誕生パーティーのあった日の夜・・・  
 
皮村 薫の愛読書であるヌルヌル天国(通称ヌル天)が、再びピンチを迎えていた。  
部屋にたまってきたヌルヌル天国が親に見つかり、古新聞と一緒に束ねられてしまったのだ。  
「クソッ、また勝手に部屋に入って掃除しやがったな。」  
皮村はブツブツ言いながら、新聞紙と一緒に束ねられたヌル天を抜き出すと、  
こっそりと自分の部屋に持ち帰った。  
「部屋に置いとくと、いつ捨てられるかわかんねえな。やっぱ、部室に置いとこう。  
でも、林田がまた怒りそうだな。」  
しかし、ここに隠したとしても、またいつ発見されて捨てられるかわかったものじゃない。  
「明日、部室に持ってって隠しとこう。」  
いつぞやのように、皮村は風呂敷にヌル天を包み、持っていけるよう準備した。  
 
そして夕食の時間  
「薫ちゃんったら、こんなにハンサムなのに、どうしてあんな雑誌ばかり見てるのかしら?  
彼女の一人ぐらいすぐに作れるじゃない?」  
皮村の母親は、雑誌を見かけるたびに同じことを皮村に言った。  
相変わらず、母親は、皮村のことをハンサムでもてると思っているようだ。  
(いや、万一彼女ができたとしても、それとこれとは別だろ?)  
皮村は心にそう思うが、口に出すとまたうるさいから言わないことにした。  
「兄貴は、相変わらずああいう雑誌が好きなんだな。」  
「ウルセー、お前に俺の気持ちなんかわかってたまるかよ。」  
一方で皮村は弟にそういうことを言われると、やたら過敏に反応した。  
弟を見るたびに、藤原のあの言葉を思い出すからだ。  
(あんたの顔が奇跡的なダメコラボレーションよね。)  
 
翌朝・・・。  
皮村はいつもより少し早く目覚めていた。  
授業が始まる前に、ヌル天を部室に隠しておきたいからだった。  
「あら、薫ちゃん、今日は早いわね。」  
「ん、ああ、朝練があるから」  
皮村は適当に嘘をついて母親の話をかわしながら、朝食をとっていた。  
「んじゃ、行ってくるわ。」  
皮村は食事を終えると、夕べ包んでおいた風呂敷を背中にしょって、玄関で靴を履いていた。  
「薫ちゃん、その背中の包みは何なの?」  
「えっ・・・こ、これは、部活で使うもんだよ。」  
その場をごまかして、何とか皮村はヌル天包みを家から持ち出すと、そのまま早足で学校に向かった。  
今時、泥棒でもやらない皮村の風呂敷を背負ってる格好は、かなり目立った。  
しかし幸いなことに朝早いため、道には出勤途中のサラリーマンぐらいしか人がいなかった。  
人の少ない通りを皮村は早足で学校に向かっていった。  
 
その頃、林田家では・・・  
「亀太郎、土曜日に親戚の子の結婚式があって、今日は向こうの家に泊まるから、しっかりと留守番をたのむぞ。」  
「あ、うん、わかった。」(そういや、明日は土曜日だったな。)  
林田はそっけなく答える。  
「いいか、特に明日香は徹底的に監視するんだぞ。」  
「わかってるよ。」そう答える林田の口許が少し緩む。  
(それにしても、最近、葬式があったり、結婚式があったり、まあ、忙しいことだな。)  
林田は薄くなった父親の頭を見ながら、そう思った。  
「あっ、お父さんとお兄ちゃん、また何か変なこと話してる。」  
いつの間にか、明日香が近くに来ていた。  
(この俺に気配を悟られずに近づくとは、やるな、明日香。)  
妙なことを感心する林田。もちろん、この林田はいつもの林田ではない。  
とっさに明後日の方向を見ながら、口笛を吹いてごまかす父親。  
(そんなコテコテのごまかし方しても、バレバレだぞ。)  
そんな父親の様子を見て、林田は心の中で突っ込んでいた。  
こんなところは、どうやら以前の林田とさほど変わっていないようだ。  
 
皮村が学校に着くと、一応門は開いていたものの、まだほとんど人の姿はなかった。  
「そりゃそうだ。まだこの時間だもんな。さすがにちょっと早く来すぎたかな。  
まあいいや。とりあえず、ヌル天を隠す場所を探すか。」  
皮村は人気のない校舎の中を歩いて、部室へと向かった。  
 
武道場に向かってしばらく歩いていると、見覚えのある人が学校内を走っているのに気がついた。  
「モモジさんだ。何しに来たんだろ?」  
そう思いながらモモジの方を見ていると、モモジも皮村に気がついたようで、皮村のほうに走ってきた。  
「君は、確か柔道部の・・・」  
「ええ、そうっすけど、どうかしたんですか?」  
「実は桃里が、夕べ学校に出かけたっきり、帰ってこないんだ。」  
「な、何だって・・・!!!」話を聞いて驚く皮村。  
「夕べ、あまりにも帰ってこないから、学校にも来てみたけれど、誰もいなかったし、  
もしかしたら帰り道に誰かに誘拐されたのかも。」  
「ま、まさか!!!」  
皮村はそう言いつつも、あまりにも突然の展開に、心の動揺を隠せなかった。  
「でも、どうして森さんは学校に行ったんっすか?」  
「何でも、林田君が間違えてお酒飲んでまだ倒れてるから、看病と差し入れに行くって言ってたが・・・。」  
(ま、まさかな・・・)  
皮村の頭に一瞬嫌な予感が走るが、慌ててそれを否定する。  
「それで、部室には行ってみましたか?」  
「昨日、一度ここに来てみたけど、既に閉まってて真っ暗だった。  
今さっき行って見たけど、やっぱり鍵が閉まってた。  
窓から部室を覗こうとしたんだけど、窓に何かが貼ってあるらしくて、中の様子は見えなかった。」  
「窓に何かが貼ってあるって?昨日は何もなかったっすけどね。」  
皮村は不思議に思った。昨日まで窓には何も貼ってなかったはずなのに、どういうことだろう?  
「そんじゃあ、今から一緒に行きますか?俺もちょうど部室に向かうとこですし。」  
「よし、行こう。」  
皮村は大慌てで鍵を取ってくると、モモジと一緒に武道場へと向かった。  
 
武道場の鍵を開けて、中に入った。  
下駄箱には誰の靴も残っていなかった。  
皮村はモモジにせかされながら、慌てて部室の鍵を開ける。  
皮村が部室の鍵を開け終えると、モモジが勢いよく部室の扉を開けた。  
「な、な、何だよ、コレ・・・!?」  
思わず皮村が絶句する。  
二人は、目の前に広がる部室の様子に、驚いた。  
窓を塞いでいたのは、なんと柔道着だった。  
窓という窓全てに柔道着がテープで貼り付けられていた。  
そのため、部室の中は薄暗く、いつもと違う雰囲気をかもしだしていた。  
皮村は慌てて明かりをつけると、ようやく部屋の様子が見えてきた。  
部屋中、物が散らかっており、荒れてはいたが、そこに人の姿はなかった。  
 
「オイ、林田。」  
皮村は、携帯で林田に電話をかけていた。  
「どうしたんだ。こんな朝早くから電話してきて。」  
「どうしたじゃねえよ。実は、森さんが行方不明なんだよ。」  
「・・・・。」  
林田の言葉が止まる。  
きっと言葉も出ないくらい驚いてるのだろうと、皮村は思い、話を続けた。  
「森さんは、夕べ、オメエの看病をしに学校に向かって、そのまま行方不明になったんだそうだ。」  
「えっ、昨日の夜か?森さんは学校に来てないぞ。  
目が覚めた時は、中山しかいなくて、二人で戸締りして帰ったぞ。」  
林田の話を聞いて驚く皮村。  
「てことは、森さんは学校に来る途中で何かあったというのか?」  
「そうじゃないのか?とりあえず、俺は今から学校に行く準備すっから、んじゃな。」  
そう言うと林田は携帯を切ってしまった。  
「オイ、林田。」  
(アイツ、森さんが行方不明だというのに、やたらと落ち着いていたな。)  
皮村は、林田の電話での態度に、どこか釈然としないものを感じていた。  
 
道場の方も調べたものの、結局桃里の姿はどこにもなかった。  
「それじゃ、何か見つかったら、すぐ連絡しますんで。」  
「頼むよ。これから、俺は警察に行ってくる。」  
モモジは皮村に言うと、武道場から去っていった。  
 
「えっ、森先輩ですか?昨日は、夕方に家に帰られてから一度も姿を見てないですけど・・・。」  
皮村は朔美にも電話をかけていた。  
皮村の質問に、これまた朔美は冷静に答えていた。  
「ところで、何で部室の窓に柔道着が貼り付けてあるの?」  
「あれですか?あれは、林田先輩がまぶしいって言うから、光を遮ろうと思ってやったんです。」  
(眩しいだって・・・。俺達が帰る時点で、もう夕方になりかけていたというのに・・・。)  
皮村は、朔美の話を聞きながら、妙だと思った。  
「それじゃ、学校に行く準備をしないといけないので。」  
そう言うと朔美は一方的に電源を切ってしまった。  
「あっ、オイ、ちょっと・・・」  
しかし既に電話は切られた後だった。  
「何だよ?森さんがいなくなったってのに、どいつもこいつもそっけない態度しやがって。」  
皮村は既に切られた携帯電話を眺めながら、少し腹を立てていた。  
携帯を眺めていた皮村の目に、床のシミが目に入った。  
「なんだ、このシミは?何かこぼした跡か?昨日はこんなシミなかったぞ。」  
そばにあったゴミ箱を覗くと、空のペットボトルが2本とコンビニの袋が捨ててあった。  
このコンビニは桃里の家と学校の間にあるコンビニで、この辺じゃ1軒しかない。  
昨日の誕生パーティの買出しは、こことは別のコンビニで行なっていた。  
「間違いねえな。森さんは絶対に昨日柔道場に来てたな。」  
皮村の考えは確信へと変わっていく。  
そうなると、次に湧いてくる疑問はこれである。  
「だったら、あの二人は何で森さんが来ていないなんて言ったんだ?」  
皮村はしばらく考え込むが、どう考えても答えは一つしか思い当たらなかった。  
(ま、まさかな・・・。)  
皮村は、自分の出した結論を、どうしても信じることができなかった。  
 
しばらく考え込んでいたため、背中のヌル天のことをすっかり忘れていた皮村だったが、  
肩が凝ってきてようやくその存在を思い出す。  
皮村はヌル天の入った包みを床に置くと、とりあえず窓に貼り付けてある柔道着をはずしていった。  
やがて、柔道着をはずしながら皮村は窓に貼り付けられているものの中に  
柔道着以外のものが混じっていることに気がついた。  
「これは、靴下。この靴下は森さんがよく履いているものと同じだ。」  
次に柔道着の奥から、ズボンが見つかった。  
「これも、森さんがよく履いているズボンだ。ま、まさか・・・。」  
皮村は、窓に貼り付けられている無数の衣類を全てはがしていった。  
柔道着に混じって、ブラジャーやパンティも出てきた。  
これらは全て桃里が身に付けていたものに違いない。  
「ま、まさか、林田の奴・・・。」  
皮村の不吉な予感が確信に変わった瞬間だった。  
 
ふと床を見ると、なにやら小さいシミが点々と部室の外に続いていることに皮村は気がついた。  
「何だ、コレは?」  
シミの跡をたどる皮村。  
部室の外に出ると、シミは消えかかっていたが、しかし、それでもそのシミの存在を意識すれば  
見えないことはなかった。  
シミは点々と女子トイレの方まで続いていた。  
「しまったー!!!」  
さっき、モモジと皮村で桃里を捜したとき、柔道場や部室、剣道場などにばかり目を奪われて、  
不覚にも女子トイレにまで気がつかなかったのだ。  
皮村は恐る恐る女子トイレに入った。  
すると、一番奥の個室だけ扉が閉まっているのを発見した。  
恐る恐る扉を開ける皮村。  
扉に鍵はかかっていなかった。  
中にあった靴に遮られて扉が開かないようになっていただけだった。  
個室の扉の向こうには、桃里が全裸で意識のない状態で便座に座らされていた。  
 
「も・・・り・・・さ・・・ん?」  
あまりの驚きのため、思わずすっとんきょうな声を上げる皮村。  
しかし、桃里の反応はない。  
(ま、まさか、死んでるんじゃないだろうな・・・。)  
恐る恐る桃里の肩を掴む皮村。  
「森さん、森さん、大丈夫?」  
「ん・・・んん・・・。」  
皮村の必死の問いかけに、桃里が反応する。  
よかった。どうやら意識を失ってるだけらしい。  
皮村が何回か肩を揺さぶると、桃里の意識が回復した。  
「森さん・・・。」  
思わず皮村の顔に笑顔が浮かぶ。  
「ん、んん・・・皮村君?」  
桃里は目覚めたばかりのせいか、まだ状況が把握できていない。  
「森さん、大丈夫?」  
「あれ、私は、一体?確か、部室に来て、それで・・・。」  
ハッと身を起こす桃里。  
そして、そこで初めて自分が全裸であることを悟った。  
「きゃあーーーーーー!!!」  
桃里の悲鳴に、  
「ゴメンなさい。」  
皮村はそそくさと女子トイレから退却した。  
皮村は部室にあった桃里の衣類を、できるだけ見ないようにして  
桃里のいる女子トイレに持っていってあげた。  
桃里は、恥ずかしそうに、それを受け取りながら、衣類を身につけていった。  
桃里に衣服を全部渡した後、皮村はハッとなる。  
(し、しまった・・・。せめて、ニオイだけでも嗅いでおくんだった・・・)  
どうやら、いつもの皮村に戻ったようだ。  
 
突然、皮村の携帯の着メロが鳴り出した。  
林田からの電話だった。  
「もしもし・・・。」  
「皮村、森さんは見つかったか?」 林田が尋ねる。  
「ああ、見つかったよ。たった今な。林田、オメー、本当に何も知らないのか。」  
「・・・・」 林田は、何も答えない。  
「オメー、まさか、森さんに・・・。」  
「皮村!!!」  
突然、皮村の話を遮るように、林田が大声を張り上げた。  
「な、何だよ、いきなりでけえ声出しやがって。」  
皮村が林田の声に思わず驚いて、一旦携帯から耳を離すが、再び携帯に耳を傾ける。  
「○×△□☆●×▽◇★・・・」  
林田は意味不明の言葉を皮村に向かって囁きかけた。  
それは昨日、朔美や藤原に囁きかけたのと同じ、謎の言葉だった。  
しかしそれとほぼ同時に、皮村の携帯からの通話が、突然切れた。  
 
一方、部室では、桃里がよろけながら走ってきて、皮村の携帯を弾き飛ばしていた。  
皮村の携帯は、床に落ちて、その衝撃で電話が切れていた。  
「も、森さん、何を・・・。」  
「か、皮村・・・君・・・、は、林田君と話しちゃ・・・ダメ・・・。」  
そう言うと、桃里は倒れこんだ。よほど体力を消耗しているようだった。  
「ちょ、ちょっと、も、森さん、大丈夫。」  
皮村は、桃里を部室に横たわらせると、再び桃里に話し掛けた。  
「ねえ、林田と話しちゃいけないってどういうことよ?」  
皮村が桃里に尋ねる。  
「林田君は・・・今の林田君は、私達の知ってる林田君じゃないの。」  
「えっ、どういうこと?」  
皮村には桃里の話していることが理解できなかった。  
「今の林田君は、藤原君の催眠術によって、理性がない状態なの・・・。」  
「な・・・何だって!?」  
皮村は、今日は朝から驚いてばかりだった。  
 
桃里は、一連の出来事を皮村に話した。  
「すると、今の林田は、藤原に催眠術をかけられたもので、  
その林田は、なぜか、おかしな術のようなものを使うってこと?」  
「そう、意味不明の言葉を・・・藤原君の耳元で囁くところを見たの。  
朔美ちゃんの耳元でも何か囁いてたみたいだった。そして、それから二人とも様子が・・・おかしくなったの。」  
いくら、桃里の話を聞いても、すぐには信じられる内容の話ではなかった。  
「だから、皮村君、林田君に・・・絶対に耳を貸しちゃ・・・ダメだよ。」  
少し苦しそうに話す桃里。やはり、かなり体力を消耗しているようだ。  
「ウ、ウン、わかった。それより、森さんは今日は家に帰って休んだ方がいいよ。」  
「・・・ありがとう、皮村君。」  
皮村の珍しく優しい言葉で、少し気持ちが落ち着いたせいか、桃里は皮村に微笑んで答えた。  
しかし、その笑顔が本物ではないことは、皮村にも痛いくらいにわかっていた。  
 
