「ああ!来たよ初ちゃん…!」
「本とね…30分前から待っていた甲斐があったね恋ちゃん…。」
私たちのいる並木道の反対側からあの人が歩いてきました…そして…
「行こう…初ちゃん・・・。」
「うん…」
私達はあの人のところへ…
「…大丈夫かなぁ…初ちゃん…?」
「大丈夫…だと思うこんなに離れてるから…。」
…あの人のところへ行って一緒に歩ければいいんだけど…現実は甘くないです…。
声をかける勇気がないから…こうやって後ろを歩くしか出来なくて…でも…。
「あ…今あくびしたよ…?」
「ホントだ…ふふ…可愛い…。」
充分幸せなんです…。そんなあの人を始めて見たのは…一月ぐらい前でしょうか…?
それは、公園で動物たちの散歩をしている時でした…。
「あれ…初ちゃん…あそこ…」
「人が…いるね…どうしたんだろ…?」
近寄ってみると、あの人がカバンを持って立っていてその視線の先に子猫がいたんです。
様子を見てみると、なんだか、彼に子猫がなついてついて来てるみたいでした…。
「ついてくるなよ…」
「にゃぁ」
「だから、付いて来るなって…」
「にゃぁ…」
「……」
「…」
暫くその場に立ち止まっていたあの人でしたが、諦めたように溜息をついて子猫に近づくとひょいと抱き上げ…
「分かった、何とかしてみるよ…。」
そう言って、ふふっと笑ったんです…。その顔がとっても素敵で…今でも忘れられません。
その後、声をかけてみようかと思ったけど…彼はすぐに居なくなっちゃって…。
でも、数週間後、あの人にまた会う事が出来たんです…!
「ああいうの、一目惚れって言うんだよね・・・。」
「うん…そうだね…。」
まだ一度も話した事は無いけれど…動物が好きな人に悪い人はいないって言うし…きっとすごく優しい人だよねって、いつも二人で話してます…。
そして、明日こそは話し掛けようね…って言ってるんですけど…なかなか出来なくて…私たちダメな子…。
その証拠に…今日も後を歩くだけ…ハァ…。
「こ…恋ちゃん!」
恋ちゃんに引っ張られ物陰に隠れると…あの人がこっちを振り向いたんです…。
「見つかるとこだったね…」
「うん…でも、見つかったほうがお話できるよね?」
「…あ、また歩き出したよ…!」
再び歩き出したあの人の後ろを歩いて、学校に着いたら私たちも学校へ…彼の学校が途中でよかった…。
そして、帰りもあの人が出てくるのを待って・・・そんな、毎日でした…でも…
「あ、出てきたよ…?」
それはいつものように、学校の帰り道…あの人の後を歩いている時でした…。
「あれ…あの人いないよ…?」
あの人が珍しく街の方へ歩いていったのですが…そこで見失ってしまったんです…。
「ど…どうしよう…?」
「え…えっと…」
「ねえ、お姉さんたち…誰か探してるの?」
…声を掛けられて…振り向くと…きゃー!あの人が後ろに…
「え…あの…」
「探して…と言うか…」
もう、どうしていいのか分かんなくて…あ、身長私たちより少し低い…でも素敵…。
「俺だよね…?」
え…なんで知ってるの?
「お姉さんたちさ〜なんかここの所ずっと俺の事つけてたよね〜?」
ええええ!?ばれちゃってる…!?
「なーんか、視線感じるな〜って思ってたら…。最初は気のせいかなって思ってたんだけど…なんで…?」
なんでって…言っちゃっていいのかな…
「ま、理由なんて知らないけどね。でもさ、お姉さんたちのやってる事って…」
「ストーカーなんじゃない?」
「す…ストーカーだなんて…!」
「違います…私たちは…」
「似たようなものでしょ…?お姉さんたち何年生?」
「高校…一年です…」
「じゃあ、俺より二つ上だね。その年齢でストーカーなんて…人生棒に振りたくないでしょ?」
私たち…なにか散々に言われてる…?
優しい人じゃなかったのかな…?
