。」  
「で・・・でも、そんなこといったって・・・」  
「あらら?もしかしてそんなぬるいノリで人を引き込めるとでも思ってるわけ?  
だめだなー、今こそ皆に顔を覚えてもらうチャンスだよ。いいふうにとればいいんだって!」  
皮村の巧みな話術に、桃里は引き込まれていく。  
「う、んー。ちょっとだけなら・・・い、いいかな・・・。」  
よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああ  
男子生徒はほぼ興奮状態と化した。  
「森さあああああん!!騙されちゃだめだーーーー!!!」  
林田の悲痛な叫びに、皮村はさらにひらめいた。  
「よおおおし。じゃあ、林田にも走ってもらおうかね。ただし、残りの走者はこちらで  
決めさせてもらうから。勝ったやつは好きにしていいっつうことだから、林田が勝ったら  
脱衣はオジャンってことだな。ただし、1回ごとの勝負だぜ。少なくとも5回くらいは  
はしらねえとなw」  
「よおおおおおおおおおおし!やってやろうじゃねーか!!!」  
あっさりと承諾した林田に、皮村は本気で同情した。  
「何だかんだいって、お前も後先考えない熱血バカなんだな・・・可哀想に。」  
こうして皮村は、林田以外の4人を指名した。それは、陸上・野球・サッカー・ラグビーの  
伊手高四天王と呼ばれる強者たちだった。  
 
「林田君!」桃里は壇の上に立たされながら、ラインに立っている林田に声をかけた。  
「だ・・・大丈夫です森さん!なんとかやりますから!」  
林田は気合を入れてスタートラインに立ったが、勝敗は明らかだった。  
「よーーーーい・・・・・」パン!!ピストルが鳴った。  
スタートと同時に、陸上部の男がどんどんと加速し、他を引き離してゴールインした。  
林田は最下位だった。もっとも、他の4人もほぼグル状態のため、後のレースに力を  
とっておいたのだ。  
「よーーーし、森さん約束だぜ!!脱衣スターーート!!」  
いやらしい音楽をかけながら、皮村は会場を盛り上げる。  
「桃里ー!しっかりー!」術にかかっている桃里の知人たちもはやしたてる。  
桃里は意を決して体操着を脱いだ。体操着の下にはシャツを着ていた。  
ハブァ!!!!林田は走った後のこともあって、血気盛んに鼻血を出した。  
まだ上着を一枚脱いだだけにもかかわらず。  
「まだ興奮するのは早いぜ!林田!これからが本番なんだからな!」  
またスタート台に立ち、号砲が鳴った。今度は野球部の男がゴールインした。  
桃里は、シャツを脱いで上はとうとうブラジャーだけになった。桃里は顔を赤らめている  
が、観衆にだいぶウケていることで、少し快感も味わっていた。  
「次こそは・・・!!」  
林田は3回目のレースを走ったが、今度はサッカー部の男が1着だった。  
もう足もふるえ、呼吸する際にも変な音が肺から聞こえてくる。  
桃里はブラジャーも脱ぎ、上半身裸になった。林田はあらかじめ鼻にティッシュを詰めて  
いたので、無事だった。桃里は乳首を手で隠しているが、皮村はさすがにそこまでは  
催促しなかった。どうせ全裸になるのだから、何も隠す必要はなくなる。そんな青写真を  
描いていたからだ。  
4回目のレース。ラグビー部の男が1位になり、桃里は短パンも脱ぎ、とうとう残すは  
下着の1着のみとなった。  
 