「あっ、モモジさん?皮村っす。」  
皮村はモモジに電話をかけていた。  
「おう、君か。で、桃里は・・・。」  
電話の向こうのモモジはよほど憔悴しきっているのか、枯れかけた声で電話に出た。  
「桃里さんが、見つかりました。」  
「何、本当かーーー!?」  
その声を聞いて、元気を取り戻すモモジ。  
「ええ、今、電話変わりますね。」  
皮村はそう言うと、桃里に携帯電話を渡した。  
「お父さん・・・」  
「も・・・桃里か。無事か。体は大丈夫か。怪我とかはしてないのか!?」  
「ちょ、ちょっとお父さん、そんなにいっぺんに聞かれても答えられないよ。」  
「あ、ああ、そうだな、スマン。」  
「実は、その、ちょっと熱があったみたいで・・・、武道場に辿り着いたのはよかったんだけど、  
二人はもう帰ってたし、私はトイレでそのまま倒れちゃってたみたいなの。」  
(えっ!?)  
桃里の話を聞いて、驚く皮村。  
 
「で、まだ熱が下がらないみたいだから、今日は家に帰って学校休もうと思うんだけどいいかな?」  
「わかった。学校には連絡しておく。何なら学校まで迎えに行こうか?」  
「ううん、いいよ。自転車とか置いたままだし。裏門からこっそり抜けて帰るよ。」  
「そ、そうか、わかった。」  
「それじゃ、これから家に戻るね。」  
そう言うと、桃里は電話を切った。  
 
「ちょっと、今のどういうこと?」  
皮村が驚いて、桃里に話し掛ける。  
「ゴメン。悪いけど、このこと、しばらくお父さんには内緒にしておいて欲しいんだ・・・。」  
「えっ、何で?」  
「お願い、皮村君。」  
皮村には、桃里の考えていることが全く見えてこなかった。  
しかし、被害者の桃里がここまで頼んでいる以上、自分も黙っているしかなかった。  
「わ、わかったよ。」  
「ありがとう。じゃあ、私は家に帰るね。」  
そう言って、起き上がろうとする桃里だったが、まだ体力が回復していなかった。  
「だ、大丈夫?何だったら、俺もついていこっか?」  
「だ、大丈夫だよ。それじゃ、くれぐれも、林田君達には注意してね。」  
「わかったよ。」  
そう言うと、桃里はヨロヨロとよろめきながら、外に止めてある自転車に乗ると、家に帰っていった。  
「だ、大丈夫なんだろうか?」  
そのあまりにも頼りない自転車の動きを見て、不安に思う皮村であった。  
皮村が部室に戻って、ふと時計を見ると、いつの間にかもうすぐ予鈴が鳴る時間になっていた。  
「もうこんな時間か・・・。いけね。ヌル天隠すの忘れてた。」  
皮村は、ヌル天の包みをとりあえず棚に置くと、部室を出た。  
武道場の玄関を出ると、そこにはいつの間にか林田の姿があった。  
 
桃里は何とかフラフラになりながらも、家に辿り着いた。  
自転車の止まる音が聞こえると、モモジが店の外に慌てて飛び出して来た。  
「桃里ーーー!!!。」  
その迫力に少し驚く桃里。  
「た・・・ただいま・・・。ゴ、ゴメン、心配・・・かけちゃって・・・。」  
桃里は笑顔を作って、モモジを心配させないように気を配ったが、フラフラ状態の今の桃里は  
誰の目から見ても、体調が良いようには見えなかった。  
「だ、大丈夫か。桃里。」  
不安そうに声をかけるモモジ。  
「だ、大丈夫だよ。それより、お風呂に入りたいな。」  
「風呂って、そんな体調が悪そうなのにか?」  
「うん、だって昨日お風呂に入ってなかったし、それに何と言ってもトイレで倒れてたし。」  
「でも、体の方が・・・。」  
「体の方はもう大丈夫だよ。まだ少しだるいけどね。」  
「わ、わかった。」  
そう言うと、モモジは風呂の準備をしに、家の奥に入っていった。  
「あ、ヤキチさん。おはようございます。」  
店内に既に来ていたヤキチも心配そうに見ていた。  
「桃ちゃん、本当に大丈夫?」  
「ウン、もう、大丈夫だよ。」  
桃里は笑みを浮かべながら、そう言うと、自分の部屋へと階段を上がっていった。  
 
桃里は風呂に入ると、体中を徹底的に洗い続けた。  
昨日の出来事までも洗い流そうとするかのように、懸命に洗った。  
やがて湯船につかると、やっとホッとして気が緩んだのか、気がつくと桃里の目に涙が溢れていた。  
内からこみ上げてくるものを抑えることが出来なくなっていた。  
桃里は、自分の声が外に漏れないよう、できるだけ声を殺しながら、しばらく一人泣き続けた。  
 
「やっぱり、かかってなかったようだな。森さんって結構カンがいいんだな。」  
林田は笑いながら、皮村に話した。その林田の様子を見て、皮村はブチッと切れた。  
「オイ、林田、テメー、森さんに何をした?」  
皮村は林田に怒鳴りつけた。  
「おいおい、何をしたって、もう大体察しはついてるだろ?」  
平然としながら答える林田の様子を見て、皮村は愕然とした。  
(嘘じゃなかったんだ・・・。森さんの言ってたことは、本当だったんだ。)  
目の前の林田から、ものすごい威圧感を感じる。  
本能が、今の林田から危険を察知しているのか、心臓の鼓動が速くなっていく。  
(ヤベエな。これは想像以上にヤバイ事態だな。)  
「と、とにかく俺は、オメーを許さねえからな。」  
皮村はそれだけ言うと、林田の前から走って立ち去った。  
走りながら林田の方をチラッと見る。  
林田が追っかけてくる気配がないのを確認すると、皮村は少しホッとしていた。  
 
授業中、皮村は桃里のことばかり気にしていた。  
(森さんがあんなフラフラになるなんて、アイツ、一体どんなすごい事を・・・って違うだろ。)  
考えがエロの方に走りそうになり、皮村は慌てて自制する。  
さっきトイレの中で見た、桃里の全裸を思い出す皮村。  
これが着替えの最中を見たとかいうのであれば、皮村は、間違いなく今晩のおかずにしていただろう。  
しかし、トイレの中で発見した時の、桃里の様子を思い出すと、とてもそんな気分になれなかった。  
(森さん、俺の前では泣かなかったけど、林田達に心も体もボロボロにされたんだろうな。  
たった一人で、周りからどんだけ怖い目に合わされたんだろう。かわいそうに。)  
そんなことを思うと、激しく胸が痛んで、気がつかないうちに、皮村の目から涙が出ていた。  
(やっべぇ、涙が出てきた。授業中に何泣いてんだよ、俺は。)  
そう思い、涙をぬぐう皮村。  
それを見ていた隣の席の女子生徒がさらに隣の女子生徒に話し掛ける。  
「見て見て、あれ、何かしらないけど、泣いてるわよ。」  
「うわっ、ヤダ、キモーイ。」  
(ウルセーよ。)  
隣の会話のおかげで、さっきまでの暗い気分は全部どこかに行ってしまった。  
 
 
ようやく、少し気持ちが落ち着いた桃里は、お湯で顔を洗って、涙を流した。  
しばらくすると、嫌でも昨日のことを思い出していた。  
昨日の出来事がフラッシュバックとなって、桃里の頭の中に甦ってくる。  
 
「いやあああ、やめてーーー。」  
抵抗する桃里だったが、林田の力の前にはさしたる抵抗にはならなかった。  
林田は桃里の上着をたくし上げると、桃里のブラジャーを剥ぎ取った。  
一方、下半身は、朔美が桃里のズボンを脱がそうとしていた。  
桃里は、足をばたつかせて抵抗しようとしたが、藤原のちょんまげが桃里の足を固定すると、  
もはやどうすることもできなかった。  
一方、藤原はこの様子を、部室に置いてあったデジカムで黙々と撮影していた。  
桃里は3人がかりで、あっという間に身に付けているものを剥ぎ取られてしまった。  
林田は、桃里の胸に顔を埋めた。  
「これだよ、この感触。」  
林田はそう言うと、桃里の胸を手で揉みながら、乳首を口で吸い始めた。  
「ああっ・・・。」  
思わず桃里の口から声がもれる。  
「何だ、森さんも感じてるんじゃないか。」  
「ち、ちがっ・・・ああっ・・・。」  
突然、桃里の下半身にヌメッとした感触が走る。  
朔美が、桃里の秘所を舌で愛撫し始めたのだ。  
「朔美ちゃ・・・んん・・・ダ、ダメ・・・そ、そんな・・・とこ・・・」  
段々と桃里の体が熱くなっていく。  
「おお、中山、なかなかやるじゃねえか。じゃあ、俺も・・・」  
そう言うと、林田は桃里の再び胸を愛撫し始めた。  
「イヤ・・・ダメ・・・ああっ・・・あっ・・・」  
とその時、ふと林田が愛撫を止めた。  
「ちょっと待て、誰かが校内に入ってきたようだ。」  
林田は、校内に入ってきた者の気配を感じ取っていた。  
 
「おーい、桃里。」  
校門の前で、モモジは呼びかけるが、桃里からの応答はなかった。  
以前、モモジは出前をしたことがあるので、武道場の場所はわかっていた。  
モモジは、閉まっていた校門をよじ登って超えると、校内に入っていった。  
 
「この気配・・・そうか、モモジさんだな。」  
林田が、笑みを浮かべながら話す。  
「えっ、お父さん。」  
桃里の声が少し明るくなる。  
「大方、森さんが帰ってこないから、心配になって来たんだろう。  
藤原、武道場の入り口をカギで閉めて、全ての部屋の明かりを消せ。  
あと、下駄箱の靴も全部こっちに持って来い。」  
「わかったわ。」  
そう言うと、藤原は林田に言われた通り、玄関のカギを閉めに外に出た。  
「中山。」  
「ハ、ハイ。」  
「お前は、部室の窓に柔道着でも貼り付けて、中が見えないようにしろ。  
柔道着で足りなかったら、森さんの服でも貼り付けておけ。」  
「ハ、ハイ」  
そういうと、朔美も林田に言われた通り、窓に柔道着を貼り付けていった。  
林田の言うままに、動く二人の様子を、桃里はしばらく呆然と見ていた。  
「部長、カギは閉めてきたわよ。」  
「よしっ。」  
「でも、もし、モモジが気がついたらどうするつもりなの?  
いくら隠しても、モリモリが声をあげたら、すぐにばれるわよ。  
そうなったら、あの男のことだから、窓ガラスぶち破ってでも入ってくるわよ。」  
「そうなった時は、気の毒だが、死んでもらうことにしよう。」  
林田の言葉を聞いて、ゾクッとなる桃里。  
 
「オイ、藤原、確かチョメジの大切にしていた刀があったはずだよな。それを持って来い。」  
「わかったわ。」  
そう言うと、藤原はチョメジが隠し持っていた刀を林田に渡した。  
「森さん、多分、もうすぐモモジさんがここに来ると思うけど、静かにしていてね。  
俺も、できれば、森さんのお父さんに手をかけたくないからね。」  
林田は静かな、しかし威圧感ある口調で桃里に話し掛ける。  
刀を構える林田の姿を見て、桃里は体中がガクガク震えていた。  
今の林田ならやりかねない。  
モモジが元プロレスラーで強いことは桃里もわかっていた。  
しかし、林田は刀を持っているし、藤原もいる。  
おまけに、今の林田から感じる異様な恐怖に、桃里は心底怯えきっていた。  
モモジは、武道場の前にまでやってきた。  
武道場は真っ暗だった。  
「おーい、桃里、どこだー。」  
モモジは声をあげるが、桃里からの返事はない。  
武道場の入り口はカギが閉まっていた。  
入り口から中を覗くが、中は真っ暗で何も見えなかった。  
下駄箱を見るが、桃里の靴はそこにはなかった。  
「靴がないってことは、もう学校を出たあとなのか?でも、自転車は残ったままだったし。」  
モモジの声を聞いて、林田の表情が険しくなる。  
(しまった。森さん、自転車でここに来ていたのか。あの時、中山に夢中になってたから気がつかなかった。)  
「念のために部室を覗いてみるか。」  
そういうと、モモジは武道場の裏の方に回ってきた。  
(来たな。)  
林田の刀を握る力が増す。  
(オイ、藤原、今のうちに、こっそりと抜け出して森さんの自転車を隠して来い。)  
林田に言われて、藤原はこっそりと2階からちょんまげをプロペラにして、外に飛び出していった。  
モモジは部室の中を覗くが、窓に何かが貼り付けてあって中の様子が見えなかった。  
しばらく、部室の中を覗こうとするモモジだったが、中から物音一つしないのを確認すると、  
やがて部室の窓の前から、離れていった。  
結局、桃里はモモジに助けを求めなかった。  
 
モモジは、いったん門のところまで戻った。  
校門に戻って、桃里の自転車がないことに気がついた。  
(もしかしたら、別の門から出たのかも知れないな。)  
モモジはそう考え、いったん家に戻ることにした。  
(クソッ、今ほど、携帯電話を買っとけばよかったと思ったことはないな。)  
モモジはバイクを飛ばしながら、そんなことを考えていた。  
 
林田はモモジの気配が去っていくのを確認すると、刀を納めた。  
「森さんが声をあげてくれなかったおかげで、余計な手間が省けて助かったよ。  
じゃあ、また一緒に楽しもうか。」  
林田は乾いた笑いを桃里に見せると、再び桃里の体に触れ始めた。  
もはや、桃里に抵抗する気力は残ってなかった。  
 
あとは、ただひたすら林田と朔美の二人に犯され続けた。  
そこから先のことは、おぼろげにしか記憶に残っていなかった。  
桃里は、そこで昨日のことを思い出すのをやめた。  
昨日のことを思い出したせいか、また涙が込み上げてくる。  
今日は、いつもより長い風呂になりそうだ。  
 
授業中、林田は桃里がいない今日の放課後をどう過ごすか考えていた。  
(やっぱ、森さんがいないとつまんねえな。)  
服を隠して、裸のままトイレに押し込めておけば、万が一意識が回復しても服がないから  
どこにも行けないだろうと林田は考えていたが、こうもあっさりと発見されるとは思わなかった。  
(クソッ、皮村の奴、今日みたいな日に限って、あんな早くに部室に行きやがって。  
こんなことなら、もっと、ちゃんとしたところに監禁しておくんだった。  
・・・しかし、まあ、楽しみは後からじっくりと味わうってのも悪くないな。)  
その時、ふと面白いことを思いついた。  
(そうだ、今日は皮村で遊んでやるか。)  
林田は今思いついたことを実行すべく、頭の中で念入りに計画を立て始めた。  
 
一方、林田の中に封じ込められた林田の理性は、林田本体によって意識の片隅へと追いやられていた。  
昨日、林田から見せられた映像は、林田の理性を崩壊寸前にまで追い込んでいた。  
林田の理性は、昨日のことばかりを思い出していた・・・・。  
 
桃里を助けるため、一時的に体を乗っ取った林田の理性だったが、その反動から、  
林田の理性はそのまま意識を失ってしまった。  
気がつくと、林田の理性は真っ暗な空間に閉じ込められていた。  
(何だ、ここは・・・。何も見えない。)  
何もない真っ暗な空間に、林田が一人ぽつんと立っているような感じだった。  
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。  
「オーイ、まだ生きてるか。」  
(そ、その声は・・・。テメエ、ここはどこだ。俺をどこに閉じ込めやがった。)  
林田の理性は声のする方向に向かってわめき散らした。  
「そこか、そこは、俺の意識の片隅だな。強いて言えば。」  
(意識の片隅?)  
「まあ、あんまり深く考えるな。用はお前にまた邪魔をされたくないから、閉じ込めたってことだよ。」  
(オイ、ここから出せ。)  
林田の理性は必死に怒鳴り散らすが、所詮無駄な努力だった。  
「そんなこと言って、俺が素直に出すとでも思ってるのか?バッカじゃねーの。」  
林田は、理性が必死になってる様子がおかしくて仕方がなかった。  
(うるせー、とにかくここから出せ。)  
 
