「ったくよぉ、欲求不満だからって、んなとこでシコルこともねえじゃねえかよ!」  
「うっうるせえ!!だから違うっつてんだろうがよ!」  
水平線から太陽が日没を惜しむように顔を出し、陽射しをさしむけている。  
しかし、その西日がまぶしくすがすがしい情景の中で、皮村のいびりはまだ続いていた。  
ふだん林田のストレス発散の受け口を務めていることもあって、怒涛の攻めを見せている。  
「もっ森さぁん・・!!ハァハァ・・・うっ・・!!ドピュドュなんてなーw」  
「てめぇもうそれ以上喋るとその舌引っこ抜くぞ!」  
そこにタオルを首にまいてほとんど全裸状態の藤原がだるそうな状態で出てきた。  
「も〜!!うっさいわね、あんたたちは!!こっちは死にそうなのよ!!静かに  
しといてほしいわね。部長も男なんだから自慰くらい別にどうってことないじゃないの!」  
「藤原ー!!なんつーかそれフォローになってないから!」  
話をそらすように皮村が腹をおさえながら何気なく語りだした。  
「そういえば腹減ったな。もうすぐ夕食じゃねーか?食いにいこーぜ!」  
「賛成!!せっかく夕食費込みで払ってんだもんね。食べなきゃ損よ!!」  
「たしかに、今日は昼もあんま食べてなかったしな。そろそろ準備もできてる  
だろうから行くか!!」「イェーイ!!」  
 
柔道部員たちは夕食の会場へと向かった。会場は大勢の客でにぎわっていた。  
「おー、すげぇ。いろいろ揃ってんな。すごくおいしそうだぞ。」  
林田たちはいろいろ料理を取った後、予約しておいた席に着いた。  
しかし、林田は三浦を見ると、罰が悪そうに切り出した。  
「こんな時にこんなこというのも何だが、ミウラさん・・・大丈夫なのか?  
絶対足りねーだろこれじゃ。」  
「あぁ、大丈夫よ。部長の経費から出しといたから。」「藤原ぁぁ!!」  
藤原はふっと鼻であざわらうと満を持したように  
「嘘よ。お嬢の金から出しといてもらったわ。あれを見なさい。ミウミウ特別コースよ。」  
たしかに、奥のテーブルに山のような食材がおいてあった。林田たちは納得した。  
 
「さぁせっかくだから、ドンドン食べるわよ!!従業員の人を困らせるくらい  
食い尽くしてくれるわ!!」  
「おいー!また迷惑かける気かよ!」と林田がつっこみを入れようとしたところ  
「望むところだ!料理はたくさん用意してあるから、どんどん食べてくれよ!」  
ふいに後ろから若い男の声がした。見ると、柔道部員達とさほど変わらない年頃の  
男がたくさんの料理を持ちながら立っていた。  
「あのー・・。」林田が身元を尋ねるべく声をかけようとしたところ、  
「あ!店長!お久しぶりっす。」  
「お、皮村くん。この間は世話になったね。しかし、君の言うとおりホント個性的な  
メンバーばかりだなぁ。」  
・・・・。2人の会話も耳に入らず、一行は呆気にとられていた。  
「店長って・・・あの人がか?一体いくつなんだよ。」林田がそっと皮村に耳打ちした。  
「んー、まだ若えよ。たしか24だっと思う。」「若っ!」  
相変わらず、わかりきったようなべたなつっこみである。  
「はは・・お恥ずかしいね。これでも大学生の端くれだったんだけど、気が進まなく  
なって辞めちゃってね。くさい言い方だけど、やっぱり俺には海の潮風が一番似合う  
と思ってさ。親父の経営するこの旅館を手伝いながら、夏休みは海の家を開いてんだ  
よ。皮村君にも少し手伝いに来てもらってね。」  
顔だけ見ればまったく別の世界を歩んでいそうな縁もゆかりもない2人の接点が、やっと  
分かった。  
「へぇー、そうなんですか・・(皮村のやつ、絶対水着のお姉さんが目当てだな)。」  
林田にはさすがに、と言っても当然のことではあるが、皮村の下心が手に取るように読めた。  
「君が部長の林田くんだね?藤堂といいます。よろしく!!」と、男は手を差し伸べてきた。  
「あ、どうも・・・。」林田もおもわず手を差し出して、お互いに握手をした。  
「柔道か・・・なつかしいね。」そういうと、藤堂はしみじみと語りだした。  
 