「ま、いいや次から止めたほうがいいよ。じゃ、そういうことで…」
「「まって下さい!!」」
あの人が、行ってしまいそうで…誤解されたまま行ってほしくなくて…思わず二人で…
「「私たち…貴方が好きなんです!!」」
思わず…告白しちゃいました…。
「で…話してくれる…?」
私たちは今、あの人と喫茶店にいます…なんだかややこしくなりそうだからって…あの人が…。
近くで見ると…少し荒っぽい言葉遣いとは違い…なんだか、女の子みたいな綺麗な顔…きっと女装させたら気付かないだろうな…。
「…聞いてる?人の話…」
「あ、ごめんなさい…!」
私と初ちゃんは二人であの公園での事を話しました…それ以後のこのとも…。
「ああ…あの時ね…。」
「あの猫は…?」
「どうしたんですか…?」
「保健所へ連れて行って処分してらった。」
「「えええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」
私と恋ちゃんはここが店の中だと言う事も忘れて叫んでしまいました…。
「嘘。ちゃんと家にいるよ、てか、面白いねお姉さんたち。」
そう言って、あの人は少し笑顔を見せてくれました…。
「…それで…その…」
「私たちを…貴方の…」
「「彼女にしてくれませんか…?」」
そこが喫茶店だと言う事も忘れて…二人で言ってしまいました…。
「…ちょっと待って…二人とも?」
「はい…私たち二人一緒に貴方を…好きに…なったから…」
「二人一緒に…貴方の…彼女にして欲しいです…。」
「…と、言われても普通良いですよって答えないよ…?」
え…いま…私たち…振られちゃった…?
「それに…俺はお姉さんたちの事あんまり知らないんだよね…。あ、そうだ名前は?」
「千草…初です」
「恋です…」
「初さんに恋さんね。どうするかなー。」
ダメかな…って思ったんだけど…なんだか諦めたくなくて…二人でじっと見つめてたんです…。
「ま、いいか…いいよ、とりあえず友達からなら。お姉さんたち面白そうだし。」
「え…」
「いいんですか…?」
友達同士…少しランクダウンだけど…いいよね…?
「さてと…話も済んだし、俺帰るね。」
「「えっ…!?」」
「何?」
「あの…」
「なんでも…無いです…」
そうだよね…ただのお友達だもんね…
「いいたいことあるんならはっきり言えば…?」
「「……」」
「はぁ…。そうだ、千草さんたちの家どこにあるの?」
「…え?」
「とりあえず、案内してよ。」
「えっと…それは…。」
「ああ!もう!一緒に帰ってやるって言ってるの!」
あ…やっぱり優しい…。
次の朝…
「「お…おはようございます…」」
「…なんで居るの?」
「学校が違うから…こうしないと会えないなって思って…。」
「一緒に登校しようと…でも迷惑でしたか…。」
「迷惑って言うか、友達で普通そこまでする?」
そう言うと、あの人はさっさと歩いてしまって…置いていかれないように…ついていく事にしました…。
「千草さんたち…学校どこ?」
「あの…千星学園です…」
「ふ〜ん。道は同じなんだ。」
「その…迷惑ですか…?」
「別に、遅刻するわけじゃないし。」
「そ…それじゃぁ…」
そう言いながら…あの人の前に回ったのが間違いでした…だって…こっちを向いてなかったんだもの…
「「きゃぁ!!」」
急に空が正面になったと思ったら…そのまま後ろにこけてしまって…
「…イタタタ…」
「何してんの?前見て歩かないからだよ。」
「あう〜…」
「とりあえず…隠すもの隠せば?見えてる。」
「「え?」」
気付くと…スカートの中が…いやー!