「まあ、そう言うなよ。今、面白いもの見せてやるから。」  
そういうと、暗闇の空間に突如、外の世界の映像が映し出された。  
まるで、空間の一部が巨大なスクリーンになったかのように、外の世界の映像を映し出していた。  
その映像を見て、林田の理性は言葉を失った。  
目の前に映し出されているのは、全裸にされた桃里の姿だった。  
「必死で逃がそうとしたみたいだが、残念だったな。この通り、森さんは俺のものだ。」  
(テメエ、森さんを放せ。)  
「クックック、そこでせいぜい吠えているがいい。これからライブ映像をたっぷりと見せてやるからな。」  
(な、なんだと・・・。)  
 
「見ろよ。森さんのこの豊満なバストを。この乳首を愛撫するとかわいい声をあげるんだな。」  
そう言うと林田は、桃里の乳首を口に含んだ。  
(やめろ、森さんにさわるんじゃねえ。)  
林田の理性は怒鳴るが、どうすることもできない。  
「見てくれ、森さんのオマンコ。濡れてきてるだろ。」  
(やめろ、やめろ。)  
「森さん、オマンコで相当感じちゃってるみたいだな。そっちに声を届けてやるよ。」  
ピチャピチャピチャピチャ  
「やっ・・・あっ・・・ああっ・・・だめぇぇぇ・・・」  
(やめろ、やめろ、やめろーーー!!!)  
「森さん、中山の舌でイカされちゃったみたいだな。」  
(テメエら、やめろーーー!!! やめるんだ。)  
「見てくれ。森さんが俺のチンポ加えてるぞ。」  
(お前が無理矢理加えさせてるだけじゃねえか。)  
「森さん、やっぱり処女だったんだな。おまけに森さんの中、締りが良くて、すっごく気持ちいいし。」  
パンパンパンパン・・・  
「あっ・・・あっ・・・やっ・・・はぁん・・・ああっ・・・」  
(やめてくれ・・・)  
「森さん、もう本当にすっかり感じちゃってるみたいだな。自分から腰振ってるし。」  
「森さん、またイッちゃったみたいだな。でもまだまだ続くぞ。」  
(頼む・・・やめてくれ・・・)  
「ようし、じゃあラストスパートだ。中出しは止めといてやるよ。妊娠されたら楽しめなくなるからな。」  
「森さん、感度がいいんだな。またイッちゃったよ。」  
「森さん、俺のザーメンにまみれたまま、気持ちよすぎて気を失っちゃったみたいだな。」  
(・・・・・・・・・・・・)  
林田と朔美の桃里に対する蹂躙は延々と4時間以上も続けられた。  
桃里は朦朧とした意識のまま、終始、林田と朔美にされるがままになっていた。  
その間、外の映像をずっと見せつけられて、林田の理性はもう言葉も発することができなくなっていた。  
そしてようやく桃里への蹂躙が終わると、そこで外の映像はそこで途絶えた。  
「これで森さんは俺のものだ。フフフフフハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・」  
あとは、暗黒の空間に勝ち誇ったように林田の笑い声だけが高々と響いていた。  
 
(俺は、目の前で襲われている森さんを助けることができなかった・・・。)  
暗闇の中、がっくりとうなだれる林田の理性。  
(俺は無力だ・・・。森さん、ゴメン・・・)  
林田の理性は、その暗黒の闇に溶け込んでいくかのように、暗い闇に沈んでいった。  
 
放課後・・・  
皮村は部室に行くべきかどうか悩んでいた。  
(どうすっかな?林田のいる道場に行くのは、正直ゾッとするけど、ヌル天隠すの忘れてたしな。)  
この状況にあっても、ヌル天のことを心配する辺りは、さすが皮村であった。  
その時、皮村の教室に藤原がやって来た。  
「皮村、部長があんたに見せたいものがあるから、部室によってくれって行ってたわよ。」  
「ア? 何だよ、見せたいものって。俺は、オメーになんかに用はねえって言っとけ。」  
皮村は藤原にそう言うと、かばんを持ってそのまま教室を出ようとした。  
しかし、藤原はちょんまげを伸ばして皮村の体をグルグルに縛ると、藤原は強引に皮村を引きずりはじめた。  
「コラ、放せ。藤原。」  
しかし、藤原は無表情のまま、皮村を引きずって歩き始めた。  
藤原が引きずっていく方向には、武道場があった。  
「放せ、藤原。大体、こんなことになったのはオメーのせいじゃねーかよ。  
おまけに、ミイラ取りがミイラになりやがって。今じゃ、すっかり林田の手下かよ。」  
皮村はわめきちらすが、藤原は気にもとめずに、皮村を引きずっていった。  
藤原は皮村をそのまま武道場まで引きずっていくと、武道場の玄関に入っていった。  
「オイ、靴ぐらい脱がせろ。」  
皮村がそう言うと、やっと藤原は引きずるのをやめた。  
皮村は、縛られていない部分だけで何とか靴を下駄箱に閉まった。  
下駄箱に靴をしまうのを確認すると、藤原は再び皮村を引きずりはじめた。  
そして、柔道場の中に皮村を連れ込むと、ようやく皮村を解放した。  
柔道場の中には林田がいた。  
皮村は、林田の方を見て、びっくりした。  
林田の上には、裸の女性がまたがって腰を振っていた。  
 
「ああん・・・あっ・・・は、林田君・・・き、気持ちいい・・・。」  
林田の上にまたがって、恍惚の表情で腰を振ってる子に皮村は見覚えがあった。  
「な、なっちゃん・・・。」  
「よお、皮村、随分と遅かったじゃんか。」  
なっちゃんをはめたまま、林田は平然と皮村に話し掛けた。  
「ああっ・・・もう・・・イク、イっちゃう・・・」  
「しゃあねえな、じゃあイカせてやるよ。」  
そういうと、林田はなっちゃんの腰を掴むと、激しく下から突き上げた。  
「ああっ・・・あっあっ・・・また・・・イッちゃう・・・イッちゃう・・・あああっ・・・」  
林田の激しい突きで、なっちゃんは絶頂に達した。  
「俺、まだ、全然来てないんだけどな。中村さんにはもう少し頑張ってもらおうか。」  
そう言うと、林田は再びなっちゃんの腰を掴んで下から突き上げた。  
「ああっ・・・す、すごい・・・林田君・・・女の子でも・・・こんなに・・・ああっ・・・」  
そう言うと、なっちゃんは再び林田の上で腰を動かしはじめた。  
「何だよ、女の子でもって?」  
林田は、なっちゃんが何を言いたがってるのか、よくわからなかった。  
「だ、だって・・・いつもは・・・はぁ・・・東君と・・・ばっかり・・・あっ・・・ああっ・・・」  
なっちゃんは再び絶頂が近いようだった。  
しかし、林田は東の話が出てきたせいか、林田の気分は急速に萎え始めてきた。  
(ったく、嫌なことを思い出させやがるな。)  
「もういいよ。どいて、中村さん。」  
林田はそう言うと、なっちゃんを自分の上からどかした。  
あと、もう少しで絶頂というところで、外されてしまったなっちゃんは、体の疼きに耐えられなかった。  
「い、いやぁ、止めないで・・・林田君、お願い。」  
林田の巨根を見て、甘い声で哀願するなっちゃん。しかし、林田はもうそんな気分にはなれなかった。  
「おい、中山。中村さんのアソコ、汁だらけだから綺麗にしてあげてやってくれ。」  
「は、ハイ。」  
朔美はそう言うと、横たわってるなっちゃんの秘所を舌できれいに拭い取り始めた。  
「あっ・・・はっ・・・ああっ・・・」  
朔美の舌の動きに合わせて、再びなっちゃんは甘い声をあげ始めた。  
 
「待たせたな。」  
林田は、そう言うと、皮村の方に近づいてきた。  
「オメー、なっちゃんまで・・・」  
「ああ、でもあの子、今まで結構数こなしてるみたいだな。」  
「そうじゃなくて、お前、森さん一筋じゃなかったのかよ。」  
「まあ、そんなことはどうだっていいじゃんか。それよりも実はお前に見せたいものがあるんだよ。」  
林田が不気味に笑いながら、部室の方を指差した。  
「何だよ。部室に何かあるって言うのかよ。」  
「俺からお前への心ばかしのプレゼントだ。きっと気に入ってくれると思うよ。」  
皮村には、林田の考えてることが全くわからなかった。  
「オイ、まさか、そのプレゼントとやらで、俺に森さんのこと黙っとけって言うんじゃねえだろうな。」  
「そんなことは考えちゃいねーよ。まあ、とりあえず部室に入って、プレゼントを受け取ってくれよ。」  
絶対、これは罠に違いない。  
皮村はそう思ったが、林田と藤原にはさまれているこの状況では逃げようがなかった。  
「あっ・・・あっ・・・ああああっ・・・」  
柔道場の方から、大きな喘ぎ声が聞こえてきた。  
「中村さん、中山の舌でイッちゃったのか。何のために綺麗にしてやってるんだか。」  
呆れたようにつぶやく林田。  
一方、皮村は、しばらく道場の方の喘ぎ声に呆然としていた。  
「さあ、早く部室に入って、プレゼントを受け取ってくれよ。」  
林田の声で我に返る皮村。  
「わ、わーったよ。オメーがそこまで言うんだったら、受け取ってやるよ。  
でも、これで森さんのことを忘れると思ったら、大間違いだからな。」  
皮村は、林田にそう言うと、部室の扉を開けた。  
部室の中を覗いた瞬間、皮村の頭の中は真っ白になり、何もかも考えられなくなった。  
その皮村の様子を見て、ニヤッと笑う林田。  
部室の中では、女の子が一人オナニーに耽っていた。  
秘所はもうグッショリと濡れており、いつでも挿入できるようになっていた。  
「皮村さんのおちんちんが欲しいです。ここに入れてください。」  
自分の秘所を指で広げながら、皮村に話しかける子は、皮村もよく知っている子だった。  
「さ・・・佐藤・・・ちえ・・・ちゃん・・・」  
 
皮村は、今、目の前で起きていることが理解できなかった。  
何も考えられなくなっていた。  
「どうだ、お前、この子がまだ好きだったんだろ。俺からのささやかなプレゼントだよ。」  
林田は、悪意の笑みを浮かべながら、皮村に言った。  
「ああっ・・・皮村さん・・・早く・・・私のオマンコに・・・おちんちんを入れてください。」  
佐藤ちえが悶えながら皮村に訴える。  
彼女の声でようやく我に返る皮村。  
「だとよ、皮村。早くやってやれよ。」  
へらへら笑いながら話し掛ける林田に、皮村の怒りは頂点に達した。  
「オイ、テメー、佐藤さんになにしやがったーー!!!」  
思わず皮村は、我を忘れて林田に殴りかかった。  
しかし、林田は皮村のパンチを簡単に手で掴むと、皮村を軽く突き飛ばした。  
「皮村、お前、もっと素直になれよ。お前のココは、あの子の中に入りたいって叫んでんぞ。」  
林田は薄ら笑いを浮かべながら、皮村の股間を指差した。  
皮村の股間は、既にはちきれんばかりの大きさで、天を指していた。  
「クックック、皮村、もっと自分に正直になろうぜ。」  
林田はそう言うと、佐藤ちえの前に皮村を連れて行った。  
欲望と理性の狭間で苦しむ皮村。  
「どうした、皮村。またそこで勃ち往生するつもりか。」  
林田が佐藤ちえに合図を送ると、佐藤ちえが皮村の目の前でオナニーを始めた。  
佐藤ちえは自分の秘所を指でなぞり始めた。  
「はぁ、あん・・・皮村さん・・・見て・・・私のココが・・・も、もうこんなに・・・ああっ・・・」  
皮村の見ている目の前で、指を秘所に激しく出し入れするちえ。  
秘所の奥からは、愛液があふれ出てきており、指を出し入れするたびにピチャピチャと卑猥な音を立てていた。  
「ああっ・・・か、皮村さん・・・わ、私・・・もう・・・」  
さらにちえは激しく指で秘所をさわる。  
「ああっ・・・イク・・・イッちゃう・・・か、皮村・・・さ・・・ああん・・・」  
皮村の見ている目の前で、佐藤ちえは絶頂に達した。  
「あーあ、佐藤さんイッちゃったよ。見ろ、皮村、オメーがさっさとしないから・・・。」  
途中まで言いかけて、林田は皮村に話し掛けるのをやめた。  
「やっぱり、勃ち往生か。やれやれ、本当に情けねえ奴だな。オメーはよ。」  
 
部室を皮村と佐藤ちえの二人っきりにして、林田達は部室を出た。  
「フッ、あの様子だと陥落は時間の問題だな。」  
林田は、笑いながら、柔道場の方へ向かって行った。  
「はぁ・・・ああっ・・・あん・・・」  
柔道場ではなっちゃんと朔美がいつの間にか二人とも裸になって絡み合っていた。  
「何だ、お前ら、まだやってたのか。中山は、本当にアソコ大好きッ子だな。」  
ひたすら二人が互いの秘所を愛撫しあう様子を、林田は少し呆れながら見ていた。  
 
皮村は、気がつくと部室で横たわっていた。  
「あれっ、俺は一体?そうだ、佐藤ちえちゃんの・・・。」  
その時、皮村は体に違和感を感じた。  
「えっ、何で、俺、何も着てないんだよ。」  
その時、皮村の目の前に佐藤ちえが現れた。  
「ち、ちえちゃん。」  
「皮村さん。私が皮村さんを気持ちよくさせてあげますね。」  
そう言うと、佐藤ちえは皮村のモノを手で触ると、上下にしごき始めた。  
「あっ」思わず、皮村は声をあげた。  
(あの、佐藤ちえちゃんが・・・俺のモノを・・・しごいてるなんて・・・。)  
佐藤ちえは、しばらく皮村自身を上下にしごくと、今度は口に先っぽを含んだ。  
「ううっ・・・。」 皮村は再び声をあげた。  
ちえは舌で先っぽを愛撫しつつ、手で皮村自身を上下にゆっくりとしごきながら、もう片方の手でタマをさわって刺激する。  
だんだん、皮村の射精感が高まってくる。  
皮村のソレはもういつ発射してもおかしくないくらいに、膨張していた。  
射精が近いと感じたちえは、手でしごくのを止めて、今度は皮村自身をいとおしそうに口いっぱいに頬張った。  
「あうう。」 思わず情けない声を出す皮村。  
そして、口で皮村のものをしごき始めた。  
あのちえちゃんが、自分のものを口に加えている。そう思っただけで、どんどん高ぶっていく。  
「ああっ、ちえちゃん、俺、もう・・・。」  
その様子を見て、ちえは激しく口でしごき始めた。  
「ちえちゃん、ちえちゃん、ああっ」  
ついに皮村は、佐藤ちえの口の中に射精した。  
 
ちえは、皮村が発した液体を、全て飲み干すと、チロチロと舌で皮村自身を舐めて綺麗にしていった。  
そして、まだ中に残っていた精液も、ちえが吸いだして飲み干していった。  
ちえは、しばらく名残惜しそうに皮村自身を口に加えていた。  
「ちえちゃん。」  
皮村が叫ぶ。  
「皮村さん。」  
ちえが自分のモノを加えたまま、上目使いで自分の方を見るその姿を見て、  
皮村は欲望を抑えきれなくなっていた。  
「ちえちゃん、俺、俺・・・」  
そう言うと、皮村は佐藤ちえの体を押し倒していた。  
 
「クックック、結局、皮村も欲望には逆らいきれなかったな。  
人の理性が欲望の前に屈服していく様を見るのは、いつ見ても楽しいものだな。」  
「そうね。」  
無表情で藤原が答える。  
二人の目の前では、朔美となっちゃんの二人が互いの秘所を愛撫しあっていた。  
「ああん、あん・・・」  
「あっ・・・あっ・・・ああん・・・」  
二人の喘ぎ声が響く中で、林田と藤原は冷静に話をしていた。  
「ところで、藤原・・・。」  
「何?」  
「あのちえちゃんと一緒にいた、ちえちゃんの彼氏、確か山田君って言ったっけ?」  
「確か、そんな名前ね。」  
「死んで・・・ないよな?」  
「・・・多分ね・・・。」  
「そうだな。邪魔しやがったから、思わず俺とお前で手を出しちまったが、  
あの程度で死ぬわけないか。  
それにしても、今日は最高の気分だ。フフフハハハハハハ・・・。」  
何もかも思い通りに行き、林田は勝ち誇ったように豪快に笑った。  
これで林田は、今日、桃里を抱けなかったうさを、少しは晴らせた気分になった。  
その頃、屋上の片隅では、山田が全身血まみれになって倒れていた。  
 