「実は俺も昔はバリバリの柔道バカだったんだよね。小さい頃、よくあの武道場に  
稽古に行ってたもんさ。だけど、君くらいの時に足を故障しちゃってね・・・。  
選手生命は諦めたんだ。だから、君を見てると昔の自分を見てるようですごく応援  
したくなるんだ。」男は淡い青春を懐かしむように静かに語った。  
想像はつこうが、人一倍人情に熱い林田がこの話に燃えないわけがなかった。  
そのつぶらな瞳は、炎を燃え滾らせて爛々と光っていた。  
林田は秘めた思いを打ち明けようとせんばかりにすっと立ち上がって店長の手を  
握り返した。「店長・・・!!俺、店長の分まで頑張ります!!必ず、この  
伊手高校柔道部を日本一にしてみせます!!」「うん、頑張れ!目標は高く、だな!」  
「あ〜あ、また始まったわ。いつまでスポ根漫画の熱血ヒーロー目指してんのかしら。  
子どもじゃあるまいし。バッカみたい。」「だよな。めんどくせー。」  
しかし、藤原たちの意に反するように、藤堂はこちらを向いて微笑んで語りかけた。  
「そうだ!君たち柔道熱心なんなら、俺が練習相手になったげるよ。明日は外で  
遊ばれるお客さんが多いし、暇も貰ってるしさ。練習相手くらいなら大丈夫だよ。」  
そう言って、藤堂は藤原たちに握手を求めた。藤原は青ざめた顔で林田にまくしたてた。  
「ちょっと何!?部長、あんたあたしたちが柔道熱心とか変なことしゃべったわけ!?  
何余計なことしてんの!このハゲー!」  
林田はキレかかったが、こらえて、ざまあみろと言わんばかりの勝ち誇った表情を見せた。  
しかし、皮村が藤原の肩を引き寄せ、なだめるように語り掛けた。  
「くくく・・・こんなこともあろうかと思ってな、お返しの対策は練ってあるんだぜ。」  
「何よそれ?」しかし、種明かしはあっという間に行われた。  
「あ、そうそう、林田くん。」藤堂は、ポケットから薬用製品のようなものを取り出し、  
林田にそっと手渡した。  
「あまり無理するとストレスが溜まっちゃうからね。君のことは皮村くんから聞いてるよ。  
これ・・化粧品売り場で一緒に売ってるんだけど、直接買うのは気がひけるだろうから、  
ここであげるよ。」毛生え薬だった。  
 
「あ、えっと・・。この育毛剤はね、すごく毛根に優しいんだ。だから・・林田君?」  
赤の他人に知られたくない事を知られてしまった屈辱。林田には何より耐えがたかった。  
林田は二人を会場の外へ連れ出し、思う存分しばき倒して会場に戻った。  
「何で俺らだけ・・。」「世の中は理不尽なことばかりよ、皮村・・・。」ガ ク ッ   
二人は世俗から離れたように笑い溜息をつくと、果てた。  
林田がテーブルに着こうとした時、やっと女性人が戻ってきた。  
「ブチョー、お待たせー!」「ごめんね、林田くん。」  
「ていうか、ベリちゃんデザートばっかじゃん。あれ・・森さん、大丈夫?  
ダイエットはいいの?」  
「うん、いつもは自重しちゃうんだけど、今日くらいはいいかなって思って。  
それに、前にも林田くんが言ってくれたんだけど、やっぱ好きなものを食べて  
笑顔でいられるのが私らしいと思ってさ。林田くん、ありがとう。」  
「いやぁ、俺は別に何も・・(ニヘニヘ)」締りの無い顔になったため、林田は  
うつむき加減で話した。これが林田の男を磨けない理由ではあるが。  
「あぁ森さん、相変わらず素敵だ・・。この胸のざわなりは、食事も喉を通らない  
ほど、俺を苦しくしめつける・・・っていつのまにか料理なくなってるしー!  
ミウラさん俺の分まで食べないでー!」「ゴメーン」ミウラは皿の上に山ほど  
乗っていた食事をあっという間にたいらげていた。  
「お客様、お皿の方よろしいでしょうか?」  
「あ、はい・・(まだあんま食べてないのに〜)ってあれ?藤堂さん?」  
藤堂は桃里に夢中になっていた。ボーっと桃里を見ていた藤堂は慌てて皿を片付けたが、  
しばらくしてまたやってきた。  
「えっと・・君も柔道部の人かな?さっきはいなかったけど。」  
「あ、えっと・・森桃里です。よろしくお願いします。」  
(なぜだ〜!俺の時の部にはこんなかわいい娘はいなかったのに・・)  
藤堂は少し悔しがった。  
 