「全く…ほら。」
そう言うとあの人は私たちに手を差し伸べて…でも、私たちはよく分からず…キョトンとしてると…
「さっさと手を取って立つ!通行の邪魔でしょ!」
「「は…はい!」」
彼の手を取ると…見た目とは違いやっぱり男の子なんだな…って思わせてくれる力強さで引っ張ってくれました…その後は…学校まで私たちの横を歩いてくれて…。
「ここまで良いんでしょ?じゃ、後は気をつけて。」
「あ…待って下さい…!」
「何?」
「あの…か、帰りも…ご一緒…しても…?」
「好きにすれば?俺は構わないから。」
そんな感じで…あの人とのお付き合いは始まりました…友達だけど…。
最初はいやいやなのかな…って思ってたけど…そうじゃないみたいで…少し安心しました…。
そう分かったのは…とある出来事がきっかけでした…。
「体育祭…ですか?」
「そう、体育祭。」
「練習とか…大変?」
「当たり前じゃん。何であんな事しなきゃいけないのかねぇ。どうせ、遊びなんだから適当にやればいいのに。」
「それ…いつあるんですか?」
「再来週の日曜。」
「…あの…見に行っても良いですか…?」
「別にいいけど…物好きだね?」
「それは…そのぉ…」
「…貴方の頑張る姿を見たい…から…」
そう言うと…暫く黙って…機嫌を損ねたかな…って思ったんだけど…。
「そういう事って、はっきり言うよね。」
「え…」
もしかして…
「「照れてる…?」」
「うるさい。来たければ来れば…。」
「じゃあ、行きますね…。」
「でも、体育祭までいろいろ遅くなるけど?」
「あ、それは大丈夫です…」
「ちゃんと待ってます…。」
「そういうことじゃなくて…いや、もういい。」
そして…当日…
<次の競技は借り物競争です…>
「なんで、俺がこれなんだよ…あーあほらし…。しかも…」
「あ、あの人こっち見たよ?」
「頑張って〜。」
「ホントに来てるし…。でも、ドンケツはやだよな。紙に書いてあるもの次第だけど。」
<それでは位置について…よーい…パーン!>
「どうにかなるか、運動そこそこ得意でよかった。え〜とお代は」
『双子』
「……何でこんなの入ってるんだよ…。」
「ねえ初ちゃん…なんだかこっちに走って来てるよ?」
「ほんとだ…どうしたんだろう…」
見る見るうちに彼がこっちに近づいてきて…
「…運動得意?」
「え…?」
「ま、いいや。とりあえず来て。あ、これ。」
「え…借り物競争の紙…?」
「双子…?」
「はい、よーいドン。」
「「ええ!?」」
それだけ言って…あの人は私たちの手を引いて走り出しました。
「私たち…借り物なんですか…!?」
「細かい事気にするな!」
「で…でも…」
いつのまにかゴール目前…でも…
「きゃっ!」
「こ…恋ちゃん…!」
「うわっ!!」
3人一緒にこけちゃいました…でも、ギリギリでゴールインしたみたい…。
「あつつ…。」
「ご…ごめんなさい…」
「私たちのせいで…」
あの人は立ち上がると、前のように私たちに手を貸してくれました…そして…
「ちょっとこっち来て。」
そのまま手を引いて、連れてこられたのは…
「そこに座ってて。」
救護所でした…。その時気付いたんだけど…二人とも足を擦りむいちゃってて…。
「ごめん、怪我させたね。」
そう言いながら、傷口を濡れたガーゼで拭いて…消毒してくれたんです…!