その時、いつの間にか、武道場の玄関に外から二人が近づいてくるのに気がついた。  
「チッ、こんな時にやってくるとは・・・。」  
いつも、調子に乗って楽しんでいる時に限って、遠くの気配を見落とすのが林田の悪い癖だった。  
「まあ、いい。あの二人にも楽しんでってもらおうか。」  
林田は、そう言うと、再び悪魔のような笑みを浮かべた。  
 
「ミウミウ、最近眠ってばっかでつまんないョ。」  
ベリ子は最近ミウミウが眠ってて、ちっとも自分の相手をしてくれないことを、不満に思っていた。  
「ゴ・・・ゴメン・・・。」  
でも、この陽気の前には、ミウミウの意識はあってないようなものだった。  
「フワァァァ・・・」  
ミウミウは大きなあくびを浮かべると、眠たそうな目でベリ子の方を眺めた。  
「もう、言ってるそばからこれだョ。」  
困ったような表情で、ベリ子はミウミウの方を眺めていた。  
 
「ちえちゃん。」  
皮村は、自分の中の熱い思いをもはや抑えきれなかった。  
何度も何度もちえにキスをした後、皮村は一気にちえの秘所まで頭をずらし、舌でちえの秘所を愛撫し始めた。  
「ああっ・・・あっ・・・イイ・・・気持ち・・・イイ・・・。」  
皮村の愛撫を受けて、ちえは恍惚の表情を浮かべながら声をあげていた。  
皮村は、ちえの秘所を両手を使って広げると、今度はクリトリスを唾液をたっぷりと含んだ舌で丹念に愛撫した。  
ちえの声がだんだんと激しくなる。  
「はあっ・・・あっあっあっ・・・また・・・あっ・・・イッちゃう・・・はあっ・・・」  
激しい喘ぎ声を上げるちえ。ちえは再び絶頂を迎えそうになっていた。  
「ちえちゃん。俺、俺、もう我慢できねえ。中に入れるよ。」  
「ハァハァハァ・・・皮村さん・・・私の中に・・・入れて・・・激しく・・・突いてください・・・」  
ちえのその言葉に、皮村のボルテージは最高潮に達していた。  
皮村は、ちえの両足の間に体を入れた。  
そして、これから挿入しようとしたまさにその時・・・  
ガチャッ。  
部室の扉の開く音がした。  
 
扉を開けたベリ子は、手に持っていたバスケットを思わず床に落とすと、  
その中の光景を見て、しばらく呆然として立ち尽くしていた。  
「ゲッ、べ、ベリちゃん。」  
それまで官能的な雰囲気に流されていた皮村だったが、ベリ子の姿を見て、一気に正気に引き戻された。  
そして、ベリ子もしばらくして我に返った。  
「キャーーーーーーーーーーーー!!!!。」  
ビン、ビン、ビン、ビン・・・  
と同時にベリ子は叫びながら、パチンコで一斉乱射し始めた。  
「ち、違うんだ。ベリちゃん。これには、わけが・・・」  
皮村はそう言いながら、全裸のままべり子の方に近づく。  
「キャーーーーーーーーーーーー!!!!。」  
ビン、ビン、ビン、ビン・・・  
皮村が全裸で近づいてくるのを見て、ベリ子はさらにパチンコを打ちまくる。  
バチッ、バチッ、バチッ  
「いてっ、いててて・・・。」  
皮村の素肌にパチンコ攻撃が何発も命中し、あまりの痛さに、皮村は思わずしゃがみこんだ。  
そして、皮村を狙って放った何発かの流れ玉は、後方で呆然と見ていた佐藤ちえの顔や頭に命中した。  
バチッ、バチッ、バチッ 「イタッ。」  
(マズイな。)その様子を察知した林田が慌てて立ち上がる。  
「イタタ、えっ、私、ここで、何を・・・って私、裸?、それに目の前に皮村さんも裸で・・・」  
「キャーーーーーーーーーーーー!!!!。」  
佐藤ちえは叫びながら、近くに脱ぎ捨ててあった自分の服で慌てて自分の体を隠した。  
(えっ、ちえちゃん、もしかして・・・)  
皮村は、そう思うや、まずベリ子を落ち着かせようと、自分の服を慌てて着始めた。  
「佐藤さん。」  
「えっ!?」皮村の声にビクッとするちえ。  
「ゴメン、とりあえず今は俺を信じて、早く服を着て。」  
何か言い返そうとしたちえだったが、皮村の真剣な顔を見て、皮村の言う通りに急いで服を着始めた。  
「あれっ、何か様子が変だョ。」  
さっきまで叫びながらパチンコを放っていたベリ子も、ようやく落ち着いた。  
 
ちえは何がなんだかわけがわからなくなっていた。  
(えっ、気がついたら、ここで皮村さんと二人裸になってて・・・、私それまで何やってたんだろう?)  
混乱するちえの手を皮村が引っ張った。  
「きゃっ。」突然のことに驚くちえ。  
しかし、皮村は構わずにちえの手を引っ張ると玄関まで行き、ちえと一緒に武道場を飛び出した。  
 
「あーあ、ちえちゃん正気に戻っちゃったか。まあ、藤原達にかけた術と違って、浅い術だったからな。  
ベリちゃんのパチンコが頭に2,3発当たって、正気に戻っちゃったみたいだな。  
まあ、あの術はかけられている間の記憶は残らないし、ま、いっか。」  
部室にやってきた林田は、皮村と佐藤ちえの二人が武道場から逃げ出す姿を見送っていた。  
林田の背後には、わけがわからず立ちすくむベリ子とミウミウの二人が立っていた。  
「ベリちゃん、せっかく皮村がちえちゃんと結ばれるとこだったのに、終わっちゃったじゃんか。」  
「だ、だって、学校で、こんなことしちゃイケナイんだョ。」  
「しゃあないな、じゃあ、今度はベリちゃんが俺達を楽しませてよ。」  
「楽しませるって、あたちがブチョーを?どうやって?」  
「こうやるのさ、ミウラさん、ちょっと耳貸して。」  
そう言うと林田は、ミウラさんの近くによると、耳元で囁いた。  
「○×△□☆●×▽◇★・・・」  
「えっ、何だョ。今の?」  
ベリ子には、林田がミウミウに囁いた言葉の意味がまるでわからなかった。  
 
「ハァハァハァハァ、こんだけ離れたら、もう大丈夫だろ。」  
皮村はそう言うと、つかんでいたちえの手を離した。  
「ハァハァ、皮村さん、私には何が何だかさっぱりわからないんですけど・・・」  
「佐藤さん、放課後に林田と会っただろ。」  
「えっ、そう言えば、放課後、声をかけられて、屋上に呼び出されて・・・あっ。」  
「どうしたの?」  
「山田君が、山田君が・・・」  
そう言うと、ちえは慌てて校舎の中に走っていった。  
 
「どうしたの、佐藤さん。」  
皮村もちえの後を追いかける。  
二人とも、校舎の屋上めがけて、一目散に走りぬいた。  
屋上の扉をそっと開けると、そこには血まみれになった男が倒れていた。  
ちえの体がわなわなと震える。  
「いやああ、山田君、しっかりして。」  
涙を流しながら、血まみれの山田を抱きかかえるちえ。  
ちえの後を追って、屋上までやってきた皮村も、その様子を見て愕然となった。  
(こ、これも、林田の仕業かよ・・・クソッ。)  
「病院だ、佐藤さん、早くそいつを病院に連れてくんだよ。」  
皮村の声に、ハッと正気に戻ったちえは、山田を病院へ連れて行こうとするが、  
体格の差があまりにもありすぎた。  
と、その時山田の意識が回復した。  
「山田君・・・。」  
「佐藤さん、ご、ゴメンよ。君を、守ってやれなくて。」  
「ウウン、いいの、それよりも一緒に病院に行きましょう。」  
ちえは山田に肩を貸すと、ゆっくりと歩き始めた。  
「皮村さん、私、全然記憶にないんですけど、これだけはわかります。  
皮村さんが、私を助けてくれたんですよね。本当にありがとうございました。」  
そう言うと、皮村に深々とおじぎするちえ。  
(ち・・・違うんだ・・・ちえちゃん・・・)  
ちえの感謝する様子を見て、皮村は気まずい気分になっていた。  
「そ、そんなことより早く彼を病院に連れてってやりなよ。」  
ちえは、何度も皮村におじぎをすると、山田と共に屋上から去っていった。  
(これで、俺の初体験も幻と消えたか・・・)  
皮村は二人が去っていった方向を見て、しばらくガックシしていた。  
「でも、あんな形で佐藤さんとやっちゃうのは、やっぱナシだな。それこそ林田の思う壺だ。  
とにかく、あの時、ベリちゃんが来てくれたおかげで、正気に戻れて助かったな。」  
そう自分に言い聞かせて、気を取り直そうとするが、その時、皮村にまた嫌な予感が走った。  
「そ、そういや、ベリちゃんは、まだ今の林田のこと知らないんじゃ・・・。ヤベェ!!!」  
皮村は、慌てて屋上から階段を下りると、全速力で武道場へと戻っていった。  
 
「きゃああああああ!!!」  
柔道場では、ベリ子が悲鳴をあげながら、咆哮しながら迫ってくるミウミウから、必死に逃げていた。  
「ミウミウ、どうしたんだョ。」  
しかし、ミウミウの返事は全くない。  
逆に、吠えながら、自分めがけて突進してくる。  
「怖いョ。」  
ベリ子は涙目になりながら、必死でミウミウから逃げていた。  
その様子は、まさに獲物を追いかける肉食動物と逃げまわる草食動物のようだった。  
一方、その二人の鬼ごっこの様子を、藤原の入れるお茶を飲みながら、林田は座って見物していた。  
そのそばには、さっきまで絡み合っていた朔美となっちゃんの二人が、その様子を震えながら見ていた。  
ベリ子は、さっきの部室のことを思い出していた。  
(はっ、もしや・・・)  
ベリ子は、全力で走りミウミウを放すと、ミウミウに向けてパチンコ攻撃を行なった。  
ビン、ビン、ビン、ビン  
バチッ、バチッ、バチッ  
放った玉は、全弾、ミウミウに命中した。が、それでもミウミウは平然と突進してくる。  
「残念だったな。ミウラさんにかけた術は、ちえちゃんにかけてた術とは、ワケが違う。」  
林田は笑いながら、ベリ子に言った。  
(そ、そんなあ・・・)  
パチンコ攻撃が効かない以上、ベリ子にできることと言えば、もはや、逃げることだけだった。  
ベリ子は、再び逃げ出した。そして、それを再び追いかけるミウミウ。  
 
「ダメだな。ベリちゃんの方がすばしっこいから、あれじゃ永久に捕まらないな。  
藤原、ミウラさんを助けてやれ。」  
「わかったわ。」  
藤原のちょんまげを、走ってきたベリ子の足元に、スーッと伸ばす。  
ベリ子は藤原のちょんまげにつまずくと、思いっきりこけてしまった。  
「イテテテ・・・。」  
慌てて起き上がろうとしたべり子だったが、ミウミウが追いつくと、ベリ子を力任せに押さえつけた。  
 
「きゃあああ、ミウミウ、やめてョ。」  
涙を流しながら、哀願するベリ子。  
ウオォォォォォォォーーー!!!  
ミウミウは思いっきり咆哮すると、倒れているベリ子を押さえつけ、着ている服を力任せに破り捨てた。  
「きゃああああああ!!!!」 泣き叫ぶベリ子。  
しかし、ミウミウは力任せに、今度はスカートと下着を一気に脱がせた。  
「い、イヤだ、やめてョ、ミウミウ!!!」  
ベリ子は、必死で抵抗するが、体格があまりにも違いすぎた。  
「ここからが、いよいよ本番だな。」  
林田は、藤原の入れたお茶をすすりながら、その様子をじっと眺めていた。  
ミウミウは、ズボンとパンツを脱いで、その巨根をさらけ出した。  
もちろん、ソレをベリ子にぶち込むためだった。  
「うわっ、でっけぇ!!!」  
あまりのでかさに、驚いて思わず叫ぶ林田。  
ミウミウは、ベリ子を押さえつけると、迷いなく自分のそれをぶち込もうと構えた。  
「オイオイ、まさかいきなり入れようってのか。いくら何でも無茶だぞ。」  
林田は、立ち上がると、ミウミウの方へと向かった。  
「オーイ、ミウラさん、ストップ。」  
林田がそう言うと、ミウミウの動きが止まった。  
「ミウラさん、そんなでかいものをいきなり入れようとしても、無理だっつーの。  
女の子が受け入れやすいように、まずはベリちゃんを優しく愛撫してやらないと。」  
林田の足元には、ベリ子が震えながら横たわっていた。  
「まあ、今日のところは、俺が見本を見せてあげるから、そこでよく見ておくんだぞ。」  
そう言うと、林田はベリ子の腰をしっかりと両手で掴んだ。  
「ブチョー、な、何を・・・。」  
林田は、ベリ子の両足を広げさせると、かわいいベリ子の秘所を舌で愛撫し始めた。  
「あっ、やだョ、ブチョー」  
ベリ子は嫌悪感を示すが、林田は止めない。  
林田の舌が、ベリ子の秘所でヌメヌメと動き回る。  
「あっ・・・嫌だョ・・・やめてョ。」  
ベリ子は小さい声を上げるが、それでも林田の舌は止まらない。  
 
「やっ・・・ヤダョ・・・ああっ・・・」  
ベリ子の声がだんだんと甘いものに変わっていく。  
ピチャピチャ。  
いつしか、ベリ子の秘所からは、大量に愛液が溢れ出していた。  
それを舌で丹念に拭っていく林田。  
林田は、指でベリ子の秘所を広げると、その奥を舌で丁寧に舐め始めた。  
「やっ・・・あっ・・・・ヤダ・・・ョ・・・やあっ・・・」  
奥からどんどん愛液が溢れてくる。  
ベリ子は林田の舌技に、ベリ子はただ喘ぎ声をあげ続けていた。  
「よし、こんなもんかな。」  
林田はそう言うと、ベリ子への愛撫を切り上げた。  
「あっ・・・」  
思わずベリ子が切ない声をあげる。  
「ベリちゃん、もっとやって欲しかったかい。」  
「ち・・・・違うョ・・・・。」  
恥ずかしそうに、下を俯きながら答えるベリ子。  
「大丈夫、あとはミウラさんがやってくれるから。」  
そう言うと、林田は、ベリ子の前からどいた。  
「じゃあ、ミウラさん、やってみて。」  
林田がそう言うと、ミウミウはベリ子の両足を掴んだ。  
「ミウミウ、ダメだョ、やめてョ。」  
ベリ子が涙目で訴えかけるが、ミウミウは全く気にせず、  
大きな舌でベリ子の秘所を舐め始めた。  
・・・がミウミウの舌はあまりにも大きすぎたため、舐めようとしても、  
舌の一部が両足にどうしても阻まれてしまい、舌が秘所になかなか当たらなかった。  
「・・・・・・ダメだこりゃ・・・・・・。」  
その様子を、林田は見て、絶句した。  
しかし、ミウミウはそのままでダメだとわかると、今度は舌の先を丸めて、その角で  
ベリ子の秘所を突付き始めた。  
丸めた舌の先端は、ベリ子の秘所をつつくには丁度いいくらいの大きさになった。  
今度は、見事にベリ子の秘所をとらえていた。  
 