「林田君・・・大丈夫!?」  
桃里は声をかけるが、林田は今にも死にそうな表情だ。  
100Mを4本も全力疾走している。普通の人間だったら立つこともままならない。  
「森・・・ハァハァ・・・さん・・・・ハァ・・・これで・・・ハァハァ・・・  
負けたら・・・ヒィヒィ・・・ハァ・・・僕は・・・死にます!ただし皮村道連れで・・」  
林田は、喋れる体力も使い切った。  
「いい覚悟だぜ。じゃあ最終レースだな。みんなしっかり見ておくがいい!女神がここに  
降臨するぜ!!」  
皮村は、最後のピストルをいきおいよく鳴らした。  
4人は一斉に加速度を適度にあげたが、桃里の裸ばかりを連想して、油断していた。  
「グオオオオオオオオオオオオオオオガオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」  
「何!? 」「何だと!?」「そんな・・・」「バカな! 」  
後ろから林田がものすごいスピードで追いかけてくる。この世のものとは思えぬ顔つきで。  
最後は壮絶なデッドヒートの末、林田はなんと競り勝ってしまった。まさに奇跡だった。  
桃里のストリップショーは回避された。しかし、林田はうずくまって動かなくなった。  
「くっそおおおおおおおおおおおお林田のやつやりやがったあああああああああああ!!!」  
皮村は悔しがった。約束したことだったので、仕方がない。ここで無理やり催眠術で桃里を  
脱がすことも出来たが、日常のさりげないほのぼのした雰囲気を思い出し、桃里にはそんな  
卑怯な真似をすれば男がすたると、あえて自尊心を全面に打ち出した。  
「しゃあねぇ。この勝負、林田の勝ちだ!誰か林田を保健室に連れていってやれ!」  
しかし、まともな人間はほぼ術にかかってしまい、残った人間は林田に関係のない人間  
ばかりだ。皮村は対処に困った。すると、かすかな声が風に乗って壇上に届いた。  
「わ・・・私がいきます!!」  
見ると、中山朔美だった。  
「お・・・中山じゃん!お前、術にかかってなかったのか!」  
皮村は驚いた。  
 
(ちっ・・・中山のやつ、催眠術にかからないとは意外だったな。ついでなら、  
せっかく純情少女の処女からの船出をオレがサポートでもしてやろうと思ったのによぉ・・・。)  
そう残念そうにつぶやくと、皮村は朔美に声をかけた。  
「よーし、いってくれっか。じゃ、お願いすっぜ。」  
「は・・・はい、わかりました。」  
そううなずくと、朔美は林田を一生懸命肩にかけて、誰もいない保健室へ連れて行った。  
ちなみに、学校の部屋の鍵は全部皮村が掌握していたので、簡単に鍵を渡すことができた。  
朔美がここまで強気になったのには理由がある。先程生徒のほとんどが催眠術をかけられ、  
朔美も当然かけられそうになったが、寸前のところで山咲幸子たちに守られたのだった。  
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「なっ中山ちゃん!!危ない!!」  
「きゃっ!!」  
その時、山咲幸子は、中山朔美を一生懸命抱きしめたまま、催眠術にかかって動かなくなった。  
「さ・・・さっちゃん・・・?」  
朔美は、おそるおそる後ろをふりかえってみた。しかし、そこにはいつもの幸子はいなかった。  
「よーーーし!お姉さん、今日はいつも以上にハッスルしちゃうぞー!!」  
「きゃーーー!!さっちゃんしっかりして!!」  
「中山ちゃんももっと盛り上がろうよ!!」  
そういって、幸子は朔美の肩に手をかける。朔美は思わず逃げ出してしまった。  
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もう誰も守ってくれる人はいない。だからこそ、今日は自分が一人で頑張るしかない。  
そう心に誓い、朔美は今日の日を過ごす事を決めた。  
朔美は、保健室の鍵を開けて林田を連れて入り、ベッドに寝かせた。  
そして、そのままグラウンドに帰ろうとしたが、林田の寝顔をもう少し見ていたくなり、  
そのまま保健室に残ることにした。  
すやすやと深い眠りにつく林田の顔が、いっそういとおしく見えた。  
 
