「だって、生きて帰れるかどうか分かんないじゃない!」  
「生きて帰れる! 俺が保証する!」  
洋大は律子の捨て鉢な叫びを制し、彼女をぎゅっと抱き締めた。  
「お前は──俺が守ってやるから」  
「ヨーダイ……」  
洋大の真情に満ちた言葉に、強張っていた律子の身体から、ゆっくりと力が抜けていく。  
そっと閉じた瞼から、溢れ出た涙が一筋流れ落ちた。  
──ここは、コンクリートが打ちっぱなしの小さな地下室。  
洋大と律子は、妖怪デロの罠にかかり、二人きりでこの部屋に監禁されていた。  
相棒のジェラルドも取り上げられ、今の洋大にはここから逃げ出す術は見い出せない。  
だが、しばらく我慢すれば、スーリエ・ルージュの仲間達が必ず救援に来てくれる筈である。  
それまでは、こうして律子の不安を少しでも軽くしてやることが、洋大に出来る唯一の事だった。  
「大丈夫だ、律子、大丈夫……」  
洋大は律子の髪を撫でてやりながら、何度もあやすように呟いた。  
律子に告げながら、同時にそれは洋大自身の微かな不安を宥める為の呪文でもある。  
助けが来る前にデロ達が何かしようとすれば、ごく普通の高校生である今の洋大に抗う力はない。  
仲間達を信用してはいるが、それでも「もしかしたら」と言う疑念は拭えない。  
そんな洋大の心理を読み取ったのか、しばらくすると律子の呼吸が乱れ出した。  
 
 
「……っ、……っはぁ……」  
「ど、どうした、律子? どこか苦しいのか?」  
強く抱き締め過ぎたのかと思い、洋大は律子を抱いていた腕を緩めた。  
しかし、そうしても律子の呼吸は落ち着かず、むしろ段々と荒くなってゆく。  
どうしたら良いのか迷っていると、律子は自分から洋大の背に両手を回し、強く抱きついて来た。  
「お、おい、律子……?」  
「はぁ……、はっ……、はぁっ……!」  
戸惑う洋大の肩に顔を埋めながら、律子はぐりぐりと胸を押し付けた。  
思っていたより豊かな二つの膨らみが、洋大の胸板に柔らかな感触を伝える。  
首筋に熱っぽい吐息を吹きかけられて、そんな場合では無いと分かっていても、身体が反応しそうになる。  
(ばっ……馬鹿野郎! 何を考えてるんだ、俺はっ!)  
克己心を掻き集め、洋大は律子の肩を両手で掴み、彼女の身体から距離を取った。  
「どうしたんだよ、律子!? お前、少しおかしいぞ!」  
「うっ……うん、あたし……おかしいの……」  
「……え?」  
俯いたままぽつりと呟く律子に、洋大は怪訝な表情を浮かべた。  
律子の耳たぶは真っ赤に染まっており、先程までの恐怖による怯えとはどうも様子が違う。  
肩を押さえる洋大の手首に掴まり、物憂げな動きで顔を上げていく。  
「なんだか、あたし……からだ、あついの……」  
律子の潤んだ瞳には、紛れも無い情欲の炎がちらついていた。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
(……くそっ! そう言う事かよっ!)  
律子の表情を見て、洋大はオーナーから聞かされたデロの習性を思い出し、即座に事情を悟った。  
律子はデロのピンク・レーザーに撃たれていたのだ。  
彼らが持つ光線銃から放たれるそれは、撃たれた者に耐え難いまでの性的欲求をもたらす、と言われている。  
そうして攫って来た女性をあやつり、自分達との性交を求めるのが、彼らの主な行動パターンなのである。  
『変な光線を撃たれて、体がおかしい』という律子の言葉を聞き流してしまった、洋大のミスだ。  
洋大に強く抱き締められた事が、律子の抑制を弾けさせる、最後の引き金になってしまったに違いない。  
自分の迂闊さに、洋大はほぞを噛む思いだった。  
「熱くて……すごく、疼くの……。抱いて……」  
「りっ、律子、しっかりしろ! お前はただ、奴らの妖術に操られてるだけなんだ!」  
甘えるような声を出して迫る律子に、洋大は狼狽しつつ、彼女に通じる筈もない説明をしようとした。  
洋大とて、健全な若者である以上、人並み程度に異性への興味はある。  
けれど、操られていると分かっている相手と、この状況で出来るほど、無分別ではない。  
ましてや、律子とは幼い頃からずっと一緒に育ってきた、仲の良い友人だ。  
今までの関係が壊れそうな焦燥感に駆られ、洋大は律子の肩をガクガクと揺さぶった。  
「よー、じゅつ……? 何の事か、わからないよ……。それに、あなた、だれぇ……?」  
「なっ……!? 律子、何言ってんだよ! 俺だ、洋大だよ!」  
洋大の事も分からなくなったらしい律子は、うわ言めいた声で囁きながら、肩に置かれた手首を握り締めた。  
その目からはいつもの快活な輝きが失せ、まるで焦点が合っていない。  
強い力で自分の肩から外した洋大の手を、そのまま下にずらしていく。  
「だれでも、いいや……。そんなことより、ねぇ……」  
「り、律子!?」  
「触って……?」  
そして、呆気に取られる洋大の手の平を、自らの乳房に押し付ける。  
ふにゅんと潰れる生々しい感触に慌てる洋大とは対照的に、律子は満足げな吐息を洩らした。  
「んっ……、ふ……。あなたの手……、気持ち、いい……」  
「よっ、止せよ、律子! こっ……こんな……!」  
律子は蕩けそうな顔をしながら、洋大の手で胸を押し潰し、円を描くように動かし始めた。  
洋大は必死に腕を引っ張るが、律子の手は信じられない程の力強さで、逃れる事が出来ない。  