「なんか、お詫びしないとね。ドンケツにならずに済んだし。何がいい?」
何がいい…って何でもいいのかな…。
「それじゃぁ…」
「デートしてくれますか…?」
「いいよ、それくらいなら。」
「…ホントですか…?」
「本当。」
「嘘じゃないですよね…?」
「しつこい。」
「ご…ごめんなさい……。」
「あの…」
「何?」
「優しいん・・・」
「うるさい。」
「ごめんなさい……。」
「来週でいいね?」
「何が…ですか?」
「バカ?デート。」
「……はい!」
そういう訳で…念願の…初デート…遂にその日がやってきました…。
「こんにちわ〜。」
「来たよ…あの人。」
「うん…早くしなくちゃね…。」
あの人が迎えにきてくれたのは・・・
『なんか、遅刻しそうだからおれが迎えに行く。』
だ…そうです…はぁ…。信用されていないのかなぁ…。
「初ちゃん…早く…」
でもそんな時…。
「初、恋!急患だ…!」
「犬…?どうされたんですか?」
「ええ…急に苦しみだしちゃって…。」
「大変ですね…。って…あ。」
扉を開けるとあの人が外に立ってて、飼い主さんと話してました…。
「おお…!君丁度良かった!手伝ってくれないか!!」
「え…俺ですか?」
「そう、君だ!」
「あの…事情は後でお話します…。」
「とりあえず今は…。」
「はぁ…。」
その後は、あの人にも手伝ってもらって…
初デートが犬の手当てになっちゃった…でも、無事でよかった。
「ごめんなさい…今日は…」
「折角…その…」
「いいよ、別に。大丈夫で良かったね、犬。」
そう言ってくれて、何となく気持ちが軽くなりました…
「少年よ、もう少しゆっくりしていってはどうだ?」
「いえ、家の人が心配しますので、お気持ちだけで…。」
「でも、貴方に手伝ってもらってすごく助かったし…。」
「何かお礼でも…」
「いいって。動物の命がかかってたんだから。」
「本当に助かったよ、ありがとう、少年。」
「いえ、それでは俺はこれで…。」
「あの…」
正直に言うと…あの人とのデートがダメになってすごく残念だったから…
「…また、日を改めて…」
「いいよ、またその内。」
少し笑ってOKしてくれました…。
その時…本当に何となくですけど…あの人も少しは…楽しいのかな…って
そう思いました。
その時以来…デートはしてませんが…たまに…散歩を手伝ってくれたりして…いろいろ助けてもらいました…
その度に…“ドジ”とか言われたけど…くすん…。
だから、二人であの人の役に立ちたいな…ってずっと思ってたんです…。
そんなある日…
「ご…ごめんなさい…」
「ったく…黙って突っ立てるな!!」
「本当にごめんなさい…」
私たちが…あの人を待ってると…3年生の人がぶつかってきて…悪いのはその人なんだけど…機嫌が悪かったみたいで…絡んできたんです…。
「ちっ…目障りなんだよ…ブスが…」
そう言って…その人が行こうとしたとき…
「おい、あんたちゃんと謝っていきなよ。」
そこにあの人がきて…
「は?何で俺が…?」
「悪いのあんただろ?大体、人の事ブスって、自分の顔鏡で見たことある?なんなら鏡貸そうか?」
あれ…ちゃんと鏡持ってる…
「お…お前…!」
「あれ?殴るの?へぇ…そうだよね、拳でしか相手を負かせないそんなバカっぽい面してるもんね…。いいよ、殴って。立場悪くなるのあんただし。こんなに人多いし、丁度いいじゃない自分のバカさ加減を皆に見てもらえば?」
うわぁ…すっごい毒舌。
「くそ…覚えてろよ!」
「覚えてる訳無いじゃん。」
そう言って男の子は去っていきました。
「あの…」
「ありがとう。」
「…少しは言い返せば?」
「でも…あの人間違ってないし…」
「私たち…可愛くないし…。」
そう言うと…彼は溜息をついて。
「もうちょっと自信持てば?鏡貸そうか?」
え…励ましてくれてる?
「客観的に見ても、結構整った顔してると思うよ?まあ、眼鏡がそれを隠してるんだろうけど、そういうの好きな人も少なくないし。」
「…あ…その…」
「ま、いいけど。帰るんなら帰るよ。」
「は…はい。」
その時は、それで済んだけど…
「って!」
帰り道…あの人が突然誰かに突き飛ばされて…見ると…さっきの人が…。
「また、あんた…しつこいね?」
「さっきは、よくも恥じかかせてくれたな…。」
「うっわ、何逆恨み?つくづくバカだね。」
「うるせぇよ!」
そう叫ぶと…相手の人があの人の制服を掴んで……
「「ダメーーーーーーーーーーーー!!」」
あの人が怪我しちゃう…!そう思ったとたん、勝手に体が動いて…鞄で相手の人を…
「あべしっ!」
……殴っちゃいました…どうしよう…。
「………」
あの人も黙っちゃった…嫌われたかな…?