「林田先輩・・・。」  
 
いつの間にか朔美はベッドに上がり、より近くで林田の顔を見ようとしていた。  
汗をかいている肌は、男臭さをただよわせている。いい表現をすればアドレナリンが  
がんがん表出されている、というべきだろうか。窓の硝子越しに部屋に差し込む日光が、  
汗を反射して余計鮮やかに林田を映し出す。朔美はしばらく林田の顔を覗き込んだ後、  
周りを少し見渡して、誰もいないことを確認した。  
 
「だれも見てないし・・・ちょ・・ちょっとくらいなら・・いい・・・ですよね。  
林田先輩・・・ごめんなさい!」  
 
そういうと、朔美はさらに身を乗り出し、林田の顔の数センチ手前まで顔を近づけた。  
ほんの少し、唇の先が触れれば、それで十分であり、すぐにグラウンドへ出る予定だった。  
しかし、その瞬間、頭の後ろに林田の手がまわり、強引に自らの口を、朔美の小さな唇に  
あてがった。  
 
「んむ・・!!ん・・・!!へんはい(先輩)・・・!?」  
「・・・もひはああん(森さ〜〜ん)」  
 
林田は、夢の中で桃里とキスしているつもりだった。生死をかけて挑んだ勝負に見事  
勝利し、桃里がごほうびのキスを恵むという相変わらず都合のいい夢だった。しかし、  
どうせ夢ならと、ほっぺにキスでは飽き足らず、直接口付けしてやろうと腹に決めて  
いたのだ。林田は、ゆっくりと朔美の口内に舌先を這わせていく。急がず、ゆっくりと  
時間をかけて丁寧に朔美の舌先、歯、そして歯茎をなめあげていく。  
 
「んぅ・・・!!あ・・・へ・・・へんはい・・・!!」  
 
卑猥な水音が、熱狂的なグラウンドとは対照的な、静かな保健室の中にじわっと充満していく。  
 
「んっ・・!!むぐ・・!!だめでふ・・へんはい!!」  
 
お互いの口が触れ合う中で、朔美は不自由な舌先を懸命に動かして、林田の目を  
覚まさせようとする。だが、林田の意識は、まだ戻らない。  
 
ニチャ・・・クチュ・・・チュルル・・・  
 
口の中で、お互いの舌が共鳴し合う。朔美は、気持ちよさと息苦しさで頭が混乱  
してきた。懸命に体を動かすが、林田はすごい力で朔美をおさえつけている。  
必死に顔を動かすが、林田は吸盤のように吸い付いて、離れようとしない。  
そうこうするうちに、朔美は、思い切り林田の髪をむんずと掴んでしまった。  
「いったあああああああああああああああああああい!!!」  
思わず林田は、自分から朔美の手を振り解いて、自分からベッドから転がり落ちた。  
その拍子に、林田はようやく目覚めた。  
「いっててて・・・。あれ?ここ・・保健室か?中山、お前何してんだ?」  
「あっ・・・いえ・・そ・・・その。」  
「そうか・・おれ、気を失ってたのか・・。中山、お前がここまで運んできてくれたのか?  
ありがとな、すごく感謝するよ。」  
「あ・・・はい!!」  
キスをされたことなどふっとび、朔美はまたも顔を赤らめた。  
「ところで・・・お前どうした?すごいよだれ出てんぞ。ちゃんと拭いとけよ。ほら。」  
そういって、林田は中山にハンカチを渡した。朔美は、改めて濃厚なキスを受けていた事を  
再認識した。  
 
「あ・・・いえっ・・その・・これは・・。」  
しかし、そこから先は、口にすることはできなかった。  
 
 
グラウンドでは、相変わらず競技が白熱の展開を迎えていた。  
男子たちは全速力で100メートルを走り、1着になったものが、  
自分のペアの女子を脱がせることができるというものだった。  
普段の走りと違い、皆鬼神のような形相で走り、好記録がぞくぞく生まれた。  
中には、11秒台をマークしたものもいた。  
そして、男子の部が終わり、次に女子の部となった。  
皮村は、先程桃里を含め、男子とペアになった女子を除いた女子選手の処遇について考えていた。  
 