自分の意思とは関わり無く、洋大の手は律子の胸をまさぐり、柔肉の弾力を嫌が応にも感じてしまう。  
物心ついてから、女性の胸を触った記憶など皆無に等しい洋大には、いささか刺激が強すぎた。  
「あっ……ねぇ、分かる……? 胸の先が……熱くて……硬く、なって……」  
「りつ……こ……」  
言われるまでも無く、つんと突き立った頂点のコロコロとした感触は、シャツとブラを通しても感じ取れた。  
律子の興奮を肌で知り、洋大のズボンの前も次第に膨らんでくる。  
湧き上がる欲望を押さえ込もうと、洋大はぎゅっと目を瞑った。  
「熱いの、胸だけじゃ、ないの……。こっちも……ねぇ、見てぇ……」  
「えっ……っくっ!?」  
突然片手を解放された洋大は、律子の声と衣擦れの音に思わず目を開けてしまい、そして絶句した。  
律子は空いた片手でスカートの前を捲り上げ、指先をショーツの中に差し入れていたのだ。  
赤い電球の光に照らされて、中央が湿ったショーツと、張りのある滑らかな内股が、朱に染まって見える。  
もぞもぞと動く逆三角の布地と、小さく響く水音からして、何をしているかは明白だ。  
カッと頭に血が昇り、洋大は渾身の力で律子の手首を握り、彼女の両手を身体から引き剥がした。  
「止めろって! 自分が何をしてるのか、分かってんのかよ!?」  
「やっ……いや、離して……離してよぉ! 駄目、駄目になっちゃう……!」  
両腕を持ち上げられた律子は、まるで麻薬の禁断症状のように、激しく暴れ出す。  
「いっ……やあぁぁっ!」  
「うぐっ!?」  
そして、苛立たしげな絶叫と共に、正気を失った者特有の異常な腕力で、洋大の身体を振り解く。  
勢い余ってコンクリートの床に叩き付けられ、洋大は息を詰まらせた。  
「あっ……んふ、いいよぉ……。こんな……こんなに、気持ちいいの……」  
自由を取り戻した律子は、もどかしげにシャツのボタンを外すと、ブラの下に片手を入れて、自ら慰め出した。  
次第にブラがずり上がり、やがて触れていない方の乳房が、ふるんと外にまろび出る。  
先端の蕾は切ないほど隆起し、身体の動きに合わせて不規則に揺れ動いていた。  
「ふぅ、んっ……、だ……め、あたしの……あたし……おかしいの……」  
律子のもう一方の手は、ショーツを思い切り脇に避け、剥き出しにした花弁を弄っていた。  
膝立ちになって足を広げ、軽く上体を反らしている為、洋大の目に潤み切った秘所がくっきりと映る。  
柔らかそうな茂みに覆われた赤い亀裂が、律子の人差し指を飲み込んで、くちゅくちゅと淫猥な音を立てる。  
幼馴染の少女の痴態と、微かに漂ってくる蜜の匂いが、洋大の雄の部分を強烈に刺激する。  
瞬きすら忘れて見詰める洋大に見せ付けるように、律子は自慰に耽っていた。  
「……ああっ、だめっ! これ……じゃ、足り、ない……っ!」  
しばらくすると、律子はもどかしげに呻き、続けて中指を陰裂に挿入した。  
二本の指を根本まで押し込み、音が出るのも構わず強引に掻き回す。  
乱暴な扱いに乙女の薄膜が破れ、鋭い痛みに顔を顰めるが、狂った身体はそれさえも快感に変化させる。  
破瓜の血も、洪水のように湧き出る快楽の雫に薄められ、淡紅色の流れとなって太股を伝う。  
無言のまま、魅入られたように動きを止めた洋大の前で、律子は着実に絶頂へと向かい始めていた。  
「くふぅ……! んんっ、くっ……! あっ、きそう、くるのっ……!」  
律子は快楽に酔って硬く目を閉じ、両手の動きを更に速めた。  
劣情に任せてふくよかな胸に爪を立て、指の股でツンと尖った蕾を擦る。  
スリットに埋めた指を不規則に動かしながら、親指で敏感な花芯を押し潰す。  
珠のような汗を全身に浮かべ、耐えかねたように腰をガクガクと震わせる。  
「や……くる、くるっ……! ん、あ、はぁっ!!」  
一際高い声で叫んだかと思うと、硬直していた律子の肢体が、硬い床にくたりと崩れ落ちた。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「……っはぁ、はぁ、はぁっ……」  
「……おい、律子……。大丈夫、か?」  
律子がうつ伏せに倒れ、刺激的な肢体が隠れた事で、洋大はようやく金縛りのような状態から回復した。  
コンクリートの床に突っ伏して荒い息をつく律子に、洋大は気遣わしげな声を掛ける。  
女性の、それも幼い頃から良く知っている親友の自慰行為を目前で見せられて、ショックが無い訳ではない。  
しかしそれよりも、まずは律子の状態が心配であった。  
「しっかりしろ! 正気に戻ったか?」  
「だ……め……」  
洋大が呼びかけると、律子は弱々しく答えながら、ゆるゆると顔を上げた。  
その瞳には僅かに理性が戻ったようにも見えたが、それでも奥に灯る炎は消えてはいない。  
泣き出しそうな顔をしながら、律子は救いを求める声色で囁いた。  
「駄目……なの……。指じゃ、指じゃ駄目なの……!」  
「……!? 律子!」  
律子は腰を持ち上げると、再び股間に手を伸ばし、濡れそぼったそこを探り始めた。  
それは快楽を貪ると言うより、砂漠で行き倒れた人間が水を求めるような、狂おしい動きだ。  
先程の絶頂は、例えてみればほんの一口の水のように、ますます渇きを増す効果しか無かったらしい。  
耐え難い欲求に操られるまま、律子の指は己の陰裂を抉り続けた。  
「お願い……入れてぇ! あたし、このままじゃ、狂って……っ!」  
(……ちくしょう! それしか……ないのかよ……!)  