「いやー、まさか君のような素敵な人が柔道部にいるなんて思わなかったなー。」  
「えー、そんな・・。」「よかったら部のこととかいろいろ話してくれないかな?」  
「え、いいんですか?」「もちろん。どんなことでもOKだよ!」  
部内のほんわかしたネタを話そうとすると、例によって桃里は声がはずむ。  
それを林田はまたも勘違いしていた。  
(あれあれ・・・、なんだかいい雰囲気になってないか?この2人。)  
林田は料理を食べようとしてそのまま固まってしまった。相変わらずミウラが林田の  
皿に手をのばしている。藤堂は部の話が終わると様々な話題で桃里の気をひこうと  
している。  
「へ〜、お笑い芸人が好きなんだねぇ。俺東京行ったことあるからいろんな人を見たよ。」  
「え、ホントですか!?」「うん、大学が東京だったからね。」「へぇ〜。」  
(くっ・・・この人もつたない話から森さんを引きこもうという魂胆か!?」  
しかし、最初は強気でいた林田も、しだいに精気が薄れていった。藤堂と違い、林田には  
桃里と長時間話ができるだけの話題がないのだ。いつも柔道や身近な話題に終始して  
しまうことが多い。林田は欝になった。  
(なんだかんだいってあいつらは個性があるし、森さんは森さんでモテルんだよな・・。  
けど俺は地味だし、ろくに世間話もできないや。俺ってやっぱダメなのかなぁ・・。)  
「おい藤原・・。」その頃、とっくに目が覚め食事にありついていた皮村と藤原は  
この様子に気がついていた。「わかってるわよ。一応様子見ましょ。」  
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楽しかった夕食時も終わり、各自はそれぞれの部屋につく・・・はずだったが予算の  
関係上個室がとれず、男子女子それぞれの合同部屋となってしまった。  
「なんで夏休みにおまえらといっしょに寝にゃいけんのだ・・・(涙)」  
「へん!そりゃこっちのセリフだぜ!こちとらろくにオナニーもできやしねー!」  
「ブ・・ブチョーと寝・・・フ・・・フォ・・・・」  
「あ、いっとくけどあたしと皮村が菊を挟む形になるから。」シューーーーーン・・・  
東はまた萎えてしまった。  
 
はぁ・・・。林田はまだ落ち込んでいた。横では部員達が部屋のテレビで楽しんでいる。  
「ちょっと〜、まだ落ち込んでんの!?部屋が辛気臭くなるじゃないの!」  
「そうだぜ!なんかおもしれーもんでも見ようぜ。」「いや、俺はいいよ・・・。」  
林田はそう言って部屋を出て、近くの休憩所で一人座り込んだ。  
「どうすんだよあいつ。」「いいのよ。いろいろ悩めばいいじゃない。悩むからこそ  
発見できることもあるわ。」林田は、悩んでいた。  
「俺は・・・森さんをホントに好きになる資格が・・あるんだろうか。自分の都合の  
いいふうにしか周りが見えてなくて・・不安になった時にどうすることもできない・・  
俺はどうすればいいんだろ・・。」このようにして林田は2時間悩んだが、結論は出なかった。  
「部長ー!」ふいにポンと肩に手がかかった。「うわぁ!!」思わず林田は飛び上がった。  
何しろ2時間ぶりに聞く人の声であったから、いやに新鮮味があった。  
「そんなに悩んでちゃ健康に悪いわよ。そろそろお風呂の時間だから一緒にどうかしら?  
天然のお湯だから気持ちいいわよー!」「そうだよ!一緒に女子風呂覗きにいこーぜ!」  
「覗くかーーー!!!」こうして林田は何とか元気を取り戻した。  
 