「ふむぅ・・・どうすっかね。自分で走って、びりだったら脱ぐっていうのはちょっと酷かねぇ  
・・・。ふふ〜ん。なら、予定変更だわ。最初から、皆裸で走って。そうすりゃお相子じゃん。」  
「よっしゃああああああああああああああああああ!!」  
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」  
男子生徒が、さらにヒートアップする。中には、手拍子するものたちまで出始めた。  
「いやーーーー!!!もう、どうしよーーーー!!!」  
「こんなんじゃ死んだ方がましよ!!!」  
術にかかってない女子生徒は必死の抵抗を見せるが、体が痺れて言う事を聞かない。  
「まあいいじゃねえの。良くても悪くても、一生の思い出になるんだしねぇ?じゃあ  
いってみよーか!!まずは第1レースだ!!」  
そういうと、皮村は、前日からあらかじめリストアップしていた女子の名簿を眺め始めた。  
選ばれるべきものも、走る順番も、全て皮村によって決められるのだ。  
皮村は名前を呼ぶと、自らスタートラインに立った。  
「よっしゃーーーいくかっ!!」気合を入れているのは、山咲幸子だった。  
ボーイッシュでいつも元気バリバリの幸子は、単純で術にかかりやすかった。  
幸子は、服に手をかけると、上下両方の服を思い切り空に放り投げた。  
幸子の身を守るものは何もなくなり、豊満な胸とふくよかにしまった下半身が男子生徒の目を  
釘付けにした。  
「どぅおああああああああ!!!!熱い展開だーーーーー!!!」  
「やべ・・・おれ、これだけでイクかも!!」  
男子生徒たちは、もはや狂気の沙汰だ。  
 
「さっちゃん・・・大丈夫かなぁ・・。」  
「まあ、あいつ単純だから、仕方ないよな・・・。」  
熱狂する生徒達に混じって、奥野と吉田は山咲幸子を影から見守っていた。  
奥野は、皮村の仲間達がいない場所を求め、混乱する群衆の中をかぎわけ、吉田を  
連れて上手く逃げ回っていたため、2人は術にかからずにすんだ。しかし、幸子を  
助けてやることは出来なかった。  
「でも・・・ああやっていつも楽しそうにふるまってるあいつは、少し羨ましいね。  
きっと毎日が楽しくてしかたないんだろうな。」  
奥野は、テンションの高い幸子を見つめやりながら、ふっともらした。  
吉田も、言葉には出さなかったが、同様の思いを感じていた。  
しかし、2人は幸子に気をとられ、朔美のことを完全に忘れていた。  
そうこうしてるうちに、全ての選手が揃った。  
「さぁー!!幸子嬢だけじゃないぞー!!第2レーンには、伊手高7大巨乳の核弾頭、  
菊池梓嬢(B95)だー!!  
会場は皮村の発する言葉のたびに、グラウンドに声援を送る。  
「くっそー・・。て、手足がいうことを・・。あんた、許さない!一生恨んでやるから!!」  
梓は言葉による抵抗を見せたが、手足は勝手に衣服を脱ぎ捨ててしまった。  
「ふふふ、言葉攻めっすか。先輩。いやー、言葉も体もたまりません。育ってますなー。」  
そういうと、皮村はしげしげと梓の体を見つめながら、選手の紹介を続ける。  
「続きましてー!!第3レーン、水泳部、水沢あかね嬢!!」  
「いやー・・恥ずかしいです・・・。」  
そういいながらも、しっかり胸をかつぎあげてセールスポイントをしっかりとアピールしている。  
「第4レーン!在野の将ことさおり嬢!!」  
「おーー、皮チンおっひさーw」  
気兼ねなく、さおりは皮村に声をかける。小麦色のに光った肌は余計存在感を際立たせる。  
「もっちろん!!オレも自慢の息子も元気元気!(またすべったー!!)」  
「ていうか、顔がおもしろーい。そんじゃ早く走ろーよー。」  
「よっしゃ!!」皮村はピストルを鳴らした。  
 
