「ったく、今日もあいつらサボりやがったな」
誰もいない武道場を見て、林田が呟く。
堂々と武道場の中に入るが、依然肩の荷は重い。
(こんなんで本当に柔道部は存続していけるのかな・・・)
部室のドアをゆっくりと開けた。
「え」
「んぁ?」
林田の目の前には下着姿の森桃里・・・。
「うわぁぁっ!!?ご、ごめんなさーいっ!!」
林田は大急ぎで部屋を出て、ドアを閉める。
顔は真っ赤で、心臓の鼓動が早くなっていた。
しかしそれは桃里も同じであった。
「見ちゃった」
「見られちゃった」
それぞれの思いを胸に、いつもと違う練習が始まろうとしていた。
「あはは、ごめんね林田くーん。あたし鍵かけるの忘れちゃって・・・」
「親父、母さん、明日香・・・先立つ亀太郎を許して下さい・・・」
林田が帯をロープ代わりに首を吊ろうとしているのが見える。
桃里は必死に林田を止めた。
「ちょ、ちょっと待って林田君!!」
「ごめんなさい・・・森さん、あんな事をした俺はもう命を絶つしか・・・」
「なんでそーなるの!!」
桃里が林田にツッコミを入れる。
だがその反動で踏み台は倒れ、林田は完全な首吊り状態に。
青白い顔がゆらゆらと揺れている。
「きゃーーっ!?林田君!!」
「ん・・・」
「お、起きたね♪よかったぁ」
林田の顔が一気に赤くなる。
いつの間にか林田は桃里に膝枕をしてもらっていた。
急いで起き上がり、額の濡れタオルが床に落ちた。
少しだけ時が止まり、二人はお互いの顔を見つめ続けている。
はっと我に返った二人は、照れ笑いをこぼした。
「ごめんね林田君」「ごめんね森さん」
二人の言葉がハモり、再び沈黙が訪れた。
「あ、俺、部室の外にカバン置きっぱなしだから、取ってくるね」
「う、うん」
林田が立ち上がり、第1歩を踏み出した時だった。
その足の下には雑誌があり、林田の体が斜めに傾く。
「危ない!」
桃里が林田の体の下に入る。
二人はそのまま部室の無機質な床に倒れこんだ。
「いてて・・・」
「うーん・・・」
気付けば、二人の顔の距離は30センチ未満になっていた。
再び二人はお互いの顔を見つめ続け、沈黙が生まれる。
聞こえるのは自分の心臓の音だけ。
突然、林田は桃里の唇に口付けをした。
(な、何やってんだ俺!?こんな事したら森さんに・・・)
しかし桃里はそれを拒もうとはしなかった。
むしろ、この瞬間を嬉しがっているように見える。
(森・・・さんに・・・)
そのまま二人は口付けを続けた。
そしてしばらくすると、お互いの唇が離れた。
「は、林田君・・・」
恥ずかしそうに桃里が下を向く。
「森さん・・・(ええい、もうどうにでもなれっ)」
林田は桃里の背中に手を回し、抱きついた。
二人の頬がぴたりと触れる。
「俺、俺・・・」
この勢いを止められなくなった林田は、桃里の柔道着に手を伸ばした。
いとも簡単に脱げ、さっき見た白いブラジャーが再び目に入った。
「や、やだ・・・林田君・・・」
「ごめん、森さん・・・ごめん・・・」
林田はゆっくりとブラジャーに手をかけた。
桃里の豊満な胸が露わになる。
「いやっ・・・恥ずかしいっ・・・」
桃里は必死に両手で隠そうとするが、林田の腕力はそれをいとも簡単にどかせる。
そして柔らかい胸をゆっくりと揉みだした。
前に夢で見た時の感触にそっくりだ。
「あっ・・・ん・・・」
桃里の真っ赤な顔から声が漏れた。
理性を無くしつつある林田は、今度は乳首を舌で転がし始めた。
「んぁあっ!?ひうぅっ!!」
初めての感覚に身をよじらせる桃里。
だが、林田の舌は止まるどころか、さらに激しくなっていく。
