「ハ・・ハ・・・・・ブワックショーーーン!!!・・・・ウーーーー・・・。」  
 
またも校内につむじ風が舞う。今日何度目のことだろう。  
その突風の中心にいる少年は、目に涙をため、鼻をすすりながら  
うつむき加減で武道場へ歩いていく。  
彼の名は、三浦単一。16歳の普通の高校生・・・のはずである。  
規格外の体型を覗いては。  
その人並みはずれた体型で、数々の敵ならず身内の選手(汗)までも  
病院送りにしてきた怪物も、やはり人の子。  
風邪をひくことだってあるのだ。  
というのも、先日彼の両親があいついで入院してしまい、  
相当な気苦労を溜めていたのだ。  
なぜ彼が武道場に向かうのかは、後で分かることだ。  
 
一方、部室では今日も才能はありながらやる気0の部員たちをやる気にさせるべく、  
孤軍奮闘の部長:林田亀太郎が立ち上がっていた。  
「何だよお前ら!!せっかく柔道着に着替えてンじゃねーかよ!!」  
「違うわよ。部長。こんだけ暑いとやる気でないでしょ。  
クールダウンしとかないと、熱中症になっても困るしねぇ(笑  
彼の名は藤原虎呂助。柔道着に着替えたのは、単に涼むためだけである。  
一番やる気のない男だが、人一倍人を見る目があり、高校生離れした見識を持っている。  
「てめーはいつもクールダウンしっぱなしじゃねーかよ!!」  
こんな会話は今日に限らず、いつものことであるが・・・。  
「こんだけ暑いならよー、もう素っ裸でもいいみたいな?」  
今度は側にいる、客観的な言葉では表現できない奇特な顔をした  
別の少年が部長に声をかける。  
彼の名は皮村薫。林田のよき理解者であり、エロスに対する思いは格別なものがある。  
「だー!!脱衣禁止!!ってもう脱ぎ始めてんじゃねーか!!  
江頭○:50かてめーは!!」  
 
こんな感じで毎日ダラダラと練習は進んでいくのである。ただでさえ東が  
芸能活動で忙しく、練習に専念できないのだ。残ったものでなんとか協力  
してやるしかない。しかし、この体たらくでは先が思いやられる。この努力  
が報われるか、といえば決してそうならない確率の方が高くなるであろう  
ことを憂いながらも、今日も林田は練習に身を投じるのであった。そんな中、  
林田は今、最も頼りになる少年の不在に気付く。  
「あれ・・・ミウラさんは?」  
おかしい。欠席するとの連絡もない。何かあったのか。  
林田が外へ出ようとすると、思いきりでっかいしきりに当たってしまった。  
「ぶへぇ!痛たた・・・。何だこれ・・・ってミウラさ〜ん!?」  
そう。三浦単一その人である。だが、顔は真っ赤。鼻息は荒く、まるで  
バッファローである。おまけにバケツの水を返すような鼻水が出ていて、  
あきらかに異常だった。  
「ゴメンネ・・・ブチョー・・・」  
そう一言だけ言い残すと、少年はその場に倒れこんでしまった。  
 
「お、おい・・・ミウラさん!?しっかりしろよ!!」  
少年の叫びにも心ここにあらず、といった感じで、ミウラはうつぶせになったままである。  
助けたいがこの体格差では物理的に無理だし、かといってこのまま放っておくわけにもいかない。  
「う〜ん、どうすりゃいいんだろ・・・?」  
林田は、側にいる2人に尋ねるような形で深刻につぶやく。  
「とりあえず、奥の方で寝ててもらいましょ。チョメジ、頼んだわよ。」  
といって、藤原がチョメジを発動する。  
「うむ、わかった。」と、時代劇俳優ばりの渋い声でチョメジが応答する。  
このチョメジは、一言で言えば藤原のちょんまげであり、藤原の忠実な家来(?)である。  
といっても、チョメジもミウラさんを持ち上げるほどの怪力の持ち主でもないので、  
ミウラさんの下に忍び込み、油成分を含んだ体の特性を使い、ミウラさんを奥の方まで転がしていく。  
奥の壁にぶち当たった少年は、何事もなかったかのように寝込んでしまった。  
「一体、どうしてこんなことになっちまったんだ・・・」  
林田がいいようのない溜息をついているうちに、林田の心を刺激する声が聞こえてきた。  
「おーい!!林田くーン!!」  
そのクリアーで且つ可憐な声の持ち主こそ、林田の憧れの人森桃里その人である。  
「あ!!森さん!!」  
パワーをもらったかのように、林田の口調のトーンが大きくなる。  
「森さん!!今さ、みんなで裸になって人間の素晴らしさを語り合おうかなーなんて・・・」  
と最後まで言い終わらぬうちに、皮村の顔は地面にめりこまれていた。  
「林田君!!ミウラさんがね、保健室の入室拒否されたって・・・!!」  
「え〜〜〜〜!?」  
ある意味仕方が無いことかもしれない。彼の母親である一子の病室の状態を見てもらえば  
わかるが、ベッドが最低でも3,4つないと彼を横にすることができないのである。  
保健室にはそんな設備はないので、やむなく入室拒否というわけである。  
そんなわけで、とりあえず今日はミウラさんに大人しくしてもらって、残りの  
部員で練習をすることになった。夏の夕暮れのひざしが、少年たちをせせら笑う  
ように照りつける。  
 
どんな形であれ、とりあえず練習は終了し、部員たちはミウラを看病することとなった。  
ありったけの数のおしぼりと氷を用意し、彼の頭にかぶせる。しかし、彼の苦悶を浮かべた  
表情はなかなかおさまりそうにない。部員たちが途方に暮れているところへ・・・  
「お〜い!みんな!!ジュースもってきたよォ!!」  
この愛くるしい声の持ち主こそ、ミウラをてなずける「猛獣使い」こと綾川苺(通称ベリ子)である。  
が、そんな彼女も武道場に入るやいなや、愕然としてジュースを落としてしまった。  
「ミウミウ!!大丈夫!?」と、こぼれおちたジュースのことなどどうでもよさげな感じで  
ミウラのもとへかけよる。彼女に目にはたちまち小さく、透き通った涙があふれた。  
「桃ちゃん〜どうしよう、ミウミウ死んじゃうのかな〜」  
「だっ大丈夫だよ!!ただの風邪だからね!ね!少し寝てればよくなるって」  
と、桃里が子供をてなずけるように説得するが、彼女の心は落ち着かない。  
いてもたってもいられず、ベリ子は脱兎のごとくミウラの頂に駆け上がった。  
「ミウミウ、大丈夫だョ!!あたちがついてるから!!」  
まるで危篤状態の患者を励ますように、声をふりしぼって少女は叫ぶ。  
「アー・・・。」すると、その声を聞いて元気が出たのか、三浦はゆっくりと目を覚ましていく。  
三浦にとっては、ベリ子の存在がなによりの薬のようだ。  
「モーダイジョウブヨー・・・。」そうゆっくり応えて、三浦ははにかみではあるが、笑顔を見せた。  
 
「ホント!?ミウミウ、ホントに大丈夫!?よかった、嬉しいョ。ミウミウが元気になると  
あたちも嬉しくなってくるョ。」と、ベリ子は目を輝かせいつも以上の笑顔を見せた。  
そして安心したのか、いつものように三浦の上によじ登ると、袋からおかしを取り出し、小さな口にめいいっぱい頬張る。  
そして、おかしを食べながら二人でまた楽しい時間(とき)を過ごしてゆく。  
「ほんとに、どこまでも幸せものの二人ねー。」と藤原が半ばあきれながらも感心する。  
何はともあれ、とりあえず保健室の解熱剤をもらってなんとか歩けるようになったミウラは、  
帰り際に薬局で薬を買うことになった。ミウラさんは早めに帰宅することとなり、  
ベリ子と楽しく会話をはずませながら、街中へ向かっていった。  
「虎呂助ー、今日薬局はほとんど休みだよー。」  
と、いつのまにか学校に戻っていた異彩ともいえるオーラを放つ美少年が優しい声を放つ。  
彼の名は東菊千代。学校きっての美少年だが、男(特に美少年)好きと言う、  
柔道部員以外に他言できない本能があるのだ。それは、また後のお楽しみ・・・。  
「あら、そうだったかしら。電話かけて伝えようかしらね。」と藤原は携帯を取り出したが、  
「まあいいわ。ミウミウのことだから、自然治癒でよくなるでしょw」  
「・・・・・。」一同の間に、なんとも微妙な空気が流れていた。  
 