「ひゃうん・・・。」  
思わず声をあげるベリ子。  
そのベリ子の反応が面白かったのか、ミウミウはさらにベリ子の秘所を舌でつつき始める。  
「ひゃあっ・・・ああっ・・・あっ・・・」  
ミウミウが舌でつつくたびに、ベリ子の口から甘い声が漏れる。  
「やるじゃねえか、ミウラさん。」  
林田はその様子を見て、すこし驚いていた。  
さらに、舌でつつくのに疲れたミウミウは、今度はベリ子の両足を持って体を折り曲げると、  
舌の側面を、ベリ子の秘所の割れ目に沿って当て、そのまま舌を超振動で震わせた。  
「やあっ・・・んんっ・・・はあっ・・・あっ・・・ああっ・・・」  
ベリ子の声が大きくなる。普通と違い、舌がピッタリと密着している分、普通の愛撫よりも  
効果ははるかに上だった。  
「はあっ・・・ミウ・・・ミウ・・・あっ・・・変に・・・なっちゃうョ・・・」  
あまりの激しい快感のためか、首を振るベリ子の目から涙がこぼれる。  
「横がダメなら、縦を使うか。すげえ、ミウラさんの舌、ベリちゃんのアナルまで、ピッタリ密着してやがる。  
あれだけ、ベリちゃんのアソコとアナルに舌を密着させて、さらに舌を震わせるとは、やるなミウラさん。  
まさにミウラさんならではのテクニックだな。」  
意外なミウミウの才能に、林田は興奮しながら、それに見入っていた。  
「はあっ・・・あっあっ・・・ミウミウ・・・あ、あたち・・・あたち・・・」  
ミウミウの舌技によってどんどん登りつめさせられていくベリ子。  
「やっ・・ミウ・・・ミウ・・・やあっ・・・ああっ・・・やあああああっ・・・」  
やがてベリ子は絶頂に達した。その様子を見て、ようやくミウミウは舌を動かすのをやめた。  
「でも、あれだけ愛撫しても、さすがにあれは入らないだろうな。」  
ミウミウのそびえ立つものを見て、林田はそう思った。  
 
一方、皮村はやっと武道場に辿り着くと、そのまま柔道場に飛び込んできた。  
「皮村か。逃げたと思ったのに、また戻ってくるとは、一体どういうつもりだ。」  
林田が皮村の方をチラッと見てつぶやく。  
皮村は、ベリ子の方を見て驚いた。  
服はボロボロに裂かれ、まさしくミウミウが今から挿入しようとしているところだった。  
 
「ヤベエ、何とか止めないと・・・。」  
焦る皮村。  
「ハァ・・・ハァ・・・ダ、ダメだョ、ミウミウ、お願い・・・」  
ベリ子が泣きながら後ずさりしていた。  
巨大なソレを見せつけながら、ベリ子に近づいていくミウミウ。  
 
「ミウラさん、ベリちゃんのことが本当に好きだったら、こんな形でやっちゃダメだ。」  
皮村が叫ぶ。  
しかし、皮村の叫びも、ミウミウには全く効果がなかった。  
「無駄だ、無駄。今のミウラさんに、そんな言葉は届かないよ。」  
傍で見ていた林田が嘲笑する。  
「ああ、このままだと・・・、俺は一体どうすれば・・・。」  
その時、自分を正気に戻してくれた時のベリ子の姿を思い出す。  
あの時、ベリ子は手にバスケットを持っていた。  
「これだ!!!」  
皮村は、慌てて部室に入ると、そこにはベリ子が置きっぱなしにしていたバスケットがあった。  
「ようし、ベリちゃん。今、助けてやるからな。」  
皮村は、バスケットを持つと、再び柔道場の方へと戻っていった。  
 
「ミウミウ、元のミウミウに戻ってョー!!!」  
ベリ子がミウミウに向かって絶叫する。  
その言葉を聞いて、少したじろぐミウミウ。  
「ミウラさん、やれ。」  
しかし林田が冷静にミウミウに命じると、再びミウミウは咆哮しながら、ベリ子へと向かって行った。  
「きゃああああああ、ミウミウ、やめてョ。」  
絶叫するベリ子。  
その時、  
「ミウラさん。」  
大きな声で皮村が叫んだ。  
 
その声に振り向くミウミウ。  
「腹減ってるだろ。ミウラさん。メシの時間だ。」  
そう言うと、バスケットに入っていた肉を、遠くに放り投げた。  
それを見たミウミウは、迷わずその肉に向かって、突進していった。  
「オイ、ミウラさん。何やってんだ。早くベリちゃんに挿入しろ。」  
林田が叫ぶが、ミウミウはそんな命令を全く無視して、食料にがっつく。  
「いまだ、ベリちゃん。早く逃げろ。」  
皮村がベリ子に向かって叫ぶ。  
その声を聞いたベリ子は素早く立ち上がると、皮村のいる道場の出口目指して走り始めた。  
「おっと、逃がさないよ。藤原、ベリちゃんをひっ捕らえろ。」  
しかし、藤原はいつの間にか爆睡していた。  
「チッ、この役立たずが・・・。中山、ベリちゃんを捕まえろ。」  
「は・・・ハイ。」  
朔美は震えながら、ベリ子の元に向かった。そして、ベリ子の前に立ちはだかった。  
「よくやった、中山。」  
林田がゆっくりと、ベリ子の方へと向かってくる。  
しかし、次の瞬間、  
「早く逃げましょう、綾川先輩。」  
そう言うと、朔美はベリ子の手を引っ張って道場の出口に向かって走り始めた。  
「中山、お前、まさか、術が切れたのか?バカな・・・」  
絶句する林田をよそに、二人は道場の出口まで辿り着いた。  
「ベリちゃん、その柔道着着て。二人とも早く森さんの家に行くんだ。」  
「ウン、わかったョ。助けてくれて、ありがとう。」  
ベリ子はそう言うと、ベリ子特製柔道着をすぐ着始めた。  
ベリ子が柔道場の出口にいるのを見つけたミウミウが、再び突進してくる。  
「ミウラさん、まだ腹減ってるだろ?肉、全部くれてやるよ。」  
皮村が、道場の奥のほうめがけて、一斉に肉を投げ始めた。  
すると、ミウミウは再び肉の方に向かって走っていった。  
やがて、着替え終わると、ベリ子と朔美は共に武道場を後にした。  
林田は、それをただ呆然と眺めていた。  
 
道場の奥のほうでは、ミウミウが肉を漁っていた。  
「じゃあな、林田。」 皮村は、そう言うと、柔道場を後にした。  
「待てよ。」 玄関で靴を履いている皮村に、林田が声をかけた。  
「な、何だよ。」  
皮村は内心、少し怯えながらも、それを悟られまいと語気を強くして返事した。  
「今日は、お前達のおかげで、結構楽しかったよ。」  
「何が楽しかっただよ。オメーのせいでどれだけの人が傷ついてると思ってんだ。」  
「まあまあ、そういきり立つなよ。実は森さんに伝言をお願いしたいんだ。」  
「伝言?」  
林田はそう言うと、手に持っていたデジカムを皮村に見せびらかした。  
「これは、昨日、藤原が撮影したもので、まだ見てないんだけど、多分森さんの  
いろんなシーンが映ってるはずだ。」  
「な、何だと・・・。」  
「でだ、明日森さんがもし来なければ、一部をネットにでも流そうかなって考えてるんだ。」  
「テメー!!!」  
「だから、森さんに明日は必ず部活に来てねって言っておいてくれよ。」  
「テメー、最低だな。」  
皮村は履き捨てるように言った。  
「あと、このことはもちろん他言しないようにな。もししたら、どうなるかわかってるよな。」  
そう言うと林田はデジカムの方へ目線をやる。  
「じゃあな、明日楽しみに待ってるからな。ハッハッハッハッハ。」  
そう言うと、林田は部室の中に姿を消した。  
皮村は、ムカつきながらも、今の林田には勝てないと思い、とりあえず武道場を出ることにした。  
 
校門を出たところに、ベリ子と朔美が待っていた。  
「あれっ、二人とも、森さん家に行ったんじゃなかったの。」  
驚く皮村。  
「だって、この子がなかなか行きたがらないんだョ。」  
ベリ子がそう言って、朔美を指差した。  
「だって、だって・・・私・・・私・・・。」  
朔美はそう言うと、堪えきれずに泣き出した。  
 
「オ、オイ・・・ちょっと。」  
皮村が必死になだめようとするが、逆に朔美の涙は止まらなくなり、逆効果だった。  
そうこうしている内に、周りにいた下校途中の生徒がその様子に気づいてまわりに集まってきた。  
下校中の生徒の中には、皮村が朔美をいじめてると勘違いしているものが多かった。  
「オイ、あの変な顔した奴がいじめたんじゃないの?」  
「サイテーね。」  
「あれ、以前、生徒会長だった奴だろ? また、セクハラでもしたんじゃないのか。」  
「えっ、あのセクハラ生徒会長? ヤダ、変態、キモーイ。」  
まさしく、野次馬に言われ放題の皮村であった。  
(ヒデェ、俺、何にもしてねえのに。)  
思わず、皮村の目にも涙が浮かぶ。  
周りの声を聞いて皮村に誤解がいっている事に気づいた朔美は、慌てて泣くのを止めた。  
「皮村先輩、綾川先輩、早く行きましょう。」  
朔美は二人に声をかけると、桃里の家のある方向に向かって走り始めた。  
「オ、オウ」  
朔美に声をかけられて、皮村とべり子も朔美の後について、走っていった。  
「た、助かったよ。サンキュー。」  
皮村は、朔美に思わず感謝の言葉をかけていた。  
 
桃里は今日一日、ずっとベッドで寝ていた。  
気がつくと、外はもう夕方になっていた。  
夕暮れの日が差し込む部屋に一人でいると、どうしても少し寂しさを感じてしまう。  
しかも今は、一人でいると、どうしても昨日のことを思い出してしまう。  
もう、これで今日何回泣いたことだろうか。  
モモジに店の手伝いをしたいと頼んだものの、体力がまだ回復してなかったこともあり、  
モモジに今日は寝ているように言われた桃里だったが、今は一人でいる方が辛かった。  
涙を拭いて、窓の外を眺める。  
日はもう暮れかかっていた。  
「オーイ、森さーん。」 「桃ちゃーん。」  
その夕暮れの向こうから、皮村、ベリ子、朔美の3人の姿が見える。  
桃里の顔に、少しだけいつもの笑顔が戻っていた。  
 
3人は桃里の部屋に通された。部屋にはパジャマ姿の桃里がベッドの上に座っていた。  
「森さん、どう、もう体の方は大丈夫?」  
「ウン、もうほとんど大丈夫だよ。ありがとね、お見舞いに来てくれて。  
皮村君、ベリ子、・・・それに朔美ちゃんも・・・。」  
桃里のその言葉を聞くや、朔美は桃里にしがみついて、わっと泣き出した。  
「森先輩・・・ゴメンなさい・・・ゴメンなさい・・・ゴメンなさい・・・」  
桃里にすがりついて号泣する朔美。  
「もう・・・いいの・・・。朔美ちゃん。もう・・・いいの。」  
桃里は朔美の頭をやさしく撫でて、号泣する朔美を落ち着かせようとした。  
そんな二人の様子を見て、皮村も思わずもらい泣きする。  
「何かあったの?」  
三人の様子を、ベリ子はわけがわからないまま、しばらく呆然と眺めていた。  
 
しばらくして落ち着くと、皮村は今日あったことを全て桃里に話した。  
「そっか・・・今日一日でそんなに・・・。」  
「桃ちゃん・・・あたち・・・怖かったョ・・・。」  
話しているうちにその時のことを思い出して、泣き出すベリ子。  
「これで、森さん、なっちゃん、佐藤さんとその彼氏の山田君、  
それとベリちゃん、俺が知ってる限り、これで被害者は5人になった。」  
皮村のその言葉を聞いて、ハッとなるベリ子  
「桃ちゃん、まさか今日学校休んだのって・・・。」  
皮村の話を聞いて、ベリ子はようやくさっきの光景の意味を理解した。  
「桃ちゃん、もう大丈夫なの。」ベリ子が涙を浮かべながら、桃里に話し掛ける。  
「ウン・・・本当にもう、大丈夫だよ。」  
自分のことのように心配してくれるベリ子の気持ちが、桃里にはとても嬉しかった。  
 
ようやくみんなの気分が落ち着くと、今度は、一転して暗い気分に落ちていった。  
「これから、どうするよ?」  
皮村の問いに誰も答えを返せなかった。  
「もう・・・元の柔道部には・・・戻れないかも知れないね。」  
桃里が話すのを聞いて、皆、頭を上げる。  
 
「被害者が私一人の間に、何とかして林田君を元に戻せたら、また元の楽しい柔道部に戻れる。  
そう思ってた・・・。  
でも、今日一日で、まさかこんなに大勢の被害者を出すとは思ってもなかった。  
こうなってしまったら、きっともう・・・元には戻れないよ。」  
俯きながら話す桃里。  
その桃里の言葉を聞いてハッとなる皮村。  
「森さん、まさか、モモジさんに言わなかったのは・・・。」  
皮村には、ようやくその理由が少しわかったような気がした。  
桃里は、自分が傷つき、犠牲になっても、柔道部という空間を何とか守ろうとしていたのだ。  
皮村は桃里の柔道部への思いの大きさを感じ、そして、それを平気で踏みにじろうとする  
林田のことがますます許せなくなった。  
「クソッ、林田の奴・・・」皮村が激しく憤りながら言った。  
「そういえば、朔美ちゃんはどうして術が解けたの?」  
桃里は朔美にかかっていた術のことを思い出し、朔美に話しかける。  
「そういや、そうだ。そのことに林田も驚いていたな。」  
「わかりません。ただ、三浦先輩が暴れてるのを見てたら、スゴク怖いって感情が溢れてきて・・・  
そしたら、いつの間にか、元に戻っていたんです。」  
「もしかしたら命の危険を感じるほどの強い精神的ショックを受けたら、元に戻るのかも知れないね。」  
しばらく二人の会話を聞いていた皮村だったが、その時、大事なことを思い出す。  
「そうだ、森さん。林田が明日、森さんが部活に来ないと、森さんのビデオをネットに流すって・・・。」  
「えっ。」驚く桃里。  
「ひどい!!」思わず朔美が叫ぶ。  
「いずれにせよ、これで一つ言える事は、明日中に林田と決着をつけなくちゃならねえってことだ。  
でも、向こうには林田の他にも藤原とミウラさんがいる。まともに戦っても勝ち目はねえぜ。」  
皮村が話すと、みんなしばらく黙りこくった。  
しばらく部屋に長い沈黙が続いた。  
しばらくして、その沈黙を桃里が破った。  
「あのね、今日ずっと考えてたんだけど、一つだけ林田君を元に戻せる方法があるかもしれないんだ。」  
桃里のその言葉に皆、顔を上げると、一斉に桃里の方を向いた。  
 
「どうやって?」  
皮村が桃里に尋ねる。  
「催眠術は術者が解かない限り、ずっとかかってるみたいだけど、  
もしかしたら、林田君の術ってのは、林田君が気絶とかしたら、解けないかなって思ったの。」  
「ウーン、その可能性は十分あるかも知んねえな。  
もし、そうだとしたら、林田を倒せば藤原は元に戻るかも知れねえな。  
でも、問題は、どうやって林田をぶっ倒すかってことなんだよな。」  
「だからね、気絶させることはできないけど・・・」  
そう言うと、皮村の耳にゴニョゴニョ話した。  
「ああっ、そうか。その手があったか。」  
桃里の話を聞いて、皮村の目から鱗が落ちる。  
「あたちにも教えてよ。」  
「わ、私にも。」  
ベリ子と朔美が桃里に近寄る。  
桃里はベリ子と朔美にも話した。  
「あーっ、そうか、その手があったョ。」  
ベリ子も桃里の話を聞いて、そのことを思い出す。  
一方、  
(えっ、どういうことだろう?)  
朔美は、理解できず、一人不思議に思っていた。  
 
「あたち、パパに頼んでみるョ。」  
そう言うと、早速べり子はパパに電話をかけに行った。  
「そうなるとだ、後はそれまでの間、藤原とミウラさんをどうするかだな。」  
皮村がそう言うと、考え込む。  
4人の作戦会議は、こうして夜遅くまで続いた。  
 
その頃、林田宅では両親がいないため、林田と明日香の二人っきりになっていた。  
ちなみに皮村達が去った後、林田は近くを通りすがっただけの名前も知らない女の子2人に術をかけて  
道場に連れて来たものの、結局、林田の気分が乗らなかったので、二人にレズビアンショーをさせて、  
しばらくそれを鑑賞した後、そのまま解放していた。  
「お兄ちゃん、私、先にお風呂に入るからね。」  
明日香がそう言って、浴室へと姿を消した。  
「わかった。」  
林田はそう答えると、ニヤッと悪魔の笑みを浮かべた。  
林田は、とうとう実の妹までも、その手にかけようとしていた。  
 