選手達は勢いよく走る。乳が上下に激しく揺れ、男たちの下半身の熱気をそそぐ。  
もっとも積極的に走った幸子が、1着でゴールインした。  
「勝ったぞーーー!!」  
幸子はガッツポーズしたが、男たちは大きく膨らんだ分身の処分に努めていた。  
「さぁさぁ、次のレースいってみよーかー!」  
皮村が予め通知しておいた選手たちを並ばせる。  
「おーい、桃ちゃーーん!次あたちだョー!!」  
「げっベリ子!!」  
体操服に着替えていた桃里は、ベリ子の登場に驚いた。  
皮村は、オタク層のために、しっかりとショータイムを用意していた。  
「綾川さーーーーーん!!頑張ってくださーーーい!!」  
何人かで固まっているオタク層の、見るからに怪しい男達がカメラを持って声援を預ける。  
「おい綾川苺!!」  
観衆の声援をかぎわけて、甲高く鋭い声がベリ子を呼んだ。見ると、三橋麻彩だった。  
「いいか、ミウラ君は絶対あたしのものになるんだからな!お前よりあたしの方が胸大きく  
描かれてるし、なによりあたしの方が女の子としてずっと魅力的なんだからな!」  
「何だョ!愛の力に胸の大きさは関係ないョ!それに、ミウミウはあたちといる時すごく  
楽しそうだョ!」  
「ミウラ君はいつもあんな顔だろ!それに、あたちとかだョとかキモイんだよ!うっとーしー  
から止めろ!ホントの覚悟ってものを見せてやるから!」  
そういうと、麻彩は空に向かって、服を脱ぎ捨てた。  
「うおおおおおおおおすげぇぇぇぇぇ!なんか、リカちゃん人形の着せ替えみたいですごく  
かわいいぞ!!」  
観衆からも声援があがる。いわゆる『萌え』の感情だ。  
「負けないョ!」ベリ子も服を脱ぎ捨てた。  
「ドゥハアアアアアアアアアアアア!!かっわいいいいいいい!!割れ目もあんなにくっきり  
見えて・・・。もう俺たち死んでもいいぜ!!」  
男たちの中には涙を流すものもいる。オタクたちは、カメラを持ち、フラッシュを叩き出した。  
 
ゴールの向こうには、二人の目標としてミウラが立っていた。それも、皮村の演出だった。  
他にも萌え系の女子を並べたレースだったが、注目はほぼこの2人に注がれていた。  
ピストルの音と同時に、二人は飛び出した。魅力ある体格とはいえないものの、二人の  
バトルは見ごたえあるものだった。麻彩は隣のレーンを走るベリ子の横に走りながら  
近付くと、思い切り体当たりをした。ベリ子は思い切り転んだ。  
「うわっ!何するんだョ!」  
「はははは。ばかめぇ!勝利のためにはなんでもありなんだよ!」  
麻彩はそのままゴールしようと再び走り出した。しかし、石ころが麻彩の尻を直撃した。  
バチイイイイイン  
「いったああああああああい!」  
麻彩もはずみで転んでしまった。ベリ子はパチンコを隠し持っていて、石ころを球がわりにしていた。  
「い、いつのまに持ってたんだよそれ!」  
「漫画だから何でもありなんだョ。さっきのお返しだョ!」  
「くっそーーー!!」  
2人は再び並んで走り出した。そして、見事ゴールし、同時に三浦の懐に飛び込んだ。  
「ねっミウラ君!女の子としてどっちが魅力あるか、君の意見を聞きたいの!お願い、教えて!」  
しかし、ミウラは、ずっと突っ立っていたことによる眠気で動かなくなっていた。  
「ちょっと、ねぇミウラくん聞いてるの!?」  
・・・・・・・・・・・・・・・・  
「ミウラ君てばぁ!!」  
・・・・・・・・・・・・・・・・  
「起きろっつってんだろ!!」 メ  キ  ッ  
麻彩は、三浦の鼻をおもいきり蹴っ飛ばした。  
アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア  
「きゃああああああああああ!!!」  ド   ン  
三浦は思い切り麻彩をふっとばし、暴れまくった。  
「わぁぁぁぁぁぁ!あの怪物野郎が暴れやがったぞ!誰か止めろー!」  
「ベリちゃん頼む!!」  
皮村は、催眠術で止めるよりもベリ子が止める方が妥当だと判断した。  
「あーい。もう、ひどいことするョー。ミウミウ、ドードー!!」  
ベリ子は三浦に飛び乗ってささやき、耳元に息を吹きかけた。三浦は止まった。  
 