途中でベリ子と別れた三浦は、行き急いで商店街へ駆け込む。  
薬局を探しに探したが、どこも今日は閉店している。仕方が無く、やや人通りが寂しい  
この商店街にまで来てしまった。大量の涙と鼻水でふらふらになりながらも、  
生気をふりしぼって薬局を探す。そうこうしているうちに日もくれ、夕暮れのひざしと  
暗闇が交差するようになった。「アー、モウダメカ・・・」  
三浦が肩を落とし、あきらめて帰ろうとしていたところへ、  
「もし、そこの人。」振り返るっても誰もいない。きょろきょろあたりを見回す。  
「ここじゃよ、ここ。」自分の腰よりずいぶん下あたりに、男が立っていた。  
「お前さん、みたところずいぶん苦しんでるようじゃの。どうじゃ、わしが力になってもよいが・・。」  
と、男が不気味な薄ら笑いを浮かべるも、手を差し伸べた。  
「エッ!ホントー?」天の助けとばかりに、三浦は屈託のない笑顔を浮かべる。  
男は黙ってついてこいといわんばかりに店のほうへ歩き出す。  
三浦も重たい体を精一杯動かし、男へついていく。そして、店についた。  
「ここで待っておれ。」男はそう一言言い放ち、店の奥へ消えていく。  
たしかに薬局らしい感じではあるが、雰囲気は暗く、紫とピンクのスポットライトが不気味である。  
ミウラはやや恐れを感じながらも、男の登場を待つ。  
 
しばらくして、再び男が現れた。水晶を持ち出し、台にかぶされたされた布の上に置く。  
「いますぐ薬をやってもよいが、おまえさんのことをもう少し知りたくての・・・。」  
と、そうボツンといったかと思うと、いきなり男は三浦の手を取り出す。  
そして、その手を一緒に持ってきた水晶の上にかざした。  
「おぬし・・・悩み事があろう?」と、男は言い放つ。  
「ビクッ!!」三浦の背筋が凍りつく。思わず逃げ出そうとしたが、体が動かない。  
「そう怖がらずともよい。」男が穏やかに語りかけるが、三浦は動揺を隠せない。  
「おぬしは、家庭環境においてストレスがたまっておることは知っておる。じゃが、ほんとにそれだけかな?」  
ブンブンブン!!三浦は、クビをおもいきり縦に振る。ぎこちない顔は、蛇ににらまれた蛙のようだった。  
「よかろう。だが、おぬしの本心をさらけ出せばわかることじゃ。」  
と、言い放つと、男は不気味な笑顔を浮かべて、水晶に何か念仏のようなものをかけた。  
「ボーー・・・」水晶が白くぼやけ、なにかが映し出されようとしている。  
「この水晶は、てをかざしたものの心の中を覗くことができる。お主の望んでおることもな・・」  
男はにやりとわらうと、もっと映りが良くなるよう水晶に磨きをかける。  
「さぁ水晶よ、この男の本心を暴くのじゃ!」と叫び、男が水晶を磨き上げる。  
そして、水晶に映ったものは・・・!!  
 
「・・・・・・・」しかし、水晶には何も映らない。  
「は・・・はてな・・・そんなはずはないのだが・・・。」」  
まあ純粋無垢というのか、何も考えていないのか、表現は様々だが、男には理解できない。  
男は、さらに水晶をせっせと磨き上げる。「もっと奥まで調べぬくのじゃ!!」  
すると、今度は何かが浮かび上がってきた。「さぁ、これこそこの男の望むべきものじゃ!」  
浮かび上がってきたものは・・・肉、肉、肉のかたまりである。  
「・・・・・。」男は、呆れて物が言えず、しばらく呆然とした。  
「そんな馬鹿な・・・。たしかに、この男から強いオーラを感じたのじゃが・・・。」  
男はさらに激しいパワーを水晶に送る。すると、水晶に人影が映る。  
かわいらしい笑顔の少女が水晶に所狭しと映っている。ベリ子だった。  
男は当初の目的らしき事を達成したらしく安堵の表情を浮かべ、  
「ふふふ・・・やはりの。お主・・・欲求不満であろう?」  
三浦にはこの男のいわんとしていることがさっぱり掴めなかった。  
「欲望には、食欲、排泄欲、そして性欲がある・・・。これらは生きとし生けるものの本能じゃ。  
じゃが、お主の性欲は満たされることはない。その体では、男女の営みはおろかキスの一つさえ  
できぬ。お主はそれからくるストレスによっても体調を狂わされておるのじゃ!!」  
と、男は悟りを得たかのように断言する。尤もミウラはうと寝していて、まともに話を聞いていないが。  
「そこでじゃ、わしがお前さんに不思議な力を授ける。それによってお主の本心から  
望んでいることが達成されるのじゃ。どうじゃ、わしの力を受けてみんか?」  
三浦はその時ついいつもの癖で、うとうとしてしまった。その仕草が男にはOKとみなされた。  
「よかろう。では、この薬を授ける。人間にはまだ試したことのない試作品じゃがな・・。ヒヒ」  
男はまたも不気味に笑い、三浦に一見なんでもないような薬らしきものを渡す。  
ちょうど鼻ちょうちんがはじけて意識を取り戻した三浦は、喜んで薬を受け取る。  
そして、男に一礼すると颯爽と下宿所へ向かって帰っていった。  
「ヒヒヒ・・・幸運を祈るぞ。若者よ。」そう言い放つと、男と店はいつのまにか消えていた。  
 
「フア〜〜〜・・・・」30秒くらいはかかってたであろうというあくびをしながら、  
今日もミウラは眼を覚ます。今日もいつもの静かで、ちょっぴり楽しい一日が始まる。  
だが、何かいつもと違う感じがする。そうか、今日は目覚ましなしで起きたのか。  
時計を見ると、もう家を出なければならない時間である。慌ててパジャマに手をかける。  
だが、いつもと感触が全然違う。明らかにパジャマの中に埋没している感じなのである。  
全ての衣類がそうだが、破けることはあってもぶかぶかになることはありえない。  
不思議に思いながらも、眠気眼で洗面台の前へ行き歯を磨こうとするが・・。  
「アレ!!?」一瞬、鏡の前に映っている自分が信じられなかった。縮んでいるのだ。  
背も普通の人間と同じかやや高いくらいだし、顔も普通よりやや大きい程度である。  
見かけ上は普通の人間だが、ミウラにとってはすごく縮んでしまっているのだ。焦燥感が募る。  
もうそろそろ家を出なければならない時間だ。だが、服を着れなければどうしようもない。  
立ち往生していたところ、玄関のあたりに制服があった。上下一式ちゃんとそろっていて、靴下まである。  
またもや天の助けとミウラは喜び、大急ぎで着替え、肉を加えて家を飛び出す。  
靴は、下駄箱に忘れられていた、父が履いていた普通は使い物にならないはずのお下がりを履いていく。  
そのミウラの後姿を、ひそかに笑いかけながら見送る男がいる。昨日の怪しい男である。  
「しっかりやるんじゃぞ・・・。」そうつぶやくと、またも男は消えた。  
 
ここはすすがしい朝の日差しを受けている柔道部。皮村が大きなあくびをして部室へ入る。  
「ったく〜、何も大事な大会前だからって朝練することもねーのによ・・。」  
またやる気のなさに闘魂パンチを受けるのかと部屋に入ると、そこには満面の笑みを浮かべた林田がいた。  
「ど・・・どうしたんだ!?林田」  
「皮村!!こんなに嬉しいことがあるか!!また新入部員が入ってくれそうなんだ!!」  
そういって、林田は奥に居る男性を紹介する。だが、その男は今にも泣きそうな顔をしている。  
彼こそ三浦であった。そして、次第に部員たちも集まりだし、一同の顔合わせが実現した。  
そう、一同が三浦を三浦と認識するまでの話だが・・・。  
 