明日香は、浴室で鼻歌を歌いながら、体を洗っていた。  
そして、体を洗い流し、湯船に浸かろうとしたその時、浴室の扉を開ける音がした。  
扉の向こうには、林田が全裸で立っていた。  
「キャーーー、ちょ、ちょっと、お兄ちゃん。」  
湯船にドボンと体をつけ、体を手で隠す明日香。  
「明日香、父さんからお前のこと徹底的に監視するように言われてるからな。  
今日は俺がお前の体を綺麗に洗ってやるよ。隅々までな・・・。」  
股間をはちきれんばかりに膨らませながら、林田は明日香の方へ近づいていった。  
それが何を意味しているのか、明日香にも十分すぎるほどわかった。  
「ヤダ・・・お兄ちゃん・・・やめて・・・お願い・・・。」  
目に涙を浮かべながら、必死で哀願する明日香。  
しかし、その願いは受け入れられなかった。  
林田は明日香に襲い掛かった。  
「キャーーーーーーー!!!」  
他に誰もいない広い家の中で、浴室から明日香の悲鳴だけが響き渡る。  
しかし、悲鳴が嬌声に変わるのに、それほど時間は必要としなかった。  
 
「はあっ・・・ああん・・・んんっ・・・」  
明日香は浴室の壁に手をつき、林田の方に尻を突き出しながら、声を上げていた。  
林田は、明日香の尻に顔を埋めると、秘所をピチャピチャと愛撫していた。  
「何だ何だ、このヌメヌメした液体は・・・あんだけ嫌がってたくせに、後から後から溢れてくるじゃねえか。」  
「イ・・・ヤ・・・そんなこと・・・言わないで・・・ああっ・・・」  
林田は明日香のツンと立った乳首を指で刺激する。  
「ああっ・・・あああ・・・・」  
林田の指の動きに敏感に反応する明日香。  
「乳首もこんなに立てちゃって。よっぽど気持ちいいのか。明日香。」  
「イ・・・イヤ・・・そんなんじゃ・・・ない・・・。」  
「やれやれ、強情な奴だな。」  
林田はそう言うと、愛撫を止めた。  
「あっ・・・」  
思わず明日香の口から声が漏れる。  
「どうだ明日香。ケンジとやっててもこんなに気持ちよくはなれないだろ?  
本当はもっとやってほしいんじゃないのか?」  
明日香の髪を撫でながら、林田が明日香に話し掛ける。  
明日香は林田の股間にあるモノを見て驚いた。林田のそれは、名前に恥じない立派な大きさと太さであった。  
(お兄ちゃんの・・・すごく大きい。ケンちゃんのより、ずっと大きい。)  
あんなのが自分の中に入ってきたら、一体どれだけの快感を得ることができるのだろうか?  
林田に愛撫されて、ただでさえ体が熱くなっていた明日香は、林田のソレを見て、性欲を抑えきれなくなっていた。  
「明日香、俺のチンポ見て、ものすごい汁が溢れてきてるぞ。」  
秘所を覗き込んでいる林田が明日香に話し掛ける。  
「ヤダ、そんなこと・・・言わないでよ・・・」  
「本当は、欲しいんだろ?明日香、もっと、自分に素直になれよ。」  
林田の言葉に、明日香の心は大きく傾いた。  
自分の秘所からどんどん愛液が溢れ出しているのは、明日香自身にもわかっていた。  
(欲しがってる・・・私、お兄ちゃんのアレを欲しがってる・・・)  
兄妹でこんなことするなんてと明日香は思ったが、その背徳感がさらに明日香の興奮を昂ぶらせた。  
「お兄ちゃんのが・・・欲しい・・・お願い、もっと・・・やって・・・」  
明日香は、ついに自分の欲望の前に屈服した。  
 
「よし、明日香、いい子だ。」  
林田はそう言うと、明日香を背後から一気に貫いた。  
「はぅん・・・んんっ・・・ああっ・・・」  
明日香の顔が一瞬苦痛に歪む。  
林田は明日香に挿入し終えると、最初から激しく腰を動かした。  
パンパンパンパン・・・。  
明日香の尻と林田の腰が当たる音が浴室に響く。  
「あっあっあっ・・・気持ち・・・イイよ・・・おにい・・・ちゃああん・・・」  
林田の動きに合わせて、明日香の口から嬌声が漏れる。  
明日香の秘所は愛液で溢れており、一部は太ももを伝って下まで流れていた。  
「どうだ、ケンジなんかより、よっぽど気持ちいいだろ?」  
「あっ、あっ・・・ケンちゃんの時より・・・はあっ・・・ずっと・・・イイ・・・。」  
明日香は恍惚の表情を浮かべながら、自分から腰を振って、林田自身を奥まで突き入れてもらおうとしていた。  
林田もさらに明日香の腰をしっかり掴むと、明日香のより奥まで突き入れようとした。  
「はぁぁっ・・・ああっ・・・ああっ・・・」  
明日香の声がだんだん激しくなる。  
「明日香、もうイキそうなのか?」  
「お兄・・・ちゃん・・・あたし・・・イッちゃう・・・イッちゃう・・・」  
「よし、じゃあ、今イカせてやるからな。」  
林田はそう言うと腰の動きを速めた。  
それに合わせて明日香の声も激しくなる。  
「ああっ・・・イッちゃう・・・イッちゃう・・・お兄ちゃん・・・おにい・・・ちゃああああん!!!。」  
ついに明日香は絶頂に達した。あまりの快感のため、明日香の目からは、涙がこぼれていた。  
「明日香、イッちゃったか。でも、俺はまだ全然イッてないんだ。続けてもいいだろ?」  
「ハァ・・・ハァ・・・お兄ちゃんが・・・イクまで・・・続けて・・・いいよ・・・」  
明日香は呼吸を乱して、恥ずかしそうに俯きながら林田に言った。  
「よし、じゃあ、第2ラウンドだ。」  
再び林田は腰を激しく動かし始めた。  
「ああっ・・・あああっ・・・・」  
明日香の口から、再び嬌声が漏れる。  
結局、林田が射精するまで、浴室の中で第4ラウンドまで二人は絡み合った。  
 
林田は、気を失ってしまった明日香に服を着せ、ベッドに寝かせると、ビデオのある部屋に向かった。  
「そうだ、明日、森さんと会う前にビデオ映像の確認をしておくか。」  
林田はデジカムをテレビにつなげ、再生する準備を整えた。  
藤原のデジカムには、もちろんモニタがついていたが、林田はあえてテレビに接続した。  
「どうせなら、大きい画面で見ないとな。」  
林田はテレビとデジカムを接続しながら、昨日の桃里とのセックスを思い出していた。  
「森さんとのセックスは最高だったな。」  
林田は、そう言いながら、何も考えずに頭からデジカムを再生させた。  
しばらくするとテレビに、デジカムの映像が映し出された。  
 
テレビは川原で、楽しそうにバーベキューをやっている柔道部のメンバーを映していた。  
おいしそうにとうもろこしを頬張る桃里と、それを見て喜んでいる林田。  
ヤキソバを焼いて、実は調理の腕もあることを見せつける皮村。  
酔っ払いのおっさん連中と盛り上がってる藤原とチョメジ。  
「ベリ子、私が代わりに撮ってあげるよ。」  
桃里がベリ子に声をかける。  
今度は桃里が撮影しているようだった。  
今度は、おいしそうに食べるミウミウと、それを笑顔で見ているベリ子の映像が映った。  
 
林田は、しばらくその映像を呆然と眺めていた。  
「何だよ、これ?・・・」  
慌てて、デジカムを停止して、テープを取り出す林田。  
取り出したテープに桃里が書いたラベルが貼られていることに、林田はすぐに気がついた。  
「藤原のバカ野郎。爪が折ってあるテープにそのまま録画しようとしやがって。」  
しかし、しばらくして林田は考えた。  
(待てよ、本当に、藤原はテープのことに気がつかなかったのか?普通エラーになるだろ。)  
藤原には、最強の術を施してある。それは間違いなかった。  
しかし、それでもなお、藤原には、得体の知れないものがあると林田は感じていた。  
「そういや、アイツ、やたら喋るしな。念のため、もう一度、藤原には術をかけ直した方がよさそうだな。」  
林田はそう思いながら、デジカムの電源を切った。  
 
翌日・・・  
今日は土曜日のため、学校はいつもと比べると、あまり人がいなかった。  
それでも、グラウンドには部活で汗を流す若者の姿が見られた。  
桃里は、皮村、ベリ子、朔美と待ち合わせをして、一緒に武道場に向かっていた。  
少し前のこと・・・。  
「ベリ子も、朔美ちゃん、今日は部活に行かない方がいいよ。」  
「俺もそう思うぜ。行ったら、最悪、林田にどんな目に合わされるかわかんねえぜ。」  
桃里と皮村は、ベリ子と朔美の二人に学校に行かないように忠告した。  
しかし、二人は結局部活に行くのをやめなかった。  
なぜならば、二人にも、そこに大事な人がいたから・・・。  
「ベリちゃん、そういや、アレはどうなったの?」  
皮村がベリ子にボソッと話す。  
「ウン、任せてョ。もうすぐ学校に着くみたいだョ。」  
それを聞いて、少しホッとする皮村。  
対林田の最終兵器の到着が、昨日立てた作戦の最大のポイントになるのは間違いなかったからだ。  
しかし、それでも昨日立てた作戦が成功する確率は5分5分だろうと、桃里は考えていた。  
 
林田は道場で桃里が来るのを待ちわびていた。  
「今日は、森さんのすべてを手に入れる。」  
(そして、ビデオももう一度撮影しなおす。俺自ら新しいテープをセットしたし、今度はヘマはしねえ。)  
林田は、2重に術をかけ直した藤原にデジカムを渡すと、険しい表情を見せた。  
(これ以上、森さんを傷つけて、何が楽しいんだ?)  
突然、林田の理性の声が聞こえた。  
「ほう、貴様、まだ話す気力が残ってたのか。」  
(森さんだけじゃねえ。他にも大勢の人を傷つけやがって・・・。おまけに明日香まで・・・。)  
「フン、そこで何もせずにただ見ていたお前も同罪だぜ。」  
(確かにな・・・。でも、もうこれ以上・・・森さんを傷つけるのだけは・・・やめてくれ・・・頼む。)  
林田の理性が林田に懇願する。プライドも何もかもかなぐり捨てて、必死に頼み込んだ。  
しかし、林田の言葉は冷たかった。  
「イヤだね。」  
 
(なぜだ。なぜ、お前はそこまで森さんを傷つけようとするんだ。)  
「気にいらねえからだよ。」  
急に林田の語気が強まる。その様子に、林田の理性も少し驚く。  
「彼女の頭にある林田は俺じゃなくて、まだお前なんだよ。こないだの時セックスの時もそうだ。  
彼女は最後まで俺に正気に戻ってと言い続けやがった。それが、気にいらねえんだよ。」  
(お前・・・まさか・・・!?)  
「今日はたっぷりと森さんをかわいがってやる。そして、俺が林田だと認めさせてやる。」  
林田はそう言うと理性との会話を一方的に打ち切った。  
(オイ、待て)  
林田の理性は林田に声をかけるが、もう林田からの返事はなかった。  
しかし、林田との会話は、皮肉なことにも、林田の理性に変化をもたらしていた。  
(森さんは・・・もしかしてまだ、俺のことを信じてくれてるのだろうか・・・?こんな俺のことを・・・。  
だとしたら、俺は、こんなところで、いつまでもいじけているわけにはいかない。)  
林田の理性に、みるみる精神力が甦っていく。  
(こうなったら、せめて一言、森さんに謝りたい。たとえ許されなくても・・・。  
そのためにもコイツを倒さなければ・・・。今にきっとこいつを倒すチャンスが来るはず・・・。)  
林田の理性は、ひそかに強い決意を秘めると、暗闇の中、ひたすら待ち続けることにした。  
林田は、皮肉にも林田の理性を甦らせる結果となってしまったことに、まだ気づいていなかった。  
 
4人は武道場の前まで辿り着くと、一旦足を止めた。  
どうやら、4人の言う最終兵器はまだ届いてないようだ。  
この建物の中に入ったら、もう後には戻れない。  
次にこの建物を出る時は、みんなが元に戻った時か、あるいは・・・・。  
「行くよ。」  
桃里が声をかけると、他の3人も決意したかのように武道場の中へ入っていった。  
下駄箱を見ると、既に林田、藤原、ミウミウの3人の靴があった。  
無線で連絡をとっているベリ子以外の3人は靴を下駄箱に入れると、直接道場の方へ向かった。  
桃里が勢いよく道場の入り口をあける。  
「やあ、森さん。来るのを待っていたよ。」  
広い道場の中、林田は全裸で突っ立っていた。  
林田のモノは、既に硬直していきり立っていた。  
 
「おい、いきなりかよ。」 思わず声を上げる皮村。  
(やっぱりそう来たか・・・)  
ある程度、予想はしていたものの、やっぱり恥ずかしくて、思わず顔をそむける桃里と朔美。  
「フフフ、何を恥ずかしがってるんだよ。二人とも。この間さんざん裸で抱き合った仲じゃないか。」  
林田が笑みを浮かべながら、近づいてくる。  
「林田君・・・やっぱり、まだ元に戻ってなかったのね。」  
「だから、俺が林田なんだよ。」  
林田の語気が少し荒くなる。  
「中山、お前は信じてくれるよな。昨日はお前がいなくなって寂しかったんだぞ。」  
林田は、朔美にそう言うと、優しい笑みを朔美に向けた。  
「林田先輩・・・。」  
林田のその言葉を聞いて、朔美の胸が苦しくなる。  
「朔美ちゃん、騙されちゃダメ。あれは、林田君なんかじゃない。」  
桃里が朔美に話し掛ける。  
「中山、お前は俺のことを信じてくれるよな。あんなに激しく愛し合った仲だもんな。」  
林田は朔美にやさしく話し掛ける。  
朔美は、俯きながら林田に話し掛けた。  
「あの・・・林田先輩・・・元に・・・戻ってください。」  
パチン  
次の瞬間、林田は朔美をひっぱたいてた。  
叩かれた衝撃で、後方に倒れる朔美。  
はたかれたショックで朔美は気を失っていた。  
「朔美ちゃん。」 思わず桃里が叫ぶ。  
「こうなったら、もう体で俺が林田だとわかってもらうしかなさそうだな。」  
そう言うと、林田は桃里の方へと近づく。  
後ずさりしながら、林田との距離を保とうとする桃里。  
「そうは、させるかよ。」  
皮村が林田の前に立ちはだかる。  
「皮村、お前、邪魔だよ。藤原、ミウラさん、皮村を片付けろ。」  
林田がそう言うと、藤原とミウミウの二人が皮村に襲い掛かった。  
 
逃げる皮村。  
それを追いかける藤原とミウミウ。  
「ミウミウー!!」  
その時、入口からベリ子が飛び込んできた。  
ベリ子はありったけの食べ物を後方に投げつけた。  
食べ物の方へ向かっていくミウミウ。  
「コロスケも、ご飯だョ。」  
そう言うと、藤原の後方に大量のカツサンドを置いた。  
次の瞬間、藤原もカツサンドへと向かって行った。  
「思った通りだ。藤原は微妙だと思ったんだけど、やっぱりこの二人は色気より食い気だ。」  
あまりにもあっけなく成功しすぎて、皮村は少し呆れながら、その様子を眺める。  
「チッ、役にたたねえ奴らだ。でも、食い物で一時的に凌いでもどうにもならんぞ。」  
「ヘッ、俺達がここに来るのに、何の策も練らなかったと思うのかよ。」  
皮村が林田に向かって話す。  
「何?」  
林田がそう言った瞬間、まずは藤原がジンマシンを出してぶっ倒れた。  
次に、ミウミウの顔が真っ赤になっていることに気がつく。  
「まさか・・・。」  
林田がそう言った次の瞬間、ミウミウは目からレーザービームを放ってぶっ倒れた。  
「やったぁ!!!」皮村が叫ぶ。  
「こ、これは、一体どういうことだ?」  
「藤原君の食べたカツサンドの中にチキンカツサンドを紛れこませておいたの。  
それと、ミウラさんに与えた食べ物には、全部栄養ドリンクをたっぷりとかけておいたの。」  
驚く林田に桃里が説明する。  
「やるな。でも、この二人を倒したところで、俺を倒さないことにはどうにもならんぞ。」  
不敵に笑いながら、桃里に近づいていく林田。  
しかし、  
「来たョ。」  
ベリ子がそう言うと同時に、ヘリコプターの音が段々近づいてくるのに気がついた。  
ヘリコプターの中の人の気配を読んで、林田の表情が変わった。  
 