「あ…あの…」
「ち…違うんです…」
「ぷっ…あははははははは!」
わ…笑ってる…?
「千草さんたち強いねぇ〜。やれば出来るんじゃん、見直したよ!」
「えっと…その…」
「貴方に…怪我して欲しくないって思ったら…」
「でも、女の子が鞄で殴ったりしちゃいけないな〜?」
「そう…ですよね…」
「ま、でも結果的にたすかったし、ありがとね。何かまたお礼しなきゃね。」
「いえ…。お礼なんて…」
「でも…よろしければ…また一緒に…」
「「デート…したいです!」」
「オッケー。そのくらいなら。」
あの人の役に立てた上に…また…デートなんて…。
…もう…恋人同士でも良いよね…?
それから暫くして…
「お見合い…?」
「うん…」
「何でまた?」
「パパが一度してみろって…。」
それは、本当に突然の事でした…。それをあの人に話したのは…止めさせてくれるかな…って思ったのですが…
「ふうん、ま、良いんじゃない?」
「「え!?」」
あの人らしいと言えばあの人らしい答えでした…くすん・・・。
「別に、お見合いしたから結婚するって訳じゃないんでしょ?それに、君たちのお父さんが言う事なら何か考えがあるんじゃない?」
「考え…?」
「そう。例えば、人見知りを少しでも直す為とか。」
「あ…」
「そう言われてみれば…。」
あの人の言う事にも…一里ある気がしました…でも…。
「私たち…お見合いなんて…」
「あんまり…気が進まなくて…」
「なら、そうやって言えば?」
「そう言ったんだけど…」
「パパがどうしてもって…相手ももう乗る気らしいし…」
「じゃあ、しょうがないね…やってみれば?」
あの人があんまり淡白に言い切っちゃうから…何となくカチンと来て…
「…貴方は…良いんですか…?」
「…は?」
「貴方は、なんとも思わないんですか…?」
「何で俺が?君ら自身の問題でしょ?俺がとやかく言うことじゃないと思うし…それにさ…」
「別に恋人同士って訳じゃないし…。」
「…そうですね…ただの友達だもんね…」
「変な事言ってごめんなさい…それじゃ…」
なんだか悲しくて…思わずあの人を置いて走って帰っちゃった…
「おい!ちょっと待って……」
だんだんあの人の声が小さくなって気が付いたら家に着いてて…
「「うわああああああぁぁぁぁん…!」」
部屋で二人で…思いっきり泣いてしまいました…。
「そうだよね…私たち…ただのお友達で…。」
「あの人にとっては…どうでも良い事だったんだね…。」
3人で遊びに行ったり…時々…本当に時々だけど…私たちがお願いして…手を繋いでくれたり…
そんなのも…あの人にとっては…友達だったから…。
「本当に…そうだったのかな…?」
「え…?」
「だってあの人…私たちのほう…見て話して無かったよ…?」
「…そう言われてみれば…」
あの人…歯に衣着せぬ物言いをする人だけど…話すときは…まっすぐ見て話していました…でも…
「…嘘…なのかな…?」
「…分かんない…」
「…確かめて…みる…?」
「ど…どうやって…?それに、また同じ事言われるだけかもしれないよ…?」
「うん…そうだね…でも…。」
そうして…お見合いの前日あの人に会いに行ったのだけれど…
同じ事を言われてしまいました…やっぱり…。
そして…お見合い当日…私たちは着物を着て…お相手の方…の前…に座ってました。
でも、何で相手も双子なんだろう…やっぱり、双子は双子同志じゃないとダメ…ってこと?