林田グッジョブだな!!これで練習相手増えるじゃねーか、良かったな!!」  
「部長にしては、ひさびさにいい仕事したじゃない。天もあんたを見放さなかったわね。」  
「ブチョー。おめでとー。」  
部員たちは数々の賞賛の嵐をたてる。林田もまんざらでもない表情で白い歯をこぼす。  
そんな中、まだ正体を気付いてもらえない三浦はおろおろしていた。  
が、このまま気付いてもらえないわけにもいかない。ミウラは勇気を振り絞って発言した。  
「チ、チガウヨー、ブチョー、ボクダヨ・・・。」小さくも、悲痛な叫び声が部屋にこだまする。  
「あー、そうか!!林田、こいつミウラさんの親戚だよ!顔も似てんじゃん。」  
「確かに。ミウラさんに紹介されてきたんだね!そういえば、肝心のミウラさんがいないけど・・。」  
谷底へ突き落とされるかのような恐怖が、三浦の背中を突き刺す。  
部員たちに存在を認められない事は、自分の「居場所」をなくすことにつながるからだ。  
それだけは、なんとしても避けなくてはならない。  
三浦は、思いつくばかりに、林田他部員たちや自分のことを話した。  
「う〜ん、話を聞いてると確かに本物っぽい感じがするけど、証拠がないと如何せんどうしようもないのよね・・。」  
藤原が尤もでありながらも厳しい指摘を入れる。ミウラは、失意のどん底に叩き落された気がした。  
 
「ベリ子、なんとか励ましてあげなよ。ベリ子なら、きっとわかってあげられるよ。」  
そんな三浦の態度に気付いてか、桃里がベリ子にそっと耳打ちをする。  
ベリ子は三浦のもとに近付き、じっと三浦を嘗め回すように見つめる。  
「あたちは、ミウミウだと思う。上手くいえないけど、なんかそんな気がするんだ。  
だって、ミウミウとあたちは一つなんだもん。」  
その言葉が、絶望の淵から救い出してくれた天使のように三浦には感じた。  
「ウワー!!」思わず嬉しくなり、ベリ子の小さな胸に顔をうずめる。  
「おいおい!!なにげにうらやましいもんだな、こいつ。」と皮村が呟く。  
「よしよし。」と三浦の頭をなででいたベリ子が「あー!!」と大声を上げる。  
みんなが覗き込むと、三浦の頭の上に、ちいさなポテチのかけらがたくさんついていた。  
昨日三浦の頭にのぼって食べていた時の、食べこぼしだったのだ。何よりの証拠だった。  
「まさか、本当にミウラさんか?!!」一同が騒然となる。三浦は昨日からの事情を話した。  
「ふーん、そのあやしいおっさんがくれた薬って、人間を小さくしまう薬かもしれないわね。」  
「でも、三浦さんは普通の人間と同じくらいだぜ?」皮村が藤原の意見に疑問を呈する。  
「馬鹿ねー。ミウミウはもともと超人体型だから、小さくなってやっとこれくらいなんでしょ。」  
あー、なるほど!!一同が納得する。これで、全てが理解できた。問題は、これからの対処方法だ。  
とりあえず、放課後にまた相談ということで、授業開始が近いため、一旦一同は別れた。  
 
キ〜ン、コ〜ン・・。お昼のチャイムがなった。昼食の時間だ。  
ここは、2年F組の教室。食堂に行ったり、各々の固まったグループで  
昼食をとったり殺風景なクラスの中で、異彩で、かつ和やかな雰囲気を  
醸し出している男女の姿があった。三浦とベリ子であった。  
「はい、ミウミウあ〜ん。」ベリ子が、箸を使って三浦の口へ食事を運ぶ。  
いつもなら直接箱ごと放り投げたりもするのだが、普通の人間とほとんど  
変わらない三浦にそんな処置を施す必要はまったくない。  
いや、むしろこういった食事の風景こそ、ベリ子が望んでいたロマンチックな風景だった。  
そんな2人の空気を、教室の隅で歯軋りをしながら睨んでいた姿があった。  
ベリ子の恋敵の三橋麻彩である。  
「ふん!なによ、小さくなったって、余計ベタベタしやすくなっただけじゃない!!」  
と気に入らないそぶりを見せ、一人愚痴をこぼしながらご飯を口に運んでいた。  
ーーーーー「?!!」−−−−−突然、三浦の頭に矢が刺さったような激痛が走る。  
そして、頭の中が真っ白になり、呼吸が上手く出来なくなってしまった。  
ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・  
息遣いが荒くなる。ベリ子が心配そうに三浦の顔を眺める。  
「?ミウミウどうしたの?苦しい?保健室、ついていってあげるョ。」と、その瞬間  
ガバアアアッ!!三浦の、短く太い腕が、ベリ子の背中に回る。そして、次の瞬間、  
既にその大きい口はベリ子の顔の下半分を覆い隠していた。濃厚な口づけであった。  
 
「フグ・・・ちょっと・・・ミウミウ!?」とベリ子に有無を言わせぬまま、  
三浦はゆっくりとその小さな口内に舌を這わせてゆく。太く、短い、生気を込めた  
舌が、ベリ子の口内をまさぐってゆく。  
「ハアァ・・ン!・・・ミ・・ウ・・ミ・・ウ」  
ベリ子が声にならない声を搾り出し、三浦に語りかけようとする。が、三浦には聞こえない。  
お互いの舌先が、口の中で絡み合う。ピチャっという卑猥な水音がベリ子の羞恥心を誘う。  
だが、強烈な力に体を支えられ、身動きが取れない。口内から零れ落ちる唾液が、  
口の両端から床下へ雨漏りの滴のように1滴、そしてまた1滴こぼれ落ちていく。  
(「だめだョ、ミウミウ、みんな見てるョ・・」)悲痛な叫びも、三浦には届かなかった。  
頭の中が真っ白になり、おぞましくも淫乱な感触がベリ子の体を染め上げる。  
ベリ子の口内は、自分のものか三浦のものかとも分からない唾液で一杯になっている。  
「ああ・・・ああぁぁぁ・・・あふぅっ」思わず、溜め込んだ唾液を唇を合わせたまま吹いてしまう。  
だが、三浦はそんなことも気に留めず、狂った様に口内を時々舌を絡めながら舐め続ける。  
ピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャ・・・・・・  
「はぁ・・・あふぅ・・やぁ・・あぁぁぁん」  
いちいち三浦の強烈かつ絶妙な舌触りにいちいち反応する自分が、いやらしく、哀しかった。  
初めてのキス。それは、どんなテレビや映画で見るよりも、ちょっぴりしょっぱく、  
ちょっぴりせつないものだった。  
 
「・・・・・・・・?!!」三橋麻彩には、目の前で起こっている出来事が信じられなかった。  
ただ確実に言える事は、2人が、真昼の教室のど真ん中で、あらぬ行為に走っていることだった。  
だが、あごが外れるくらいの言葉にならない驚きで、体が動かないのである。  
ベリ子は、観念したのか机を背に仰向けになり、三浦を全身で受け止める格好となった。  
そして、三浦は前かがみになり、さらに濃厚なディープキスを交わす。そして、  
左手でベリ子の右腕を掴んだ後、右手をベリ子のスカートの中へ這わせていく。  
(「ン・・・!!ミウミウ・・・だ、だめ!!・・・そこまでは!!」)  
ベリ子の顔が、汗と、仰向けになったことで自然に流れる涙と、逆流する唾液でぐちゃぐちゃになる。  
だが、容赦ないその太い腕は、スカートの中をまさぐり、秘部を保護する最後の砦に辿り着く。  
「ひゃぁ!!」ビクンと、思わず体が真から悲鳴をあげる。三浦は右手でパンツの端をつかみ、そのまま  
脱がそうとする。しかし、それよりも早く麻彩の手が三浦の右手を掴んでいた。  
「あんたたちねぇー・・・。ぬけがけは許さないわよ!それにまだ昼よ!?あんたたち  
自分たちのやってることに対する自覚があんの!?」一気にそうまくしたてると、  
「あんたたちもぼやっとしてないで手伝いなさい!!早くこの2人を引き離すのよ!」  
既に周りの生徒たちは事の一部始終をあっけらかんと見過ごしていた。驚きというよりも、  
もはやある種の虚脱感であった。だが、はっと現実に気付き、男子生徒を中心とした何人かが、  
「おい!三浦!やめろよ!やめろって!」と割って入る。しかし、とめようにもすごい力である。  
その目はあらぬ方角を向き、もはや我を失っており、自分ではどうしようもできなかったのである。  
こうして数人がかりで事を収めるのに成功した後、三浦はまた何事もなかったかのように  
不定期な居眠りの時間に入り浸ってしまった。  
 