ヘリコプターは、武道場の上空で停止すると、ベリ子の持ってる無線機に向けて発信した。  
「こちら、1号ヘリ、こちら1号ヘリ。ただいま到着した。今から、武道場へマイケルを下ろす。以上。」  
そう言うと、ヘリコプターからはしごが地面になげられた。  
ヘリコプターはできるだけ、低空で静止しながら、マイケルのかぶり物をした男が降りるのを待っていた。  
そして、男が地面に降りたのを確認すると、はしごをあげて再び飛び去っていった。  
「何だ、何だ?」  
学校に来ていた生徒は、その様子を見てざわめいていた。  
ヘリコプターから降りたその男は、そのまま武道場へと入っていった。  
 
一方、柔道場の中では、林田の表情が変わっていた。  
今までの、どこか余裕を見せていた不敵な笑みは消え去り、冷や汗を浮かべ、激しく動揺していた。  
その動揺のせいか、今まで強固な意志で、林田の理性を覆っていた暗闇がみるみるうちに消えていく。  
「ま、まさか・・・戻ってくるとは・・・。マズイ、早く服を着なければ・・・」  
林田は、慌てて自分の服を探すが、見つからない。  
「探し物はこれか?」  
皮村が声をかける。いつの間にか皮村は林田の脱ぎ去っていた服を手に持っていた。  
「カワムラァァーー!!!」 林田が皮村に向かって絶叫する。  
とその時、男がベリ子に連れられて、柔道場に入ってきた。  
「おはよー、ブチョー。」  
さわやかな笑顔で入ってきたその男こそが、4人が用意した対林田最終兵器、東菊千代だった。  
東は昨日から芸能活動でずっと東京にいたのだが、ベリ子のパパが東をヘリコプターで連れて来てくれたのだ。  
さわやかに入ってきた東だったが、林田が全裸で立っているのを見ると、もちろん即MAX状態になった。  
「フォォォォォォォォォォォォォーーーーー!!!!」  
「く、来るなーーー」  
林田が思わず叫ぶ。  
逃げる林田。しかし、東のスピードは、林田のそれを上回っていた。  
あっという間に追いつかれる林田。  
林田は、東の手を何とかかわすと、東の耳に囁いた。  
「○×△□☆●×▽◇★・・・」  
「やべえ」皮村が思わず叫ぶ。  
「ウウン、大丈夫だよ。」しかし、桃里は動揺することなく、その様子を静かに見ていた。  
 
林田は、東に術をかけるが、東に全く効果はなかった。  
「なっ・・・き、効かない。」  
再び逃げ出す林田。それを追いかける東。  
「ミウラさんが林田君の命令を無視して、食べ物を追いかけたって聞いた時、もしかしたらって思ったの。  
普通の人は、目の前に欲しいものがあっても、それを自分の意志で抑えることができるけど、  
林田君の術にかかったら、その意思がない状態だから、そのまま暴走しちゃうみたいね。」  
「じゃあ、今の東は、術が効いてないわけじゃなくて・・・。」  
桃里は皮村の質問には答えず、静かにその様子を見ていた。  
東のメーターはMAXを振り切れ、200%増にまで達していた。  
「すげえ、ハイパー東MAXだ。」思わず皮村が叫ぶ。  
(この状況を乗り切るには、やはり皮村しかない。)  
林田は、全力で逃げながら皮村を追いかける。  
(ヤベエ!!!)  
皮村も全力で逃げようとするが、足元に置いていた林田の服で足が滑ってこけてしまう。  
「しめた。」  
林田は皮村に追いつくと、皮村の顔を掴んだ。  
しかし、その時、不意に林田の皮村を掴む力がゆるむ。  
「き・・・貴様・・・。」  
林田の顔が歪み、動きが止まる。その様子に気がつく皮村。  
「か、皮村・・・逃げろ・・・は・・・早く・・・」  
その声は、皮村の知っているいつもの林田の口調だった。  
「林田、オメエ・・・」 皮村は、少し驚きながら、林田の前から慌てて離れる。  
「き、貴様、正気か?・・・こんなことをしたら・・・貴様もただじゃ済まないんだぞ。」  
(お前を止められなかった俺も同罪だ。俺も一緒に地獄に落ちてやるよ。)  
体の動かない林田を東がかっさらって行く。  
「あ、東、放せ、放せぇぇぇーーー!!!」  
林田は絶叫するが、今の林田の力を持ってしても、200%増の東を振りほどくことはできなかった。  
「フォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーー!!!」  
東は叫ぶと、林田を抱えて、そのまま道場を飛び出した。  
「ぎゃあああああああああああああああああああーーーーー!!!」  
そして、後には、林田の断末魔の叫びだけが道場に残った。  
 
ムクッと藤原が目覚める。  
「藤原君」桃里が声をかける。  
「部長の術が解けたわ。部長を戻すチャンスは今しかないわ。」  
「ミウミウ」 ベリ子はミウミウの元に向かっていた。  
フラフラになりながらも、ミウミウは起き上がるとベリ子にいつもの笑顔を見せていた。  
「朔美ちゃん、しっかりして。」  
桃里が倒れている朔美に声をかける。  
「あっ・・・森先輩・・・林田先輩は?・・・」  
まだ、はっきりとしない意識の中で、朔美が桃里に話し掛ける。  
「もう、大丈夫だよ。作戦は成功したの。」  
桃里が朔美に話し掛ける。それを聞いてハッとなる朔美。  
「じゃ、じゃあ、林田先輩は・・・。」  
「ウン、もうすぐ元の林田君に戻るよ。」  
そう言うと、二人とも目に涙をうかべて、喜びあった。  
(あの作戦ってよく意味がわからなかったんだけど、成功したんだ。)  
しかし、朔美はなぜ成功したのかについては、よくわかっていなかった。  
「ところで、林田先輩はどこにいるんですか?」  
「えーっと・・・。」  
朔美の質問に、桃里は答えをはぐらかすしかなかった。  
 
そして、しばらくして・・・。  
帰って来た林田は、廃人となり果てていた。  
「いつもより、激しかったんだろうな・・・。」(200%増だもんな。)  
皮村が涙を流しながら、林田の背中にそっと上着をかけてやる。  
「えっ、どうしたんですか?林田先輩・・・。」  
オロオロしながら林田の様子を見ている朔美。  
もはや、林田に抵抗する気力は残っていなかった。  
藤原は林田の目の前に行くと、すぐに林田の催眠術を解いた。  
「ふう、これでやっと催眠術が解けたわ。長かったわ。」  
一人喜ぶ藤原。しかし、他のメンバーの藤原を見る目は冷ややかだった。  
 
催眠術を解くと、林田はそのまま意識を失った。  
後ろから林田の体を支えていたミウミウが、林田の体をそのままそっと寝かせてやった。  
しばらくして、東もフラフラになりながら、道場に戻ってきた。  
「東、よくやってくれた。」  
「菊、あなた、本当によくやってくれたわね。」  
柔道部の危機を救ってくれた東に、皆が絶賛の声をかける。  
「えっ、何が?」  
しかし、東には何のことだかさっぱりわからなかった。  
「んん・・・。」  
そうこうしているうちに、倒れていた林田の意識が戻り始めた。  
「林田君・・・戻ってるよね?」 不安そうな声をあげる桃里。  
「大丈夫よ、もうあたしが催眠術解いたんだから。」  
元気な声で話す藤原。  
そんな藤原に言いたいことは山ほどあったのだが、とりあえずは林田の意識の回復を待つ皮村。  
しばらくして、林田の目が開いた。  
「あっ、気がついた。」 桃里が思わず声を上げる。  
「んっ、ここは?」  
林田は目覚めると、周りを見渡した。  
「林田君、もう、大丈夫・・・なの?」  
恐る恐る桃里が話し掛ける。  
「うん、皆のおかげでどうやら元に戻れたみたいだ。」  
「やったぁ!!!」 手をつないで喜ぶ桃里と朔美。  
他のみんなも大喜びしていた。  
しかし、肝心の林田の顔はうかなかった。  
「どうしたの林田君?」 林田の様子に気がついて話し掛ける桃里。  
と、その時、林田は桃里達のいる方に向かって土下座していた。  
「森さん、ベリちゃん、中山、それに皮村、ミウラさんも。  
俺は、俺は・・・とんでもないことを・・・ゴメン、本当にゴメンなさい。」  
5人に泣きながら土下座して謝ると、林田はそのまま道場を飛び出していった。  
「林田君!!!」  
桃里が慌てて林田に声をかけるが、林田はそのまま武道場から出て行ってしまった。  
 
「アイツ、泣いてたな。」 皮村がポツリとつぶやく。  
「林田先輩・・・」 一方、朔美は去っていく林田の姿を見て、思わず涙をこぼしていた。  
その時、桃里がふらついているのに皮村が気がつく。  
「も、森さん、大丈夫?」  
昨日の桃里の様子を見ているだけに、まだ桃里の体調が万全でないことは皮村も知っていた。  
「だ、大丈夫、ホッとしたら・・・何だか・・・」  
そう言うと、桃里は崩れるように倒れた。  
「森さん!!」 「桃ちゃん!!」 「森先輩!!」 「モリモリ!!」  
 
ミウミウが桃里を抱えると、部室まで運んで、そっと桃里を横に寝かせてやった。  
「ご、ゴメンね・・・ちょっと、疲れたみたい・・・」  
意識の戻った桃里が皆に話し掛ける。  
「じゃあ、俺達、道場の方にいるから、何かあったら呼んでよ。」  
皮村はそう言うと部室の扉を開ける。  
「皮村君、今日はアリガトね。おかげで、林田君も元に戻ったし。」  
「まあ、アイツにとってはこれからが大変だけどな。」  
皮村がそう言うと、あとは皮村も桃里もしばらく林田の去っていった方向を黙って見ていた。  
林田が目覚める少し前、二人は、昨日の柔道部の騒動を見てしまった剣道部の部員が、  
他の部員に林田のことを話しているのを見かけていたのだ。  
二人はそれに気づき、黙ってて欲しいと頼んだが、もう既にかなりの人に話しまわった後だった。  
学校中に林田の話が広がるのは、もはや時間の問題だった。  
 
一方、道場では、皆が集まっていた。  
皮村は道場に戻ると、真っ先に藤原に向かっていき、藤原を殴り倒した。  
皮村の行動に一瞬驚く他のメンバーだったが、それをきっかけに藤原への非難が集中した。  
「オイ、藤原、お前、一体どういうつもりで、林田にあんなことしたんだよ。」  
「コロスケのせいで、あたちも、ミウミウも、桃ちゃんも、みんなヒドイ目にあったんだョ。」  
「このままじゃ、林田先輩があまりにもかわいそうです・・・」  
ベリ子や朔美までが、泣きながら藤原に訴えかけた。  
藤原は、何も言い返すことなく、ただただその非難を黙って聞いていた。  
 
部室では、桃里が一人横になっていた。  
いつの間にか桃里は少し眠っていたようだ。  
気がつくと、横に人の気配がした。  
「林田君・・・。」  
優しいけど、どこか寂しそうな笑みを浮かべながら、林田は桃里の方を見ていた。  
出て行ったはずの林田が、どうして自分の横にいるのか、少し不思議に思いつつも、  
桃里は、林田の方をしばらくじっと見ていた。  
「森さん、体の方はもう大丈夫?」  
「ちょっと疲れただけだよ。もう、大丈夫。」  
桃里がそう言うと、林田に向かって微笑んだ。  
その笑顔を見てホッとする林田。  
しかし、次に険しい表情に変えると、桃里に向かって再び土下座した。  
「森さん、ゴメン。俺、森さんに取り返しのつかないことを・・・。」  
「ウウン、林田君、もういいの・・・。」  
「でも・・・でも・・・俺のせいで森さんが・・・。」  
「もう、いいの!!」  
少し語気を強めて桃里が言うと、林田も驚いたのか何も言えなくなった。  
「林田君、本当に、私のことはもういいの。私なら、大丈夫だから・・・」  
そう言って、林田の方をニッコリと微笑む桃里を見て、林田にも少し笑顔が戻る。  
「ありがとう、本当にありがとう、森さん。」  
そう言い、桃里の手を握る林田。  
「ちょ、ちょっと、林田君。」  
気がつくと、二人の距離はかなり近づいていた。  
林田は桃里を見つめると静かに話し掛ける。  
「俺、ここに来たのは、森さんに、もう一つ大事なことが言いたかったからなんだ。」  
「えっ?」  
林田は、真剣な表情で、桃里に話し掛けた。  
「俺は・・・森さんのことが・・・好きです。」  
 
「えっ!?」林田の突然の告白に驚く桃里。  
「ゴメン、いきなりこんなこと言って・・・。  
でも、俺、どうしても最後に自分の気持ちを伝えておきたかったんだ。」  
「えっ、最後ってどういうこと?」  
林田の話を聞いて、ハッとなった桃里が聞き返すが、それには答えず、林田は話を続けた。  
「最初は・・・一目ぼれだったんだ。でも森さんが柔道部に入ってくれて、  
森さんと一緒に部活を過ごすうちに、俺は森さんのことが、もっともっと好きになっていったんだ。」  
「林田君・・・。」  
「本当に、柔道部に入ってくれてありがとう。どうしてもこれだけは言っておきたかったんだ。それじゃ。」  
そう言うと、林田は悲しそうな表情を浮かべながら、部室を出て行こうとした。  
「待って、林田君。」 出て行こうとする林田を桃里が引き止める。  
「林田君、ズルイよ。自分だけ一方的に話して、出て行こうとするなんて・・・。」  
桃里の目にうっすらと涙が浮かんでいた。  
「林田君、私ね、人を本気で好きになるっていうことが、どういうことかよくわからなかったんだ。  
でも、今回の一件で私、少しわかったような気がするの。  
林田君に襲われた時、怖かったし、正直ショックで何度も何度も泣いたよ。  
でも、しばらくすると、いつの間にか、いつもの林田君のことを思い出してた。  
あれは、林田君じゃないんだ。じゃあ、いつもの林田君はどこにいるの?  
私に、そしてみんなに楽しい部活を送らせてくれたあの林田君は・・・?  
あの・・・やさしい林田君がいなくなっちゃう。そう思ったら、そっちの方が辛くなってきちゃって・・・。  
だから・・・私は何とか、元のやさしい林田君に戻って欲しいって思って、みんなといろいろ考えた。  
林田君が元に戻ってくれた時、本当に嬉しかった。涙が出るくらいに嬉しかった。  
その時、今までわからなかったことが、ようやくわかったような気がしたの。」  
「森さん・・・」  
「林田君・・・、私も林田君のことが大好きだよ。」  
桃里は涙を流しながらも、笑顔で林田に答えた。  
「森さん・・・ありがとう。」  
林田は、桃里に近づくと、桃里の顔に自分の顔を近づける。  
それに気がつき、桃里はそっと目を閉じる。  
二人の距離はだんだんと縮まり、立ったまま二人はキスを交わしていた。  
 
二人は、しばらくキスを続けると、林田は桃里をそっと床に寝かせた。  
そして、再びキスを交わす。  
「んふっ・・・・あっ・・・・」  
今まで体験したことのない濃厚なキス。  
こんなにお互いがお互いを求めるような激しいキスは、  
かつて催眠状態にあった林田でもしたことがなかった。  
二人は、お互いを貪るかのようにしばらく激しいキスを交わす。  
やがて、林田が桃里から離れると、ツーッと唾液の糸が伸びた。  
このキスだけで、桃里は全身からスーッと力が抜けていくようだった。  
「ハァ・・・ハァ・・・は、林田君・・・みんな、まだ道場にいるのに・・・あっ・・・。」  
林田が、桃里の首筋を舐めると、桃里は思わず声を上げる。  
「森さん。」  
林田は桃里を見つめた。  
その表情は、やさしい表情だったが、どこか悲しみを帯びているようにも見える。  
「は・・・はやし・・・だ・・・くん?」  
まだ息の整わない桃里が、目を潤ませながら林田の方を見つめる。  
その桃里の様子を見て、林田の気持ちが一気に昂ぶる。  
「森さん・・・好きだ・・・大好きだ・・・」  
そう言うと、林田は桃里を思いっきり抱きしめる。  
その林田の抱擁に桃里は身を任せていた。  
「私も・・・私も・・・大好きだよ・・・林田君・・・」  
林田に抱きしめられ、桃里の心も昂ぶっていた。  
再びキスを交わす二人。  
キスをしながら、林田は桃里の制服を脱がせる。  
そして、桃里も林田の制服のボタンに手をかけていた。  
「はんっ・・・・んむっ・・・・んんっ・・・」  
互いの服を脱がせあいながら、二人はキスを続けていた。  
 