「んんんっ・・・あふぅっ・・・!」
必死に声を抑えても、それは半ば強制的に漏れてくる。
そして林田は今度は桃里のパンツの中にまで手を伸ばし始めた。
「え・・・ちょ、ちょっと、そこは・・・・んああっ!!?」
林田の手がぬるりと滑る。
中指をスジに沿って、時にはゆっくり、時には激しくなぞり始める。
「うあああぁんっ!!はぁぁっ!」
(森さんがこんなに感じてるなんて・・・)
だんだん指が秘部の周りを集中的に刺激し始めた。
(あの森さんが、こんな顔するなんて・・・)
桃里のパンツはいつの間にか脱げ、部室内には桃里の喘ぐ声と、
愛撫の音だけがただひたすら響いていた。
しかし、桃里はまったく抵抗の気を見せない。
むしろ、望んでいるようにも見える。
「森・・・さん」
林田のものが、ゆっくりと桃里の中へ入って行く・・・。
桃里の中で、何かが切れる音がした。
「あああああぁぁぁっ!!!」
林田のものが、奥まで入った。
「だ、大丈夫・・・森さん・・・?」
「あぅ・・・うん・・・大丈夫・・・」
林田はゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ・・・ううんっ・・・あああっ!!」
痛みを堪えているのか、快感を堪えているのか。
女性経験の無い林田にはほとんど分からない。
だが、一度切れた糸は、なかなかつぎ止められない。
それこそ、林田のような性格では・・・。
「あっあっあっ・・・ひゃあっ・・・」
(桃里さんのこんな声が、聞けるなんて・・・)
林田の動きがどんどん激しくなる。
それと同時に桃里の声も激しくなる。
「あああんっ!!ああ・・・ん・・んんっ!!」
「も・・り・・さん・・・」
「は、林田くんっ・・・ん・・・ああっ!!」
林田は勢いよく、ものを引き抜いた。
ついつい床に置いてあった雑誌で射精を受け止めた。
桃里の瞳はまだ虚ろだ、余韻を楽しんでいるようにも見える。
林田が桃里に抱きつく。
二人は体を寄せ合いながら、ゆっくりと目を閉じた。
「部室閉めるよー」
「うん」
結局今日の練習は林田と桃里の二人だけしか来なかった。
でも二人にとって、それは好都合だったが。
「ねぇ、林田君」
「ん?」
「あたし達、ずっと一緒だよね」
照れながら桃里が言った。
「もちろんだよ・・・えと、その・・・桃里」
桃里が満面の笑みを浮かべる。
純粋な笑み、心底嬉しくないとこんな顔はできないだろう。
「ありがとう・・・か、亀太郎・・・・・・・プッ」
「な、なんでそこで笑うんだよ〜!」
「あはは・・・ご、ごめんね・・・あはははっ」
「傷つくなぁ・・・」
しかし林田もまた、満面の笑みを浮かべた。
夜も遅い帰り道。
二人は家に着くまでずっと手を握っていた。
ずっと、ずっと・・・。
「林田〜!!」
「わっ!な、なんだよ!?」
皮村が泣きながら林田にすがりついた。
「俺の、俺の限定版ヌル天が無いんだよ〜!昨日まではちゃんと部室にあったのに〜!」
昨日ついつい拭いてしまった雑誌。
それが皮村の言う「限定版ヌル天」である事は間違い無かった。
「さ、さぁ・・・どこ行ったんだろうな・・・」
「・・・お前もしかして、また持って帰ったんじゃないだろーな?」
皮村の冷たい視線が林田の背中に突き刺さる。
「ちげーよ!」
「いや、あやしい・・・吐け、吐くんだ林田〜っ!!」
「だから違うって〜」
逃げる林田、追いかける皮村。
何故か林田を追いかける側に藤原と東も加わっている。
道場の端にはミウラさんとベリ子が居眠り。
いつもと変わらない、この柔道部の日常。
それを見ながら、桃里は笑っていた。