------------------放課後--------------------------------  
 
「嘘だろ!?三浦さんが・・・皮村、作り話にしても冗談がすぎるぞ!得意のジャンルだからって」  
「嘘じゃねーしよ。もう学年中の話題になってるだろーよ、今頃。おれのダチなんて、  
ビデオにとっときゃよかったとかゆーしさ。たしかに、学校の教室で、みんなが見てる中での  
××って、マニアには相当受けるだろーしなー。3万ぐらいで取引成立じゃんw」  
「だーかーらー、お前はどうしていつもそういう方向にもっていこうとするんだよ!!」というたあいのない会話を遮り、  
「あら部長、聞いたわよ。ミウミウがヤッチャッたんですってね。真昼の教室で。」  
「林田くーん。ショックだよねー。まさか三浦さんが学校であんなことを・・・。」  
疾うに知れ渡っていた。尤も、既に部員間だけではなく、学年中の噂となっていたが・・・。  
 
 
-----------------------------------------------------------------  
こうして、放課後の部室では当事者たちを除き、馬鹿馬鹿しくも真剣な議論が展開された。  
もちろん、三浦が小さくなったこと自体も忘れ去られて。  
「三浦さんが、そんな状態になるなんて、よほど追い詰められた心理状態だったんだろうな。」  
「あれだよ林田。おまえが三浦さんにばっか過度な期待かけっからだよ。」  
「そうよー。何かとあらばミウミウを頼ってきたわけだしー。そのつけが出ちゃったのよ。」  
「べっ別におれはそんなにミウラさんを頼ってばっかいないよ!頼ってたのは事実だけど・・。」  
「でっでもさ、ミウラさん親御さんも入院されちゃったわけだし。普段のストレスがこの機会に  
溜まって出てきただけなんだよ!林田君のせいじゃないって!」  
(も、森さん・・。)と林田がそんなわずかな喜びに浸る暇もないほど、議論は展開された。  
「やっぱさー、ミウラさんも発情期なんだし、やることはヤリたいんだよ。男だしさ。」  
「あまいわね。人間はね、セックスすることで自己を乗り越えるものなの。そんな行き当たり  
ばったりの甘いこころがけでできることじゃないわ。相当な覚悟あってのことよ。」  
「だからさー、そんな内面なんて誰にもわからないって。みんな落ち着こうぜ。」  
林田がまとまらない雰囲気を必死にまとめようとする。桃里は女の子ということもあってか、  
途中から恥ずかしくてそういう会話についていけなくなり、林田の取りまとめを待つしかなかった。  
 
「とにかく!こんなとこで話してても拉致があかないよ!肝心なことは当事者に聞かなきゃ  
わかんないわけだし。あとでミウラさんもベリちゃんも来るっていってたから、あとで  
ゆっくり話ししていけばいいだろ!さっ練習するぞ!」  
「えー、親友の一大事なのに何考えてんだよてめー。」  
「そうよ!今こそ親身になって青春を語り明かす時よ!部長も男になりなさい!」  
「だー!なんだかんだいってさぼりたいんだろ、てめーら!」  
こうした紆余曲折の後、2人の到着を待ってとりあえず今日は基本的な練習に留まることにした。  
林田は反対したが、真剣な話になりそうなこともあり、意見を飲むこととした。  
部活開始時間までの間、林田が入念にアップを行う中、皮村が藤原を部室に呼んだ。  
「なぁなぁ藤原、俺いいこと思いついてさ・・・。ゴニョゴニョ・・・。」  
「はぁ!?そりゃ手伝ってやってもいいけど・・。上手くいくの!?」  
「大丈夫!こっちの手はずは上手く整えておくから、そっちも上手くやってくれよ!」  
果たして二人の会話の中身は?三浦の末路やいかに!?  
 
 
「ブチョー、みんなー、差し入れだョ。」  
「あー、ベリ子大丈夫だった!?」桃里他、部員たちが心配そうにかけよる。  
「あー、大丈夫だョ。ミウミウもそんなに気にしてないみたいだし。」  
「そうなの?」と林田が遅れて到着した三浦に声をかける。  
「ウーン、ネボケテタカラ・・・。」どうやらよく覚えてないらしい。始末におえない男である。  
「それにね、あたち・・・。」  
「それに?」  
「ううん、なんでもないョ。それより、練習しヨー。着替えはあたちが洗濯するョ。」  
そういうと、ベリ子は気丈にみんなの柔道着をまとめている。  
「よかった、お互いに気にしてないみたいだし、一見落着ね」と、桃里が安堵の表情を浮かべる。  
「あれ?おかしくねー?」皮村がふと何か忘れ物を思い出したような声をあげる。  
「どうしたんだよ皮村?」林田が応える。  
「いや、ベリちゃんさー、今朝とスカート違わなくない?着替えは何種類もあるんだろうけどさ。」  
「そりゃお前あれだろ、汗が気になってしょうがないから着替えたんだろ。」  
「そういうのって普通上の方から着替えねーか?」  
藤原が二人の会話を遮って、  
「あー、そうそう部長。お嬢が相談があるってゆうのよ。というわけで、すぐ戻ってくるから。」  
というと、藤原はベリ子を連れてどこかへ行ってしまった。  
「えー、別にな・・・モガガ」とベリ子の口をふさぐと、猛ダッシュで連れて行ってしまった。  
「あー、そうそう!!俺も三浦さんが相談があるってゆーからさー、林田わりぃ!すぐ帰るから」  
と、皮村も三浦を連れてどこかへ行ってしまった。  
「おまえらー!・・・。まあしょうがないか。」林田はあきらめたように、  
「それじゃ、俺だけでも練習スッか。森さん、また時間が経ったら呼んで来てくれる?」  
「ラジャー!!」と桃里が元気よく応える。  
「くひひひ、成功成功!」と皮村がほくそえんだ後、藤原に電話をかける。  
「藤原サンキュー!うっかり忘れかけてたよ。上手くやれよ!」  
「あんたねー、あんたは学校の外だからいいけど、あたしは学校の中なんだからね!大変よ!」  
「わりぃ!成功したらおごるからさ、健闘を祈るぜ!」そういった後、皮村は三浦を連れて、学校を出た。  
 
皮村たちが着いたのは、伊手通りの小さな書店だった。  
皮村は店に入り、周りを確認したあと、店長に話しかける。  
「よっ店長。また来たぜ。」まるで知り合いのように気さくに話しかける。  
「おー、皮村くんじゃないか。また来てくれたんだね。うれしいねー。」と店長は笑顔を見せた後、  
「おや、そちらの方は友達だね?」  
「そーなんだ。今日はこいつに男を教えてやりたくて来たんだよ。」  
と、バーでドリンクを注文するような雰囲気を醸し出す。  
すると、店長は全てを悟ったように、「なるほどね。」とにやりと笑い、  
そっと一冊の本を取り出した。そして、皮村たちを別室に招きいれた。  
ここは、皮村だけの特別閲覧室である。店長と常連客として気兼ねのない二人は、こういう関係である。  
「じゃぁ、ごゆっくりネー。」と、店長はドアを閉めて、店頭へ戻っていった。  
皮村は一つ咳払いをすると、「じゃあ三浦さん。説明するけど、ここに来たのは他でもない、ミウラさんのためなんだ。」  
しかし、三浦には状況が把握できない。  
「実はサー、三浦さんもこういう状況になって、おれたちとしてもなんとかしてミウラさんを最後までサポート  
してあげたくてさ。なづけてミウラさんを男にするプロジェクトを発案したから。」  
そうすると、皮村は手元から一冊の本を取り出した。ミウラは、そのタイトルを見ると思わず吹き出してしまった。  
『ぬるぬる天国〜SEX入門編:女の子をイカセられるテクとは・・前戯、体位解説付き』  
みるみる顔が真っ赤になる。頭に血が上り、くらくらする。  
「はっはっは。今からそう興奮してどうすんの。もっと興奮して大量出血しても知らねーぜ。」  
と皮村は鼻でせせら笑うと、本を開く。  
そこには、裸のまま秘部を結合させあっていた男女の姿が記されていた。  
知らぬ間に、鼻血が溢れんばかりに流れ出す。「おっと、ここはまだ早すぎだ、と・・。」  
そうやって最初のページを開いた後、皮村は解説を始める。  
エロの知識に関しては授業を開いて説明できるほどだから相当なものである。少しばかり時が経ち、  
「んでさ、女の子を興奮させるにはムードが必要なわけで・・って、ミウラさん聞いてる〜?」  
鼻血の出しすぎで貧血気味になり、三浦はまた夢心地の世界に入りかけていた。  
 