グラウンドに戻っていた林田は、あまりの光景に我を忘れた。  
しかし、改めて気を取り直し、いつものように吼えた。  
「皮村ーーー!!どこまでやりゃ気が済むんだてめぇはーーー!!この鬼畜が!」  
「おーおー、これは命がけの勝負に勝った若ハゲ王子どの。いいところへ。  
今最高に盛り上がってるから、君たちも参加したら?」  
「な・・・何がハゲ王子だこの野郎!!」  
林田は、鼻にガーゼを詰めていたため、鼻血を防ぐことができた。  
「おー、そうだ。最後の組1人たりねーとこだったんだ。何なら中山に走ってもらうか!」  
「え・・・そ・・・そんな・・。そんなこと言われても・・・困ります・・。」  
「というわけでー!!人数合わせのために最後のレーンはこの中山朔美嬢に走ってもらいます!」  
「ダメだ中山!!絶対にあのエロじじいの言うことは聞いちゃダメだ!!」  
「誰がじじいだ!ま、この雰囲気を裏切れる度胸があるんなら別にいいけどね。」  
「さっくっみ!!さっくっみ!!」  
観衆は一斉にはやし立てる。この雰囲気を裏切ることは、さすがに難しかった。  
朔美は、スタートラインに立った。自分では脱げなかったので、隣のレーンの生徒に脱がせて  
もらったが、恥ずかしくて体を隠すばかりで、なかなかスタートすることができない。  
「うーん、弱ったな・・・。術をかけて無理やりさすのも可哀想かな・・・。」  
「早くしろーーー!!!」  
観衆は苛立っている。林田も、この雰囲気を敵に回すことはできなかった。意を決して、  
林田は朔美の服を持ってゴールラインへ走った。そして、朔美に向かって叫んだ。  
「中山!!オレがついてる!安心しろ!ここまで全力で走って来い!」  
「先輩・・・。」  
朔美は、おそるおそる手をどけた。男子生徒たちの分身はまたも躍起しはじめた。  
「よおおおおおおい・・・・」パ   ン  
朔美は全力で走った。最後尾ではあったが、見事ゴールし、林田の胸に飛び込んだ。  
「先輩・・・!」  
「よく頑張ったぞ、中山!偉いぞ!」  
観衆からもおもわず拍手の渦が巻き起こった。  
 