「そうだ、お前たち、折角だから四人でお話してくると良い。」
そう言われて、四人で庭園に出て…。
庭園は綺麗だったけど…お話はあんまり楽しくなくて…。
“ご趣味は?”“学校では何を?”とか色々質問されたけど…ちゃんと聞くことも出来なくて…
それに…話方はあの人より丁寧だったけど…それが、なんだか…ご機嫌を取ってるように感じて…
『ダメじゃんそれ…もうちょっとマシな事できないの?』
遠慮なく言うという事は…何も隠してない証拠…たとえ、それで人を傷付けることになっても・・・
『まったく…ほら貸してみて』
けれどあの人は…そうならないように…必ず助けてくれて…
『あとは、出来るでしょ…? ほら、やれば出来るじゃない。』
私たちに、自信を持たせてくれた…。
こんな私たちでも…大丈夫なんだって思わせてくれた…。
「うっ…ひくっ…」
「えぐっ…」
別に…この人達と結婚するわけじゃないって分かってても…なぜか涙が出てきて…。
相手の男の人達が“どうしたんですか…?”て心配したけど…私たちとうとう声を出し…
「何泣いてるの?泣き虫さん?」
…そうになったけど…その声で…止まっちゃった…。
顔を上げると…そこには…。
「ほら、行くよ?」
「え…」
「あの…」
「嫌だって言っても連れてくよ?」
そう言うとあの人は私たちの手を取って…
「ちょっと待った!」
「誰だ君は…」
何で、すんなり行かないのかしら…でも…
「うるさい、ニヤケ面。」
うわぁ…言っちゃった…
「ニ…ニヤケ面!?」
「し…失礼な!!」
「でも、間違ってないでしょ?何なら鏡貸そうか?」
あれ…また鏡を持ってる……
「てか、何かいかにも親の七光り受けてますって顔してるよね…イマイチぱっとしないし…そりゃお見合いでもしなきゃ結婚できないわけだ。」
「な…な…!」
「千草さん…!誰ですかこの人は!!」
誰ですかって…そんなの…決まってるじゃない…!
少し口が悪いけど…本当はとっても優しくて…とっても素敵な人…この人は…
「この人は…」
「私たちが…」
「「心に決めた大事な人なんです!!」
「そーゆーこと。行くよ、初さん、恋さん!」
「「はい!!」」
私たちは、あの人に手を引かれ…夢中で走りました…あの時みたいに…。
お見合い相手の人は…なんだか…ぽかーんとしてたけど…良いよね…。
私たちの手を引いて走るあの人の顔は…何かが吹っ切れたような表情をしてて…みてるこっちまで幸せになってしまいました…
「大丈夫?」
「はい…!」
「私たち…」
「「とっても…幸せです」」
「ふぅ…ここで良いかな」
私たちが居たのは…始めてあの人を見た公園…
「あの…どうして…」
「とりあえず、着物直せば?向こう向いとくから。」
そう言われて、着物を確認すると…ずっと走ってたせいで襟がはだけて…胸元が…きゃあ〜!
は…恥ずかしい…。
急いで直すと…あの人が“良い?”と聞いてきたので…はい…と答えるとこっちを向いて…
「その…ごめん…。」
何時もみたいにハッキリした言い方ではなく…つまりながらポツポツと話始めました…
「あの時は…ああいったけど…その、よく考えれば…いや、考えたわけじゃなくて…なんて言うんだろ…聞いたときから…本とは嫌だったし…思わず…恋人同士じゃないなんていったけど…。」
「…良いよ恋人同士で。」
「…え…?」
「今…」
「だから、恋人同士って良いていったの。何度も言わせないでくれる…?」
「ホントに…?」
「いいんですか…?」
「だから、そう言ってるだろ!」
「…ひくっ…えぐっ…うわぁぁぁん…」
その言葉を聞いて…とっても嬉しくって…二人して泣いちゃいました…そして
「だあぁ!何故泣く!てか、外で抱きつくな!!」
思わず抱きついたみたいです…
「じゃあ…私たちのこと…」
「好きになってくれたんですか…」
「ん…まあ、好きだよ…。」
「…うえぇぇぇぇぇぇん!!」
「あー…もう…いいよ、好きなだけ泣け!抱きつくのも…特別に許可する…。」
「いえ…もう大丈夫です…。」
「あの…これからも…」
「「一緒に居てくださいね?」」
気が付くと、いつのまにか…あの人の目線は…いつのまにか私たちより少し高くなってました…。