「……あっ……んん……」  
 
瞳をドロドロに潤ませた歩巳は、ビクリと体を震わせながら声を押し殺した。  
自室のベットの上で、尻を突き出すように牝犬のポーズを取りながら、濡れぼそった女性器に人差し指を挿入していく。  
そのような屈辱的な格好が、歩巳にとっては事情を行うのに理想的な体勢であった。  
はしたなく尻をふりながらも、己の恥部を攻め立てる。快楽に声を漏らしそうになり、必死になって枕に噛み付く。  
歩巳の体は興奮のあまり朱色に染まり、額には汗の珠が浮かんでいた。  
お風呂に入ったばかりなのに、と堪え性のない自分の体を恨めしく感じが、その汗は雌の甘い香りを発し、すぐにまた理性を溶かしていく。  
その熱に煽られるようにさらに奥まで侵入させるが、処女膜があるため、それ以上の侵入は許さない。  
もっと奥まで、という欲望はあるが、乙女のように初めては好きな人との思い出に、と決めているのだ。  
自分で破ってしまうようなことはしたくない。歩巳はかき回していた指を抜き、表面を擦りながら陰茎を弄る動きに変えた。  
 
「……んっんっんっ……あっイく……イくっ……イく……」  
 
駄目だ、と理性が警告を鳴らすが指の動きは止まらない。  
容赦のない攻めを繰り返しながら、口の脇から垂れ流しそうになった涎を啜る。  
自分の指ではないみたいだ。  
一体誰の指なのだろう。誰の指で、こんなに浅ましく、淫らな女にされているのだろう。  
人差し指と中指が膨れた陰茎を掴み、ひねり上げた。  
 
「……ひっ……んくぅぅぅぅぅ……!!」  
 
噛み締めた口から声が漏れ、ビクビクと体を痙攣させる。それと同時に歩巳は意識を手放した。  
戻ってきた頃には、口をだらしなく開き、涎がシーツに垂れてしまっていた。  
もちろんシーツについた染みはそれだけではなく、股間の下にはそれとは比べ物にならないほどに濡れてしまっていた。  
後始末をしなくては、と思うが、体を起こすことも気だるく、ゴロンとそのまま仰向けになって部屋の天井を見つめる。  
一体誰の指なのだろう。容赦なく攻め立ててきたこの指は。  
紛れもなく、自身の手についたこの指は、一体誰の指だったのだろう。  
 
「…………狐さぁん」  
 
天井を見つめながら人差し指の腹を舐めた。その口から、彼の名前が無意識に漏れた。  
 
 
―――『歩巳の秘密』―――  
 
 
「アユ、聞いてる? アユってば!!」  
 
「……へ? あっ、はい、虎子さん」  
 
いけない。また考え込んでいた。歩巳は慌てたように瞬きを繰り返す。  
意識の飛んでいた自分の顔を、虎子はいつから覗きこんでいたのだろうか。  
周りは弁当を広げる者や教室を出ていく者でざわついていた。  
 
「どしたの、ぼーっとして。寝不足?」  
 
「あ……そ、そうなんです。最近寝つきが悪くて……」  
 
まさか昨夜のことを説明するわけにもいかず、虎子の言葉に頷くことにした。  
嘘ではない。事実、夜になるとどうにも悶々として、自分を慰めなければ眠りにつくことも叶わないのだから。  
 
「ちゃんと寝なきゃ駄目だよ? ま、いいや。早く学食行こうよ」  
 
虎子が親指で指した方を見ると、自分達を待っているのだろう、雀と龍姫が教室の入り口でこちらを睨んでいた。  
別に睨んでいたわけではないのだろうが、歩巳には自分の淫らな内心が見透かされているような気がして、そう感じられた。  
慌てて席を立ち、虎子の後に続く。駄目だ。しっかりしなくては。  
 
「どうしたの、歩巳。今日は朝から少し変よ」  
 
「え? あ、え、えと、その……」  
 
「最近寝不足なんだってさ」  
 
「そ、そうなんです」  
 
学食への廊下を行く中でも、虎子の言葉に曖昧に頷くことにした。  
歩巳の様子がおかしいのは先程に限ったことではないのだ。龍姫の呼びかけに答えないことも、今日何度かあった。  
 