皮村の暴挙は続いた。男女裸による障害物競走、二人三脚、棒高跳びなど、  
完全に自己満足のためだけの大会だった。しかし、時間が進むに連れて、  
術の効果もだんだん薄くなり、生徒たちもやや正気に戻り始めていた。  
「皮村・・・そろそろ限界みたいだぞ。」  
「マジかよ!?ちっしゃーねーな。そろそろお開きと行くか。」  
皮村は少し舌打ちを打ったが、個人的には満足したので、群衆の真ん中に再び立った。  
「おーし!皆さんお疲れさんしたぁ!最後に素敵なショーを、といったらなんですが、  
本日みなさまの前で愛の力を発揮した林田亀太郎ー中山朔美嬢コンビに大きな拍手を!」  
そういって、皮村は林田と朔美を連れてこさせた。林田は相次ぐ競技の出演によって  
疲労が重なり、抵抗する気力もあまり残っていなかった。  
「殿。本日のメインイベントですぞw」  
「く・・・どういうつもりだてめぇは・・・。」  
皮村は、いきなり大声をはりあげた。  
「よーし、そんじゃぁこの林田と中山朔美嬢に愛の証を示してもらいまっしょー!  
まずはキス、そして林田が朔美嬢の処女からの船出をサポートしてやるのです!  
みなさん、ぜひご注目ください!」  
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお  
グラウンドは今日一番の盛り上がりを見せた。  
「キース!キース!キース!」  
「セッ〇ス!セッ〇クス!」  
様々な声援が交差する。  
「そ・・・そんな・・・中山・・・。」  
「先輩・・・。」  
二人は困惑した表情のまま、大観衆の目にさらされている。  
「は・・・林田くん・・・。」  
客席の中で、桃里が心配そうな表情で林田を見つめる。  
 
「く・・皮村、そんなふざけたことができると思ってんのか?大金積まれたって  
おれはやんねーからな!そんなこと!」  
林田は皮村の中間たちに取り押さえられながらも、しっかりと心意気では抵抗の意思を示した。  
しかし、皮村はそんな林田をあざ笑うかのように本をとりだし、ページをめくり始めた。  
「まあねぇ・・。君がウンていうはずないもんねぇ・・。じゃあ、どうしよっかなー。  
よーしっこれにしよう!」  
皮村が開いたページには、「効果Max」と書かれた呪文があった。この本の中でもっとも術に  
かかる者が多い呪文だ。しかも、レベルが示すように絶大な効果をほこる。  
「おい、しっかり取り押さえとけよ!」  
そういうと、皮村は本を読みながら林田の顔に手を当て、両目の横のくぼんだ所に中指と親指を  
強く当て、顔をゆっくり回していきながら、林田に念じかけた。  
 
「は〜い・・ゆっくり聞いてね。いいかい、君はあそこにいる中山朔美嬢を襲いたくなるよぉ。  
彼女がいとおしくてたまらないんだ。わかるね?君の全てをぶつけるんだ・・・はい、いいねぇ?」  
 
「林田くん!!いやぁぁぁぁ!!」  
客席から桃里が叫ぶ。押しかけようとするが、人ごみで抜け出すことが出来ない。  
皮村の朔美に対する心遣いが、これほどまでの悲劇を生むとは、なんとも皮肉なものだった。  
「・・・・・・・・・・・・・・・。」  
林田はあらぬ方向に視線を向け、動かない。  
「は・・・林田先輩・・・。」  
朔美は腰を抜かしたように地面に座り込んでいる。  
皮村が呪文の最後の節を唱えようとしていたとき、  
 