男を知らずとも、本能的に自分の求めるものをせがむ律子の声に、洋大は苦悩の末の結論を出した。  
最初に求められた時に、律子の事を素直に抱けなかった本当の理由も、今やはっきりと自覚している。  
こんな形で彼女を汚すような真似を、したくなかったのだ。  
幼馴染としてでも、親友としてでもなく──特別な女の子として。  
しかし、この状況で自分の恋心を悟る事は、洋大にとって辛い事でもあった。  
律子は意に添わぬ劣情を押し付けられているだけであり、心から自分を求めている訳ではあるまい。  
先程から、洋大の名前を一度も口にしない事が、何よりの証拠だ。  
正気に戻ったら、律子は心身を深く傷付けられ、自分との関係も元には戻らなくなるだろう。  
それでも、これ以上、彼女の苦しむ姿を見るよりは──このまま狂わせてしまうよりは、ずっとましだ。  
そう思い定めると、洋大は律子の傍に膝を突き、彼女の身体を抱き上げた。  
「……ごめんな……」  
「ね……。お願い、キス、してぇ……?」  
ぎゅっと抱きしめると、律子は悔しさで歪んだ洋大の顔を見上げて、擦り寄るように懇願した。  
それは、男なら誰でもいいという、発情した獣そのままの媚態。  
律子への想いに気付いてしまった洋大にとって、彼女のそんな態度は苦痛以外の何物でもない。  
彼女が理解できないのを承知の上で、それでも洋大は呟かずにいられなかった。  
「俺のせい、だよな……。お前が、こんな目に合っちまったのって……。許してくれなんて言えないけど……。  
 でも俺、他に出来る事、思いつかなくて……。だから、ごめん……」  
「おねが……い、早くぅ……んっ!」  
顎を軽く上げ、軽く舌を突き出した律子の口元に、洋大はそっと唇を重ね合わせる。  
律子との初めての口付けは柔らかく、だけどどこか苦い味がした。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「んあっ、ああっ……くぅん! いい……いいのぉ……!」  
「律子……」  
洋大が拙い手つきで柔肌に触れると、律子はたちまち甘い声を出し始めた。  
技巧うんぬんよりも、男の手が自分に触れているという事実が、律子の女を刺激しているらしい。  
初めて生で触れる律子の肢体は、熱病のように熱く、洋大の手の平に吸い付くような張りと艶を持っている。  
だが、魅惑的な肌触りに半ば引き込まれつつも、洋大の胸には重苦しい痛みが巣食っていた。  
「ねえ、胸……、乳首吸って……! 強く……」  
「ああ……。んっ、ちゅっ……」  
伏せたお椀のような双丘をそっと持ち上げ、洋大は色素の薄い先端を、乳飲み子のように吸った。  
口の中に律子の汗の味が広がり、若々しい肌の匂いが鼻腔をくすぐる。  
「ひぅっ……! そう、それがいいの……! それから、こっちも……」  
律子は快楽に身体を痙攣させながら、洋大の片手を己の下腹部へと誘う。  
「こう……で、いいのか、律子……?」  
「ふあぁっ! そうっ……、もっ……と、掻き回してぇ……!」  
洋大は律子の求めるまま、彼女の胸を、陰部を、そして全身を愛撫し続けた。  
すでに二人とも全ての服を脱ぎ捨て、仰向けに寝た律子に洋大が覆い被さる体勢になっている。  
内心で痛みを覚えていても、これだけ間近で絡み合っていれば、洋大の若い身体は素直に反応する。  
洋大の怒張は硬く反り返り、包皮から顔を出した先端は、透明な汁を滲ませていた。  
「ね……、も、いいから……。入れて、あたしの、奥まで……」  
雄の精臭を感じ取ったのか、律子は洋大の身体を押し退け、大きく股を広げた。  
更に両手で陰裂を思い切り左右に開き、じくじくと欲望の雫を生み出す淫穴を露わにする。  
充血した肉襞の連なりが形作る暗い穴に、洋大の心臓がドクンと胸郭で跳ねる。  
洋大は腰の位置をずらし、片手で押し下げた肉棒の先端を陰裂の前に位置づけた。  
「……じゃ、行くぞ、律子……」  
「んっ! あ……熱くて、大きいのが、入って、く……るぅぅっ!」  
洋大が亀頭を宛がい、静々と腰を進めると、律子は初めてとは思えないほどの歓喜の声を上げた。  
指以外のものを初めて迎える膣口は、切ないほどに強く幹を締め付け、洋大は軽い痛みを覚える。  
けれど、内部は完全に男を受け入れる準備を済ませていて、更に奥へと誘うように、内壁が細かく蠕動する。  
「……っく、うっ……!」  
「だめぇ……! もっと、もっと奥までぇ……」  
「く……っ、りつ、こっ!」  
その動きに驚いた洋大が一旦動きを止めると、律子は両足を腰に絡め、一気に根本まで飲み込む。  
粘液にまみれた数十本の細い指で撫でられるような感触に、洋大の口から呻きが洩れた。  
「あはぁっ……! 奥まで、来てる……。そうなの、これが欲しかったの……」  
「……っ! 律子……」  
張り詰めた亀頭が子宮口へコツンと当たり、律子は淫らな満足感に緩く微笑んだ。  
身体の強張りが抜けていく中、剛直を咥え込んだ秘洞だけが、別の生き物のように蠢き、締め付けを増す。  
未体験の快感が走り、洋大はもうそれだけで達しそうになる。  
洋大の意思とは裏腹に、温かな柔肉に包まれた陰茎は、ヒクヒクと悦びに打ち震えていた。  
「んっ……! はっ……あ、うんっ……!」  
「ううっ! り、律子、ちょっと待……うっ!」  
律子は洋大のモノを深く咥え込んだまま、自ら腰を使い出した。  
下腹部を擦り合わせ、両足で洋大の腰を引き寄せ、ただ牝の本能に任せて、大きく小さく円を描く。  
細かく尻を上下に揺らし、濁った水音を立てながら、中の異物が与えてくる悦楽を貪る。  
余りにも甘美な快楽に、洋大の制止の声は途中で遮られた。  
「んくぅっ! あっ、はっ、いいの……! 太いのが、中で、ぐりぐりして……っ、んんっ!」  
「駄目だっ……律子、それ以上、したら……!」  
自分の求める刺激を得る為、律子は引き締まった尻を小さく上下に揺さぶり、更に動きを速めた。  
濡れた肉のぶつかり合う音が高まり、結合部からはトロリとした蜜が溢れる。  
強く刺激される場所が次々と変わり、細かい肉襞が経験の無い洋大の抑制を砕こうと蠢く。  
洋大が唇を噛んで必死に射精を堪える中、律子の律動は徐々に激しさを増していった。  
「ああっ! ねぇ、来るのっ! あた……し、イクの、イッちゃいそ……なのっ……!」  
「くうぅっ……、ぐっ、く……!」  
洋大の忍耐が限界に近づいた頃、積極的に快楽を受け入れていた律子は、あられもない睦言を叫んだ。  
その言葉には羞恥心の欠片もなく、ただ男の本能をくすぐる甘い響きだけが込められている。  
洋大は、コンクリートの床に爪を立て、固く歯を食い縛って、律子の声を意識から追い出そうとする。  
その脳裏には、中で出す事だけはいけないという、最低限の理性だけが存在した。  
「ねえっ! きてっ! おねがい、いっしょに、いっしょにぃ……!」  
「駄目……だ、駄目なんだ、それ……だけはっ……!」  
律子の秘洞は達する予兆に震え、きゅんきゅんと断続的に締め付けた。  
洋大は、ともすれば自らも腰を使い、一気に楽になりたいという衝動を、強引に押さえつける。  
「いっ、しょ……おねが……あ、あ、だめぇ、──あ……っ!!」  