一方、こちらは学校の視聴覚教室。中には、既に椅子が2つ並べられてあり、  
クーラーも効いていて非常に快適な環境下にある。その中で、藤原はベリ子を  
呼び入れ、ドアを閉めて、周りを確認すると安心したようにベリ子に話しかけた。  
「ふ〜、まったく、ここまでの段取りも大変だったんだから。」  
「虎呂助ー、どうしたの?ビデオでも見るの?」  
「当たり!お嬢勘がいいわね。いっとくけどね、これもすべてお嬢のためなのよ。」  
「どうしてー?」  
「いい?お嬢、よく聞きなさいよ。あんたとミウミウはね、今日の昼にね、ただの  
友達関係の一線を越えようとしたのよ!わかる?ああいうことはね、これからのお嬢  
の人生を左右する大きな出来事になるかもしれないんだから、もっとセックスについての  
知識を深めてもらわなきゃ困るってわけ。」と、藤原は早口口調で、かつずばっと指摘した。  
「ふうん。でも、あたちは楽しかったから大丈夫だョ!」と、ベリ子はのん気に応えてみせる。  
「それがわかってないということよね・・・。」と落胆した後、藤原は1本のビデオを取り出した。  
(ほんとは、皮村に最初は言葉で説明しろって言われてんだけど、あたしもよくわかんないし、  
まあ百聞は一見に如かずでしょ。)と心の中でつぶやいた後、藤原はビデオをセットする。  
「なんだろー!楽しみだョー!」と、ベリ子は早くも映画鑑賞の気分に浸っている。  
(あー、巻き戻すの面倒くさいわー。)と、藤原は巻き戻さず再生ボタンを押した時・・・  
「あー!藤原君!こんなとこにいたんだ!ベリ子も!2人とも、林田君探してたよー。」  
桃里であった。「もうー、皮村君はミウラさん連れてどこかいっちゃうし、参るよねー。」  
(まっまずい。モリモリだわ。だ、大丈夫よね。こういうのって、最初は日常生活の  
場面から始まるはずだから・・・。)と藁にもすがる思いだったが、そうは問屋がおろさなかった。  
「うぐぅぅぅ!!あああぁぁぁ!!いやぁぁぁぁぁ!!」  
いきなり本番シーンだった。バサッ・・・ 桃里がいきおいよく鞄を落とす効果音だけがこだました。  
ちなみに、ビデオのタイトルは『変態家庭教師〜愛液と陵辱の世界へ〜』だった・・。  
 
「ふ・・・・・藤原・・・・君?」顔面蒼白になった桃里が、藤原にぎこちなく問いかける。  
(ま・・・まずいわ。余計面倒なことになっちゃったわね。)  
普通の高校男児なら、錯乱して我を忘れ、余計空気を悪化させてしまう所だったが、  
やはり藤原は一枚も二枚も常人よりも上手だった。  
「あー!モリモリ、いいとこにきたわねー。実はね、今日は部長に内緒でみんなでビデオ  
でも見ようかなーと思ってセッティングしてたんだけど、ビデオ忘れちゃってねー。  
そんで、しかたなく皮村が持ってたビデオ見ようかなってことになったら、こんなんだった  
わけよー。」と、早口に走らず、いつものトーンで落ち着いて説明して見せた。  
「ふーーん・・・そう・・なんだ。」と桃里は疑問を感じながらも、さすがに藤原がそういう  
キャラでないことはわかっているので、それもそうかと納得したのである。  
「まあ皮村もミウミウもどっか行っちゃったわけだし、なんならモリモリも一緒に見る?」  
「ええええええええええええええええ!!」桃里の顔が、みるみる真っ赤になる。  
「いやならいいけど・・。今日は特別に暑いでしょ。部活でビデオ研究するって口実作って  
おいたし、貸しきり状態だし誰も来ないわよ。モリモリだってこの部屋に居たいでしょ?」  
「えっ・・・・・・あ・・・・・・・う・・・・うん、まぁ・・・・・・・。」  
桃里は目をあらぬ方向へ動かしながらしどろもどろ応える。桃里のそんな姿が余計藤原にはコタえたのである。  
「それにしても、皮村巻き戻ししとくんなら、ちゃんとしときなさいよねー。なによ、前戯が  
大事とかいっておきながら、結局はやっぱり早く見たいんじゃないの。」  
桃里は最初はまともに画面を見れなかったが、だいぶ慣れるようになると、画面を正視できるようになった。  
「皮村君・・。いつもこういうもの見てるんだなぁ・・。男の人ってやっぱこういうの1本は  
持ってるのかなぁ・・。は、林田君もやっぱ男だし、こういうの見てるのかな・・・。」  
ドキン・・・。心臓が握りつぶされるように苦しい。桃里はそんな自分がまた恥ずかしくなった。  
そのころ、武道場では林田の寂しい声が鳴り響いていた。  
「みんな帰ってきてよー。森さあああああああぁぁぁん・・・・。」  
 
視聴覚教室では、改めてビデオが巻き戻され、鑑賞が始まった。  
最初のあたりはそこらのドラマと変わりないありきたりな展開で、  
ベリ子はおかしをばりばり食い入りながら画面を見つめる。一方の  
桃里は、これまた神妙な面持ちで画面を食い入るように見つめている。  
とてもAVを鑑賞しているとはおもえない雰囲気である。  
「なーんかこの女優いまいちなのよねー。」藤原が評論家のように酷評する。  
「やっぱそういう系の俳優さんたちって本番にメイン入れすぎて、こういうなんでもない場面  
には重きを置かないのよねー。こういう場面がどう本番につながるかなんじゃないの。ねぇ、  
モリモリもそう思うでしょ?」  
「・・・・・・・・・・・・・・・え、・・・・あ、う、うん・・・・。」  
あいかわらずつたない返事で、桃里は画面を見つめ続けている。  
特に緊張もしないし、平然とできているのは、やはり本番ではないせいであろうか。  
そう思ううちに、ビデオはとうとう濡れ場に突入していく。  
「はぁ・・・・う、いや・・・・・・・だめっ!!」  
女優が学生役の男優に押し倒され、服を少しづつ脱がされてゆく。  
「やめて・・・だめよぉぉぉ・・・やめてぇ!!」女優が小さく、苦しい声を絞り出す。  
「いやだいやだ言ってるくせして、実際嬉しそうな顔してんじゃないのねぇ。ねっモリモリ」  
と藤原がまたもいやらしいつっこみを入れるが、もはや藤原の言葉は桃里の耳には入らない。  
そして、本番突入である。男優が素っ裸にされた女優の全身を舐めまくる。そして、女優の  
秘部に顔をうずめた後、女優の顔が引きつりだした。「ん・・・・やぁぁぁぁっ!!あうぁ・・」  
ドキン、ドキン、ドキン・・・。心臓が自分にだけわかる感触ですごく揺れているのがわかる。  
だが、不思議と緊張はするが、興奮はしない。女の子がエロビデオを見るのってこんな感じ  
なのだろうか・・・。桃里は、不思議な雰囲気を肌で感じ取っていた。  
 