「そこまでよ、皮村!!」  
 
不意に甲高い声が、最後の呪文を遮った。  
 
「藤原!てめぇ目覚めやがったのか!」  
皮村もしまったといった表情で林田から離れた。興奮して、すっかり藤原の事を計算から外していた。  
「どうやらあたしのいない間に好き勝手にやってくれたじゃないの・・・。その代償は重いわよ?  
あんたでも分かるでしょ?」  
藤原は、皮村を睨みつけながら今度は、低く重みのある声でゆっくり話していく。  
皮村は、蛇に睨まれたカエルのように、しばらく立ち尽くしていた。しかし、開き直ったように  
「ふふ・・・これからなんだぜ、藤原。これからメインイベントが始まるんだ。その邪魔は  
させねえよ。かかれお前ら!」  
皮村は仲間たちに指示した。仲間たちは藤原に踊りかかったが、あっというまに束になって跳ね返された。  
「ふぅ・・・久しぶりに憂さ晴らしができた。感謝するぞ、虎呂助。」  
やはり、チョメジだった。圧倒的な強さだ。藤原はつかつかとゆっくり皮村に歩み寄る。  
「いやー、ははは・・。悪かったと思ってるよ、なぁ?藤原。俺たち友達じゃねえか。だろ?だから・・  
そんな恐い顔をするなっ!」  
いろいろ呟きながら、皮村は藤原に向けて5円玉を振った。  
「甘いわよ・・・皮村!」  
すると、藤原は手鏡を取り出し、かざした。皮村は、自分の目ではっきりと5円玉をとらえた。  
皮村は自分の術にかかって動かなくなった。藤原はゆっくり皮村の手元から5円玉と本を取り出した。  
 
「・・・・・・よかった、藤原。元気だったのか。」  
すると、林田が目を覚ました。術をかけられたこともあって足元はおぼつかなかったが、それでも何とか  
立ち上がった。  
「あら。あんた術にかかってなかったのね。皮村のやつつめが甘かったのかしら。まあいいわ。  
これから大変だけど、ちょっと手伝ってね。モリモリや1年にも伝えて。あと、これを渡しときなさいな。」  
そういって、藤原は耳栓を渡した。そして、思い切り音楽をならした。  
フ イ フ イ フ イ 〜 ♪ マ ヨ マ ヨ マ 〜 ヨ 〜 ♪  
林田たちを除く全校生徒は倒れた。藤原は、林田たちと協力して生徒達の記憶をしらみつぶしに消していった。  
 
「ふぅ・・・。まったく、いろいろ派手にやってくれたもんだわね。後できつ〜いお灸据えとくから、  
安心してちょうだい。」  
放課後の部室で、藤原はゆっくり切り出した。  
「でも・・・本当の意味での体育祭つぶれちまって、残念だな・・・。」  
「それなら大丈夫。先生たちにも明日もう1回術かけとくから。明日こそ本物の体育祭決行よ!」  
「やったぁ!!」  
「よ〜し、じゃあ明日ホントの体育祭のために、みんな解散だ!しっかり元気蓄えとけよ!」  
柔道部は解散した。皮村はボーっとした状態のまま、家に帰っていった。  
自転車置き場で、朔美は溜息をついた。  
「はぁ・・。なんかいろんなことがあって覚えてないや。でも・・ちょっと残念だったかも・・。  
林田先輩と・・・キスくらいはしたかったなぁ・・。」  
様々な思いを交錯させながら、朔美は自転車を漕ぎ出した。しかし、少しこいだところで  
自転車が鈍い音を立てだし、前に進まなくなった。  
「やだ・・もしかしてパンク?どうしよー、家までそんな近いわけでもないし・・・。」  
そこへ、林田が自転車に乗ってやってきた。  
「おっ、どうした中山?もしかして帰れないのか?」  
「あ、林田先輩・・。その・・パンクしちゃったみたいで・・。」  
「はは、だめだなぁ。タイヤの点検はまめにやっとかねえとな。仕方が無いな。送ってってやるよ。」  
「え・・・・・・・、あ、はい、お・・・お願いします(赤)」  
こうして朔美は家までの道のりを教え、林田の自転車で送ってもらうことになった。  
二人乗りをしながら、朔美は林田のお腹に腕を回し、少しきつくだきついた。  
(林田先輩の背中・・・あったかい・・・。このまま時間が止まってほしいなぁ・・。)  
朔美は目を閉じたまま、こころゆくまでその瞬間(とき)を楽しんでいた。  
 
「ちくしょー!覚えてろ綾川苺!」  
校外のとある木の上までふっとばされた麻彩は、一人吼えていた。  
「ミウラ君はまーやのものだからー!ていうか、降りられないよー!どうしよー(泣)」  
 

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