龍姫はまだ何か言いたそうにしていたが、歩巳は俯いてそれから逃れることにした。  
まさか4限の授業が終わったことにも気づかなかったとは……と自分の情けなさに泣きそうになる。  
朝からずっとこんな調子では、授業内容も頭に入っているはずがない。  
 
原因はわかっている。昨晩のことだ。  
頻繁にしているわけではないのだけれど、別に自慰行為をしたのは昨晩が初めてではない。  
それに、このようにいつまでも意識が囚われることもなかった。  
問題は慰め終わった後、無意識に口にした名前にある。  
 
これはそういうことなのだろうか。  
憧れていた人くらい、中等部の頃にもいたはずだ。だが、そんな感じとは少し違うのだ。  
憧れというよりももっと別な……  
彼のことをもっと知りたいと思う。彼の中に自分の居場所を作りたいと思う。自分の全てを彼で埋めてしまいたと思う。  
胸に生まれた欲望はどんどん膨れ上がっていくばかりだ。  
 
「……あ、あの、虎子さん」  
 
「ん? なに、アユ?」  
 
「えっと……き、狐さんてお家ではどんな感じなんですか?」  
 
「え、兄ちゃん?」  
 
「あ、はい、えと、その……」  
 
突拍子のない質問に、虎子はクエスチョンマークを浮かべた。  
歩巳にとっては勇気を振り絞った一言だったのだが、自分が舞い上がり過ぎてしまっていたことに気づき、急に恥ずかしくなる。  
なんでそんなことを聞いたのか、どう説明すべきだろうか。  
赤やら青やらに顔色を変えている友人に、よくはわからないが、龍姫は助け舟を出すことにした。  
 
「それなら私も気になるわ。あなた、自宅でもあんな調子で虐められてるのかしら」  
 
気になる、というのはあながち嘘ではなかった。  
普段自由奔放な彼女が、彼女の兄には一向に頭が上がらないことは不思議であったし、なにより彼の人となりが気になった。  
それが何故か、は未だ龍姫にはわからないでいたが。  
そんな彼女達の言葉に、虎子は何を思い出したのか渋い顔を作ってみせる。後ろに迫っていた影に気づかずに。  
 
「あ〜最悪だよ。この前なんてさ、昼寝してたら急に兄ちゃんが」  
 
「俺がどうしたって?」  
 
「――っ!」  
 
瞬間、歩巳は自分の股間が湿ったのを感じた。  
驚いただけ、声をかけて来たのが彼でなければ、それだけですんだだろう。  
四人が振り向いた先には、片手を挙げた狐が、いつものように意地悪そうな笑みを浮かべていた。  
 
「に、兄ちゃん!? なんでここに……」  
 
「そりゃ昼飯食いに来たに決まってんだろ。で、俺がなんだって?」  
 
「な、何でもないよ。別に兄ちゃんの話なんてしてないしさ」  
 
明らかに慌てた虎子の様子に狐は目を細めると、ポケットから小さな飴を二つ取り出し、雀の手に落とした。  
 
「虎子、狐の悪口言おうとしてた」  
 
「スズ! そんなもんで買収されんなよ!」  
 
「ふ〜ん、悪口ねぇ……」  
 
あっさりと裏切った雀の言葉を受け、狐は片手で虎子の頬を引っ張る。  
手足をバタつかせる虎子は涙目になっているが、端からしたらじゃれ合っているようにしか見えない。  
狐もそんな虎子の様子が可愛くてつい虐めてしまうのだろう。  
龍姫は呆れたように見たいたが、歩巳は二人の姿に熱っぽい視線を送っていた。  
 
(……いいなぁ虎子さん……私も虐めて欲し……)  
 
「――っ!!」  
 
いや、待て、自分は今何を考えていた? 一気に歩巳の頭から熱が引いていく。  
狐に虐められる虎子を羨ましがっていた。まさか、自分も虐めて欲しいだなんて。  
まるで変態かなにかみたいではないか。こんなことを考える自分がよくわからない。  
でも、自分の考えたことはわかるのだ。虐めて欲しい。それは何というか。つまり、性的に、ということだ。  
 