ビクン、と大きく背中を反らし、律子は絶頂の叫びを放った。  
全身の筋肉が一瞬硬直し、すぐにふわりと脱力する。  
「うわ……だっ、く、ううっ!」  
こみ上げる精を抑え切れなくなった洋大は、慌てて腰を引き、律子の中から分身を引き抜いた。  
先端が膣口から解放されて跳ね上がるのと同時に、勢い良く白濁が迸る。  
ゼリー状の黄色味を帯びた精液が、律子の下腹部へと大量に撒き散らされた。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「……はぁ……あ、ヨーダイ……?」  
洋大が射精の余韻に痺れていると、律子が寝起きのようにぼんやりした口調で、声を掛けてきた。  
「……え、り、律子? ……正気に戻ったのか?」  
「正気、って……? えっ!? あ、あたし……や、やだっ、見ないでっ!」  
一気に理性を取り戻したらしい律子は、洋大の下から後じさり、身体を捻って両腕で自分の身体を隠す。  
洋大も、耳まで真っ赤にして恥ずかしがる律子に、今更ながらに羞恥心を覚える。  
「あっ、わ、悪い!」  
慌てて身体ごと後ろを向くと、わたわたと自分の服を掻き集めた。  
「……ねぇ、ヨーダイ。あたしたち、その……しちゃったんだよね?」  
「う、あ……、ああ。……覚えて、ないのか?」  
互いに背を向け、ごそごそと情交の跡を拭いながら、律子と洋大は戸惑いがちに言葉を交わした。  
背後から伝わる相手の気配が、気恥ずかしさを一層強くする。  
「ううん……。全部、覚えてる……。洋大が言った事も……、その……、あたしが、言った事も……」  
「そっ、そうか……」  
「…………」  
「…………」  
それ以上は言葉に出来ず、二人は押し黙って着替えを始めた。  
衣擦れの音に、相手の様子を想像しそうになるのを抑えながら、手早く服を身につけていく。  
一足早く着替え終わった洋大は、その場にあぐらをかいて、何とも身の置き場の無い気分を味わう。  
「ヨーダイ……。もう、こっち見て、いいよ……」  
「お、おう……」  
律子の声に振り返ると、彼女は微妙に視線を逸らしながら、乱れた髪を撫で付けていた。  
「ほんと、ごめん……。俺、それしか言えないけど……」  
「謝らなくて、いいよ……。その、ああして貰わなかったら、あたし、本当におかしくなってたし……」  
洋大が再び謝ると、律子はスカートの裾を弄りながら、もじもじと答えた。  
それほど傷ついた様子が無い事に安堵しつつも、洋大はやはり罪悪感に駆られる。  
「でもさ……」  
「だから、いいんだってば! ……だって、初めてがヨーダイで、あたし、本当に……」  
「え? 律子、今なんて言った?」  
「うっ、ううん! なんでもない!」  
思わず小声で呟いた本音を聞き咎められ、律子は慌てて首を振る。  
「生きて帰れたら、はっきり言うよ。ヨーダイが守ってくれるんだから、きっと帰れるって、あたし信じる」  
「律子……」  
縋るでもなく、誤魔化しでもなく、心からの信頼を込めた律子の瞳に、洋大は胸を打たれる。  
「……信じて、いいんだよ、ね?」  
大事な女の子から頼られて、洋大の全身に力がみなぎる。  
「ああ、必ず……お前を守ってみせる」  
小首を傾げて微笑む律子に、洋大は決意を込めて力強く答えた。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「くそっ! お前ら、律子をどうする積りだっ! ちくしょう、離しやがれっ!」  
二匹のデロに拘束されたまま、暴れる洋大は薄暗い廊下を歩かされていた。  
あの後しばらくして、律子と閉じ込められていた地下室に、数匹のデロがいきなり乱入してきたのだ。  
律子は泣き叫び、洋大も力の限り抵抗したが、多勢に無勢では勝ち目がない。  
洋大は律子と引き離され、どことも知れぬ場所へと連行されている処であった。  
「いいか、律子に変な真似をしてみろ! お前ら全員、ぶちのめしてやるからなっ!」  
激怒に満ちた洋大の叫びを無視したまま、先導していたデロが扉を開け、中を指し示す。  
洋大を押さえたデロ達は、扉を抜けて部屋に入ると、乱暴に床へ突き倒した。  
「……ぐっ!? 何だよ、この部屋は……」  
解放された事で少し冷静さを取り戻した洋大は、連れ込まれた部屋をぐるりと見回した。  
今度の部屋は長方形になっていて、コンクリートの三つの辺と、波打った鋼鉄製の板の一辺で成り立っている。  
察するに、かなりの広さがある部屋の一部を、シャッターで仕切っているようだ。  
そこかしこに立ち並ぶ奇妙な機械に、洋大は異様な雰囲気を感じ取っていた。  
「……ヨーダイ!」  
「えっ、その声は……?」  
その時、律子とは違う、聞き慣れた少女の呼び掛けを耳にして、洋大は声のした方向を振り向いた。  
数匹のデロに光線銃を向けられ、洋大とは別の扉から追い立てられているのは、和服を纏った小柄な人影。  
洋大の元へ駆け寄って来たのは、仲間の一人であるかまど神の少女、麦であった。  
「ヨーダイ、良かった、無事で……。私、本当に心配して……」  
「いや、それはいいけど、何で麦まで捕まってるんだ?」  
皆が助けに来たのならば、麦一人だけがこうして捕まっているというのは、かなり不自然である。  
「それが……。少し焦っていたので、一人で先走ってしまったんです。そこを囲まれて……」  
失敗を恥じて小さくなりながら、麦は洋大だけに聞こえる程度まで声を潜める。  
「……でも、他の皆さんも、すぐに助けに来るはずです。遅くとも、あと数十分後ぐらいには……」  
「そうか。それは助かるな……」  
そうと分かれば、後は皆が来るのを待って反撃し、律子を助け出すだけだ。  
デロ達に気付かれてはいけないと、安堵が表情に出ないように注意しながら、洋大は小声で答えた。  
「だけど、何をそんなに焦ってたんだ? 麦らしくもない……」  
「ええっと、それは、その……。自分でも、良く判らないのですが……」  
その時、何やら気まずそうに口ごもっていた麦の目が、洋大の背後を写してハッと見開かれる。  
「ヨーダイ、危ないっ!」  
「……え?」  
気が抜けた直後と言うこともあり、洋大はその場に立ったまま、怪訝そうに後ろを振り向く。  
「うわあぁぁっ!?」  
「ヨーダイっ!」  
洋大の視線に写ったのは、どぎついピンク色の数条の光線と、下劣な笑みを浮かべたデロ達の顔だった。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「ぐうっ……、くっ、か、はっ!」  
「ヨーダイ、ヨーダイっ! 大丈夫ですか? しっかりして下さい!」  
複数のピンク・レーザーを受け、苦しそうに崩れ落ちる洋大の元に駆け寄り、麦は半狂乱で問い掛けた。  
「あなた達! ヨーダイに何をしたんですか!」  
洋大の頭を胸に抱き寄せて、周りを囲んだデロ達を問い詰める麦の声は、いつに無く厳しく、鋭い。  
デロ達は麦の疑問には答えず、ただニヤニヤと好色そうな笑いを続けている。  
しかし、衝動に耐えて歯を噛み締める洋大にとっては、自分が何をされたかは、もはや明白であった。  
(やつら……。今度は、俺に麦を襲わせようって言うのかよ……!)  