本番は、どんどん進んでいく。最初は苦しい顔を見せていた女優も、徐々に  
いやらしいそぶりを見せ、そそりたった男のイチモツを静かに舐め始めた。  
桃里は思わず目をそむけたが、幸いにもそのビデオはモザイクで隠されていた。  
そして、興奮度がピークに達した女優は、いきり立った男のイチモツを立たせたまま、  
静かにその上に腰をかがめてゆく。卑猥な水音と同時に、女優は腰をグラインド  
させ始めた。ズリュッズリュックチャックチャッ・・・・・・・。  
「あらまー、すごい腰使いだこと、完全にヤル気になっちゃってるわね。」  
「虎呂助ー、なんか大変そうだね。これはどういう運動なの?裸にならないとできないの?」  
「うるさいわね。黙って見ときなさいって。お嬢も今に分かるだろうから。」  
「えっ藤原君、どういうこと?」「あああっいやいや、何でもないわ。」  
あやうく大変なネタバレをやらかしてしまうところだったが、藤原はなんとか踏みとどまった。  
そして、男優は女優を仰向けにした後、正上位からの挿入である。男優のイチモツは  
根元まで女優の体内に漬かってしまった。「うわあ、すご・・。全部入ってる。」  
桃里の手にも思わず力がこもる。男優は最後の気力を振り絞る。「うおおおおおお・・・」  
パンパンパンパンパンパンパンパンパン・・・・・・・・・・・  
「ああああああああっあっふあああああああああああああああ・・・・」  
最高潮の声を絞り出した後、女優はぐったりと力尽き、動かなくなった。男優が白液を女優の  
体にまぶしていく。  
「くくくくっ、皮村もここで果てたんでしょうね。」藤原がこらえきれず笑いがこみ上げ、腹をかかえる。  
「果てるってナーニ?」ベリ子が藤原に颯爽と質問を浴びせる。  
「難しいわねぇ・・。そのー、強いて言えば歓喜の絶頂に達したということかしらね。」  
「わっかんないョー。」ベリ子にはやはり飲み込めないようだ。  
「まあ・・・気持ちよくなりすぎて、出すもの出しちゃってすっきりしたってことね。」  
「ふーーん。」こうして、ビデオ鑑賞(?)は終了した。  
桃里にとっては、この1時間弱の時間が、とても長い時を過ごしたかのように感じたのである。  
見ておくべきだったか、見ておくべきではなかったか。その答えは桃里自身にも分からなかった。  
 
「んでさ、これが燕返し。もう体位マニアの間じゃメジャーなもんだよ。  
んでこれが巣篭もり。燕返しと似てるんだけど、体位の被せかたによって  
挿入感が増すんだよなぁ。そんでこれが釣瓶落とし。んー、でもこれだと  
ベリちゃん宙ぶらりんになっちゃうかもしれないし・・。」皮村の講義は、  
最後の体位の段階にまで入っていた。三浦の横には血まみれになったティッシュ  
が山のように積まれていた。眠さと貧血でほとんど意識がない。  
「んじゃま、そういうことで。ミウラさん、しっかりやれよ!!」  
ようやく長時間にわたる講義が終わった。やっと帰れると、急いで三浦が席をたつ。  
すると、皮村が三浦を呼び止め、そっと三浦のてを握って何かを渡した。コンドームだった。  
「ミウラさん、たしか今日ベリちゃんに料理手伝ってもらうんだろ。今日しかチャンスないぞ!  
しっかりやれよ!!あと、ヤルときはこれつけなきゃ大変なことになるから。じゃあな!」  
そういって皮村は三浦の肩を叩くと、満足したかのように、店を出ていった。  
三浦も大量のティッシュをゴミ箱に捨てて外へ出たが、外は既に夕焼けと暗闇が交差していた。  
「アーー・・・」早く帰らないと、ベリ子が待っている。三浦は急いで家へダッシュした。  
店にいる途中でベリ子から電話がかかってきたのだ。  
「あ、ミウミウー?あたち。早く帰ってきてネー。いっぱい料理作って待ってるョ!!」  
早く帰らなければ、彼女の気分を害してしまうかもしれない。  
ただでさえ、今日はああいうことがあったのだから、いろいろ話をすることがあるのだ。  
ドン!思い切り誰かにぶつかってしまった。手荷物がドサドサとこぼれ落ちる。  
「アーー、ゴメンナサイ・・。」「いやいや、こっちの方こそすまんな。」  
と、男が荷物を一緒に拾って三浦に手渡す。三浦は御礼を言うと、再び家へダッシュした。  
「フフフ・・・。いよいよじゃぞ。しっかりな。」それは、三浦に薬を渡した謎の男だった。  
 
一方、林田は絶望じみた表情で学校を出ていた。  
「結局、誰も帰ってきてくれなかったし・・・。」一人の練習にもむなしいものがあった。  
武道場には、他に下級生の中山とよしおが来ていたが、女子と練習するわけにもいかない  
ため、中山朔美には帰ってもらうことにした。ただ、何とも残念そうな表情だったが。  
こうしてよしおとの練習となったわけだが、よしおは全くの初心者同然のため、  
基礎・基本事項から教えなければならなかった。ましてや組み手の練習などできるはずがない。  
「あいつらはともかく、森さんまで・・。そんなに練習いやなのかなー。」  
自分は何のために練習しているのか。このままで自分のためになるのか。  
その答えは林田自身がこれからも苦闘して模索していくものだろう。  
「ぶちょー。」後ろから林田を呼び止める声が聞こえる。「もっ森さん!?」  
林田が目をきらつかせて振り返る。が、声の正体は東だった。「なんだ・・東か。」  
「ぶちょー。ごめんねー。急いだんだけど間に合わなかったよー。」  
たしかに、額にはいっぱい汗が浮かんでいる。柔道着もちゃんと持っていた。  
「東・・・ごめんな。いろいろ忙しいのに。お前・・・大変だろ。両立は。ただでさえ  
勉強もあるし。部活が重荷になるんなら、ほんとに無理しなくていいから。」  
「そっそんなことないよ。」東が慌てふためいた感じがありながらもしっかりと答える。  
「僕はみんなのことが好きだから、辞めたくないよ。それに・・・それに、僕は  
部長といっぱい練習したいんだよ!!」東が細く甘い声を振り絞って主張する。  
「東・・・そんなに部活のことを・・。やっぱ、お前っていいやつだなー。」と東にだきつく。  
はっと気付いたが、もう遅かった。柔道への愛着心が、わかっていながらそうさせたのだ。  
「ふ・・・ふふ・・・うれしいよ。ぶちょー。ぶちょーもやっとその気になってくれたんだね。」  
「待って!ほんと勘弁して!ちょっちょっと写真出す用意させてくれ!!」  
「ふぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」  
「いやっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」  
哀れ林田。いつかのその身に幸あれ。  
 
 
「ミウミウーお帰り!待ってたョー!」家に着くと、ベリ子が料理を用意して待っていた。  
「ミウミウ、お腹すいたでしょ、いっぱい食べてネ!」と、ベリ子が食卓に膳を置いていく。  
一日中不安な気持ちでいっぱいだった三浦であったが、ほんのりと気持ちのなごむひと時であった。  
食事の際にも、会話をリードするのはベリ子ではあったが、いろいろ会話もはずんだ。  
三浦がご飯をほおばっている中、ベリ子が切り出した。  
「今日はいろいろあったねー。ミウミウ。実はね、今日あたち虎呂助とビデオ見たんだ。」  
ドキッ!!嫌な予感が脳裏をえぐったが、食事の手がとまったが、三浦はさりげなく応えた。  
「フ、フーン、ソーナンダ・・・。」  
「そーだョ。そのビデオがね、最初はつまらなかったんだけど、途中から面白かったんだよ。」  
「エー?ド、ドンナカンジダッタノ?」  
「なんかね、男の人と女の人がね、裸になって一生懸命動いてたの。セックスっていうんだよね。」  
ブーーーーーーーーーーっ。ご飯を吹き出す。悪い予感が当たってしまった。  
「どうちたの?ミウミウ。」「イ、イヤ、ナンデモナイ・・・。」  
まさか自分もその時エロ本の解説を受けていたとは言えるはずもない。  
「ミウミウも見ればよかったのにネー。」見なくても、大体のことは想像がつく。  
自分が見た本の内容と大体一緒のことだろう。鈍感な三浦もさすがに予測はついた。  
「そーだ、今日パパが外国にお仕事に行って家誰もいないんだー。  
爺も病院に行っててつまんないし、ミウミウ今日留まってっていい?」  
ドッキーーーーーーーン。こんな偶然が重なり合うものなのか。三浦はドキドキしながらも、承諾する。  
「良かったョー。そんじゃ、ミウミウお風呂入っててねー。服たたんでるから。」  
「ハーーーイ。」三浦は安心したように席を立ち、風呂へ入る。  
ベリ子は服をたたんだ後、授業の後三浦に貸してそのままだったノートを思い出した。  
鞄を探すも中がいっぱいなので、めんどくさくなり中身を全部ひっくり返した。  
すると、教科書・参考書と一緒に、皮村から無理やりもらったエロ本が一番上になってしまった。  
 