「はぁ〜・・。やっぱ露天風呂じゃねーからなー、覗きは無理だったなー・・」  
「無理に決まってるだろ!ていうかやるな!」  
「でもいいお湯だったわねー。久しぶりにストレス解消だわ。あ、女子連中も来たようね。」  
「おーいみんなー。」声の主は桃里ではなくベリ子だった。林田は少しがっかりだった。  
「他人と一緒にお風呂入るなんて久しぶりだったからドキドキしたョー。ねっサクチン!」  
「は、はぁ・・。」「バストアップの方法も教えたんだョ!」「き、きゃあ先輩!(赤)」  
林田は少しよろけたが、理性を駆使してふみとどまった。しかし追い討ちをかけるように、  
「ベリちゃーん。森さんの胸どうだった?」と皮村が林田にやらしい上目遣いで尋ねた。  
「て・・てめーは!!」「うーん、桃ちゃんの胸プニプニしてて気持ちよかったョ!」  
「ドバビブボベ!!」ついに我慢できず、林田は堕ちた。藤原はあらかじめ予想できた  
事態だったのか、手元から雑巾を取り出して静かに辺りの血を拭いていた。  
 
「あれ?そういや森さんは?」本来は真っ先に林田が尋ねるべき質問を皮村が代行した。  
「そういや桃ちゃんいないねー。」「あの・・」朔美が遠慮がちに答えた。  
「も、森先輩なら帰りがけに外の風にあたるってはぐれちゃいましたけど・・」  
・・・・・・・・・・・・・!一同に嫌な予感が走った。林田は懸命に立ち直ると  
財布を取った後その手荷物を藤原に預けて、決意を込めた表情で切り出した。  
「は、はは・・・。俺、コーラ買いに行くついでに、ちょっくら様子見てくるよ。」  
そういって林田は全力で走り出した。「バカね、無理しなくてもいいのに・・・。」  
「でもどうすんだよ・・森さんマジで心配だな。」「あたしたちも行きましょ!  
皮村、これ付けるのよ!」例のスーザン・鼻デカプリオセットだった。  
林田は全力で廊下を駆け抜け、玄関に飛び出した。誰もいないように見えたが、  
側の駐車場から少し離れた茂みのところで声が聞こえているような気がした。  
ただ、一人は桃里の声だとわかった。それは、彼女に対する気持ちがそうさせたのだろう。  
「も、森さん・・・・。ああ、まさか、まさか・・・・。」  
「きゃあ!や、やめてください!」「ハァハァ、もう我慢できねー!やらせろ!」  
「いゃあああ!!やめてぇぇぇぇぇ!!」「うううっ出すぞっ・・・・・うっ!!」  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!気が付くと服の真ん中から  
下あたりまで真っ赤に染まっていた。また妄想をしでかしてしまった。最悪な男である。  
しかし、話し声自体は静かなものであった。  
「・・・・・そんな・・・急にそんなこと言われても・・困ります。」  
「・・・別に結婚してくれとかそういうこと言ってんじゃないんだ。ただ、もっと  
君にここにいてほしいんだ。夏休みの間だけでもいいんだ。」  
「でも、私なんてそんな・・・」(ああ、なんか前にもこういう展開が・・・)  
林田がほろりと涙腺を潤ませようとした瞬間、  
「俺・・・君のことが好きになっちまったんだよ!」  
(やっぱ告白キタ━━━━━━。・゚・(ノД`)・゚・。━━━━━━ !!!!!)  
林田はタメを作らず、一気に悲哀度を爆発させた。  
 