洋大の視界は赤く染まり、頭と下腹部に一つずつ新たな心臓が出来たかのように、血流が集中する。  
股間のモノは硬さを増してズボンの布を押し返し、脳裏からは理性が急速に失われていく。  
何とかデロ達の思惑から外れようと、洋大は意志の力を振り絞って、麦へ語り掛けた。  
「む……ぎ……」  
「ヨーダイ! 痛いんですか、苦しいんですか!?」  
「俺……から、離れて……くれ……」  
「え? な、何を言ってるんですか、ヨーダイ!?」  
弱々しく自分の腕を振り払おうとする洋大に、麦は要領を得ないまま、そう訊き返した。  
麦もデロ達の能力については一通り教わってはいたが、性的な事柄については殆ど分かっていない。  
ただ、「デロ達の光線に当たったら危険だ」という程度にしか認識していないのだ。  
そんな麦が、いくら本人の言葉とは言え、苦しんでいる洋大を放っておける筈が無い。  
洋大の願いも空しく、麦はより一層強く身体を抱き寄せ、必死に顔を覗き込んだ。  
「しっかりして下さい! 私に、何か出来る事はありませんか?」  
「頼……む……。頼むから、早く、離れ……」  
最後に残った理性でそう呟く洋大の言葉を裏切り、両手は既に女を求めて、麦の細い肩を掴んでいた。  
間近に感じる女の身体の気配と、肢体から漂う甘い匂いが、妖術で引き出された暗い欲望を掻き立てる。  
「ヨーダイ! どうしたんですか、ヨーダイ!」  
次第に現実感が無くなり、目の前の少女が誰であるかといった基本的な認識さえも、洋大の脳裏から消えてゆく。  
後に残るのは、ただ欲望を満たしたい、この女を犯したいという、凶暴な本能のみ。  
(こいつ……誰だ? いや、誰でもいい……。女なら、誰でも……)  
洋大の瞳からは理性の光が薄れ、ぎらついた獣欲が取って代わっていった。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「ヨーダイ、返事をしてくだ……むうっ!?」  
いきなり洋大に唇を奪われて、麦の顔が驚愕に強張った。  
麦が呆然としているのをいい事に、洋大は舌先で可憐な唇を割り、貪るように口腔を探る。  
そこまでされて、ようやく麦も何をされているか悟り、日本人形のような顔にぱぁっと朱が差した。  
「むぅん!? むーっ、むぅっ、んんーっ!」  
麦は口を塞がれたまま、くぐもった声を上げて洋大の胸板を叩き、抵抗した。  
しかし、驚きと戸惑いが強い為、その腕にはろくに力が込められておらず、いかにも遠慮がちだ。  
勿論、その程度の抵抗で、妖術に操られた洋大の暴走が止まるはずもない。  
乱暴に蠢く洋大の舌が逃げる麦の舌を追いかけ、絡みつき、粘膜の感触を味わう。  
存分に麦の唇を堪能し、熱い吐息と共に離した洋大の口からは、細い唾液の糸が橋を掛けていた。  
「……っぷはぁ! はーっ、はぁ、はぁ、はぁ……」  
「な……ヨーダイ、何を……、何で……?」  
血走った目で荒い息をつく洋大に、麦は訳が分からない、といった表情で問い掛けた。  
常識を心得ていない麦ではあるが、今の行為が何か自分の知らない欲望に基づいている事は分かる。  
そして、どう見ても洋大が正気を失っている事も、何故かそうされる事で自分の胸が高鳴っている事も。  
麦の幼い感情にとって、それは初めて感じる混沌とした思いであった。  
「うう、うおおっ!」  
「やっ……! ヨーダイ、何をするんですか!?」  
洋大は獣のように叫んで着物の襟元を掴むと、引き裂くような勢いで麦の上半身をはだけさせた。  
襟が肩口まで引き剥がされ、白磁の如く艶やかな肌と、ほんのりと膨らんだ小振りの双丘が外気に晒される。  
頂点にある色素の薄い突起を見るや否や、洋大は夢中でそこにむしゃぶりついた。  
「むちゅっ……! んっ、ちゅぷ、ちゅうぅ……!」  
「いっ、いけません、ヨーダイ! や……だめ、だめですっ……んっ!」  
何がいけないのかは分からないながらも、麦は羞恥に顔を歪めつつ、拒絶の言葉を口にした。  
洋大の口は片方の膨らみを頬張り、淫靡に舌を鳴らしながら、麦の幼い乳首を吸い上げる。  
片手は着物の下に滑り込んで背筋をさすり、余った手でもう一方の膨らみを揉みしだく。  
むず痒いような感触が走り、単に刺激に対する反応として、麦の乳首はゆっくりと隆起していった。  
「ふぅっ……はぁ、はぁ……」  
「なっ……!? やめ……、ヨーダイ、しっかりして下さいっ!」  
洋大の手が荒々しく着物の裾を捲ろうとするのを、麦は両手で押さえて抗った。  
何をするつもりかは知らないが、洋大のその行為が、操られた上での暴走だという事ぐらいは分かる。  
足をばたつかせた拍子に裾が乱れて、ほっそりとした足が膝の辺りまで顔を覗かせる。  
しかし、本性を顕すまでもなく洋大よりも力強い麦の手は、それ以上の露出を許さなかった。  
「くっ……そ、抵抗するんじゃねえっ!」  
「!? ヨー……ダイ……?」  
望みを阻まれた洋大は、欲望に掠れた声で麦を怒鳴りつけた。  
決して本意ではないと判っていても、暗い感情を剥き出しにした洋大の怒号は、麦から抵抗する気力を奪う。  
驚きと悲しみに瞳を潤ませる麦を一顧だにせず、洋大は思わず抵抗を止めた少女の膝を強引に割り裂いた。  
「は……ははっ、いい眺めだ……」  
「いや……こんなの、もう、いやですっ……!」  
普段の洋大からは想像も出来ない下劣な笑みを見かねて、麦は両手で顔を覆い、ぎゅっと目を閉じた。  