「ミウミウ・・・。」ベリ子は赤くなり、本の中身を流し読みしてみた。  
ビデオで見たのと、ほとんど同じ光景である。しかも、加藤○の解説つきで。  
お風呂から出てきた三浦は、びっくりして心臓が止まりそうになった。  
これで完璧に嫌われる。絶交を覚悟したその瞬間、  
「ミウミウも・・・やっぱ見てたんだね。ミウミウも・・・セックスしたい?」  
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン  
胸の高鳴りが一気に高まる。またあの不思議な感覚だ。三浦は胸を抑えるが、鼓動は止まない。  
気づいた時には、その唇は再びベリ子の口元にあった。だが、昼の時とは違い、  
ベリ子はもう受け入れる準備はできていた。  
「ふ・・・・・・ん。嬉しいョ。ミウミウ・・・いっぱい、しよ。」  
そういうと、ベリ子は服を脱ぎだして、上半身裸になった。ミウラは下も脱がせたく  
なったが、皮村のアドバイスを思い出して我慢する。  
(いーか、ミウラさん。まずは女の子をその気にさせないと、愛のあるセックスじゃないからな。)  
三浦は、口内を自らの舌でこれでもいわんばかりに激しくかつ優しく舐めあげる。  
ピチャピチャピチャピチャピチャ・・・・・・・・  
「ふぅ・・・・・・・・ん・・・・ん・・・」ベリ子も舌を絡ませ、完全に気を没頭させている。  
お互いに口を離すと、つーーーと糸がお互いの口からひいていく。  
三浦は糸を吹いた後、ベリ子を優しく抱きかかえ、布団に連れて行く。  
ベリ子を仰向けにした後、その上にのしかかる。普通なら圧迫死してしまうが、この体型なら大丈夫だ。  
だが、どこをどうすればよいのか、わからない。三浦は、必死に皮村のアドバイスを思い出す。  
(ミウラさん、まずは首筋を舐めるんだ。先制攻撃としちゃ効果的だぜ。)  
三浦は思い出すとおり、首筋を舐めた。「ハァ・・・!」ベリ子の体が敏感に反応する。  
月光が、重なり合う男女の影を惜しみもなく照らし続けている。  
 
首筋を舐めあげただけで、ベリ子の体は敏感に震えている。  
首筋だけでこんな状態だ、これからどうなるのだろう。ベリ子に一抹の不安がよぎる。  
三浦は、次に定番の乳首に入る。小さい胸ではあるが、乳首は壮大さを放っていた。  
ペロペロペロペロピチャピチャピチャピチャ・・・・・・・・・・  
「ん、ふぅん・・・・・・は、ん・・・・・・・・・すごいョーー・・」  
ベリ子はいちいち敏感に反応する自分に羞恥心を覚えながらも、その気になり続けている。  
(ミウラさん、さあ、新しい場所を次々攻めるんだ。次は、乳首と乳首の真ん中辺りから、  
おへそにかけて指でなぞってごらん。どこかに敏感なとこがあるから、そこを舐めるんだ。)  
三浦は、思い出すがままの行動を続けた。指でつーーと体をなぞる。「ふぁ!!」  
ベリ子の体が反応する。三浦は徹底してそこを舐めあげる。  
「あはぁ!!いや・・・・・もうおかしくなるョ・・・・・・」  
ベリ子は苦笑いのような感じながらも、嬉しそうな笑みを浮かべている。  
三浦は敏感な部分を丁寧に舐めあげる。ベリ子の興奮度がどんどん高まっていく。  
(よし、じゃあ次はいよいよ秘密の花園だ。ミウラさん、よく眺めるんだぜ。)  
三浦は、そっとパンツを脱がせる。陰毛のないベリ子の割れ目は、すぐに見つかった。  
だが、ここまできてさすがに気兼ねが生じる。三浦はゆっくり深呼吸をする。  
1回、また1回そして覚悟したかのように割れ目を広げた。  
「いや!だめだョミウミウ、恥ずかしいよ・・・。」  
ベリ子が顔を赤らめながら、そっぽを向く。自分でも除いたことがないところ。  
それを人に見られているのだ。恥ずかしさも生じて当然だろう。でも、三浦になら・・。  
この人になら覗かれても大丈夫。そんな安堵感も心の中にあった。  
三浦は勇気を出して、中を覗き込んだ。なんとも神々しい光景であった。  
三浦は、ベリ子の誕生日パーティーに送った一輪のバラを思い出した。真っ赤で可憐なバラ  
だが、ベリ子の花園は、そのバラよりもはるかに神々しく可憐だった。そう、  
それはまさしくピンクのバラであった。  
 
落ち着け、落ち着くんだ。三浦は必死に自分に言い聞かせる。  
(ミウラさん、よく聞くんだぜ。女のアソコってのは、男と違ってややこしいんだ。  
2つ穴があるだろ。上の方にあるのがおしっこが出るところだ。そんで、下の方の  
あなが、チンポを出し入れするとこだ。そんで、一番上にあるお豆さんみたいな  
やつがクリトリスだ。ここが男でいうチンポに値するとこなんだぜ。ここを舐めると  
最高に気持ちいいんだってよ。)ゴクッ・・・三浦の喉に緊張が走る。  
せっかくここまできたのだ。もう後戻りはできない。三浦は意を決して舌を這わせた。  
「ああああああああっ!!」ベリ子のからだがここまでで最高度のびくつきを見せる。  
三浦は目をつぶって一生懸命舌を這わせ続ける。舌の先で性器を転がし、やさしく  
舐めとる。「はぁぁっぁぁん!やぁぁぁぁぁ!く・・・・・・」  
ベリ子は必死に声を抑えようとするが、女としての本能がいうことを聞いてくれない。  
ピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャピチャ  
「ああ!!だめだョミウミウ!!だめーーーー!!」と叫ぶと、ベリ子はたまらず液を放出した。  
三浦の顔に思い切り体液が飛ぶ。三浦はそれを指に絡めとり丁寧に舐めとる。  
「やだぁ汚いよぉ」ベリ子は恥ずかしそうな顔をする。どうやらおしっこと思っているらしい。  
三浦は体液と尿の違いを知っている限りでなんとか説明した。  
「ふーん・・そうなんだ。ごめんねミウミウ。なんかあたちばかり気持ちよくしてもらってるョ。  
あたちもミウミウのこと気持ちよくしてあげる」  
「エ・・・!?」三浦は戸惑いを見せた。  
自分がベリ子をせめることばかりを考え、攻められることを想定していなかった。  
しかし、ベリ子は有無を言わせず三浦のズボンを剥ぎ取り、性器をむきだしにさせる。  
「うわああぁぁ・・・すごいョ。男の人のってこうなってるんだ。まるで生きてるみたいだョ。」  
ベリ子がくりくりした目で勃起した性器を見つめる。まさかやめろというわけにもいかない。  
三浦は覚悟したような目つきで、性器をベリ子の顔の前に近づけた。  
 