林田は、桃里のスカートに手をかける。  
「やっ・・・恥ずかしい・・・。」  
思わず抵抗する桃里。  
しかし、林田が抵抗する桃里の手に、やさしくそっと触れると、桃里は抵抗していた手をそっと下ろした。  
その様子を見て、林田は桃里のスカートを脱がせていく。  
「ああっ・・・」  
あまりの羞恥のためか、桃里の口から思わず声がこぼれる。  
でも、その表情はどことなく嬉しさを帯びていた。  
桃里の下着を脱がせると、ツーッと液体が伝っていくのに気がついた。  
桃里の秘所は既に濡れていた。  
二人とも全裸になると、お互いのぬくもりを確かめるかのように、二人は体を重ね、再びキスを交わした。  
林田のテクニックはぎこちなく、お世辞にも上手とは言えなかったが、今はそんなことはどうでもよかった。  
ただ体を重ねあっているだけで、お互いのぬくもりを肌で感じ取れるだけで、今の二人にはよかった。  
林田は、必死に、しかし優しい手つきで桃里の体に触れる。  
林田の指が体に触れるたびに、桃里の口から甘い声が漏れる。  
桃里も林田の愛撫を、体中で味わっていた。  
林田に触れられるたびに、心にまで熱いものがジンジンとこみ上げてくる。  
まるで、二人は体だけではなく、心までも激しく抱き合っているかのようだった。  
「は・・・林田・・・くん・・・ああっ・・・」  
林田が桃里の乳房を口に含むと、桃里は甘い声を上げる。  
林田は桃里の胸を愛撫したまま、桃里の秘所に手をやる。  
「うあああっ・・・。」  
桃里の喘ぎ声が大きくなる。  
林田は、指と口で、桃里の体中至る所を愛撫し続けた。  
林田の指が体に触れるたびに・・・林田の口が体に触れるたびに・・・桃里は甘い声を上げた。  
体も心もどんどん熱くなっていく・・・。  
もっと、自分に触れて欲しい・・・。もっと、林田君のぬくもりを感じたい・・・。  
桃里は声を上げながら、林田をただひたすらに求め続けた。  
 
「森さん。」  
林田が桃里の方を見る。  
「ウン・・・いいよ・・・林田君・・・」  
林田が言うより先に桃里が答える。  
林田は、ゆっくりと桃里の秘所に、林田自身を挿入し始める。  
桃里の顔に苦痛が走る。  
しかし、桃里の心の中は、苦痛よりも林田と一つになれる喜びの方が大きかった。  
「森さん、大丈夫?」  
心配そうに林田は桃里の顔を覗き込む。  
「うんっ、大丈夫だよ。」  
目に涙を溜めながら、桃里が答える。  
「もう少しだから、我慢してね。」  
林田は、そう言うと、再びゆっくりと桃里の中に挿入する。  
「あっ・・・んああっ・・・」  
桃里の目から涙がこぼれる。  
「ゴメン、痛かった?」  
林田が、桃里の顔を覗き込む。  
「ウウン、違うの・・・あまりにも嬉しくて・・・涙が出てきちゃっただけだから・・・」  
桃里が笑顔で林田の方を見つめる。  
林田は静かに指で桃里の涙を拭った。  
桃里を見つめる林田の表情は、やさしかったが、やはりどこか悲しみを帯びているようにも見えた。  
「森さん、行くよ。」  
「えっ、あっ・・・ウン。」  
林田はゆっくりと腰を動かすと、桃里も林田の動きに合わせて腰を動かし始めた。  
しばらくして、桃里の口から、甘い声がこぼれ出した。  
 
「森さん・・・森さん・・・」  
桃里の名前を叫びながら、林田は激しく、しかしやさしく腰を動かす。  
「あっ・・・んんっ・・・ああっ・・・」  
それに合わせて桃里の口からも、甘い声がこぼれる。  
それから、二人は、ひたすら交わりあった。  
林田も、桃里も、今はただただお互いを求めて、ひたすら交わりあった。  
このまま永遠に抱き合っていたい。林田も桃里も交わりながら、そう感じていた。  
「森さん・・・本当に・・・ありがとう・・・」  
林田が、桃里の顔を見つめて話す。  
「林田君の方こそ・・・ありがとう・・・」  
二人は体を重ねたまま、見つめあうと、再び熱いキスをかわしていた。  
 
そして・・・・・・  
林田も桃里も服を着終わると、家に帰る準備を整えていた。  
(そう言えば、道場の方にまだみんないるはずなんだけど、誰も来ないな。)  
そう思い、ハッとなる桃里。  
(もしかして・・・もしかして・・・みんなに、気づかれたかも・・・。)  
そんなことを考え、顔を真っ赤にする桃里。  
「その心配はいらないよ。森さん。」  
桃里の思っていたことを見透かしたかのように、林田が桃里に話す。  
ガチャッ  
林田が部室の扉を開ける。  
「森さん・・・今日は、本当に、本当にありがとう。俺、本当に嬉しかったよ。」  
そう言う林田の表情は、やはりどこか悲しそうだった。  
「どうしたの、林田君? さっきから、何か少し変だよ。」  
「俺、本当は、こうして森さんとずっと一緒にいたかった。でも・・・ゴメン、もう行かないと・・・。  
サヨナラ、森さん。今まで、楽しい思い出をいっぱいくれて、本当にありがとう。」  
そう言うと、林田は部室の扉を開けて、部屋の外に出て行った。  
「ちょ、ちょっと待って、林田君。」  
林田を追って、桃里も慌てて部屋を出たが、部屋の外に林田の姿はもうなかった。  
 
「林田君、どこ? どこにいったの?」  
林田の最後の言葉に驚き、慌てて、道場に向かう桃里。  
道場にはいつの間にか誰もいなくなっていた。  
今度は慌てて、桃里は武道場を飛び出した。  
(も・・・り・・・)  
かすかに声が聞こえる。  
桃里の胸に、嫌な胸騒ぎが走り出す。  
「ヤダ・・・林田君・・・お願い・・・待って・・・」  
気がつくと、桃里は泣いていた。  
泣きながら、必死に林田を探す桃里。  
(も・・・り・・・)  
また、自分を呼ぶ声が聞こえる。  
その声の方に向かう桃里。  
だんだんと、声がはっきりしてくる。  
(森先輩・・・森先輩・・・)  
 
その声でハッとする桃里。  
気がつくと桃里は部室で横たわっていた。  
隣には、ひどくうなされていた桃里を心配そうに朔美が見ていた。  
「だ、大丈夫ですか?、森先輩。何だかうなされてたみたいですけど・・・」  
心配そうに、朔美は桃里に尋ねた。  
「あれっ、私、いつの間にここに・・・って、林田君は?」  
「えっ、林田先輩は出て行ったきり、ここに戻ってきてないですけど?」  
「嘘、さっきまで、ここにいたはずだよ。」  
「えっ、でも、私、しばらくここで森先輩の横にいましたけど、誰もこなかったですよ。」  
朔美の話を聞いて、桃里はしばらく呆然としていた。  
「だ、大丈夫ですか? 森先輩・・・」  
桃里のいつもと違う様子に気づき、朔美は恐る恐る桃里に声をかける。  
「えっ、あっ、ウン、もう大丈夫。朔美ちゃん、ずっと付き添ってくれてたんだ。アリガトね。」  
朔美の声で我に返った桃里は、朔美にそう言うと、ゆっくりと体を起こした。  
 
柔道場には皮村だけが待っていた。  
「おっ、森さん、もう大丈夫なの?」  
家から持ってきていたヌル天を読みながら、桃里に話し掛ける皮村。  
いつもの光景なのだが、朔美はまだこの光景に慣れていなかったせいか、  
皮村の読んでいる雑誌を見て、恥ずかしそうに下を俯いていた。  
「あれっ、他のみんなは?」  
桃里が皮村に話し掛ける。  
「ああ、藤原はあの後すぐ帰った。それと、ミウラさんとベリちゃんは仲直りに食事に行くって言って、  
たった今帰ったところだよ。東はまたヘリに乗って帰っていったし。」  
「そう、じゃあ、私達も帰ろっか。」  
「そうすっかな。」  
皮村はヌル天を部室の方に持っていくと、帰る準備を始めた。  
 
帰り道、皮村はどことなく桃里に元気がないことに気がついた。  
しかし、あまりにも真剣な顔をして思いつめている桃里に皮村は声をかけることができなかった。  
(あれは・・・夢だったの? それにしては、あまりにもリアルすぎて・・・。)  
桃里は林田との出来事をずっと考えていた。  
どうしても、林田と話し、抱き合ったあの出来事が夢とは桃里には思えなかった。  
(夢じゃなかったとしたら、一体何なんだろう?)  
あの林田の最後の言葉に、桃里はさっきからずっと嫌な胸騒ぎを感じていた。  
桃里はあの後、何度か林田に電話したが、何度かけても林田が電話に出ることはなかった。  
「じゃあ、森さん、俺こっちだから。」  
「うん、それじゃね、皮村君。」  
考え事をしたまま、皮村から離れていく桃里の様子を皮村はじっと見ていた。  
「森さん、林田のことを心配してんのかな。確かに、アイツ、かなり思いつめてたからな。」  
皮村は、家に向かいながら林田の携帯に電話してみるが、やはり林田が電話に出ることはなかった。  
試しに実家に電話すると、明日香が電話に出た。  
「お・・・お兄ちゃんなら、まだ帰ってきてないですけど・・・」  
なぜか林田の話になった途端に、声が上ずった明日香の様子を変に思いつつ、皮村は電話を切った。  
「アイツ、まだ家に帰ってないのか?部室飛び出してから、もう4時間は経つぞ。」  
日が暮れつつある空を眺めながら、さすがに皮村も少し林田のことが心配になりだしていた。  
 
そして、その日の夜・・・。  
 
桃里は風呂の中でも、あの出来事のことを考えていた。  
自分の肌を手でさわり、その感触を確かめる。  
「やっぱり、あれは夢なんかじゃないよ。でも、私の傍にずっと朔美ちゃんがいたって言うし・・・」  
考えれば考えるほど、桃里はわけがわからなくなっていた。  
風呂を出て、部屋に戻った後も、桃里はずっと林田とのことばかりを考えていた。  
ふと、さっきから遠くの方でパトカーや救急車のサイレンの音がやたら鳴っているのに気がつく。  
かすかに聞こえるだけのそのサイレンの音が、なぜか耳から離れない。桃里の脳裏に嫌な予感が走る。  
その時、笑福軒に一本の電話がかかってきた。  
「オーイ、桃里、林田君の妹から電話だぞ。何だか切迫しているみたいだぞ。」  
「えっ、明日香ちゃんから?」  
桃里は、珍しいなと思いつつも、電話に出た。  
「もしもし・・・。」  
電話に出た桃里は、泣き声で話す明日香の話を聞いた後、頭の中が真っ白になった。  
「どうした、桃里?」  
モモジが様子のおかしい桃里に気づき、声をかける。  
あまりのショックで、受話器を手から離す桃里。  
「う・・・嘘・・・でしょ・・・!!?」  
今、自分がどういう感情を持っているのか、もうそれすらもわからなくなっていた。  
「もしもし、どうしたんだ?」  
再び、モモジが電話に出た。そして、話を聞いた後、モモジも驚きを隠せなかった。  
突然、桃里が家から飛び出す。  
「桃里、オイ、どこに行くんだ。桃里、桃里ーーー!!!」  
桃里は、泣きながら、暗い闇の中を、一人疾走していた。  
 
気がつくと桃里は、近くの川辺に来て、一人泣いていた。  
後ろに人の気配を感じて振り向くと、いつの間にかモモジが、桃里の後ろに立っていた。  
「お、お父・・・さん・・・。」 桃里はモモジに泣きついた。  
こんなに号泣している桃里を見たのは、モモジも初めてだった。  
「桃里・・・」 モモジは、号泣する桃里を、ただ黙って抱きしめてやった。  
 
結局、桃里が願い望んだ柔道部が元に戻ることはなかった。  
もう、柔道部の部室が、あの楽しい空間に戻ることはなかった。  
あの日以来、部室を訪れる人の数が少しずつ減っていき、やがて誰も来なくなった。  
皆、部室に来るたびに、あの日のことを思い出してしまうのが辛かったのだろう。  
柔道部は、実質休部状態になっていた。  
その後、林田の被害を受けた人達が全員、あの日、林田を目撃していることが判明した。  
林田が、目の前に突然現れると、土下座してひたすら謝って、そのまま消えていったらしい。  
「林田らしいな・・・」 その話を聞いた皮村は、暗い表情のまま、ポツリとそうつぶやいた。  
 
数ヵ月後のある日の夕方・・・  
 
誰もいなくなって久しくなった柔道部部室。  
そこに久しぶりに人がやってきた。  
その部室を訪れた人物とは、元柔道部員の藤原虎呂助だった。  
藤原は、あの日以来、行方不明になっており、学校にも来ていなかった。  
どこに姿を消していたのかは、誰も知らなかった。  
部室は真っ暗で、人がしばらく来た気配はないものの、意外と部室はきれいだった。  
それは今でもたまに、桃里が部室に来て、部屋の掃除をしていたからだった。  
ただし、部屋の掃除に来るのは、桃里だけでなく、ベリ子も一緒に来ていた。  
ベリ子は、桃里が今でもたまに部室に来て、一人泣いているのを知っていた。  
早く、いつもの元気な桃里に戻って欲しい。  
そう思ったベリ子は、桃里が部室の掃除に行く時には、必ず一緒について行くことにした。  
桃里も、そんなベリ子の気持ちに気がついたのか、桃里もべり子の前では懸命に明るく振舞った。  
そんなこともあってか、桃里はまた以前のように、ベリ子と一緒に行動することが多くなっていた。  
もちろん、藤原がそんなことを知る由もない。  
「随分と・・・寂しくなっちゃったわね。」  
部屋の片隅には、林田が愛読していた柔道バカ一代が今だに棚にひっそりと並んでいた。  
「あのバカが好きな本だったわね。」  
藤原は、部室の風景を目に焼き付けるようにしばらく見続けた後、部室の明かりを消して、武道場を去った。  
それ以後、藤原が学校に姿を表すことは2度となかった。  
 
 
「桃ちゃん、早く学校行こうョ。」  
あの日以来、桃里と学校に行くようになったベリ子が、今日も迎えに来ていた。  
「悪い、遅刻だ、ベリ子、走るよ。」  
そう言うと、桃里とベリ子は慌てて学校に向かう。  
二人は、広い通りの道を全力で走り抜ける。  
二人は、前を歩いている男子高校生の横を通り過ぎる。  
その時、自分の横を通り過ぎた男子高校生が、自分のよく知っているあの人に一瞬見えた。  
桃里はハッとなり、立ち止まって後ろを振り返ったが、そこにはなぜかもう誰もいなかった。  
「どうしたの?桃ちゃん・・・。」  
「・・・ウウン、何でもない。」  
少し悲しそうな顔をして桃里が答える。  
「マズイョ、桃ちゃん、早くいかないと遅刻だョ。」  
ベリ子が桃里をせかすが、再び足を止める桃里。  
桃里はもう一度だけ後ろを振り返った。  
「心配してくれてアリガトね。私は、もう大丈夫だよ。」  
誰もいないはずのその方向に向かって桃里はそう言うと、ベリ子のいる方に向かって走っていった。  
「桃ちゃん、誰に話してたの?」  
「ウウン、何でもないよ。それより、早く学校に行こ。」  
桃里は何かが吹っ切れたように走り出すと、ベリ子も慌ててその後を追いかける。  
しばらく走った後、桃里は足を止めると、ベリ子に元気よく話した。  
「ベリ子、柔道部を復活させるよ!!!」  
「桃ちゃん!!・・・・・・ウン、あたち、みんなに声かけてみるョ。」  
「よし、じゃあ、私は部室の掃除でもしよっかな。」  
「桃ちゃん、一人で大丈夫?」  
「ウン、もう一人で大丈夫だよ。ベリ子、いつも心配してくれてアリガトね。」  
「桃ちゃーん!!!」  
「コラ、ベリ子、くっつくんじゃない。って、あーもうこんな時間!!! ベリ子、走るよ。」  
桃里は、晴れた青空に向かって、笑顔を見せると、ベリ子と一緒に再び走り出した。  
 
                                                 (END)  
 

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