事がここに至っても、麦の頭には洋大に対する嫌悪や怒りは湧いてこない。  
ただ、淡い想いを寄せていた洋大の変わり様に、悲しみの涙を流すだけであった。  
「ほら……。もっと、良く見せろよ……」  
「ううっ……ヨーダイ、ヨーダイ……」  
一方、洋大の目は、堅く口を閉じた麦の秘裂を、食い入るように注視していた。  
麦の下腹部は全くの無毛で、薄桃色の未成熟なスリットが、ふっくらとした丘にアクセントを加えている。  
哀れみを誘う麦の呼び掛けも、今の洋大の情欲を止める事は出来ない。  
むしろ、その声で嗜虐心を刺激され、洋大の興奮は更に高まっていった。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「まずは、良く濡らさなきゃな……」  
「ひっ、ぅん!?」  
洋大はぼそっと呟くと、わななく麦の股間に顔を寄せ、表面をずるりと舐め上げた。  
敏感な場所を這うぬらっとした舌の感触に、麦の身体がビクンと跳ねる。  
麦の秘所は、甘酸っぱい乙女の味がして、洋大を陶然とさせた。  
「んっ……ちゅ……。はぁ、いい匂いだ……。すげぇ興奮するぜ……」  
「……っ! ……っく、んっ……!」  
舌で何度か舐め回すと、洋大は指で陰裂を左右に開き、誰も触れた事のない麦の肉襞を剥き出しにした。  
鼻を鳴らしてそこの匂いを嗅ぎ、指先で柔らかな粘膜をくにくにと弄る。  
麦は両手で顔を隠したまま、乱暴な指使いに小さく息を呑んだ。  
「もっと感じてくれよ……。ほら、こうしてやるからさ……むっ、ぬちゅっ、ふむ……っ」  
「ふあぁっ!? やっ……ヨーダイ、何、を、してっ……!?」  
洋大は麦の花弁に唇を押し付け、力を込めた舌をずるりと中に侵入させた。  
うねうねと秘裂を割って入る軟体動物じみた異様な動きに、麦の肌がぞわっと粟立つ。  
洋大の舌先は細かい襞を確かめるように蠢き、湧き出した唾液を内部にまんべんなく塗り込んでゆく。  
そうしながら時折、限界まで伸ばした舌をストロー状に丸め、潤滑油代わりの唾液を奥へと流し込む。  
しばらくそれを続けられる内に、麦の身体の奥から、異物を受け入れる為の粘液が僅かに染み出して来た。  
「……っぷぁっ! これだけ濡れれば、もう入るだろ……」  
「濡れ……て……? ヨーダイ、入るって、何が……ひっ!?」  
カチャカチャとベルトを外す音が聞こえて、麦は指の間から恐る恐る洋大の様子を伺った。  
もどかしげに取り出した洋大の陰茎は、幹の部分に血管が浮き出て、凶悪なフォルムを麦の目に焼き付ける。  
笠の部分は異常なまでに赤黒く膨張し、針で突けば破裂しそうなほど張り詰めている。  
直感的にそれを自分の中へ入れるつもりだと悟り、麦の顔が恐怖に慄いた。  
「いっ……いやですっ! そんなに大きなもの、入る訳が……!」  
「このっ……、逃がすかよっ!」  
「いやぁ! お願いです、ヨーダイ……、放して下さいっ!」  
麦は身体を捻り、洋大の下から逃れようとうつ伏せで這いずった。  
しかし、洋大はすぐさま麦の着物の帯を掴み取り、逃亡を阻止する。  
半ばパニックに陥った麦は、ろくな抵抗もできずに、ずるずると引き摺られる。  
ばさりと裾を捲って小さなお尻を露わにすると、洋大は両手で麦の腰をぐいっと持ち上げた。  
「そう嫌がるなよ……。満足させてくれたら、放してやるからさ……」  
「……っ、違う! そんな勝手な台詞、いつものヨーダイなら、絶対……っ!」  
優しげな口調に普段の面影を感じてしまい、麦は激しくかぶりを振ってそれを否定した。  
それを認めてしまえば、洋大への温かな想いが汚されてしまう気がして。  
しかし、いま麦に無体な真似をしているのも、何かに操られているとは言え、洋大であることに違いは無い。  
胸に渦巻く激情に、麦は出来るならば、このまま意識を失いたいと願う。  
が、淫欲に狂った洋大は、そんな麦の逃避を許してくれなかった。  
「いくぞっ……! くっ、ふ……!」  
「あああぁぁっ!」  
洋大は両手の親指で秘唇を広げると、ひくつく男根を一気に突き入れた。  
硬い肉棒に引き裂かれる痛みが稲妻となって走り、麦は首を反らして悲痛な叫びを上げる。  
未成熟な麦の秘洞にとって、洋大のモノはあまりに大きすぎたのだ。  
「ちっ、きつ……。まだ、ちょっと、足りなかったのかよ……?」  
「う……あ……! 痛……い、ヨーダ、イ……、止め……!」  
初めての上、まだ充分には潤っていなかった麦の中は、強い抵抗を示した。  
剛直の侵入に、濡れていない肉襞が巻き込まれ、引き攣れるような痛みを両者に与える。  
しかし、洋大はこれ以上欲望を我慢する気は無いらしく、軽く眉を歪めながら、強引に腰を進める。  
灼けた鉄棒で抉られるような痛みは、火を操るかまど神である麦にとって、体験した事の無い苦痛だった。  
「くそ……っ、これ以上は、入らないのか……?」  
「ぐっ、つぅっ! ヨ、ヨーダイ、くる、苦しい……」  
小柄な麦の内部は、洋大の幹を全て受け入れられる程の深さがなく、途中で先端が最奥に当たった。  
洋大が何度か強く突き上げても、麦の肢体が前に押されるばかりで、それ以上は少しも進めない。  
内臓を無理矢理押し上げられる苦しさに、麦の口からか細いうめきが洩れた。  
「……まぁ、いいか。動いてりゃ、そのうち具合も良くなるだろ……」  
「ひぐっ!? や……! ヨー、ダイっ、動か、ないでっ……!」  