ちょうどそのころ皮村たちも別の所の影に隠れた。告白自体は聞かなかったものの、  
2人にはどういう雰囲気かすぐに読み込めた。  
「あららー、やっちゃったわね。」「店長少し前遠距離恋愛の彼女にふられちまった  
からなー。いろいろ期することもあったんだろうぜ。」「そんなことより部長が・・」  
林田は前にもこのような場面に遭遇したため、今度はじっくりと落ち着いて場の行く末を  
見守ろうとした。(森さん・・)林田には、桃里が遠い存在になるように思えた。  
「気持ちは嬉しいですけど・・やっぱごめんなさい・・・」  
「・・・そうか。君には好きな人が他にいるんだな・・・。もしかして、林田君の  
ことかい?」「え・・・それは・・その。」(!!!)林田はまた目の前が旋回した。  
「なんとなくわかってたよ・・。君たちに初めて出会ったときから、林田君は君に  
遠慮がちにしていたし・・。君のことを凄く意識しているのが手に取るようにわかった  
よ。君はそっけない感じだったけど、それは僕に気をつかうためだったのかい?・・。」  
「え・・その・・(あ〜どうしよ、ここで違うとか言っちゃったらまた面倒なことに  
なりそーだしなー、ええい、思い切って言っちゃえっ!どうせ誰もいないわけだし。)  
そう心に決めると、桃里は鼻で少し空気を吸った後、そっけなく言い放った。  
「そっそうです!私、林田君のことが好きなんです!」  
「うぇぇぇぇぇうっそぉぉぉぉぉ!」「バカね、その場しのぎに決まってんじゃない。」  
茂みの奥で今にもばれそうな会話の一方で、林田は唖然呆然としていた。  
「その・・えっと・・・私も、すごく林田君とここにくるの楽しみにしてて・・・  
んっと・・申し訳ないですけど、私・・林田君がダイスキなんです!」  
「そうか・・・それじゃ仕方な・・」ド   サ   ッ    
「きゃぁぁぁぁ林田く・・」「林田君!?まさか・・聞いてたのか・・・?」  
「うぉぉぉぉぉぃ!!林田のやつ聞いちゃってたよー!!」「まずいわ!!」  
そういって藤原は茂みから脱兎のごとく飛び出すと、MDプレーヤーのイヤホンを抜いて  
音楽を流した。ソ イ ソ ー ス カ ケ ー ゴ ハ ー ン ♪  
ZZZZZZZZZZZZZZZZ・・・・・一同はその場に突っ伏して眠ってしまった。   
 
「ハクション!う〜・・藤原!冷えちまったじゃねーかよー!」  
「ごめんなさいね〜。もしも寝れないときのために持ってきといたのが正解だったわ・・」  
なにしろ夏とはいえ夜に2時間も外で寝ていたため、少し体が冷えたのである。  
「まあいいや・・。とにかく、明日に備えて寝るぞ、お前ら!!明日は実践練習すっから。」  
「ええぇぇぇ、つまんないわぁ。明日も遊びましょうよー。」  
「ダメだっつーの!昨日も十二分に練習できたわけでもないんだから。」  
そう言って林田は部屋に帰り、皆で手分けして布団をしくと、就寝した。  
ちなみにミウラは3人分の布団を追加で用意してもらっていた。後、東がこっそり変な  
行動を起こさないように、約束どおり皮村と藤原のツイン打法で寝場所を取った。  
---------------------------------------ガバッ!---------------------------  
ふいに林田は目覚めた。起きたばかりで体は熱いが、やはり肌寒さが抜けきっていなかった。  
幸いまだお風呂は開いている時間帯なので、こっそり仕度をしてお風呂へ向かった。なにしろ  
もしものときのために替えの下着を5着も用意していたのである。用意のいいものである。  
「ふぁーー・・・ねむ・・。ん?皮村のやついない?トイレにでも行ったのか?」  
そういって林田は眠気眼で浴場へ向かった。着替え場に着くと、誰かがあがったような  
感じだった。「ふぁぁぁ・・こんな夜にだれだろ?物好きだな・・・」  
そういって林田は威勢良くガラリとドアを開けた。  
「キャアアアアアアアア、ちょっと、林田く・・」声の正体は桃里だった。まだ風呂から  
出たばかりで、真っ裸の状態だった。桃里も同じく肌寒さを感じてもう一度風呂に入ろう  
としたのだが、皮村が着替え場に潜んでいたのをまたも直感で感じたため、仕方なく男湯に  
きたのだった。桃里は慌ててそこに落ちてあったタオルで前を隠したが、林田は寝ぼけて  
「おー皮村、んなとこにいたのかよ・・・早く起きるンだぞー・・・」と、独り言を  
呟きながら眠気眼で桃里の前で衣服を脱いで裸になり、お風呂に入っていってしまった。  
ドキドキドキドキ・・・・桃里は大きな鼓動を感じながら、着替えて部屋に戻った。  
不幸(?)にも、林田の意識は再び眠りから覚めるまで戻ることはなかった。  
 
