「でも林田のあの驚きっぷりを話のネタにできねーのはおしーな」  
「しょうがないじゃない。こんど驚かせたときにとっておきましょう。ふふふふ」  
「あ、またやるんだ」  
「当たり前じゃない。今時あんなにベタに驚いてくれるのはあの男くらいよ」  
「たしかにあれは笑えたよなー」  
 楽しげに話す藤原君と皮村君の声も右から左って感じで。さっき林田君が  
抱きついてきた事で頭の中がいっぱいだった。  
「この辺りで解散かしらね。それじゃおやすみ」  
「あ……、お、おやすみー」  
「とりあえずモリモリも忘れなさいよ。今夜あったことはくれぐれも  
部長の夢なんだからね」  
「え、あ……う……うん」  
 藤原君が再度念をおしてくる。おされなくても恥ずかしくて私からは言えないけど。  
というか私まだドキドキしてる。んーいかんいかん。きっと林田君はあまりの恐怖で  
パニくってしまってたんだし。明日はちゃんと素知らぬフリしなくちゃいけないんだから!  
 なのに……布団の中に入ると頭の中で何度もリピート再生されてくる。  
服越しからでも分かった熱い息の感触。  
「あーもう何考えてんだろ私……」  
 
 布団に潜って雑念を振り払う。そうだ! 楽しい部活の時間を思い出せ。  
そだ、ぷぷっ。あれ面白かったなぁ。林田君のニクニクCマン!   
その後東君もきちゃって。あれ……あの時、林田君パンツ一丁だったけか……  
ニクニクCマンに目がいってたけど……。う……そんな目で見ちゃダメだ桃里!  
 林田君にしてはめづらしく体を張ったギャグだっていうのに。違うこと違うこと……。  
うわ。なんでこのタイミングで皮村君に見せられたヌル天思い出すんだ私。けど、  
あれすごかったなぁ……。林田君もああいうの読むのかな……?……じゃなくてっ!  
そういうんじゃなくてっ!  
「ダメだ……とりあえず……今晩だけ……ごめん林田君……」  
さっき林田君の顔があったあたりをそっとなでてみる。思い出しちゃったらまたドキドキ  
が……。そのまま顔押しつけられて……手で胸をそっと押す。ふにゃっとした感触。  
「ん……」  
 き、気持ちいいかも……。あ……。ん……林田……くん、ほんとごめ……。  
 
「だから何でオメーは起きる度に森さんに抱きつきにいくんだよ!」  
「うるせ──お前がこの前やったことだろ──が!  
「は? 何言ってんだよ……ねぇ?森さん…」  
「え? うん…いや、その…」  
 もぉ!皮村君ってば! 思い出しちゃうじゃん……あの事もあの後の事も……  
ど、どうしよう落ち着け。気付かれちゃう……。  
 
♪ソイソースかけーゴハーン♪  
 
あ……  

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