軽い失望を込めて呟くと、洋大はゆっくりと腰を使い出した。  
まだ異物の大きさに慣れていない膣壁を、強く張り出した雁が掻き乱し、新たな痛みを生み出してゆく。  
腹腔をうねる肉棒の熱さに、麦は両手を背後に回し、洋大の身体を押し退けようとする。  
だが、無理な体勢で伸ばした腕には碌に力が入らず、洋大の手にあっさりと囚われてしまった。  
「はぁっ……はぁっ、くっ……うう、く……っ!」  
「かはっ! ……やっ、や……め……て……」  
洋大は麦の両腕を逆手に捻り、馬の手綱を引く要領で、力強い律動を続けた。  
無理矢理に反らされた華奢な肢体が宙に浮き、動きに合わせて麦の頭がガクガクと揺さぶられる。  
麦の身体はぐったりと脱力し、洋大の望むままに剛直を受け入れる。  
半ば失神し、抵抗する気力さえ無くしつつある麦の秘裂からは、粘膜を守る為のぬめりが滲み出していた。  
「おお……、くっ、すげ……ぇ! アイツとは……全然……違う……!」  
「……っあ……! ……っ、……ぅ、ぁ……!」  
無意識に先程の律子の具合と比べながら、洋大は滑りの良くなった女陰の感触に、歪んだ喜びを覚えた。  
異物を拒む強い締め付けが、猛り狂った剛直に肉襞を絡ませ、苦痛と紙一重の快楽を生む。  
麦の尻を壊すかのように激しく腰を打ち付ける洋大の下腹部から、ぞわぞわと射精の衝動が沸き起こって来た。  
「おい……、出す、ぞっ……! 中に……中に、出して、いいだろっ……!?」  
「ぅ……! ぁ……はっ……ゃ……!」  
洋大は背後から麦の乳房を手荒に掴み、強く抱き寄せながら最後の動きを始めた。  
麦はもう、まともな単語を口に出来ず、ただ洋大の突き上げに押し出された、小さな息を洩らすだけだ。  
「いいんだな……! いくぞっ、奥のっ、お前のっ……中にっ……!」  
「……っ! く……、あ、ぁっ……!」  
返事が無いのを自分に都合良く解釈した洋大は、限界まで突き入れた剛直を、最奥で細かく前後させた。  
子宮口をこじ開けるような亀頭の感触に、麦の声が僅かに高くなる。  
「出る……! もう、出る、で……おおおっ!!」  
「──────!!」  
獣のような雄叫びと共に、洋大の先端から、全てを搾り出したような大量の白濁が放たれる。  
びゅるびゅると音を立てて注ぎ込まれる飛沫を受けて、麦の喉から音にならない絶叫が飛び出した。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「お……おお……、お……、あ、あ?」  
洋大の射精は十秒近く続き、収まり切らない白濁が、剛直との隙間からごぽりと音を立てて漏れた。  
ぼんやりとした表情の洋大は、軽く数回腰を動かして、幹に残った最後の一滴まで、麦の膣内に吐き出す。  
欲望を満たした陰茎が徐々に力を失うにつれ、洋大を支配していた凶悪な性衝動が、朝露のように消えてゆく。  
萎えた男根がずるりと陰裂から抜けるのと同時に、洋大は正常な意識を取り戻した。  
「……麦……。お、俺……」  
「え……。ヨー、ダイ……、元に……?」  
洋大は、罪の意識に慄いて身体を離しつつ、縮こまった下半身のモノをそそくさと仕舞い込んだ。  
声の調子から洋大の変化に気付いた麦が、涙に濡れた顔をゆっくりと背後に向ける。  
身じろぎした拍子に、無残に爆ぜた麦の花弁から、一塊の白濁がボトリと床に零れ落ちた。  
「……ち、違うんだ、麦……。俺、そんなつもりじゃ……」  
「……分かって……います……。さっきのが……、ヨーダイの意思じゃ、ない事……ぐらい……」  
うろたえて埒も無い弁明をする洋大に、麦は乱れた着物を直しながら、気丈にそう答えた。  
しかし、その表情は硬く強張り、決して洋大と視線を合わせようとはしない。  
裾を握る指は痛々しく震え、陵辱による心の傷をまざまざと見せ付ける。  
そして何より洋大の脳裏には、麦を犯している間の暗い悦びの記憶が、これ以上なく克明に刻まれていた。  
「おれ……俺、何て事を……。麦を……、嫌がる麦を、無理やり……!」  
「……だ、大丈夫です! 私だって、戦いでもっと酷い傷を受けた事も……、あ、あれ……?」  
打ちひしがれて苦渋の涙を流す洋大を安心させようと、麦は無理に笑顔を作って向き直った。  
しかし、言葉の途中で新たな涙が瞳から溢れ、つうっと頬を伝う。  
「お……おかしい、ですね……。ほんとに……、本当に、何でも……ない、のに……」  
「麦……」  
幼子のような泣き笑いの表情のまま、麦は次々と零れる涙を、両手の甲で何度も拭う。  
そのいじらしい仕草に、洋大はますます己の所業に対する罪悪感を深めてゆく。  
どう言い繕おうと、自分が淡い好意を抱き、自分を慕ってくれていた少女を穢した罪は、消せはしなかった。  
「デデデッ、デロデロデロ!」  
「な……んだ……?」  
その時、背後から心底楽しげなダミ声が聞こえ、洋大はゆっくりと振り向いた。  
そこには十匹近いデロ達が立っており、その内の一匹が二人を指差して、嘲りを込めた笑みを浮かべている。  
「デロデロッ!」「デッデッデ!」  
彼らの言葉は解らないが、周りのデロ達が一斉に下品な笑い声を上げた事から、大体の想像はつく。  
洋大の胸に渦巻いていた様々な思いが一気に凝縮し、目が眩む程の怒りへと変化した。  
「何が……おかしいんだよ……」  
「デロッ?」  
洋大がゆらりと立ち上がると、指を差していたデロが更に唇を歪め、見せびらかすように光線銃を構えた。  