ベリ子は、しばらく性器を眺めていた。指でつついたり、握ってみたり。  
そして、こちらも意を決したかのように、舌を近づける。「ビクっ!!」  
思わず、根元から衝撃が来た。体のしんが震える。舌にあたっただけでも  
これだけ気持ちいいのだ。これからどうなるのだろう。ベリ子は舌先を  
ちらつかせある程度舐めた後、顔を話して言った。  
「やっぱ、ものたりないよネ。これじゃ。」と確認する。三浦はまさかいいえとも言えない。  
ベリ子は大きく深呼吸をすると、パクッと亀頭の先をくわえた。そして、顔を上下させ  
たり、口内で先端をいきおいよく転がす。ビデオで見た女性のまねをしたのだ。  
三浦はどうにも気持ちよくなり、体が震えっぱなしである。  
ペチャペチャピチャピチャピチャクチュクチュクチュクチュ  
「ア・・・ア・・・」もうイキそうである。だが、ふと思い出した。  
(自分からさきに逝っちゃいけねーよ。なんのためのセックスかわかんねーだろ。)  
「マ、マッテ!」と三浦が叫ぶ。ベリ子は慌てて口先を放す。  
ベリ子の口から解放された性器は、最高度の起ちを見せていた。  
「うわあああああさっきよりもまた大きくなったョ」ベリ子が驚愕の表情を見せる。  
月光の青白い光で照らされた三浦のソレは、鼓動でピクンピクンと震えを見せている。  
「あたちのためにこんなに大きくなってくれたんだネ・・うれちい。もっと気持ちよくしたげる。」  
そういうと、ベリ子は三浦を押し倒し、いきり立った三浦のソレの上に立つ。。  
先端にあてるだけでも体が敏感に反応する。ベリ子は深く息をとめ、覚悟を決めた。  
「にゅ・・・・う!!」ズブウウウウウウウ・・・・・  
奥まで、また奥まで自分の体が下がってゆく。ベリ子は自分の体にいやらしささえ感じた。  
が、今はそんなことはどうでもよかった。今、この瞬間があるならば。2人の愛があるならば。  
恥ずかしさなんて問題じゃない。愛がそこにあるから。  
ズッズッズッズリュッズリュッズリュッ「かは・・・あ・・・あ・・・」  
自分で腰を動かしながら、ベリ子は快感という闇に飲み込まれていく。  
三浦はひたすら果てないよう、必死に耐えていた。  
 
「はぁ・・・はぁ・・・あ・・・あ・・」  
ベリ子が動きを止める。やはり、細見の少女に騎乗位で男性をリードするのは難しい。  
三浦は「ダイジョーブ?」と声をかける。  
「ごめんね・・・ミウミウ・・・あたちちっさいし、色気もないし・・・でも、  
ミウミウのために何とかしたかったんだョ。」  
「ソンナノイーヨー」三浦はワラって応える。ベリ子は膣からイチモツを引き抜き、  
再び倒れこむ。秘部は、クリトリスをなめられたときから既にグショグショとなって  
いた。だから、抵抗なく挿入できたのだ。  
「いよいよ・・・・だね・・・・・。」ベリ子が震える声で話しかける。  
「ウン・・・。」三浦は覚悟を決めて、鞄からコンドームを取り出そうとする。  
が、・・・・・ない!!どこにもないのだ!帰り際に人とぶつかった時、道に落として  
いたかもしれない!三浦の顔から血の気が引く。ベリ子は、事情が分かったようだ。  
「ミウミウ・・大丈夫だョ・・。もし、なにかあったときは、2人で責任もと。  
半分半分だョ」それが、将来にも影響する事は知っていた。だが、ここまで来て  
ことをおさめるわけにもいかない。三浦は決心して、仰向けになったベリ子の足を  
抱え込み、イチモツを挿入した。  
「ひぃ・・・!!」内臓がびっくりしたかのような感触にベリ子は思わず声をあげたが、  
突き立て揺さぶられるうちに、肉体は自然と三浦のペニスを受け入れていく。ゆっくりと  
リズミカルに激しく、三浦は腰を揺さぶっていく。真夜中の月光に照らされて重なり  
あう2人の肢体は、ニチャニチャといやらしい音をたてていく。  
「うあっあっうああああん  大きいョ・・・痛い・・・・・・・・」  
柔らかく弾むその体は、エロチシズムを放っていた。  
「あう!!はぁ・・・・!!」はしたない声がベリ子の口から漏れる。  
よく奥にとどくというが、この場合ほんとうに奥までとどいている。  
「み・・・ミウミウ怖いよ!!」ベリ子が涙目になってこえをからす。  
「!?」三浦は思わず、腰の動きを止めてしまう。  
 
「ミウミウ・・・怖いョ。怖い感覚が襲ってくるの。お腹の中から  
・・なにかが壊れそうなんだョ。あたち・・どっか遠い所へいっちゃい  
そうで・・怖いよミウミウ!!」とベリ子が涙を見せる。  
ど・・・どうすればいいんだろう・・。三浦は不安に駆られる。  
もし最悪の結果になったら・・・悪い予感ばかりが脳をよぎる。  
だが、そんな三浦の頭の中に、声が浮かんできた。林田の声だった。  
(大丈夫、ミウラさんならきっとできるよ。)部員たちの声も。  
(そーよー、ミウミウならできるわよ。恐れることは何もないわ。どーんといきなさい!)  
(ミウラさんならできるぜ。大丈夫!!そのままイッチャえよ!!)  
ミ・・・・・ミンナ・・・・・・・・・・・・・  
「ダ、ダイジョーブ!ナニカアッタラボクガマモッテアゲルカラ・・・」  
「ほ、ホント?!約束だョ。約束だからねミウミウ!」「ウン・・・」  
そう言って笑った後、三浦は再度腰を動かし始める。  
強烈な腰の動きに、電流並みのような刺激と快感がベリ子の脊髄を通過してゆく。  
ズンズンズンズンズンズンズンズン 「あううう!!」  
ヴァギナの奥にまで達する突きを連続させ、ベリ子の体を揺らす。  
「あ・・・だめだよ・・もうイッチャうよ」三浦の興奮度が頂点に達する。  
「うあああ!!怖いよミウミウ!!何か来る・・何か来るョおおおお」  
かつてない恐怖感に襲われそうになったベリ子は、三浦のクビにしがみつく。  
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!」  
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・」  
小鳥のようなさえずりを立てて、ベリ子は力尽き、果てた。  
三浦もそのまま安心したように眠りに陥った。ベリ子の秘部からつぅーと垂れた  
愛液が水溜りを形成し、月光を受けて優しく輝いていた。  
「ホントはね・・・お昼に初めてキスしたときに・・初めてのアレ・・・きちゃったんだ。  
嬉しかったんだョミウミウ。これからもよろしくネ」  
 
 
ジリリリリリリリ・・・・・・・・・・目覚ましの音で目が覚める。  
目を覚ました三浦は全てが夢であったことを悟った。しかも、急所は  
グチャグチャで、夢精していたのであった。「アーー、モーー・・」  
また洗濯物が増える。帰ったら一仕事だ。三浦は慌てて家を駆け出した。  
一方こちらは学校の部室。いつもどおり朝練で出てきた部員たちを尻目に  
ベリ子は桃里を着替え室へ呼んだ。  
「実はね、あたちミウミウとセ○クスする夢見ちゃったんだヨw」  
「ブフォッ!!ちょ、ちょっとベリ子ぉ!」「大丈夫、内緒にしとくから!」  
そういうと、いつもどおりみんなの前に顔を出した。藤原が寝ぼけ眼で  
不思議そうに話題を切り出す。「実はね、昨日変な夢を見てね、なんかみんなで  
エロビデオ見てたのよ・・あたしとモリモリとお嬢で。そこから先は覚えて  
ないわ。」  
「うそ!あたしもみたョ!!」「そ・・そういえば私もそんな夢見たような・・」  
「俺はなぜか三浦さんにエロ本解説してたしよ・・朝から立ちまくって困ったもんだぜ。」  
「変ねー。みんな同じ夜に同じ夢を見るなんて・・あたしたち変な糸で結ばれてんのかしら。」  
「おまえらなんかと結ばれたくねーよ!さあ練習練習!!」「えーーーーーーーー」  
こうしていつもの一日が始まる。遠くから猛烈にダッシュしてくる三浦の足音が聞こえる。  
武道場の上で、一人たたずむ男がいた。  
「上手くいったようじゃな。よかった、よかった。」そういって男はリストに×印をすると、  
「さて、また清らかな心を持つ人間の心の隙間を埋めに行くとするか。」と言い残すと、  
男は風と共に消えた。  
初夏の風と日光が、少年たちをあざ笑うかのようにてりつける。  
 
 
 
 

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