 
「ふぁぁぁぁあううう・・・」何度もおおあくびをしているのは、皮村だった。  
「皮村よ・・ゆうべ一晩中女子浴場の着替え室に潜んで寝過ごしただ?ふざけてん  
じゃねえよこのヴォケが!!」「うるせー・・・おめえも森さんの着替えならみてえだろーが・・  
しかもやっとターゲット発見だと思ったらばばあだったしよ・・もう最悪の極みだぜ」  
「そういう問題じゃねえだろうが!!話すりかえんな!」  
「おっはよー。まあ部長そんなに責めることもないじゃない。なかなか体験できない思い出  
だったし、モリモリもあんま寝てないのよねー。ねっモリモリw」「あ、うん・・・。」  
桃里はまだ顔が紅潮していた。「森さん・・大丈夫?熱でもあんの?」林田の問いかけな  
だけに、余計桃里は気を使った。「ううん!!ぜ、全然違うっすよ〜。」  
「それにしても、昨日お前シャワー浴びて出てたんじゃねーのか?ずっと潜んでたのか?」  
「あん?決まってんじゃん。誰かあがるのをみたって?俺じゃねーよ。もしかして  
森さんだったりしてなー。」「ぐっ・・ばっバカいってんじゃねーよこの・・・」  
と林田は皮村に十字固めをしかけたが、桃里の顔はこわばっていた。  
「おーい!!」後ろから人の走ってくる音がする。振り返ると、店長の藤堂がいた。  
「昨日はごめんよ、空気悪くしちゃったみたいで申し訳ない。お詫びと言っちゃ  
なんだけど、この近くに島があるんだけど、その中に小さな神社があってだね、  
そこにお参りするカップルが幸せになることで有名なんだ。君たちの幸せを祈ってる  
から、どうだい?」「あらいいわね!部長いきましょ!ついでに頭のこともお願いしたら?」  
「てめえは・・あ、どうもありがとうございます。せっかくのご好意だし、行ってみようぜ!」  
「でもどうすんのよ。あの島でしょ?けっこうあるわよ。泳いでいくわけにもいかないし」  
「向こうにゴム製のボートがあるぞ。あれに乗っていけば・・って、でもありゃ有料だな。  
時間かかるからけっこう絞り取られるな。どうするもんかな・・・。」  
「それなら、あたちに任せて!おーい、ミスター!」ベリ子は電話をかけた。  
 
すると、海の向こうから波を蹴散らして豪華なボートらしきものが走ってくる。そして、  
波打ち際で止まった。「うおっ!!!!」「お待たせいたしました、お嬢様。」  
「・・・ベリちゃん、相変わらずすごいね・・・」林田たちは寒気がするほど関心した。  
「それにしても、昨日一日だけでいろんなことあったわねー。」  
「ホントに大変だったな。こんな経験二度とできねーぞ、思い出ついでにおめえも覗いときゃ  
良かったのによー。」「だからてめえは檻にぶち込まれるっつーの!」  
ふうと溜息をつくと、林田はちらりと桃里を見た。桃里も昨日一日だけでいろんな  
ことを経験し、相当参ってるようだった。  
「いやいや・・ホントいろいろあったね。林田君。」「は・・はは、そうですね。」  
「何かいろいろ誤解与えちゃったみたいで・・。とっさのその場しのぎに林田君を惑わせる  
ようなことしちゃったね・・。ごめんね、林田君。」  
「は、はい・・・(うう・・本心ならいいけど、それは虫がいいよなぁ・・)」  
「でもね・・・」と呟くと、少し顔を赤らめて押し黙った後、にこりと林田に微笑んだ。  
「でもね、楽しみにしてたのは、ホントだよ!」ホアアア・・・林田は萌え死にそうになった。  
「けっ!んだよいい雰囲気醸し出しやがってよ!」皮村は部屋の隅っこで愚痴をこぼした。  
「まあいいじゃないの。こういうのがあたしたちの居場所なんだし。部長とモリモリに  
こういう雰囲気にしてもらわないと部の空間が成り立たないんだし。」「たしかにな。」  
「お待たせしました。到着でございます。」おおお・・・思わず一同は声を出した。  
いわゆる都会とはかけ離れた、多くの森林におおわれた自然色豊かな景色であった。  
「すごいな・・・こんな所に・・こんな素敵な場所があったんだな・・・。」  
「また来てみてーよな。」「だわね。ここで食べるものはおいしーでしょーね。」  
自然味あふれる情景を楽しみながら、一同は神社に到着した。  
昔から伝わる格式高い空気を醸し出す神社であった。林田たちは願いごとをした。  
 
 

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