彼らの銃からは、ピンクレーザーの他に、殺傷能力のある破壊光線も撃ち出す事が出来る。  
圧倒的な人数差で囲んでいる事もあり、そのデロは余裕の表情で、2・3歩ほど洋大に歩み寄る。  
しかし、憤怒に駆られた洋大には、そんな脅しなど何の意味も持たない。  
「何が……おかしいいいぃぃっ!!」  
「デロッ!?」  
デロ達が身を竦ませるほどの怒号と共に、洋大は目前に来たデロへと飛び掛った。  
「おおおぉぉっ! なにが、何がぁっ! お前らがっ! お前らのせいでぇっ!」  
「ヨ、ヨーダイッ!?」  
号泣する洋大は、拳が傷つくのも無視して、押し倒したデロの顔面を渾身の力を込めて殴り続けた。  
あまりの狂乱ぶりに、麦も思わず立ち上がり、両手で口元を押さえて彼の名前を呼ぶ。  
凍り付いていた周りのデロ達がハッと我に返り、三匹がかりで仲間の上から引き剥がし、床に組み伏せる。  
そこまでされても、洋大は少しも落ち着かず、自分の関節を砕きかねない勢いで激しく抵抗する。  
「お前ら、殺してやるっ! 全員、俺の手で、二度と蘇れないぐらいに、ズタズタにしてやるううぅ!!」  
「ヨーダイ……」  
怖気が走るような怨嗟の声に、麦は思わず耳を塞いだ。  
一方、殴られたデロは忌々しげに血の混じった唾を床に吐き、壁際にいる仲間に顎で合図を送った。  
頷いたその仲間が、壁から突き出したレバーを引くと、部屋を分けていた大きなシャッターが上がってゆく。  
一つになった部屋は学校の講堂ほどもあり、中央には金属製の診察台のようなものが鎮座している。  
「ヨーダイッ! その声、ヨーダイなのっ!?」  
その向こうから、洋大に負けないほど取り乱した叫びが届き、洋大の意識が僅かに平静を取り戻す。  
「その声っ……、律子かっ!?」  
──焦点を合わせた洋大の目に映ったのは、数匹のデロに拘束された、憐れな律子の姿だった。  
 
 
              ◇  ◇  ◇  
 
 
「そう、そんな事があったの……。確かに、年頃の男の子には、耐えられないでしょうね……」  
「はい……。きっと洋大は、私なんかより、ずっと傷ついていたんだと思います……」  
嘆息する千絵の声に、泣き腫らした目をした麦が、力なく頷いた。  
その脇のベッドには、気絶させられた洋大が、油汗を流しながら、苦しげなうめきを漏らしている。  
──律子が意識を失った後、洋大は再び理性を失い、鬼神の如く暴れ回った。  
不必要なほどにデロ達の身体を切り刻み、倒れた処を容赦なく滅多突きにする。  
全てのデロが消え去っても、意味不明の慟哭を喚き散らし、仲間の声にも耳を貸さない。  
最後には、自分の身体にジェラルドを突き立てようとするのを、雷蔵が電撃で意識を奪って止めたのだった。  
「事情は判ったわ……。でも、麦さん。本当に、それでいいの?」  
「……ええ。……それしか、ないと思うんです……」  
麦が提案したのは、洋大と律子──そして、麦自身の記憶を抹消すること。  
全てを無かった事にするという手段だった。  
「確かに、二人とも身体の傷は治したし、その……妊娠の兆候も無かったようだけど……」  
身体に刻まれた陵辱の記憶だけは、千絵の能力では消し去る事が出来ない。  
律子はともかく、麦は下手をすれば、洋大に触れられる度に、無意識から拒絶反応を示す事になりかねない。  
それは、正体が解らない分、克服も納得も出来ない、決して消えない傷として存在し続ける。  
しかし、千絵のそう言った説明を受けても、麦の決意は変わらなかった。  
「いいんです……。ヨーダイの辛そうな顔を、これ以上、見たくないから……」  
「だけど、その記憶を消したら、今の貴方の気持ちも……」  
「……はい。ヨーダイを、本当に好きだという気持ちも、忘れてしまうんでしょう……?」  
「麦さん……。貴方、そこまで分かって……」  
傷ついた末に、やっと辿り着いた本当の気持ちまで、惜しげも無く捨て去ろうという麦に、千絵は絶句する。  
その心中を想像して、千絵の上品な顔が悲痛に歪んだ。  
「千絵さんまで、そんな顔しないで下さい……。私は、本当に、それでいいんですから……」  
「……分かったわ。それじゃあ、まずは洋大くんの記憶を消しましょう。  
 貴方と律子さんとの、その記憶と感情だけを消すとなると、かなり込み入った作業になるから……。  
 律子さんの記憶をどこまで消すのかは、洋大くんと相談してから決める。  
 それら全てが済んでから、麦さん、貴方の記憶を消す……それでいいのね?」  
千絵は、麦から頼まれた記憶消去の手順を、もう一度だけ確認する。  
洋大の事だけを考えて依頼した順番に、麦は決然と頷く。  
けれどその前に、麦は罪の意識にうなされる洋大の顔を覗き込み、名残りを惜しむように囁いた。  
「ヨーダイ……。私も辛かったけど……、でも、辛いだけじゃなかったんですよ……?  
 あんなに怒ってくれたから……。私の為に、泣いてくれたから……。  
 この記憶も消してもらうけど……。この気持ちも、もうすぐ忘れてしまうけど……。  
 いつか、もっと違った形で、求めてくれたら……。私、嬉しいです……」  
洋大の頬に一粒の涙を落として、麦はそっと唇を重ねる。  
そして千絵に小さく一礼し、廊下に続く扉へ悄然と歩み去っていった。  
 
 
〜END〜 
 

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