「歩巳? 顔が赤いわよ、調子でも悪いの?」  
 
「な、なんでもないです! なんでも……」  
 
歩巳の様子に気づいた龍姫が心配そうに声をかけるが、今はそんな彼女の気遣いが恨めしい。  
これは駄目だ。鼓動が速くなっているのがわかる。一度頭に浮かんだイメージは拭い去れない。  
 
(や、やだ、私、興奮してる……)  
 
彼に虐められるという妄想に。そして、彼や友人の前でそんな卑猥な考えを巡らせている現状に、だ。  
 
「歩巳ちゃん、どうかしたの?」  
 
「ふぇ!? べっ、別になんでもないです! 本当に!」  
 
先程まで虎子を虐めるのに夢中だった狐まで歩巳の方を向いていた。  
虎子はというと痛そうに放された頬を擦っているが、歩巳の視界に入ることはなかった。  
顔を俯かせても、狐の視線を感じる。それを意識するだけで体が熱くなり、乳首が硬く尖っていく。  
恥部がヒクヒクを痙攣を始める。もし今、彼に触れられれば、自分は簡単に気をやってしまうだろう。  
 
限界の中にいる歩巳に対し、狐の中には悪戯心が芽生えていた。  
なんでもない、と言いながらも、決して自分と目を合わせそうとはしない。  
そこまで頑なだと、こちらを向かせたくなっていく。だが、ただ顔を持ち上げるだけではつまらない。  
狐は周囲に悟られない程度に微笑むと、歩巳のムチムチとした太腿に手を近づける。  
さすがに肌に触れるのは躊躇われる。狐はそのままスカートに手をかけ、  
 
「よっと」  
 
素早く捲り上げた。  
 
下を向いていた歩巳には近づいてくる狐の手は見えていたのだが、体が緊張に犯され動かなかった。  
ただ上を向いた乳首がブラジャーを擦り、口の中一杯に溜め込まれた唾液を飲み込む音が頭に響くばかりだった。  
 
「〜〜〜〜っ!!」  
 
弾かれたように慌ててスカートを抑えるが、もう既にスカートは元の位置にあった。  
捲られたのは一瞬だったが、今日はどんなパンツを履いて来ていただろうか。  
確か可愛らしいフリルのついたものだったはずだ。ならば狐に見られても大丈夫、とそんなどこかズレたことを考え、気づいた。  
最悪だ。  
狐に声をかけられた時から股間は湿り、彼の視線を感じながら、しとどに濡らしていたのだ。  
目で確認しなくとも、今日履いてきたピンク色の下着には、はっきりと染みができていることがわかる。  
 
「……あ……あ……っご、ごめんなさい!」  
 
「歩巳!?」  
 
目に涙を溜めた歩巳は龍姫の呼びかけを振り切り、学食を走り出て行く。  
何人かの生徒とぶつかりそうになるが、とても今は気にかけている余裕はなかった。  
 
「に、兄ちゃん、なにしてんだよ!」  
 
「……ん、ああ、悪い悪い」  
 
幸い虎子達は下着の染みには気づいていないようだった。  
まさかここで狐がスカートを捲るとは思いもよらなかったので、下着を注視することなどなかった。ただ一人を除いては。  
兄の奇行に顔を染める虎子。歩巳の走り去った後を心配そうに見つめる龍姫。早く昼飯を食べたくて仕方がない雀。  
狐の顔に怪しく浮かんだ笑みに気づいた者は、ここには誰もいなかった。  
 
 
 
「あ、あの、狐さん……わ、私、狐さんのことが……」  
 
 
 
「んあっ、あっ、あっ……は、はひぃ、なんでもしまふ……らから……らからもっふぉ虐めてくらふぁいぃぃぃ!」  
 
 
 
「ねぇ兄ちゃん、何か隠してない? 最近……その……全然、してくれないしさ……」  
 
 
 
「こんなもんでイっちまうなんて、お前は本当にド変態だな。なぁ、雀」  
 
 
 
―――『第2話 虎の秘密、狐の秘密』――― not comming soon  
 
 
 
 

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